3 : 08 子供にわいせつ、キッズgoo

大本営発表、おとなは本日も健全なり

2001年 7月28日
記事ID d10728

「過激(かげき)な濡れ場(ぬれば)にも体当(たいあ)たりで挑戦(ちょうせん)…彼女(かのじょ)を誘拐(ゆうかい)し、飼育(しいく)…」

おとなと子どものあいだには、情報戦争の緊張がある。おとなも、敵に知られたくない情報を隠そうとする。逆の話は、ここでは、しないが、なぜ知られたくないかといえば、その事実について、たいていのおとなたち自身が咀嚼(そしゃく)できていないので、つっこまれるとうろたえてしまうのだろう。おとなの弱点。弱点を隠したい――だが、これだけ「事実」を知られてしまい、しかもしらばっくれて取り澄ましてちゃ、ますます信頼を失うばかりだ。自分たちが守ってないルールを押しつけないでほしい。

保護者の方へ」にはキッズgooのセールスポイントが3点、列挙されている。いずれも「子供と一緒に」と始まる。子どもといっしょに保護者に見てほしい――それが広告主のホンネであり、さもなければこんなカネのかかることは、できない。じじつ広告ターゲットもおとなだ。「サルまん」が明快に分析している児童まんがの本質と同じこと。これは子どものためのポータルでは、ない。親にものを買わせるためのコマーシャルを流すおまけとして、コンテンツ(番組)があるにすぎない。

本質が情報戦争であるとしたら、おとなたちが「隠蔽(いんぺい)同盟」を結んでいることがらをスパイするサイトは悪者だろう。でも、それこそが、小中学生が本当に知りたい、知るべきことなのかもしれない。社会的に性を抑圧し、抑圧された願望のはけ口を商品化している構造があるかぎり、自然を「悪」と呼ぶのは事業者の既得権だろう。

未知の世界へのナビゲーター

中学生が実際に使うとは思えないけど、べつの意味でちょっと楽しい「キッズgoo」。

自称「日本一の、こどものためのポータル」は、子どものために、いろんな知識をさずけてくれます。ちょっと試してみたら、なにやらずいぶん難しげなコンテンツが出てきました。小学生でも読めるように、ちゃんとふりがながついてます。なになに……18歳(さい)の新人(しんじん)・深海(しんかい)理(り)絵(え)。CMや、TVドラマなどには出演(しゅつえん)していたが、本(ほん)作(さく)が彼女(かのじょ)の映画(えいが)デビュー作(さく)となる。過激(かげき)な濡れ場(ぬれば)にも体当(たいあ)たりで挑戦(ちょうせん)し、今後(こんご)が期待(きたい)される。彼女(かのじょ)を誘拐(ゆうかい)し、飼育(しいく)する住川(すみかわ)に、元(もと)ビシバシステムの緋田(あけだ)が怪演(かいえん)している。

――ふぅむ、お子さまのためには、ふりがなだけでなく、単語の説明が必要かもしれません。「濡れ場」などの難語は、自動的にgooの国語辞典を参照できるようにすると、国語の勉強にも役だちそう。自称「未知の世界へのナビゲーター」キッズgoo、今後の発展が楽しみです。

You are kidding!

「日本いちのキッズむけサーチ」「安全便利」こどものためのポータルサイト、「キッズgoo誕生」!(とフレーム上部の広告に書いてある)――たしかに、ふりがながついて、お子さまでも読みやすい。小学校の教員や校長先生の話なので、子どもたちも、身近に感じられることでしょう。

kids.gooが表示するコンテンツの例「やがて彼女(かのじょ)は行(ゆ)きずりの男(おとこ)との一夜(いちや)の関係(かんけい)に身(しん)を任(まか)せ、校長(こうちょう)とのアブノーマルなセックスで快楽(かいらく)に目覚(めざ)めていく。」

キッズgoo「有害語リスト」や「優良URLリスト」を使って、悪いコンテンツを見えなくして、良い子にぴったりのページだけを探してくれるんだ。ほら、たとえばこんなぐあいだよ↓ これはgoo自身のコンテンツだから、とっても優良なんだ。

(画像:キッズgooによって優良と判断されたコンテンツ)「愛情と性欲のバランスを崩した女性のホンネを赤裸々に描く」「女子高生の身に起きた、40日間の出来事とは?前作『完全なる飼育』より、過激な内容で送る第2弾」

なんだかエッチな、気持ち悪いページだね。こんなの見たくないよね。ぷんぷん。

それに漢字のふりがなも変だぞ。「女子高生(じょしこうせい)」くらい、わたしたちだってちゃんと読めるのに、ウソの読み方を教えるなんて……。低学年の子がこれ見てまちがって覚えたらどうするのよねー。

おまけに広告まで無理やり見せつけて、ちょうむかつく。「本当にお得なのはどれ?」なんて客観的(きゃっかんてき)な比較(ひかく)をよそおいながら、NTTのけいたい電話を売りつけようとしているんだ。gooとNTTはなかまなんだよ。だから、ずるがしこく、手をくんでいるんだ。おとなのやることをうかつに信じちゃいけないってことだな。でも、マリーベルのローズおばあちゃんや、陸奥A子(むつえいこ)先生みたいないい人もいるんだよ。おとなのひとの言うことだからって、なんでも信じないで、いい人かずるい人か、見分けなければいけないってことだね。こころのなかの妖精さんが、「なんだか変だ」とささやいたら、気をつけてね!

しかしながらWWWの世界には、性的な表現や暴力的な表現もあるため、それらへの接触機会を最小限にするための配慮として『三重のフィルタリング機能』を搭載しています。具体的には、キーワード検索時に、(1)「有害URL」リストに該当するURLをチェックし、(2)「有害語リスト」に登録されている語を"サイト概要文"に有するWebサイトを検索結果から削除します。そして更に、(3)当該Webサイトの全情報をチェックし、有害コンテンツを含む場合には表示をストップさせます。 from gooヘルプ: 小学生向けポータルサイト『キッズgoo』スタート!(ニュースリリース 2001.07.23)

gooの運営に際しましては、人為的なURL削除、及び登録の措置等は一切実施しておらず、インターネットにおけるロボット検索のルールを遵守しております。 from gooヘルプ: ロボットクローリング回避の方法

たぶん日本語圏では、こういう大手っぽいフィルタリングは初めてなので、びっくりして言論の自由がどうとか文句を言うかたも出てくるでしょうが(そういう観点もむろん大切ですが)、フィルタリングは(100%善意でやっていてすら)難しい技術。最高の解析技術を使っても、アムネスティの「まじめ」なページがフィルタされてしまうとか、それどころか、人の名前が「ひわいなことば」と判定されて単に自分の本名を書くだけで悪いページとしてフィルターされてしまう、といった例も報告されてます。単語を分かち書きしない日本語の場合、なおさら意味論的解析が困難で、たぶん30分もあれば、gooのフィルターをすりぬけるハードコアポルノを書けるでしょう――単にbrタグを「あぶない」単語のあいだに入れてしまえばもう認識できないし、画像も認識できないし。

そんなことより、いわゆるアダルト系とかとは別の意味で、ティーンが本当に知りたいこと、知るべきこととというくくりと、おとながティーンに知ってほしくないことの補集合が、ずれてるでしょう。それはフィルタリング技術の善し悪しとか、表現の自由とかの問題じゃなく、本質的には、おとなの弱さの問題でしょう。前にも書きましたが、いま性教育に関して先進的と言われる地域でも、当初は教師が顔を赤らめていたといいます。

おとなたちが、自分たちは本当は汚いという無意識の罪業観念にさいなまれているかぎり、子どもの優しい目のなかのちいさなおがくずをとりのぞいてやることなど、できないからです。

――でも、本当にターゲットは子どもなのだろうか……フィルタリングが多少、理不尽になってしまうのは技術的に仕方ないし、上部にフレームで広告を入れるのも、まぁ許容範囲として、それが不動産の広告だったりするのが変てこだ。「真に子どものための情報」というより、「親がいっしょに見て“安心”できる」という基準なのかもしれない。だとしたら、kids.gooの真のターゲットは親だから、広告の対象も親、つまり不動産、化粧品、海外旅行などで話があう。そして、「親が安心できる」という観点によるかぎり、学校の先生に「こわいこと」をされて困っていますどうしたらいいでしょう?とか、オナニーのしすぎは体に悪いのだろうかとか、「援助交際は売春だからいけない」というがなぜ「売春」はいけないのだろうかとか、なぜ人を殺してはいけないのだろうかとか、自分は異性に興味を持てないけれど間違っているのだろうかとか、完全自殺マニュアルが不健全図書に指定されたとかいうことですがおとなの人が考える不健全とはどういう意味なのですかといった本当の意味で小中学生に役立つないし考えるべき情報へのアクセスは制限されてしまうだろう。なぜなら、多くの保護者自身が目をそむけていて答えられないからだ。

Dekidsgoo.php

2005年7月16日
// レスポンスヘッダの直後にインクルード
    if( $_SERVER["REMOTE_HOST"] == "kids.goo.ne.jp" )
    {
// フィルタリング・ボットをだますためのダミーメッセージ
        print( "<title>よい子のページ</title>\n" );
        print( "<p>よい子のみなさん、こんにちは!</p>\n" );

// JavaScriptが有効なら自動でジャンプ
        print( "<script type=\"text/javascript\">\n" );
        print( "  top.location.href = \"http://" . $_SERVER["SERVER_NAME"] . $_SERVER["REQUEST_URI"] . "\"\n" );
        print( "</script>\n" );

// さもなければ手動でジャンプ
        print( "<noscript>\n" );
        print( "<p>このページの正しい場所は、こうです。アドレスバーにコピペしよう!<br />\n" );
        print( "  ht&#x0074;p://" . $_SERVER["SERVER_NAME"] . $_SERVER["REQUEST_URI"] . "</p>\n" );
        print( "</noscript>\n" );
// ボットにはここでページが終わるように見える
        exit(0);
    }
// この下に本当のコンテンツ

本当のよい子は、自分で自分が必要とする情報に達するので、 実用的というより、ただの技術的興味。 コンテンツを外部のファイルから読み込む場合に使えるもう一つのアプローチは、 自分がボットにスキャンされていることを感知したら( $_SERVER["REMOTE_HOST"] でフラグを立てる)、 全部の文字を &#x形式でエスケープしてしまう。 アンエスケープしてまでフィルタする執念深いボットには、 ランダムに <!-- なにか --> とか <span class="foo">なにか</span> という文字列を挿入して、妨害する。 ここでクラス foo の実体は、 display: none だが、コメントや display: none まで除去してフィルタするすごいボットなら、 こちらも対抗してボットがCSSファイルをスキャンしたときのみ動的にクラス foo を可視にしてしまう。 実際にはそんなすごいボットはいないが、考えること自体が楽しい。

「敵に監視されている安全でない通信路を使って、 いかにして敵に気づかれないようにセンシティブな情報を伝達するか」というステガノグラフィ技術のコンセプトだからだ。