ウサベルトせんせェとジェットくん
Act 10
ウサベルトせんせェは、相変わらず尻尾をぴくぴくさせる毎日で、オレが抱きついても、なんにも言わないし、キスしても、耳の根元のあたりをふるふるさせるだけで、オレにやめろともなんとも言わない。
これってもしかして、オレって、愛されてる?
オレって、ウサベルトせんせェの彼氏?って言うのは、まだ勇気がないけど、でも、もしかして、もしかして、近いうちに、オレ、ウサベルトせんせェと!
って、そんなこと考えてたら、せんせェが、オレの英語の成績が悪いから、個人的に教えてやるって・・・ウチに来いって・・・。
また、ウサベルトせんせェの家に行ける!
もしかして、これって、ウサベルトせんせェからの、遠回しな誘い? ええ、そんな、ウサベルトせんせェがまさか!
でも、暴走中のオレは、どうしても、そうだ、そうなんだ、ウサベルトせんせェもオレのこと!って考えるのをやめられない。
どうしよう。ほんとに、そうだったら。
心の準備を、しとかなきゃ。
他の準備も、しとかなきゃ。
・・・・・・薬局へ行こう、とりあえず。
ジェットに触られるのに、すっかり慣れてしまった。
抱きつかれるのも、キスされるのも、尻尾と耳のぴくぴくを、少しだけ抑えてくれる。
発情期は、まだ爆発せずに、それでもそこにいる。
ああ、一体どうしたら、消えてくれるんだろう。
ジェットは、発情期のくせに、どうしてあんなに、平然と日常生活を営んでるんだろう。不思議だ。何かコツでもあるんだろうか。今度ゆっくり訊いてみよう。
それより、英語の成績だ! 何とかしないと、落第だって、イワン先生が話しているのを、偶然聞いてしまった。
成績を上げてもらって、無事に卒業してもらわないと、いつまでも、周りにいられると、発情期が終わらないじゃないか。
これはやっぱり、発情期同士協力して、成績を上げて、こちらも発情期を終わらせて、一挙両得と行くしかないだろう。
個人教授だ!
家に呼んで特訓だ!
体罰は嫌いだが、この際、それも辞さない覚悟で、徹底的に!
じゃあ、とりあえず準備のために・・・・・・下調べをしておこう。
・・・・・・コンドームって、どうしてこう、種類が多いんだろう。
わけのわからないカタカナがいろいろ並んでて、日本語らしいと漢字が読めない。やっぱりオレ、ちゃんと勉強しなきゃ。
どれがいいのか、全然わからないし、店の人に尋こうとしたら、上から下まで、じいっと見られた。やっぱり、制服でコンドームを買うのは、まずいのかなあ。
でも、やっぱり、オレが買わなきゃ。だって、それが愛だから・・・・・・って、誰かが言ってたような気がする。
第一オレ、使い方がわからないし・・・・・・ウサベルトせんせェ、知ってるかなあ。
・・・・・・ウサベルトせんせェって、初めてかなあ。
職員室で、オレ、けっとばされたけど・・・・・・ウサベルトせんせェも、初めてなのかなあ。
オレ、どこかで誰かと、練習した方がいいかも。
本によると、性病予防や避妊のために、こんどーむとかいうものを、使うべきらしい。
どこで買えるんだろう。
どうやって使うんだろう。
ジェットが妊娠すると、確かに困る。使わないわけには行かない。
それとも、ジェットが知ってるかもしれない。どこに売ってるとか、どうやって使うとか。
巣作りもしなくちゃいけないし、英語の予習もあるし・・・・・・でも、妊娠は困る。
ジェットに訊くべきなんだろうか。
・・・・・・ジェットが子どもを生んだら、やっぱり毛は赤いんだろうか。耳も長くて、尻尾もあって、でもあんなに背が高くなるんだろうか。
ジェットの子ども・・・・・・。
はっ、いかん、こんなことを考えてる時間はない。予習をして、ジェットの勉強の準備をしなければ!
ひとりで行った薬局で、結局、どれがいいのかわからずに、コンドームを買い損ねたオレのために、クラスメートのジェロニモが、コンビニエンスストアで、コンドームを買って来てくれた。あいつは体がでかいから、店で変な顔もされなかったらしい。
箱を手渡してくれながら、
「落ち着く、焦る、良くない。相手、大事、自分、それから大事。」
経験者は語るなのかどうか、恐くて聞けなかった。
でも、友達って、ありがたいよな!
ジェロニモに買ってもらったコンドームの箱を手に、オレは誓った。
今度こそ。
今度こそ、ウサベルトせんせェと!
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