「あらし」 - 番外編

Too Deep




 そういう類いの店なのだと、外からは、一見わからない。
 あまり数があるとも思えないこんな店は、おそらく派手な宣伝など必要もなく、客たちの口伝えに、店の所在も評判も、広がってゆくに違いなかった。
 アルベルトは、歩きながら上を振り仰いで、肩をすくめた。
 「早く来いよ。」
 ジェットが、少し苛立ったように、アルベルトを振り返って、さり気なく、革手袋の右手を取った。
 驚いて、少し頬を赤らめたけれど、ジェットは、気にする風もなく、そのまま、店の中へ入ってゆく。
 アンタみたいなヤツ用の、とこに行こうぜ。
 午後遅く、店でこっそりと、そう耳打ちされ、半ば冗談でうなずいて、今はもう、冗談ではなく、アルベルトはジェットと肩を並べて、その、アルベルトと同じ類いの人間たちが集まるという、店の中にいる。
 同じと言われて、一体どの部分を指して、同じと言ってるのだろうかと、あえて訊かなかったけれど、店の中に入って、ディスプレイを見回して、アルベルトは、軽くため息をついた。
 ちらほらと、客らしい人間の姿が見える。
 背の低い、おどおどとした、中年の男がひとり、それから、性別の定かではない、けれど女性に見えるふたり連れ。店の奥の、ガラスの棚のカウンターの向うに、素肌に、黒いネットのシャツをつけた、端正な顔立ちの黒人の男---に見えた---がいて、ちらりと、こちらを見た。
 ジェットは、店の中を、きょろきょろと見回すこともなく、奥の方の、カウンターに近い棚に、真っ直ぐに足を向けた。
 黒と白、でなければ、派手な原色の、裸を強調するための、革やレースの衣装、何なのか、よくわからない、大小さまざまな形のボトル、煽情的なつもりで、ほとんど滑稽なデザインの下着と、ずらりと並んだ、裸の男と女が、ありとあらゆる姿でいる、ポルノビデオの類い。
 アルベルトは、自分の手を引くジェットの背中に向かって、聞こえないように、小さくため息をこぼした。
 自分には、縁のない、必要のない代物ばかりだ。
 触れたことすらないと言えば、もちろんうそになるけれど、こんなものを最後に目にしたのは、まだ、子どもの頃だった。
 ジェットが立ち止まった棚には、いわゆる性的な玩具が、壁いっぱいに並んでいて、その色と形に、アルベルトは思わず頭痛を覚える。
 気配を察したジェットが、逃げるなよとでも言いたげに、ぎゅっと、アルベルトの握った手に、力を込めた。
 「一体、何なんだ。」
 少しだけ、不機嫌を、声音に刷いた。
 棚を、上まで見上げ、ジェットが、アルベルトを見下ろした。それから、にいっと、唇を、いたずらっぽく吊り上げる。
 「選べよ、どれでも、アンタが好きなの。」
 目の前を指差され、一瞬、侮辱されたのだと思って、頬が硬張った。
 ジェットの手が、外れ、その代わりに、トレンチコートの下に滑り込んでくる。アルベルトの、厚みのある腰に、長い腕を回し、引き寄せ、耳に、なぶるように口づけた。
 「・・・おい、やめろ、こんなところで。」
 言葉でだけ、ジェットを制して、形だけ、胸を押し返そうとすると、耳元で、ジェットがからかうように言った。
 「誰も気にしやしねえよ・・・オレがここで、アンタのこと押し倒したって、誰も止めやしねえ。」
 言いながら、手が、腿の裏側へ滑る。コートの外側から、わざと動きが見えるように、ジェットが、大きな仕草で、アルベルトの腰を、卑猥な手つきで撫でた。
 「どれがいい? アンタ、どんなのが好きなんだよ?」
 下卑た声が、耳をくすぐる。
 アルベルトは、唇を噛んで、目の前の棚を、上目遣いに見た。


 アルベルトのアパートメントへ戻ると、ジェットは、半ばむりやり、一緒にシャワーを浴びて、そこで一度、いやがるのに構いもせず、狭いバスタブの中で、アルベルトに挑んだ。
 湯と泡で、つるつると滑るバスタブの中で、アルベルトの体を折り曲げて、押し開いて、あまり優しさは見せずに、躯を繋げる。一方的に、自分だけが楽しんで、まだ息の荒いアルベルトの、濡れた体を引き上げて、おざなりに、体から滴る水を拭った。
 床から拾い上げた白いシャツを、アルベルトの肩に羽織らせ、自分は、まだ濡れている素肌に、直にジーンズを着けて、ジェットは、アルベルトの背中を押した。
 物のように扱われていると、そう思いながら、本気で抵抗しても、ジェットを喜ばせるだけなのだと、知っているから、こんなふうにされるのは好きではないと、それだけは、ジェットにもわかるように示す。
 突き飛ばされたベッドの上で、手足を縮めて、中途半端に火照っている躯を、ジェットの視線から隠して、その、ひょろりと背高い体を、見上げた。
 「・・・すげえ、モノ欲しそうなツラ・・・」
 下唇を舐めて、ジェットが言う。
 言われて、開いたシャツの前を、さり気なくかき合わせた。
 ぎしっと、音を立てて、ジェットが、ベッドに上がってくる。
 胸を反らすように、目の前に膝立ちになったジェットの足元に、アルベルトは、体を投げ出すように這い寄ると、薄い腹に指を伸ばして、ジーンズのファスナーを手早く下ろした。
 両手足をシーツの上に突いて、四つん這いの格好で、ジェットの前に、顔を埋める。
 さっき一度、バスルームで終わらせたばかりのくせに、アルベルトの口の中で、また、ジェットの熱が勃ち上がってくる。喉の奥を開きながら、下卑た、濡れた音を響かせて、舌を使う。
 ジェットが体を折って、アルベルトのシャツのすそに腕を伸ばし、腰の辺りを剥き出しにした。
 腰の近くの、白い膚をなぞってから、背骨のつけ根を指先がたどり、手が、もっと先へ伸びた。
 もう片方の手を、アルベルトのあごに添えて、突き入れながら、体を前へ倒す。
 背中がたわみ、手首の関節が限界まで折れて、痛んだ。
 ジェットの指が、その痛みの合間をくぐるように、柔らかな粘膜の入り口を、するりと撫でて、いきなり入り込んでくる。
 突き上げられた喉の奥で、アルベルトは、くぐもった声を上げた。
 慣らすこともせず、すぐに指の数を増やし、乱暴に、中まで突き入れる。内側で、指を開いて、そのたびに、アルベルトが喉の奥を痙攣させるのを、ジェットは楽しんでいた。
 頬を真っ赤に上気させ、ジェットが動くのに合わせて、必死に顔を振る。
 あちこち歪んだ体が、不自然に曲がった関節で、きしんだ音を立てる。ぎっぎっと鳴るベッドの上で、ジェットは、薄笑いを消さない。
 開いたままの唇の端から、こぼれた唾液が流れて、そこには、ジェットの体臭も混ざっている。
 唇に突き立てるのと、同じリズムで指を使いながら、ジェットが、かすかに声をもらした。
 上目に、そんなジェットをうかがう余裕すらなく、アルベルトは、喉をふさがれた苦しさ---だけではない、もちろん---に、うっすらと、涙を滲ませていた。
 不意に、躯の奥を侵していた指が外れ、髪を後ろに引かれる。
 ジェットから離れて、反った喉と胸元に、たれた唾液が跡を残していた。
 ジェットは、アルベルトの髪をつかんだまま、片手で、こすり上げる仕草をしてから、アルベルトのみぞおちの辺りに、白く吐き出して、息をついた。
 また、アルベルトを、ベッドに突き飛ばし、床に降りる。
 アルベルトは、ぼんやりと、視界の端にジェットが動くのを、眺めていた。
 胸に、ジェットが吐き出したぬめりを、左手の指先で、確かめる。
 欲情させられて、けれど、何もしてもらえない自分の躯に、アルベルトはそっと触れた。
 ジェットのそれと、自分のぬめりが、そこで混ざって、もっと混ぜるために、アルベルトは、そっと左手を動かし始めた。
 「油断もスキもねえな、アンタ。」
 不意に、すぐ傍に戻ってきたジェットが、アルベルトのそこから、左手を取り上げる。
 アルベルトは、いたずらを見つけられた子どものように、体をねじって、膝を胸に引き寄せようとした。
 それを止めて、アルベルトの両手を、それぞれシーツに押しつけながら、ジェットが上に乗りかかってきて、喉からあごに、唇を滑らせてきた。
 ようやく、いつものやり方で、口づけられて、アルベルトは、安心したように、体の力を抜いた。
 ジェットの手が、ごそごそと動き、手首に、滑らかな布の感触が回る。
 唇をずらして、そちらに顔を向けると、ジェットが、クローゼットから取って来たのだろうか、地味な色のネクタイ---アルベルトのものだった---が、手首に回っているのが見えた。
 ああ、縛られるのかと思って、その前に、せめて、いつものように抱きしめてくれないかと、媚びに潤んだ瞳で、ジェットを見上げてみる。
 わざと、ジェットに押しつけるように、腰を軽く持ち上げ、揺すって、促してみた。
 ジェットは、見下ろして、またアルベルトを見て、ふんと鼻で笑ってから、左手首にも、ネクタイを回した。
 ベッドのヘッドボードに、ネクタイの端をくくりつけて、今度は、足元へ回る。足首を取って、また、それぞれのベッドの端に、ネクタイでゆるく縛ると、出来映えを、ちょっとだけ満足そうに見下ろして、ジェットが、大の字に縛られたアルベルトの、開いた両脚の間に這い寄ってくる。
 「アンタ、ヤバいパーティーとか、行ったことないのか?」
 「やばいパーティー?」
 ジェットの唇が、軽く触れる。それだけで、腰が、シーツから浮いた。
 「ロクでもねえ連中の前で、ロクでもねえことさせられたりとか・・・」
 触れて欲しかったその場所に、ジェットが、わざと喋る息を吹きかける。
 アルベルトは、喉を反らして、ジェットを誘うように声を上げながら、即座に否定した。
 ジェットが、ちっと、舌を打つ。
 「・・・今度、一緒に、そんなパーティーに行こうぜ。アンタのこと、最高のメス犬みたいに、扱ってくれるぜ。」
 自由にならない手足に焦れて、腰をひねりながら、おざなりに自分に触れるジェットに、もっと、と伝えるために、声を上げる。
 わざと、焦らしているのだとわかっていて、それなら、ジェットには頼らずに、舌の熱さだけを借りて、自分で昇りつめようと、目を閉じた。
 ジェットの言う、そのいかがわしいパーティーのことを想像しながら、アルベルトは、稚拙な舌使いに、わざと逆らうように、体を揺する。
 見知らぬ人間たちの視線と、息遣い、欲情の気配に取り巻かれて、縛られた全裸を晒す自分の姿を、思い浮かべた。
 誰かの欲情を、誘うだろうそんな姿は、けれど、アルベルトには、怯えしか呼び起こさず、古い傷が、心のどこかでうずいて、浮かんだ幻を、頭を振って追い払う。
 ジェットが欲しいと、そう思って、自分の脚の間で動く、赤い髪を見下ろした。
 「ジェ・・・ト・・・・・・はや、くっ。」
 ようやくジェットが顔を上げ、下品に笑って、濡れた唇を、見せつけるように舐める。
 腿の内側に、音を立てて接吻してから、またベッドを離れ、戻ってきたジェットの手には、あの、店で手に入れた玩具があった。
 透けた、紫色のそれは、のっぺらぼうの、ただの棒状で、下から長く伸びたコードと、その先についた、リモートの部分で、かろうじてその類いのものだとわかる。
 人の器官に似せたものを、自分に使われるのには嫌悪感があって、大き目のろうそく程度にしか見えないそれを選んだのだけれど、ジェットの手の中でそれは、ひどく卑猥に見えた。
 ジェットが、わざわざ、アルベルトの目の前で、それにコンドームをかぶせた。
 「アンタみたいな淫乱に付き合ってたら、オレの方が先に死んじまう。」
 コンドームについた潤滑剤の、ぬるりとした感触が、腿の内側に触れて、それから、ジェットが、すりつけるように、おもちゃを動かした。
 細い、けれど硬い感触が、押し開いて、入り込んでくる。
 アルベルトは、反射的に、躯を硬張らせた。
 ジェットが、その様子を見ながら、おかしそうに笑った。
 「アンタが選んだんだろ? 責任持って、楽しめよ。」
 首を曲げて、背けた顔を、肩に埋めた。
 止めて、ねじるように動かしては、そのたびにアルベルトの腰が跳ねるのを、ジェットは、面白そうに眺めている。
 傷つく程度には柔らかな、人間の器官とは違って、どんなに締めつけられても、形を変えることはなく、無機質なそれは、無機質なまま、アルベルトを侵した。
 半分ほど、押し入れた辺りで、ジェットが手を止め、アルベルトは、異物感に耐えながら、止めていた息を、ゆっくりと吐き出した。
 たれたコードを、指先でたどって、ジェットは、そっと、リモートのスイッチを入れた。
 途端に、アルベルトの体が跳ねた。
 硬い異物が、うねるように動いて、内側を、ゆるくこすり上げる。
 単純な形からは、想像できなかった動き方に、アルベルトは、止める間もなく、叫んでいた。
 不意に、動きが止まった。
 「オレん時より、声がでかいぜ。」
 揶揄するように、どこか、湿りを帯びた声で、ジェットが言った。
 ジェットがまた、脚の間に這い寄ってきて、唇で、アルベルトに触れた。
 わずかな刺激で、果ててしまいそうになるのを、ジェットが、タイミングを外して、そうさせてはくれない。強く握り込まれて、また、腰が泳いだ。
 そうしながら、また、ゆっくりと、ジェットが玩具を中に押し込んでくる。
 最初の半分ほどの抵抗は、もうなく、ジェットが舌を使う動きの間に、いつの間にか、すっかり隠れるほど、飲み込まされていた。
 アルベルトの、熱の形を、わざと弱くなぞりながら、ジェットが、ゆるく抜き差しを始める。
 包み込んでも、弾き返す弾力のないそれは、同じように入り込んでも、感触が違う。一方的に、躯の内側を侵されながら、アルベルトは、火照った膚の下に、ぞっと粟を立てた。
 声を立てないアルベルトを、不審に思ったのか、ジェットが、唇を外して、体を起こした。
 「足んねえのか。」
 ぼそりと言って、アルベルトの頬に、指先が触れた。
 顔を振って、それを避け、ジェットを見ないまま、アルベルトは低く言った。
 「・・・早く、取れ。そんなもの・・・」
 吐き捨てるように言うと、ジェットの頬が、少し硬張ったのが見えたけれど、アルベルトはかまわずに、早く、とまた言った。
 知らないうちに、もがいていたのか、縛られた手足が、すれて痛み始めていた。
 「アンタ、そのクソ生意気な物言い、なんとかしろよ。」
 ジェットの声に、腹立ちが混ざる。
 アルベルトは、少しだけ怯えたように、横目に、ジェットを見た。
 「淫乱で、淫売のくせに。」
 ジェットが、吐き捨てて、ゆっくりとベッドから降りた。
 ジェットの動きを目で追って、顔を上げた瞬間、また、中で、機械が動き始めた。
 今度は、さっきよりも、もっと奥で、もっと強く動いている。
 触れられたこともない辺りを、かき回されて、アルベルトは、短い悲鳴を切れ目なくもらし始めた。
 「ジェ・・・痛・・・・・・こ、壊れ、るっ、ぬ・・・抜いてっ・・・くれ!」
 叫ぶ隙間に、ジェットが、冷たい声を挟み込む。
 「アンタが、このくらいで壊れるようなタマかよ、淫乱。」
 ジェットは、そこに立って、アルベルトを眺め下ろしたまま、動こうとはしない。





 その悲鳴が、甘い喘ぎに、変わるのに、そう時間はかからず、それを聞くのに耐えられずに、アルベルトはシャツの肩を強く噛んだ。
 ジェットが、リモートのスイッチを、思い出したように切り、アルベルトを見下ろしながら、また入れる。強さを調節できるのか、内側を、ほとんど傷つける数歩手前まで強くこすり上げられて、アルベルトは、恥もなく、シーツから腰を高く持ち上げて、がくがくと揺すった。
 誰にも、見せたことのないほどの痴態を、ジェットの冷たい視線の前に晒して、アルベルトは、躯の中を熱くかき回す冷たい機械に、もう、声も出ないほど、玩弄されていた。
 目の前がかすんで、口からあふれた唾液が、シーツとシャツに染みをつくっている。持ち上がったままの腰を支えて、腿と膝が痛んでいた。
 内側からの刺激に、知らないうちに、勃ち上がっていた熱は、反った腹の上に、触れられもしないまま、白く弾けて、今もまた、頭をもたげ始めている。
 全身が、溶けていた。
 皮膚で、かろうじて形を保ちながら、その下で、どろどろと、もう跡形もなく、溶けきっていた。
 体液が沸騰して、あちこちから、こぼれ落ちる。白くかすんだ意識は、もう、自分の姿態すら知覚する気力もなく、大きく広げた脚の間で、うねうねと動く玩具を、それを締めつけて、離すまいとする粘膜を、ジェットが凝視し続けていることなど、もう、どうでも良かった。
 縛られて、すれた手首の皮膚が、痛くて、熱い。
 一体いつまで、爆発することの許されない火山のような躯を、玩ばれるのだろうかと、アルベルトは半ば意識を失いながら、思った。
 やっと、内側で、玩具が動きを止めた。
 ねじの切れた、ブリキのおもちゃのように、がくんと、腰がシーツに落ちる。
 ベッドに、ゆっくりと上がってきたジェットが、汗の吹き出したアルベルトの胸を、そっと撫でた。
 荒く息を吐きながら、目の前に落ちてくるジェットの、伏せられた長い睫毛を、ぼんやりと眺める。
 「・・・突っ込まれりゃ、なんでもいいんだろ、アンタ。」
 硬く尖った、胸の突起を、ジェットの指の腹が、ゆるくなぶる。
 アルベルトは、弱々しく、首を振った。
 目の前で、ジェットが、ひどく傷ついた表情でいた。
 その、ジェットの表情に、アルベルトは、胃の辺りが、冷えるような、そんな気がした。
 「・・・抜いてくれ・・・頼むから・・・」
 ほとんど、感覚の失くなった下肢を、まだ侵したままでいる異物感を、取り去ってしまいたくて、演技ではなく、潤んだ瞳で、アルベルトはジェットを見つめた。
 ジェットは、ひどく切なそうに、アルベルトを見下ろした後で、いきなりアルベルトの髪をつかみ、顔を持ち上げた。
 片手で、乱暴にジーンズの前を開けると、アルベルトの口元に、腰を突き出す。
 「・・・アンタの、大好物だ。突っ込んでほしかったら、しゃぶれよ。」
 アルベルトは、色の薄い瞳を、すっと細めた。
 おとなしく、唇を開いて、まるで、ジェットを慰めるように、優しく舌を動かす。
 頭上で、ジェットが、声をもらした。
 舌の上で、熱が、質量を増した。
 ジェットの右手が、アルベルトの胸と腹に伸びて、もう、乾き始めている、アルベルトが吐き出した白いぬめりの残骸に、指先を浸す。濡れた指先を、アルベルトの火照った膚に滑らせ、それからまた、硬く立ち上がった胸の尖りに、たどり着く。弾くように、その突起を撫でながら、湿りは、皮膚の熱さに、ゆっくりと乾いてゆく。


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