Lovers

#3












































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 見下ろした体には、そう言った通り、確かに刺青が増えていた。
 服を脱がなければ、おそらく見えることのない、下腹の辺りを、鳥か蝙蝠か、羽のある生き物を模した、趣味の悪い線と色が、まだらに染めぬいている。
 その刺青を、けれど今は、完全に眺めることはできず、わざと胸を重ねずに、繋がって、揺すり上げながら、肩や胸や、他の刺青を、右手で撫でる。
 両肩に乗った、重い足にも、蔦のような模様が、深い青で彫り込まれていた。
 白い膚は、まるで、体全体がキャンバスのように、うねうねとうねる筋肉の動きにつれて、絵の形も、歪み、ねじれ、どこかの世界で見ることのできる、幻覚のように、妖しげに見える。
 唯一、おそらく、そこにだけはきっと、線を彫り込み、色を流し入れることは考えないだろう、昂ぶった形を、下目に見下ろしている。
 それに邪魔されて見えない、下腹の鳥の絵が、突き上げる動きに合わせてねじれ、まるで、羽ばたいているように見えた。
 どんな理由にせよ、ひきつけられずにはいられない。
 組み伏せて、屈服させてやりたいと思いながら、どんなに、汚すために、侵して注いでも、下から見上げるのは、不敵なままの笑みだった。
 強がりではなく、虚勢でもなく、押し開かれ、侵されながら、支配しているのだと知っている傲岸不遜な色が、その淡い緑の瞳を揺らす。
 互いに体を揺すって、できる限りを貪ろうとしながら、より強く欲しがっているのは、一体どちらなのか。見極めをつけるために、躯を繋げて、ただ、負けないためだけに、湿った奥で、熱をこすり合わせる。
 まるで、注ぎながら、熱を注がれているかのように、躯中が火照る。
 下で、白いからだが、吠える。
 にせものの肉と皮膚をまとったからだをぶつけ合いながら、醜悪に手足を絡めて、交じり合う汗の匂いをかぐ。
 ジェット。
 ねじ曲げて、押し開いて、侵している男の名を呼ぶ。
 声がかすれ、視界が狭まり、全身をこなごなにして、今、浸り込んでいる熱い内側へ、還ってしまいたくなる。
 これもつまり、甘やかされているのことになるのだろうかと、白っぽく果てながら、思った。
 頬を上気させて、侵されたままで、注がれた卑屈を、傲慢に受け止めると、不敵な笑みが、にやりと浮かんだ。