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俺得、Type O Negative/"Slow, Deep And Hard"実況レビュー
2010/03/07(Sun)
アルバム初聞き。そのまま実況してみる。誰得。自分だけ楽しけりゃそれでいい。

Slow, Deep And Hard (1991)

1曲目、Unsuccessfully Coping With The Natural Beauty Of Infidelity。
見た目が小難しい気な超情緒的なタイトル、訳してからリアルでポカーン。要は"よくも浮気しやがったなこのクソアマ"。ざっくばらんに"I Know You're Fucking Someone Else"というタイトルでファンには通じるらしい。
パンキッシュなハードコア。歌うと言うよりは吐き出してる声と、スッタンスッタンスタタタスッタンな典型的この手のDr。歌詞が1フレーズ終わったところで、妙にうにょ〜んダーク系リフ。
ちなみに12分超え。どういう展開するつもりだ。
音作りはわりとシンプルな印象。素直にそれぞれのパート重ねました、的に。
元のリフに戻ったところでGソロ。わりと普通に速弾き(下手だけど)ソロ。そしてベースのソロフレーズが入る。
歌がまた吐き出したところで、アコースティックな展開!! 女の人の喘ぎ声が後ろに聞こえるよママンorz
メロディ展開はドラマティック系プログレ風にしてみました、みたいな。
ダーク展開へ戻る。メロディよりも、コード挿入メインのジャカーンジャカーン、みんなで一緒に。録音のせいか、こいつのPCのせいか、バスドラの音があんまり聞こえない。
また元メロに戻る。そしてメインフレーズの、"I know you're fucking someone else♪"が入る。卑語の繰り返し。歌詞の内容は正直吐きそうなタイプだけど、歌い方が妙に明るいというか、ヤケっぽい感じなので、酔っ払いの表現と思えなくもない。
かと思ったら、一転ハモンドオルガンの音が入って、Peteがまともに歌い出した。
また怒りのこもった声に変わる。オルガンの音は相変わらず。
スネアの音の軽さは気になるけど、それぞれのパートの絡まり具合はいい感じかな。
そして元メロに戻る。また酔っ払いの吐き出し声。I know you're fucking someone elseの繰り返し。このメロディ部分で、この男に同情するのは絶対無理。むしろこの男のなっさけない惨めさがとってもよく表現されててすごい(誉めてる)。
歌メロ終わったところでGソロ。Drがドコドコドコドコ。Gソロはちょっとおぼつかない感じ。若いなあ。
そしてジャカジャン!ときちんと終わったところでなぜか拍手。終了。

2曲目、Der Untermensch。
これはタイトルはドイツ語かな。そう思うせいなのか、イントロがちょっとRammsteinっぽい?
1曲目同様、1曲がいくつかのパートに分かれてる、という作りらしい。
異様にドラマティックなフレーズが続く。
そして一転、またパンキッシュなハードコア。よくある、みんなで叫ぶコーラス。すごい懐かしい感じのハードコアだなあ。初期スラッシュってか、ドイツ辺りのB級バンドを思い出す。
そしてまたベースがうねるドラマティックなメロディーに戻る。
ドス声の後ろで淡々となるキーボード。この奇妙さ加減が妙に耳に残る感じ。コードをじゃーんと弾き鳴らして妙に間の開くところは、Black Sabbathっぽいかな。
Peteの声が若い。歌うというよりは言いたいことをメロディーに乗せて叫んでる感じ。
キーボードの音が前に出て来る。やけに透明感があってきれい。女性的っていうのとは違うけど、こう、鉄屑にきれいな布が掛かってるような、そういう印象。
Dr.は鳴りっ放し。わりと嫌いじゃないなこういう音。1曲目よりスネアが太いかな。
PeteのBの音が妙にうねうねで、どっちかって言うとプログレっぽい感じ。あんまりハードコアな音じゃない。
どうもこの頃すでに、BなのにGみたいな弾き方をしてるみたいで、そういうフレーズにまた戻る。個人的に、PeteのBの音はけっこう印象的だと思う。
非常に、典型的ハードコアの、醜悪系の音なんだけど、後ろに流れるキーボードの繊細な美しさ(でもでしゃばらない)が浮かずに、醜悪さをいい意味で深めてる感じ。この醜悪さが、好きな人間にはたまらない。
この曲も9分orz

3曲目、Xero Tolerance。
何かを切る、電動ノコギリらしい音がイントロ。キーボードの音にかぶさる、Peteが何か言う声。笑う声。
妙に不安をかき立てるリフが少し、その後で相変わらずの歌い叫び開始。Gの音がけっこう入るけど、速弾きするにはちょっと指がもたついてる感じ。
変態リズムが一瞬入る。Into someone I don't knowと繰り返すここの部分がすげえ好きだ。リズムが歯切れがいいと言うにはちょっと足りない感じがむしろ生々しくていい。
そして、ホラー映画ですか?みたいな感じのキーボードが後ろで鳴って、I Kill You Tonightと歌ったところでオルガンの音だけになる。うーん、マジでホラー映画みたい。
不気味さや薄気味悪さは薄い。ただひたすら誰かの怒りが怖い、という感じ。
オルガンが散々出張った後で、突然のパンク展開。ふざけてるとしか思えないメロディーと歌。そして異様にキャッチーなキーボードのフレーズ。そこへ続くKill youの繰り返し。
この展開、ものすごい好きだ。バカバカしさと美しさの対比がまさにバカバカしくてたまらん。
そしてDr,が実はちょっとトリッキーな感じで超好み!
そこからまたホラー映画的メロディーに戻って、わりと普通に重めのメタルという感じの音になる。Peteの声は相変わらず歌い叫び。
突然アコースティックのG。どうも土を掘ってるらしいスコップっぽい音。ああ、なるほど、そういうことか。多分。
FOで終わり。

4曲目、Prelude To Agony。
お葬式?と思うようなイントロ。重くて暗いメロディー。これBの音だよなあ。後ろで何かひきずるかのような声。
比較的普通に重くて暗いメタルなリフ。Voi Vod辺りをちょっと思い出す。
イメージとしては、重いもの(棺とか)を引きずってる、そしてそれがどこかにぶつかって壊れる音がしてる、という絵面。ギーギー言ってるGの音が、割れるガラスの音みたい。
ちょっと明るくなって、音の作り方がまさにBlack Sabbathとかあの辺りを思わせる。
ザカザカザカザカ刻むタイプのメロディー、歌い叫ぶのと、きちんと低くささやくように歌う声が交互に来る。
酔っ払いでブチ切れ中と、ちょっと素面になってでもキレたままイッちゃってる人格の表現なのか?
また地を這う音へ戻り。
ここで初めて、宗教的な匂いが始まる。お葬式で歌ってるみたいな、低い声。鎮魂歌ですって言われたら信じる。これを聞くとやっぱりTONだなあと思う。
ジャカジャカ展開へ。Gのリフが普通にMetalしててちょっと気持ちいい。
ここからいきなりうね〜んBだけの音に落とすorz 急展開orz
DOOMも展開凄くてライブで大変だったけど、TONも憶えてないと一緒に乗れないorz
歌い方は基本酔っ払いの歌い叫びなので、歌詞の内容の困ったちゃんが冗談にぎりぎりなるかもしれない感じ。
しかしうね〜んと入るBの音の不気味さがたまらん。ドラマティックというか、まさしく「曲で物語を語ってます」という感じに。
どよ〜んとしたリフの中でGソロ。メロディーがちゃんと合奏してるのかどうか不明な感じが不安定でいい感じに脳が揺れる。
機械の音と女の人の叫び声。まあ、そういうことなんだろうなこれ。
聞いてると眠くなりそうなおも〜いどよ〜んメロディーが続く。箸休めみたいに、Dr.の音メインになって、Peteさまが叫ぶ。そして唐突に終わる。

5曲目、Glass Walls Of Limbo (Dance Mix)。インスト?
鎖を引きずるような音? 何かを一斉に叩く(ちょっと鋭い)音? 地を這うような何かを訴えてるような声。
歌詞はないメロディーだけを、Peteの低い声がきれいに歌う。これも鎮魂歌とか葬送歌とか、そういう感じ。
これがDance Mixって何の冗談だよorz
しかし7分近くあるので、また何か笑える展開をしてくれるのか。
中世、一種の収容所に閉じ込められて、そこで強制労働をしてる人たち、彼らを思って外の家族たちが泣いてる、それを、武器を持って見張る人たち、というような絵面が浮かぶ。
まさしく映画のサントラみたい。Peteの歌のメロディーは、ちょっと映画のゴッドファーザーを思い出す。
始まったままゆっくりFOで終了。

6曲目、The Misinterpretation Of Silence And It's Disastrous Consequences。
ざーっという、耳障りな雑音。プレイヤーのせいではなくて、これはこういう音をわざと入れたものらしい。
彼ららしい冗談。
1分続くんだぜorz

7曲目、Gravitational Constant: G = 6.67x10-8 cm-3gm-1sec-2。
まず叫びから始まる。別バージョンがこの後にも色々と出る、TONの代表曲のひとつ。
非常に粗い印象。歌い叫びがいっそう酔っ払いっぽい。でもGのソロっぽいフレーズがちょっと可愛らしい。
他のバージョンよりもシンプル。が、半ばで突然きれいな声のコーラスが入って、ちょっとびっくり。
んべべべべべんんべべべべべん、というPeteのBが妙に気持ちいい。
何だろうな、展開の時のメロディーの流れとか音が突然クリアにきれいになるやり方が、ほんとに宗教音楽っぽい。これが気持ちよくてたまらないというわけで。
ライブに比べると、メロディーの運びが美しい。叫ばずに歌ってるので、うっかりどこの女性歌手の歌ですかと一瞬勘違いする。
歌詞をそれなりに叫んでるけど、一応聞き取れるようにきちんと歌ってるので、ちゃんとCrushing Meと聞こえる。
苦悶の声、みたいなのが入る。ちょっと不気味。
また展開。歌い叫んだ後で、地響きコーラスが入る。妙に美しくて困る。
Suicide is self expressionと歌った後で、また地響きコーラス。後ろのDr.のバスドラの入れ方が好き。
キーボードはどんな時も絶対にでしゃばらない。でも後ろで妙に印象的。
コーラスのメロディーは単純だけど、Dr.の手数の多いのがけっこういい音で、こちらの方がむしろいい感じにメロディアス。
そしてゆっくりゆっくりFO。

アルバムのオリジナルはここで終わり。リマスター盤にはボーナストラックでもう1曲。

8曲目、Hey Pete (Pete's Ego Trip Version)。
一応Jimi Hendrixのカバー。GのKennyがVoを半分くらい担当。
さすがジミヘンということなのか、アレンジに気合が入ってると言うか、ちゃんと頑張ってると言うか。
Kennyがメインで歌ってる感じ。歌詞はPeteがちょっと書き換えてて、オリジナルは銃、この曲は斧になってる。そしてオリジナルはただ逃げるけど、こっちでは「天国であの子に会うんだ」で終わる。まさしくTONバージョン。
Gの音がちゃんとMetalしててちょっと笑う。そしてKennyはVoをとてもすごく頑張ってる。その分、Peteの淡々とした普通の声で歌うのが不気味。
ある意味、浮気した恋人を殺した男に声を掛ける友人(Kenny)と、その男(Pete)の対比が、あらゆるところに現れてて、これはようするにそういう演出なんだろうな。
Dr.のアレンジが好き。手数が多くて凝ってるけど、モタつきも突っ走りもないのでメロディーのひとつとしてちゃんと曲にハマってて好みだ。
ちょっと待てよ、「彼女に天国で会うんだ」って歌ってるのKennyに聞こえるんだけどorz あれ? それともこれはそう聞こえるだけでPeteなのかな。ライブ音源あったら今度確かめてみようっと(叫んで歌うPeteらしい。Kennyと声の聞き分けが今ひとつ)。
女性を殺した後で、どうするんだよ?と訊かれてる辺り、後ろのDr.がマーチっぽくスネアを延々叩いてるのは天国(むしろ地獄)への行進ってことか。
オリジナルよりさらに不気味な感じと、Kennyの一生懸命声とPeteの淡々単調声がクセになる感じ。妙に気持ち悪くて気持ちいい。

総評。
まず、若い!青い!粗い! 普通にハードコア。元気に暴れてる感じ。
曲がすでに長い。展開はやや強引に感じることもしばしば。努力は認めたい。背伸びして無理をしてるという印象は薄い。出したい音と本人たちの実力はそれなりにつり合ってるけど、それを完璧に表現するにはちょっとお金が足りない、という感じかな。とにかくひたすら若い、青い、荒々しい、激情の塊まりみたいなアルバム。怖いものなんか何もない、ただひたすら真っ直ぐな情熱。
そういう風に曲を組み立ててるせいだけど、きちんと絵面の浮かぶアレンジはすごいと思う。ここですでにこのドラマティックさ加減は凄すぎる。ってか、なんでハードコアでこんなドラマティックなのww
曲全部が全部まるごと好き!というのはともかくも、どの曲も必ず印象的なフレーズかアレンジがあって、そこへ来るたびに耳がすっと吸い寄せられる。この辺りはJoshの手腕かな。
曲が長くなるとどうしてもダレるし、飽きるし、印象が薄くなる。そこをとにかく何とかしようとしてる努力が見える。緩急激しいのはすでにこの頃から。とりあえずハードコア色が好みの方向でちょっと安堵。
歌うベースというのは珍しくはないけど、Peteは元々自己主張の激しいタイプのBらしくて、全編うねうねうねうね弾きまくってる感じ。この頃から、Bの音はすでにみょーに色っぽい。
Keyはちゃんと存在は主張しつつ、でもそれほど重要な位置を占めているという印象は、まだない。
Dr.はBの音に負けずにけっこう印象が強くて、ハードコアはどこまでもハードコアらしく、Sabbathの時はまたそれらしく、ジミヘンもそつなくこなすぜ、という非常に手堅い、でもきちんと自己表現のできてるDr.という感じ。
独特な個性は薄い気がするけど(主にPeteのせい)、バンドを支えるんだぜ!という部分は非常に頼もしい。
浮気した恋人についての、殺意と憎悪に満ちた内容というコンセプトアルバム(言い切った)。
妙に下品な歌い方、そのくせ荘厳なハモンドオルガンの音、時々入る素面なPeteの声のせいで、嫌悪感が湧くはずのところで笑いがこみ上げる。そしてうっかりうっとりする。
錆びた鉄屑に、ものすごく柔らかそうなきれいな布がたまたま姿良く絡まってます、という感じ。
いかにもファーストらしいアルバム。録音状態はチープだけど、いろいろ精一杯頑張ってる感が微笑ましい。
内容はシリアスだけど、それを本人(たち)は笑い飛ばすためにアルバムにしました、という感じなのかな。どこまでが冗談かは永遠に不明。個人的には、この女性がちょっと気の毒。



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