フリーク・フェチ
2002/05/24(Fri)
好きな漫画家は腐るほどいますが、死ぬ時まで好きな作家というと、やっぱり大御所、手塚治虫、それに多分石森章太郎。
歴史は巡るというか、けっこうネット上で彼らの作品について語ってる人達や、パロで遊んでる人達がいて、そういうちょっと斜めな部分からも、彼らの作品を楽しんでる今日この頃。
そういう中で、ちょっと考えてみたりしたんだけれど・・・どちらの作家も、やたらと不完全な人間にこだわりがないかなって?
手塚治虫の代表作、ブラックジャック(以下BJ)は、体中傷だらけで、しかも顔半分の皮膚の色が他と違うっていう強烈なキャラクターだし、さらに彼は、過去に受けた心の傷のせいで、かなりな天の邪鬼、というのもある。いわゆる彼は身体障害者と呼ばれる立場にあったりする(した、かな、少なくとも)。
彼の助手兼同居人で養女のピノコは、体中がばらばらで生まれて、それをBJにくっつけてもらって、とりあえず普通の体にしてもらったってな過去がある。
他には、どどろの百鬼丸。生みの親のエゴで、体の色んな部分を妖怪に奪われて生まれてきたっていう、とんでもねーキャラだし。
彼の相棒のどどろは、背中に、財宝を埋めた場所を記した刺青を背負い、おまけに男の子のふりをしてるっていうオマケ付き。
マイナー系では、きりひと讃歌の主人公切人(こういう字を書いた、と思う)は、発病すると外見が犬のようになるっていう奇病に感染し、日本社会から完全に隔離される。
この切人と一緒に行動する羽目になるのが、色情狂で殺人マニアの、サーカスの女、とか。
こいつのお気に入り、MWの主人公(名前、失念)は、売れっ子歌舞伎役者の弟で、女を利用しては捨てたり殺したり、その一方で、本命は幼なじみの牧師、という、倒錯度では、手塚治虫のキャラの中では群を抜くと思う。
彼は一体どこから、こういうキャラを生み出すアイデアを得てたんだろう? 実に疑問だ(爆笑)。
ぶっ飛んだ同人作家でも、ここまでツボにはまったキャラっつーのはないんじゃなかろうか。しかも、彼の恐ろしいところは、ここまでブっ飛んだキャラに、異様な現実性があるってことである。
この辺りが、やっぱり天才たる所以か。フリークのオンパレードにくらくら。
一方、石森章太郎は、何しろ代表作が改造人間キカイダー。仮面ライダー。(超能力者の集団が主人公の)幻魔大戦。それに最近アニメが人気らしいサイボーグ009。
彼はどうも、悪者(世界征服を企んでる)に捕まって、半分機械の体に改造されてしまう主人公、というのに、ほとんどフェティッシュとも言えるこだわりがあるような気が、する、のはこいつだけ?
まあ、どれもこれも、機械化されてしまった自分に対して、まともな人間じゃないんだ的なコンプレックスがあって、そのために、自分を改造した連中を憎み、結果として、征服されようとしてる世界を守る羽目になるっていう、まあ、まっとうなヒーローとしても、何だかこう、屈折した面があったりする。正義感から世界を守るのではなくて、自分自身の、一種の単純な復讐が、たまたま世界を守ってるように見えてるだけっていう。
石森キャラは、そういう意味で、いつも何だかこう、斜に構えて世界に向かってるように見える。ニヒリストって言うか。でなきゃ、まっとうな正義に対して、何かこう、照れがある、みたいな。
自分がまともな人間ではないって言う、単なる思い込みではない事実が、どちらの作家のキャラを、ひどく魅力的にしているのは、これまた否定できない事実で、あの現実味のなさが、彼らの作品を一層作品として面白いものしてるというのも、これまた事実。
キャラとしてはお子様向けなんだろうけど、作品が含む、作家からのメッセージってのは、決して子ども向けではないと思う。
どちらの作家も、自然破壊を破壊する人間に対して(そういう人間の傲慢さに対して)、秘かに警告を発してる部分があったし、特に手塚治虫(石森章太郎の経歴はあんまり詳しくないので)は、戦争を青年として経験した分、道徳や正義っていうのが絶対的なものではなく、その時その時で都合よく変えられてしまう、っていうのは身にもしみてたろうし。
人生の虚無、みたいなものを、マンガ家が、現実味のない、非常に異質な存在(キャラ)を通して、マンガとして表現してるってのは、こいつはすごく面白いと思う。
彼ら自身、天才と称されることで、世間的には充分異質な存在だったろうし、まあ、彼らの頭の中は、いわゆるフリークと称されるに充分な、気狂いじみたアイデアで、満たされてたろうと思う。
名前を言えば、誰でも知ってるような大御所作家ふたり(故人であるけれど、もう)が、何故か、違うレベルであるけれど、フリークと称されるだろうキャラばかりで作品を描いたって辺りが、何だかこう、思わずほくそ笑みたくなったりするんだけれど、こいつは。
早く日本に帰ってマンガが読みたい。ドラエもんだっていい(爆笑)。近頃、やたらとDr.スランプアラレちゃんが読みたいんだが、どうしてだろう。
まあ、一番読みたいのは、サイボーグ009なんだけどさ(爆死)。
次回は、ガクラン八年組について語ってみよう。誰も知らねえよ、そんなマイナーな作品。いいけどさ、別に。
結論もなく、突然終わり(殺っ)。