静かな狂気
愚かな殺意
無言の体は腐ってゆく
穏やかな孤独は心を侵し
隠された憎悪は核を求める


誰も殺さない


他人のための殺意でなく
自分のための狂気でなく
凄まじく途方に暮れて
自分の腐臭を嗅ぐ


誰も殺せない


夜明け前の片隅で
迷子のように泣きながら
望んだことのない明日を待っている
散らばりたい夜
冷えてゆく体を粉々にして
散らばりたい夜


羊水の記憶に還る
そして自分の半身を想う
失われたかけら
この夜のどこかに転がっている
路地の奥、闇の彼方
置き忘れてきた自分のかけら


夜の深みで喘ぎながら
神を罵る歌を唄う
夜に散らばるより早く
走るより早く死ぬ前に
いつの日か逢えるだろう
見知らぬ顔のもうひとりの自分
散らばりたい夜の底で
夢見るように待っている



散 ら ば り た い 夜


ぬるい夜
深海魚が蠢いて
意識が白く狂い出す
女でもなく少年でもなく
錆びつきそうな中途半端


ぬるい夜
ひとりの遊びを知らず
熱い体を持て余す
冷えた髪はとうになり
生まれたがる胎児を抱いて
彼方の記憶に心を馳せる


ぬるい夜
殺したいのは自分
子宮に巣食う深海魚
冷たい闇にひとりきり


膚を切り裂くひとりの遊び
My Masturbation


舌に転がる紅の味
無邪気な悪戯
ひとりの遊び
可逆と自虐の真ん中辺り


破壊の楽しみ
苦痛の悦び
時計仕掛けの愛ならいらない


My Masturbation
狂いの微行を繰り返す



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