きみのことを憶えている
きみの背中の笑い顔 揺れてゆく肩の先 ふわり微笑むきみの唇 ドアの向こう 木々の間 椅子の影 きみがいる 僕が探すきみがいる きみのいた夏 きみのいない夏 うたかたの緑の季節 立ちすくむ僕は ここでひとり呼吸を忘れる |
逢えない時間が降り積もる 吹雪の国と夏の国 地図をなぞる指先が 少し震えた2度目の冬 きみと僕の間 横たわる海よりも深く 眠りの底で夢を見る 手を伸ばせば届くきみが 今は幻でしかなく 空の掌をぼくはただ見つめる あの頃にはきみがいた 雪を知らないきみがいた 長い冬の真ん中で 夏よりも恋しくきみを想う |
窓の向こうと微睡む授業
音なく降る雨きみの幻 ゆらりそびえるきみの背中 くるり振り向くきみの笑顔 ドアをひとつ開けるたび 視界が探すきみの姿 振り向く横顔 きみじゃない誰か 涙の音が聴こえる ここにひとりきみは幻 心を失う白い瞬間 雨に濡れる緑 微睡みの時間 きみのいないひとりの時間 |
心のかけらをひとつ殺した 忘れてゆくために眠るために 体温は置き去りにしよう 記憶の彼方に置き去りにしよう 穏やかな始まりと静かな終局は 精一杯の優しさだった きみの本になりたかった きみの前髪になりたかった 雪のないクリスマスを きみと過ごしたかった ゆるゆると季節が終わる きみは彼方ぼくは迷子 今はもう 海よりも深くきみが遠い |
逢えない君へ
また魅かれてゆく海の波打ち
彼方に見える君の笑顔
また同じかもしれない過ちの数
魔女の棲む海
見つめる遥か
"ホテル・カリフォルニア"
繋がってゆく知らない時間
背中にある過去のかけら
繋ぎ合わされてゆく
あの音とともに
増す苦しみと逢えない時間
飲み下してゆく涙の雫
ただ笑って傍にいたい
君に飼われる猫のように
君の傍で鳴いていたい
逢いたい
君の笑顔を見つめていたい
忍び込む冷気
窓の傍
君の音を聴きながら
逢えない君の笑顔を想う
冬の真ん中
舞う雪の中
戸惑う猫は途方に暮れる
さらわれてゆく波の打ち際
あてもなく瞳を閉じて
夢の裏の幻覚の中に
ひととき我を忘れてゆく
君に逢いたい夜
そしてひとり、逢えない夜
貴方が歩く。足を運ぶ。視界が変わる。世界が揺れる。空気が香る。 わたしはひとり佇みながら、舌を切られた小鳥を想う。 |