The Game
新しく買ったというわけでもないゲームに、花京院は2、3日夢中になっていて、日曜の午後、承太郎のマンションに持ち込んだゲーム機は、土曜の午前中から電源が入りっ放しだった。
寝不足の頬の辺りの皮膚が、乾いてそそけ立っていて、おいいい加減にしろと、そろそろたしなめようと思い始めていた頃だった。
とりあえずコーヒーをいれて、花京院を誘うために何かないかと冷蔵庫を探ったけれど、残念ながらさくらんぼは品切れだった。
やれやれだぜと、キッチンから隔てのないリビングに目をやって、そこで一心不乱にテレビの画面に目を据えている花京院の横顔が、一瞬でもこちらに向くことはないかと、虚しく願ってみた。
いつもよりずっと香り高くいれたコーヒーを、自分の分だけ注いで、承太郎は、足音を消して花京院のそばへ行った。花京院は気配に振り向きもせず、相変わらずゲームの画面に夢中だ。やっぱりなと、思いながら、わざと花京院の背中に、張りつくように床に坐る。
正しくテレビから1m、花京院はそこにあぐらをかいて、背中をちょっと丸めて、両手にはコントローラーを持って、親指はもうずっと様々なボタンを操って、一瞬も止まることはない。
世界が今終わっても気づかないだろう熱中ぶりだ。
コーヒーを片手に、承太郎は、声を掛けないまま、花京院の首筋にちょっと唇を当てた。案の定、やめろという仕草で、花京院が肩を振る。すぐに唇を離して、けれどまた戻す。花京院が肩を揺する。承太郎が首筋だけではなく、肩や背中近くにまで、唇の位置を変えてゆく。肘まで後ろに突き出してきて、承太郎と徹底抗戦の様子を示しながら、そしてテレビのゲームは変わらず続行中だ。その集中力に感嘆しながら、承太郎は、ついに花京院の首を、ちょっと強く噛んだ。
これは効いた。
「承太郎ッ!」
さすがに声を少し荒げて、ゲームを一時停止させることは忘れずに、ようやく花京院が振り返る。自分の背中にぴたりとくっついて、ちょっかいをかける承太郎をにらんで、低く、やめろと言った。
承太郎は肩をすくめて、わざと香りのいいコーヒーを音を立ててすすって、花京院の不興を買おうとしたけれど、そんな挑発に乗るよりも、やはりゲームの進行の方が大事らしい。またくるりとテレビの方へ顔を戻し、むやみに色鮮やかな仮想世界へ戻ってゆく。
承太郎は、まだ少し熱いコーヒーを一気に終わらせて、空になったマグを、たんと音を立ててすぐ傍のテーブルに置くと、今度は実力行使に出ることにした。
無言で花京院を引き寄せ、強引にその手からコントローラーを取り上げる。途端にじたばたと暴れ始めた花京院を、けれど片腕だけで難なく押さえ込むと、そのコントローラーのケーブルで、手首をぐるぐるとひとまとめにした。
「承太郎ッ、承太郎ッ!」
押し倒して、自分の下に敷き込んで、さてどうしようかと思っていると、花京院はやはり承太郎のしていることはどうでもいいらしく、必死にゲーム機の方へ首を振っている。
「一時停止! 一時停止ッ!!」
承太郎は、ちょっとだけこめかみに血管が浮きそうになるのを我慢して、素直に一時停止のボタンを押した。
ゲームが一旦止まってしまうと、花京院はようやく体の力を抜いて、目の下が少し薄青くなった顔で、承太郎を下からにらみ上げてくる。
頭上に押さえつけられている、コントローラーのケーブルの巻きついた手首を動かして、ゆるんだ輪---元々、きつく縛めてもいない---から手を抜こうとする。
「あんまり動くと、機械がブッ壊れるぜ。」
「だったら外せよ。」
花京院が動くと、まだ能天気にテレビに向かって置いてあるゲーム機が、一緒にもぞもぞと動く。
「・・・外さねえ。」
近づいてくる承太郎の唇をよけながら、花京院は無言で、ハイエロファントグリーンを承太郎の背後に呼び出した。
気配に振り向いた承太郎が、手首を押さえる腕の力をゆるめた瞬間に、床を這って来たハイエロファントの触脚が、ケーブルを解いて主をそこから解放する。意趣返しにと、承太郎のあごの下に入れようとした拳は、けれど難なくよけられてしまった。
花京院は、それ以上は承太郎に構おうとはせず、さっそくゲームに戻る。床に転がったコントローラーを取り上げて、一時停止を解除して、もう絶対に承太郎なんか知らないと、ちょっと頬をふくらませて、また背中を肩を丸めた。
好きではない人間の耳には、硬く突き刺さるだけのデジタルな音楽がまた流れ始め、そちらへ戻ろうとする花京院の腰を、また懲りずに承太郎が引き寄せようとする。
花京院はもう、それを振り払うこともせず、こんな時にはいっそう凄まじい集中力を発揮して、承太郎がシャツの襟元から手を差し入れて来ようと、身じろぎもしない。
けれど、前屈みになった上体のせいで、少し浮いたジーンズの腰に承太郎が指先を滑り込ませた時には、思わずコントローラーから手を離して、曲げた肘を承太郎のみぞおちに叩き込む動作をしながら、けれどやはりゲームを一時停止させることは忘れない。
「エメラルド・スプラッシュを食らいたいのか君はッ!」
まだ自分を抱いている承太郎に振り向いて、花京院の髪が少し逆立つ。それが翠にうっすらと輝いているのは、主と完全に重なって、ハイエロファントがもう攻撃態勢に入っているからだ。
狭い部屋の中でスタンドを使うのはさすがに気が引けるのか、花京院は、あきらめる気などない承太郎の胸を押すと、ちょっと自分から離れさせて、そして、コントローラーを持ったまま承太郎の背中の方へ回る。何をするのかと、承太郎はけれど花京院がようやくゲームより自分に向いてくれたことに満足して、抗いもしない。
承太郎の大きな手を取ると、花京院はそれを背中に両方まとめて、さっき自分がそうされたように、手にしているコントローラーの、毒々しい色のケーブルで、承太郎の骨太い手首を、傷まない---ケーブルが---程度にきつくまとめた。
「・・・コントローラーが使えねえぜ、これじゃあ。」
背中を振り返りながら承太郎が言った。花京院はにこりともせずに、ずっと膝で床を滑って、またゲーム機の方へ行く。承太郎に引きずられて、電源コードが壁から伸びている。
「もうひとつあるんだ。外したら、今度こそ本気で殴るからな。」
言い捨てて、ごそごそと、テレビスタンドの下から別のコントローラーを出すと、花京院は無表情でそれをゲーム機に繋いで、また何事もなかったように承太郎に背を向け、ゲームの世界へ舞い戻る。
このくらい、外そうと思えば何でもないけれど、手が使えないというのもまた面白い状況だと思って、承太郎はこれを愉しむことにした。
ゲームに夢中になっている時に邪魔されるのを、花京院が死ぬほど嫌うのは承知の上で、けれどゲームは一時停止できるのが、何と言っても現実とは違う。承太郎はずりずりと床を滑って、後ろにコントローラーを従えて、また花京院の背中に寄った。
ゲーム機に繋がれた状態で、ケーブルがそこから外れてしまわないように気をつけながら、また花京院の背中に頬をすり寄せる。薄いシャツの下で、背骨がいつもより硬いように思うのは、きっと承太郎の気のせいだろう。
腕が使えないから、抱き寄せることができない代わりに、承太郎は長い脚を伸ばして、その中に花京院を囲い込んだ。
ゲームに集中できる限りは、承太郎のいたずらを黙認することにしたのか、花京院は、逆に素直に、承太郎の胸の中に軽く倒れ込んできた。
承太郎を大きな座椅子扱いにして、足を崩して寄りかかる。視線はテレビに釘付けのままだ。コントローラーを叩く親指の動きには、まったく乱れがない。
これで少しはおとなしくするだろうと思った花京院を、もちろん気持ち良く裏切って、承太郎は投げ出された花京院の足を、自分の爪先でくすぐりながら、ピアスの金具を舌先でいじり始めた。
花京院の背中が、一瞬で硬張ったのが、承太郎の胸に伝わってくる。首筋はまだいい。けれど耳に触れられると、花京院は途端に無抵抗になる。初めて、細く息を吐く音が聞こえた。そして、テレビから、小さな爆発音が聞こえた。
肩の辺りもちょっと硬くなったのにかまわず、承太郎はいっそう執拗に、花京院の耳を舐め始める。
呼吸が少し早くなったのにそそのかされて、耳朶を噛むと、首筋がすぐに赤く染まった。また、ゲーム画面で爆発が起こった。
体は緊張しているくせに、承太郎の唇が触れているところは、やわらかく伸びている。耳の軟骨を、食むように噛んだ後で、ついに舌先を中へ差し入れると、びくんと花京院の体が跳ねた。
慌てたように承太郎の脚の中から這い出ると、花京院はコントローラーと一緒に、もっと後ろにあるソファに足早に移動して行った。どすんと体を投げ出して、承太郎から完全に視線をそらして、ゲームを再開するけれど頬が赤い。
花京院に引っ張られたゲーム機が、ちょっとすねたように斜めになっている。
承太郎は、相変わらず後ろ手のまま、ソファに坐った花京院の足元へすり寄って行った。
片足は床に、もう片方はソファの上に立て膝で、爪先が、ちょっとうつむけば目の前にある。そわそわと、落ち着きなく動いているその素足の親指を、承太郎は体をかがめて噛んだ。
花京院のコントローラーの伸びたケーブルが、うつむいた承太郎の首筋に当たる。ケーブルはやけに冷たくて、けれどそれは、承太郎の体温が上がっているからなのだろう。
親指を完全に口に含んで、硬くて平たい爪にぎりぎりと歯を立てて、それから、もっと小さくてやわらかな、薬指や小指に移動する。手の指ほど自由には動かない足指は、承太郎の歯の間で悪あがきをしても、歯裏をくすぐる程度にしかならず、承太郎は、そのまま熱心に、指の間にも舌先を差し込んだ。
土踏まずの辺りに舌を這わせると、さすがにくすぐったがって、花京院は伸ばした足を承太郎の肩に乗せた。それが媚態になっていると、一体無自覚なのか、承太郎は引き寄せられたように、花京院の腿の内側へ、一気に頬を滑らせた。
縫い目に沿って、歯を立てる。洗いさらされてはいても、まだ充分に固いジーンズの布地は、きちんとその下の筋肉と一緒に、承太郎の歯列を弾き返してくる。
花京院は、まだゲームをやり続けていた。
花京院の、軽く開いた膝の間に完全に体を埋めて、承太郎は顔だけ動かして、ジーンズのファスナーへ向かうと、かちりと金具を歯で探った。ボタンを外すのはさすがに無理に思えたから、細長い金具を歯先にとらえて、そこでわざと、いいなと承諾を得るように---形だけだ、もちろん---、花京院を上目に見る。
下目に、自分のことを見つめている花京院を目が合ったけれど、花京院は慌ててまた前方に視線を移して、承太郎は、金具を噛んだまま、唇の端だけでにやりと笑った。
音を立てないように、そろそろとファスナーを下げる。全部引き下ろすと、そこに鼻先からもぐり込んで行った。唇が触れるまでもなく、もう反応を返してくる。
やわらかなコットン越しに、唇と舌を使った。時折、優しく歯も使う。探る必要もなく、そちらから承太郎に近づいてくる。硬さと大きさを増すのに、大した時間はかからない。承太郎の肩に乗ったままの花京院のかかとが、一体どういう意味なのか、時折背中を蹴ってくる。
前の合わせから、じかに触れることもできたけれど、承太郎はそうはせずに、ずっと布越しに舌を滑らせていた。唾液で布が湿る。それは、承太郎のせいばかりではなく、鼻から抜ける花京院の声が、少しずつ大きくなり始めていた。
爆発音が2度続けて聞こえた後で、ついに花京院はコントローラーを放り出し、承太郎の頭に、抱き寄せるように両手を添えた。
名前を呼ぶ声が、とても素直に潤んでいて、その先を欲しがっているのを隠しもせずに、ソファの背もたれに投げ出していた体を起こすと、承太郎の方へ押しつけてくる。
承太郎は、わざと肩を振って、それを少し避けた。
立て、と目顔で促しながら、少しだけ後ろに下がる。視界の端に伸びているコントローラーのケーブルが鮮やかで、そのけばけばしさが、欲情しきっている花京院に、とてもよく似合うと、意地悪く思う。
数秒ためらった後で、花京院はふらりとソファから立ち上がると、承太郎の顔の前で、少し慌てた仕草でジーンズの前を完全に開いた。そうして、承太郎が舐め続けて---それだけではないけれど---濡れてしまっている下着をずり下ろす。
目の前にようやく現れたそれに、けれど承太郎は自分からは近づかない。
縛められている腕のせいで、体の自由が利かないというふりをしたまま、承太郎は、花京院が自分からそれに手を添えるのをじっと待った。
まるで、花京院が承太郎に無理強いしているように、承太郎の頬に手を添えて、少し上向かせて、花京院は自分のそれを、承太郎の肉厚の唇にあてがった。
承太郎は、上目遣いに、ちょっと喉を反らした花京院から視線を外さずに、伸ばした舌の上にそれを導く。
服もろくに脱がずに、散らかったリビングで、後ろのテレビからは、耳障りな音がずっと鳴っている。日曜の午後ももうすぐ終わりだ。欲情する要素などどこにも見当たらない気がするのに、ふたりは確かに発情していて、そんな自分たちを卑猥だと思いながら、今はこの遊びに夢中になっている。
承太郎の後ろに、ケーブルが伸びていて、それは四角いゲーム機に繋がっている。ゲーム機に繋がれた承太郎はひどく滑稽で、けれどその承太郎の紅い唇が自分を食む様は、そこだけ切り取ったように淫猥だ。承太郎が動くと、わずかにケーブルが揺れ、それにつられてゲーム機が生きているように動くのに、花京院は目が離せない。
普段よりもずっと下手くそに、承太郎は唇を使った。元々上手いわけではないから、そう難しいことではない。承太郎の拙い動きに、花京院の方が焦れて、こちらの方が赤くなりそうな息をこぼすと、そそのかすように承太郎の頬を撫でてくる。承太郎は、それでも自分からは積極的には動かずに、受け身にただ、花京院を舌の上であやすだけだ。
ついに承太郎の頬に両手を添えると、やや上向いて開いた喉の奥に向かって、花京院は自分が動き始める。あたたかく触れる喉の粘膜の中に収まって、承太郎の唾液に濡れたそれで、承太郎の唇がめくれ上がるのが、ひどく生々しい眺めだった。
そこで果ててしまう気は最初からなく、承太郎の唇を汚すことをあまり好まない花京院は、床に崩れて承太郎に抱きつくと、承太郎の手首からケーブルを外そうと手を伸ばす。承太郎は肩を振ってそれを避け、必死に腕を伸ばしている花京院の頬の辺りで、
「外したら殴るって、さっき言わなかったかてめー。」
わざと細い声で言う。
自分の言ったことを滅多と曲げることのない花京院は、こんな時でさえ、それに従うことを良しとして、それが承太郎の思うつぼだとわかっていても、素直に伸ばしていた手を引いた。
「・・・覚えてろよ承太郎。」
「てめーが忘れなきゃな。」
凄んだ声で言うのに、揶揄で返して、ふたりはまた床に近く坐ると、続きを始めた。
足を持て余しながら、ジーンズを下着を引きずり下ろして足首から抜くと、花京院はそのまま承太郎の下腹に頬をすりつけるようにしながら、承太郎のジーンズの前を手早く開けて、馴れた仕草---コントローラーを扱う手つきそっくりだ---で、それを口の中で湿す。そこで窮屈そうだったのは、承太郎も同じだ。花京院がいつもほど時間をかける必要もなく、濡らすだけの動きで充分だった。
承太郎の腕が、自分に絡んで来ないのは、ひどく奇妙だった。投げやりに、その気のない---そんなことは、もちろんない---相手に、自分だけがみじめに夢中になっているように、うまくバランスを取れずに、ろくに動きもしない承太郎の膝の上に、自分から乗りかかってゆく。
さっき湿した承太郎を、慣れない角度に導いて、見上げられながら、きしむ躯を繋げて行った。
いつもとは違う角度に触れてくるのに、思わず逃げる花京院の腰を、抱き寄せる承太郎の腕はない。下唇を噛んで、花京院は、自分から承太郎にしがみついた。
自分の鎖骨の辺りに顔を埋め込んでいる承太郎が、ちょっと顔を歪めていて、この姿勢のままでは承太郎もつらいらしいと悟っても、どうしていいかはわからずに、承太郎が倒れたりしないように気をつけながら、花京院はおそるおそる動き始める。
動かなくても背骨が音を立てそうなのに、無理に動けば、痛いばかりの形だったけれど、躯の中では確実に熱が生まれていて、ふたりはその熱さに、ゆっくりと我を忘れ始めていた。
花京院が、つたなく動く。そのもどかしさに、今は承太郎が焦れている。それでも、手首のケーブルは決して外さずに、このゲームを最後までやり通すために、承太郎は、汗の浮いた花京院の首筋を舐める。
物足りなさが限界に近づいて、花京院は、思わず承太郎を見下ろした。もう、どうしていいかわからないと、濡れた目で承太郎にねだっていると、自分では気づかない。
花京院の唇が、言葉はなくても動いただけで、承太郎はそれを悟る。無理にそれを言わせる余裕も、もう承太郎にはない。
「しがみついてろ。」
短く言い捨てて、ちょっと目を見開いた花京院が、それでもおとなしく自分の首と腰に両手足を絡めたのと同時に、承太郎は軽く腰を浮かせて、前に体を倒した。
すぐ後ろにあるソファに、花京院の背中を支えて、そうして、承太郎は、自分の胸と花京院の胸をぴったりと合わせた。
やわらかいソファと、自分のぶ厚い胸の間に、花京院を挟んで動く。押し上げられる花京院が、そこから外れまいとして、いっそう強く承太郎に手足を絡みつかせる。承太郎を、大きく開いた両脚の間に引き寄せると、足首の辺りに、ケーブルに巻かれている承太郎の手首が当たる。
押し上げられて、揺すり上げられて、花京院はつつしみもなく声を上げた。
腕を使わない代わりに、体全部を押しつけてくる承太郎を、離したくなくて抱き寄せて、親密に触れ合う下肢の辺りが、熱く弾けそうになっている。
服に隔てられているのがひどく残念で、けれどそのせいで内側にこもる体温で、皮膚の下が溶けて交じり合う気がした。
確かに触れている躯の中は、とっくに隔てもなく、こすり上げる熱が、いつもよりも熱く脳を焼いている。
力任せに押し込んでいるように思える承太郎が、けれど花京院の声と反応を素早く読んで、きちんとその角度をとらえようと、決して自分勝手ではなく、それでもそろそろ、先走りたくて仕方ないふうに、花京院の、今はなめらかに滑る内側を探っている。
もうちょっとと、思いながら、花京院は承太郎をまた強く抱き寄せた。
耳のそばで、承太郎が深い息を吐く。その首筋に噛みついて、汗に湿った髪の中に、花京院はぐしゃぐしゃと指先を差し込んだ。
承太郎の肩越しに、GAME OVERと大きく映し出されたテレビの画面が見える。負けたのはどっちだろうと、思って、承太郎の鎖骨に額をすりつけた。
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