告白
野立信次郎×大澤絵里子


「なぁ絵里子、俺たちつき合ってみないか?」

いつものバーのカウンターでいつものように野立と飲んでいた時、何の前触れもなく野立が言った。
あまりにも自然に、さっきまでの話の続きのような感じで言うもんだから

「うん、そうね」

と深く考えずに相づちをうった。

その後に気づく

「え?ちょっと待って。今、つきあうって言った?」
「言ったよ。こんなにあっさりとOKがもらえるなんて思ってなかったけどな。言ってみるもんだなー」

と野立が嬉しそうに言う。

「いや、ちょ、、、さっきのは反射的に答えただけだって。何でそういう話になっちゃうのよ?」
「何でって・・・・ほら、いい年してお互いフリーだし、気心しれて楽だし、つき合ってみるのもいいかなーと思って」

そんな理由で?
普通、相手を好きになったからつきあうんじゃないの?と思いながらも、こいつならありえるなと妙に納得していた。
野立会で惨敗続きらしいから近場で手を打とうってことじゃないでしょうね?
そう勘ぐっていると野立が言葉を続ける。

「さっきOKしただろ。前言撤回なんて絵里子らしくないぞ」
「あのねぇ、私はあんたみたいに、なんとなーくの理由でつきあったりしないの」

えーーーーと野立が子供のようにふてくされた。
すると野立は絵里子が座っている椅子をくるりと野立の方へ向け、絵里子の眼をまっすぐ見つめて言った。

「絵里子、好きだ。俺とつきあってくれないか?」

その真剣な眼差しに思いがけずドキドキした。
見慣れてしまって忘れていたけれど、こいつって相当に格好よかったんだ。

野立とつき合うのってどんな感じだろう?
確かに一緒にいて楽しいし居心地がいい。
こいつの言うようにつき合ってみるのもいいかもしれないな。なぜかそんな風に思い

「うん、いいよ」

そう答えていた。
いつもならこんなやりとりなんて冗談で終わらせるのに。相当酔っぱらってるな、私。

絵里子の答えを聞いて野立は一気に破顔した。こんなに嬉しそうな顔を見たのは初めてかもしれない。
つられて絵里子も笑顔になり、不思議と心が満たされていくのを感じた。

帰りは送っていくと野立が言いだした。
そんなことしたら野立が遠回りになるからかまわないと何度か断ったが

「早く彼氏らしいことしてしてみたいんだよ」

そういって譲らなかった。

地下鉄を降りて改札を出ると野立が手を握ってくる。

「ちょっと、バカ、恥ずかしいじゃない」

思わず手を振り払う。

「いいじゃん、手ぇつなごうぜ、つき合ってるんだし」

また子供のようにふてくされる野立は何だかかわいい。
こんな顔するんだーと野立の新たな一面を発見して嬉しくなる自分に気づく。

「駅の周りは明るくて恥ずかしいから、次の信号渡ったてからならいいよ」

手をつなぐとかつながないとか、なんだか中学生カップルのようなやりとりだなと苦笑する。

信号を渡ると野立が手を握ってきて、恋人つなぎをして絵里子のマンションまで歩いた。なんだかこそばゆい気分だ。

「ねぇ野立、このことは職場では内緒ね?どうなるか分かんないし」
「そうだな、内緒にしといたほうがいいな。しかし、おまえ”どうなるかわからん”とか言うなよ、ひでぇな。男ができないのも納得だな」
「なんですって(怒)
.....だって、さっきまでつき合うとか思ってもみなかったし、悪友時代が長すぎてピンとこないんだよね」

まぁそれもそうだな、そうつぶやくと野立の唇が絵里子の唇を塞いだ。
こんな道のど真ん中で?!と一瞬抵抗しそうになったが、優しくとろけるようなキスに力が抜けた。
無意識に野立の首に腕を回すと野立の舌が唇の中に入り込んできて舌を絡めあう。
息があがる直前で唇が離れ抱きしめられた。

「これで少しは実感がわいたか?」

耳元で野立がささやく

「.......うん」

そう言うのが精一杯だった。
その返事に満足したのか野立は再び絵里子の手をつないで歩き出す。
この辺は街灯が少なくて良かった、顔が真っ赤になっているのを野立に気づかれないで済む。

「明日も朝一から聞き込みだろ?今日は大人しく帰ってやるけど、次におまえん家くるときは覚悟しとけよ」

ニヤっと笑うと野立は回れ右をして帰っていく。
その背中に「ばーか」と言って絵里子は笑った。

部屋に戻ってからも気分が落ち着かない。
今になって実感がわいて、さっきよりも浮き足立っている。
野立と私がつき合うなんて.....人生何がどうなるか分からないもんだわ。

ふいにさっきのキスが思い出されて赤面する。
あんな優しいキスをするのか、野立は。
そういえば野立の女性遍歴って聞いたことがないな。
今までどんな女性にあのキスをしてきたのだろうと、無粋な疑問が頭から振り払えず、自分にうんざりした。

ちょっとまて、私、嫉妬してる?
絵里子は自分の中で沸き上がる感情に戸惑った。

それから一週間はお互いに忙しく、プライベートで会うことはなかった。
今夜、いつものバーで落ち合うはずだったが、丹波部長から今朝の事件の捜査を急遽対策室にしてもらうことになったと連絡が入ったばかりだ。
今夜のデートはキャンセルしないとな。
はぁ〜〜〜と深いため息をつく。今夜は野立とゆっくり会えると思っていたのに。

最近絵里子は仕事上で平静を保つのに苦労している。
野立は相変わらず対策室に顔をだすのだが、無意識に野立を目で追ってしまうので、そうしないようにと気を張っていた。
なんて分かりやすい反応なんだと自分でも呆れてしまう。
みんながいる前では以前と変わらないよう野立に接しているつもりなのだが、うまくできているのだろうか。少し不安になる。

あいつへの気持ちを持て余している。
あのキスで今まで自分の気持ちに蓋をしていたことに気づかされた。
何せ20年来の悪友だし、仕事上では上司だ。
恋愛対象にしてはいけないと無意識に思っていたのだろう。
その蓋をあいつは取り去ってしまった。

丹波部長に野立と部屋に来るよう言われているので、まずは参事官室へ向かい、ドアをノックして「失礼します」と部屋に入る。
絵里子を見て野立が笑顔になり、それだけで絵里子は満たされる。

「丹波部長が二人で部屋に来いって。今朝の事件、ウチが捜査することになったから、その打ち合わせ。
だから今日のデートはキャンセルね」
「そうなのか、それなら今夜は仕方がないな」

野立のあっさりとした反応に拍子抜けする。
またふてくされた顔を見られると思ったんだけどな。つまんないの。
そう思いながら丹波部長の部屋へ向かった。

対策室に戻ると、携帯を見つめてため息ばかりつく片桐を山村さんが慰めていた。
その奥で木元がこっそり聞き耳を立てている・・・つもりらしい。
あんたそれバレバレだから。心の中で木元につっこんだ。

「元気だしなよ、片桐くん。素敵な女性は他にもたくさんいるんだから、昨日の野立会で会った子のことは諦めて次の出会いを探しにいこうよ」

絵里子の動きがピタっと止まる。昨日は野立が都合が悪いと言っていた日だ。
用事って野立会のことだったのか....
気が抜けてドサっと椅子に座りこんだ。
胸がギュっと締め付けられる。
もともと軽いヤツだとは知ってるけど。なんかすごく嫌だ、こういうの。

でも今はそんなことを考えている場合じゃない、事件解決が最優先だ。
絵里子は自分の中のもやもやに蓋をした。
気を引き締め直し、みんなを集合させる。

「今朝発生した例の事件、ウチが捜査することになった。概要を話すよ」

いつものように捜査会議を始める。

数日後、ようやく事件が落ち着いた頃に野立からメールが来た。

”週末は休みだろ?金曜の晩におまえの家に行くから。絵里子の手料理が食べたい”

金曜って明日じゃない。そんな気軽に来るって言われても部屋を片づけたり大変なんだから。
抗議をしようにも野立は2日前から出張中だ。
面倒くさいと思いつつも数日ぶりに野立に会えるのはやはり嬉しい。
何を作ろうかと考えを巡らせていると、先日山村さんが言っていた野立会のことを思い出し、不安な気持ちが膨らむ。
もやもやを抱えたままこの関係を続ける気はない。
はっきりさせなきゃ.....
自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

金曜日の夜、絵里子が夕食の支度をしていると出張帰りの野立が家にやってきた。

「ワインとチーズ買ってきたから後で飲もうぜ。お?パスタかー、うまそうだな」

冷蔵庫にワインをしまい終わった野立が後ろから絵里子を抱きしめた。

「絵里子っていい匂いするよな。この匂い、落ち着く」

絵里子の頬に野立が手を当て、横を向かされると唇を塞がれる。
お互いの唇を求め合っていると止まらなくなりそうだ。

「パスタ食べよっか」

ようやく唇が解放されたときに囁く。

「おう、腹ぺこだ。食おうぜ」

そう言いながら絵里子に笑顔を向ける野立をみて複雑な気持ちになる。

ねぇ野立、ちょっと話したいことがあるんだけど。

さっきから何度も言おうとしている言葉を飲み込んだ。
食事の後でいいよね。そう自分に言い訳をして食べ始める。
つき合い始めてから二人でゆっくり過ごすのは今日がはじめてだ。
最近解決した事件のこと、野立の出張のこと、とりとめのない話に花が咲く。
食事が終わりソファに移動してワインとチーズを楽しむ。
そろそろ言わなきゃと思って野立をみるとキスをされた。

キスが段々と深くなり少し息があがる。
野立の唇が首筋に押しつけられるとハッとして絵里子はあわてて野立から少し離れた。

どうした?という表情で野立が絵里子の目をのぞき込む。

「あ、あのさ、いろいろ考えたんだけどやっぱりつきあうの、やめない?」

野立は無言で見つめたままだ。

「いや、あんたといるのは楽しいし、つき合うのもいいかなーなんて思ってたけど、
つき合わなくてもずっと一緒にいたわけじゃない?
今更その関係を変えなくてもいいかなと思って.....」

野立は優しく言った

「それ、嘘だろ?ちゃんと理由言えよ」

やっぱりこれじゃ野立は誤魔化せないか・・・
絵里子は覚悟を決めた。
冷静に、冷静に、と自分に言い聞かせて口をひらく。

「だってさ、つき合い始めても、あんた何も変わってないじゃない。
職場で二人きりになった時はキスしようするけど、それもおちゃらけてるし、
デートがキャンセルになっても残念そうじゃないし、こないだも野立会したんでしょ?
軽く遊ばれるのはごめんなの。野立会で可愛い子を見つければいいじゃない」

声が震えて早口になる。
冷静にならなきゃと思うのに感情が抑えられず涙がこみあげる。

「この前、帰りにキスされて気づいたの。
今まで当たり前すぎて気づいてなかったけど、私はあんたといて、とても居心地がいい。失いたくないの。
つきあってダメになったら今までのように一緒にいられなくなるでしょ?
あんた本気じゃないみたいだし.......
だったら悪友でいいじゃない。
しばらくはギクシャクするだろうけど今ならまだ引き返せるでしょ?」

言い終わると涙がこぼれてきて手で顔を覆った。
ひっ...と嗚咽が漏れる。
こんなみっともない姿なんて見せたくないのに。

「ごめ...泣きたくなんかないのに........うまく感情...コントロールできな.....」



「ごめん、絵里子」

その言葉に絵里子は目の前が真っ暗になる。
やっぱりそうか。こいつにとっては数々の遊びの中の一つに過ぎなかったのか。
覚悟はしていたものの、実際に言われると堪える。
野立がそっと絵里子を抱きしめ髪を撫でる。
そんなことして誤魔化さないで。そう言いたいけれど何か言うと余計に涙があふれそうで黙っていた。

「ええと、何から言えばいいかな......
まず、野立会はおまえとつき合うずっと前からやる予定のやつで、一度は断ったんだけど借りがある女の子が幹事でさ、断りきれなかった。あれが最後の野立会だ。
デートがキャンセルになったのは残念だったに決まってるだろ?
仕事が忙しいのは分かってるし、いちいちそれでヘソ曲げるのは格好悪いじゃねぇか。我慢してたんだよ。
その夜はやけ酒で次の日二日酔いになって大変だったんだからな」

予想外の言葉に絵里子は顔をあげて野立をみつめる。照れくさそうに野立が続けた。

「おちゃらけてたのは、ちょっと不安だったんだよ。
あの夜、酒の勢いでOKしたのはいいが、俺とつきあってること、絵里子は後悔してるんじゃないかと思って。
”どうなかわからない”とか言われるしさー」

野立は絵里子の涙を優しく拭いながら苦笑いした。

「軽いつきあいならお手のもんだけど、本気のつきあいってどうすればいいか分からなくてさ。
こんなに絵里子を不安にさせてるのに気づかなかった。
絵里子の事を一番分かってるのは俺だと思ってたけど、全然だな。情けねぇ」

「正直に言うと、おまえのことがずっと好きだったんだ。
気づいてなかっただろうけど20代の頃からずっと。
おまえを失いたくなくてずっと悪友の座に甘んじてた。
告白するときも内心ドキドキしてたんだぞ?
フラれた時の逃げ道作るために最初はあんな軽い言い方になったけど。
・・・結果的におまえを不安にさせただけだったな。
はじめからちゃんと言えばよかった」

野立はまっすぐ絵里子を見つめて言った。

「絵里子、愛してる。やっと手に入れたんだ、絶対に離すもんか」

一週間かそこら不安だったからってそんなにびーびー泣いてたら、俺なんてどうなるんだ?20年だぞ。泣きすぎて体中の水分が無くなってらぁ

そんなことも野立は言った気がする。

え?20年も?野立が私のことを?
びっくりしていつの間にか涙も止まっていた。
いろんな感情が入り乱れてうまく言葉にできない。

絵里子は野立にぎゅっと抱きついた。

「私も愛してる。もう離れたくない」

今度は絵里子から野立に口づける。
愛してる、とありったけの想いを込めながら。

深く長いキスを貪っていると野立に抱きあげられてベッドへ移動する。
シャツのボタンを外すと野立の唇が首筋から腹部までをゆっくりと移動し
絵里子の肢体を味わいながら、時折、紅い痕をつける。
あっという間に身に纏っているすべてをはぎ取られると両手で胸の膨らみを揉みしだかれた。
堅くなっている頂をクニク二と指で弄ばれ絵里子の身体がピクンと跳ね、はぁっと甘い吐息が漏れる。

片方の手が胸を離れ、太股やヒップを執拗に撫でさすられるが肝心のところは触れてくれない。
絵里子は焦れて身をよじった。

「絵里子、触ってほしいか?」
「お願いっ、早く触って....」

恥ずかしさを感じながらもそう言わずにはいられなかった。
激しく舌を絡ませあってから野立が絵里子の秘部に触れると
そこは充分すぎるほどの蜜が溢れていてくちゅくちゅと音が響いた。

「すげー濡れてる」

耳元で野立に囁かれると恥ずかしさあまりどうにかなりそうだ。
野立の指が秘部をゆっくりと撫で回し指で中をかき回される。

「はぁ...っ...ぁ....あぁ......っん.....」

絵里子はもう声を抑えることができなくなっていた。
何度も秘部を撫でさすられ、その先にある蕾も同時に刺激される。
無意識に足を開げ腰がヒクヒクと揺れる。
そんな絵里子を野立は愛おしそうに見つめている。

「お願い、も、待てない...」

そう言うと野立が素早く避妊具を装着し一気に絵里子の中に入ってきた。

「あぁ....ん..っ!」

激しく何度も突かれ快感が波のように押し寄せる。
絵里子は野立、野立、と何度も愛しいその名前を呼ぶ。

「だめっ....イっちゃう...」

それを合図に野立の動きが一段と速まり絵里子はぎゅっと野立にしがみついて果てた。それと同時に野立も自身を解放する。


後始末をすませると野立は絵里子のそばで横になった。
絵里子が野立の胸に鼻を擦りよせると優しく抱きしめてくれる。
少し汗ばんだ野立の匂いが心地いい。

このまま眠ってもいいかな。
そう思っていると野立の手がやわやわと胸を愛撫する。

「ちょっと、何してんの?」
「何って、絵里子を気持ちよくしてやろうと思って。もっと絵里子が感じてる顔を見たいなー」
「な・・・よくそんな恥ずかしいことサラっと言えるわね」
「絵里子だってさっき、早く触ってって言ってたじゃん」
「や、バカ、そんなこと言わないでよ」

野立が絵里子の目を覗き込む。

「・・・ダメ?」
「いや....だめじゃないけど....」

それを聞いた野立はニマっと笑って激しいキスを浴びせてくる。
明日は休みなんだし、いっか。
絵里子は観念して快感に身を委ねた。






SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ