タフに恋して抱きしめて。
野立信次郎×大澤絵里子


目の前の状況に呆然としながら片桐は携帯を手にした。

「もしもし、野立さんですか?」

『片桐か、どうした?』

「BOSSが『絵里子がどうした!?』

多分仕事中もずっと気にしていたのだろう、ワンコール鳴ったか鳴らないかで電話に出た電話の相手、
こちらで起こっている事を報告をしようとしたら焦ったような声が響く。
それまではこちらも初めての状況に困惑し焦っていたが、より焦った人間の出現のおかげで片桐は少し冷静になれた。

「大丈夫です、犯人は取り押さえましたし、BOSSも保護しました。」

『・・・・無事なんだな?』

「はい、外傷もありません」

「そうか・・・・・・」

「殆ど触られてもいません、ただ『何かあったのか!?』

片桐はその反応の速さに驚く。
野立はあまり感情を表に出すタイプの上司ではない。
どちらかと言えばおちゃらけたり、無責任にも取られる程に簡単に重要な役割を任せたりと部下たちを乗せ、
そしていつの間にか彼の思惑通りに部下が動いている・・・・という不思議な上司だ。

もっとも絵里子の事に関して言えば、2人が付き合う以前から案外感情がダダ漏れだったので、
今のこの焦りっぷりは仕事モードではなく恋人モードだからなのかもしれないが。
そう考えながら片桐は報告を続けた。

「犯人の川田が使っていた例の薬を飲まされたようです」

『あの、被害者たちが飲まされてたやつか!?』

「そうです、その薬事態には害はないという報告は受けているのですが」

『その報告は俺も受けている、じゃぁ絵里子は病院か?』

「いえ、それが・・・・・・」

『どうした、なにがあった?』

「BOSSが病院には行かないと、野立さんを呼べと」

『・・・・・俺を・・?どういう意味だ?』

「わかりません、ただそれだけ言うと別室に独り閉じこもって、そのまま出てきません」

『・・・・他の面子は?』

「閉じこもる前に与えられた指示を受け動いていますが、どうしてもみんなBOSSが気になって・・・」

『・・・・わかった、今すぐ行く。』

「すみません」

『お前が謝ることじゃない』


何か変化があったら連絡をくれという野立との通信を切り、片桐は目の前の閉ざされた扉を眺める。
絵里子が大丈夫だというのだから大丈夫なのだと思っているが、心配であることは否めない。

今回の事件、聞き込みを重ね、根気よく得体の知れない連続殺人犯の正体を暴いてきた対策室のメンバー
しかし今日、犯人を追い詰め、逮捕する過程で予期せぬ出来事が1つ起こった。
彼らのBOSS大澤絵里子がその犯人に捕まったのだ。

すぐに他のメンバーが駆けつけ、犯人逮捕と絵里子の保護にあたったが、薬を飲まされるのだけは避けられなかった。
被害者が飲まされていたモノと同じ薬であれば人体に害はないだろうと思われるが、
どんな症状が出るのかは死体からの情報だけではわからない、当然病院に行く必要がある。
にも関わらず、到着した万が一の為に手配した医師に採血は許したものの、それ以上の診察は拒み、絵里子は独り部屋に閉じこもってしまった。

犯人が根城にしていたのが、廃校になったこの学校であり部屋だけは沢山ある、しかしどうして独りになる必要があったのか。
そしてなぜ病院に輸送される事をそんなにも拒むのか。

― 責任を感じているのだろうか?―

逮捕した犯人は女性を誘拐し、薬を飲ませ、強姦した後に殺害するという最低な人間。
だからこの事件の捜査をする事が決まった時も、
そして今日、その舞台に乗り込むという時にも木元と絵里子は野立に気を付けるよう言われていた。
必ず男性とパートナーを組むことも指示されていた筈だ

それでも絵里子は捕まった。

捕まった詳しい経緯はわからない、片桐はそこにはいなかったし、他のメンバーも捜査官もいなかった。
しかし絵里子に「自分は大丈夫」という気持ちがなかったとは言えないだろう。

確かに片桐から見ても絵里子は普通の女性とは何か違う。
ただそれは部下として絵里子を見ているからであって、普通の人から見れば「少し歳はいってるし、背の高いけど綺麗な姉ちゃん」に違いない。
それを自覚せず、犯人の標的にはならないと考えていた節があり、野立からの指示も軽視した・・・・

そんな状況に陥ってしまった事に責任を感じ、病院にいかないと言ったのかもしれない。
何度呼びかけても応じず、出てくる気配のない彼らのBOSSが籠城した部屋の扉を見つめながら片桐は溜息をついた。



「片桐っ」

廃校になり、取り壊される前のこの建物に女性を連れ込み、そして・・・・・・
大勢の捜査官がいたとはいえ、絵里子もその1人になりかけたのだと思うと冷静ではいられないのだろう、
野立が蒼白な顔で出迎えた片桐をせかす。


「野立さん、こちらです」

片桐が絵里子が1人閉じこもっている元は保健室だったという場所まで案内すると、
部屋の前では見張り役の花形がオロオロとした様子で1人行ったり来たりを繰り返している。

「花形、変わりはないか?」

「片桐さんに野立さん・・はい何も・・・・」

「絵里子は?」

頼れる人間が現れ、ほっとした様子の花形。
そんな花形には構わずに野立は片桐に質問をぶつける。

「無事です、今採血したものを検査しています、今までの事を考えれば無害だとは思いますが」

「じゃぁどうしてこんな部屋に閉じこもっている?」

「わかりません、助け出した時も息は荒かったです、しかしそれくらいしかわかりません」

「わかった」

とにかく絵里子は野立を呼べと何度も言っていた、
野立が何か知っているのではないかと片桐は思っていたがそうではないようだ。

一呼吸おいた野立が保健室のドアをノックする。

「・・・・・誰?」

「俺」

「ん・・・・・・」

小さく聞こえる声が熱っぽい、訝しみながらも鍵のかかっていない室内に入る野立、それに片桐と花形が同行した。
一瞬野立が目線を寄こしたが、結局何も言わなかった。

「野立っ」

振り向いた絵里子の頬は赤く上気し、目は潤んでいる。
仕事場では決して見せない絵里子の様子に片桐は固まった
表現は悪いかもしれないが、これは「色っぽく誘っている」と言える絵里子の姿。
薬を無理やり飲まされた時に唯一つけられた痣でさえ、艶やかだった。

「絵里子、大丈夫か?」

と、野立が言い切らないうちに絵里子が抱き着き、彼の唇を奪う

「んぐっ・・・・おいっ・・・・・・」

殆ど酸素が残っていないことなど構いもせずに、体をこすり合わせてくる絵里子を条件反射のように抱きしめる野立。

「あ・・ゃ・・・・・・」

絵里子はぎゅっと抱き着き腰をこすり付けている、それを見てようやくわかった。
犯人の飲ませた薬は俗にいう「媚薬」であろう。
捜査中に犯人から突きつけられた挑発文にあった「俺は彼女たちに最高の快楽を与えた、だからみんな幸せだった」
その言葉の意味もやっとわかった。

「あの野郎・・・・・」

野立も同じ結論に達したのだろう、犯人への罵詈雑言が小さく聞こえる。

「くっそ、あの野郎をどうにかしてやりたいが、そんな暇はない、片桐っ」

「は、はいっ」

「お前は車を回せ、ヤマムーと岩井は犯人の取り調べ、花形とまみりんは現場検証、片桐、俺たちを送ったらお前が指揮をとれ」

いつの間にか顔を出していた他の面子にも厳しい声を飛ばしながら野立は絵里子を抱きかかえ部屋を出た。



「野立さん、ご自宅でよろしいですか?」

最初こそ戸惑っていたが、冷静さを取り戻し状況を把握した片桐が運転席に座り、
後部座席に座った野立たちに問いかける。

「あぁ・・・いや、警視庁に回ってくれ」

「・・・・・いいんですか?」

「あぁ、何かあった時、室長が捕まったうえに、薬を飲まされて、その影響で上司二人は自宅ですなんて報告できないだろ」

「・・・・・わかりました」

納得した片桐が車を発車させる。
捜査員が見えなくなったところで野立が絵里子の体を掻き抱いた。

もちろん片桐自身心配だったし、今の絵里子の状況もわかるが少しは遠慮して欲しい、
そう思ったが抗議の声は上げられなかった。

「大丈夫か?」

「・・も、むり・・・・・お願い・・・・・・・・・」

「もう少しだ、我慢してな?」

「や・・・・ね、もう・・・・・・・・」

広いとは言えない車内での攻防。
片桐は「冷静になれ、冷静になれ」と心の中で呪文のように唱える。

「絵里子」

「あぅっ・・・・」

「・・・・・・・・」

「野立ぇ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「おね・・・がい・・・・・・・・・・」

抱き合っている2人がバックミラーから確認できたが、どこまでの行為をしているかはわからない。
ちゅっちゅっと唇が合わさる音が耳に届き、絵里子が漏らす吐息がこんな時だというのに下半身に直に響く。
これはもう、男だったらしょうがないだろう。

好きだとか嫌いだとかそんな感情ではなく、あまりにも色っぽい音が聴覚を刺激してくるのだから興奮して当然だと言いたい。
ぐっとこらえて顔には出さないようにしたが、この現象は「ダメだ」と思えば思うほど現れる。


「・・・・片桐、耳を塞いでろっ」

しばらくちゅっちゅと繰り返していた後部座席から諦めたような、覚悟を決めたような男の声がした。

「・・・・・は?」

「いいから塞いでろ」

「いや、運転中ですし」

「塞いでろ」

あまりの無茶な言葉に抗議をするが有無を言わさない命令が返される。
仕方なく考えて、不器用ながらに1つの結論に達した。

「えー・・・・っと、はい、塞ぎました、何も聞こえません」

もちろん運転中に本当に塞げるわけもないし、耳栓もない、しかし「塞いだつもり、何も聞いていないつもり」にはなれる。
だから塞いだつもりで「聞こえない」と答える事にした。
その直後、

「あぁんっ!!!」

どこをどう触ったのか、脱がしたのか、それとも・・・・・
絵里子の嬌声が上がり、ぐちゅぐちゅっという音までし始めた。
塞いだつもり、聞いてない、聞こえない・・・・と念じながらも思わず耳が集中する。


「あっ・・いぃ・・・ね、野立の・・・・野立のちょうだい?」

バックミラーからでは大して見えない、だから聴覚に頼った予測にしか過ぎないが、指で何度か達したであろう絵里子が野立に懇願する。

「ダメだ、ここじゃダメよ、狭いし・・・・もうちょい、我慢な?」

また、ちゅっちゅとキスをして、絵里子を宥める男。

「も、無理ぃ・・・・・・」

甘い啼き声が耳から離れない、宥められてぐすぐすと子供のように従う彼女を女性として見たことはないが、
その声は独り身の夜のおかずには十分すぎる程だ。


やっと警視庁につくと絵里子を抱え上げた野立が参事官室に向かう。

「片桐、どうしようもなくなったら、俺の携帯に電話してくれ、、丹波さんの追及位だったらなんとかしろ」

上司に対する嘲りなのか信頼なのか、どちらともとれるような一言を残して、2人は目的の部屋へと消えて行った。



バタン。

扉が閉まるか閉まらないかで絵里子がぎゅっと抱き着き唇を奪ってきた。
我慢ができないというように寄せる体が熱くたぎっている

「こら、待てって」

慌ててブラインドを下げ、外から見えないようにしたが
その間にもう唇はとうに絵里子のものになり、ネクタイが剥ぎ取られた。

こんな絵里子は初めてだ、見かけ程エッチに興味がないわけでも、お堅い人間でもないが、それとは違う。
しかし、飲まされたとはいえ折角のチャンスだ、とりあえず色々言いたいことも心配も捨て去ってこの場を楽しむことにした。


「もう少しだけ待ってな」

一瞬の思案の後、仮眠用に置いてあるタオルケットを取り出し、ソファから床にかけて敷いてそこに2人してなだれ込む。

「はやくぅ・・・・・」

無駄なものを排除するかのように服を剥ぎ取った彼女は、既に彼女自身の蜜で太ももまでもが濡れており、卑猥だ。
くねくねと腰を揺らす様に心配と加虐心が芽生え思わず顔がにやけた。

指ではもう足りないだろう、と腰を掴み、先ほど車内で「頂戴?」と懇願されながら扱かれ、
もう挿入できる程に勃ちあがったソレを入口にあてがう
ずずずっとめり込むように進むと蕩けきった中が気持ちよく、ずっと我慢していた感覚を放出するかのように腰を何度も打ち付けた。

「の・・だてっ・・・・のだてぇ・・・・・・」

こんな事になっても自分を求めた絵里子への愛おしさを伝えるかのようにぎゅっと抱きしめ、
うわ言のように自分の名前を呼ぶ彼女を助けるためにも何度も絶頂を与え、時間は過ぎて行った。



「うぅ・・・・っ・・・・・・」

「起きたか?」

「の・・・だて?」

やっと正気に戻った彼女がソファの上で身じろいだ。

「覚えてないのか?」

「あー・・・少し・・・・・・」

「少しは覚えてると」

「ごめん」

「なにが、別に俺はエッチできたからいいぞ?仕事は全く進まなかったけどな」

「じゃなくて・・・・・」

彼女が謝りたい事くらいわかっている、エッチの時は忘れる事にしたが、俺も正直かなり怒っていたし。

「なんで1人になった?」

「たまたま・・・・その、犯人を見つけちゃって、呼んだのよ?でも時間がなくて・・・・」

「気をつけろって言ったよな?」

「ごめん・・・・・・」

「お前が捕まったって報告を受けた俺の気持ちがわかるか?」

「うん・・・ごめん・・・・・・・・・・・」

「お前をメスとして見てないのは俺だけなんだぞ?」

「うん、ごめ・・・・・・・・・意味わかんない」

まぁそうだろうな、エッチした後にいう事じゃない、
でもな普通の男はみんなオオカミなんだよ、
だからお前も赤ずきんちゃんとして・・・・いや、その想像はかなり無理があるけれど、
でもオオカミに狙われる可能性もあるって事を覚えておけと大いに言いたい。

「だーかーらーーお前をメスとして、欲望だけで抱かないのは俺だけなの、わかるか?」

「女として魅力ないってこと?」

「あ゛ーーーーなんでお前は鈍いんだっ!!」

がばっと抱き着くと絵里子が少し怯むのがわかる。
本当に鈍すぎる。
メスだから抱くんじゃない、メスだから好きなんじゃない
ずっとそう思ってきたのに、1ミリも伝わってないなんて酷すぎる。

「だからさ、その・・・・お前を愛してるっていうのは俺だけだって事だよ」

しかしなんで俺はこんな話をしてるんだ?
怒ってたっていうのともっと自分に魅力があることに気が付けって説教する予定がこんな話になってしまった。

「・・・・・・・あーうん・・・そう・・・・・」

「そう、ってお前・・・・・」

「だって急にそんな事いうから」

「・・・ま、いいか・・・・・・・・・」

「あっ、ちゃんと着替えさせてくれたんだ?」

「ん?あぁ、服濡れちゃってたから対策室に置いてあった制服だけどな」

「・・・・・パンツも履いてる」

「だってパンツ履いてなかったらいやだろ?」

「・・・・・変態」

「へん・・・・お前なぁ・・・・・」

「でも、なんであんたも制服なのよ?」

「あ?・・あぁ、だってお前ので濡れちゃったから」

車の中で抱っこをしながら愛撫をしていたらスーツにまで垂れて、絵里子の服同様染みになってしまったのだ

「あー・・・・・・ごめん」

「もう勘弁してくれよ?こっちの身がもたない」

「でもあれよね」

「ん?」

「あんたの制服姿、好きよ?」

先ほどとは違い、貪るようなものではなく、ただ唇を合わせてくる絵里子。

「・・・・・・・・おい」

すっと指で制服の上から体を撫でてくる仕草にまた欲望がもたげた。
説教も愛の告白もするりと躱したくせに、そういうおねだりをしてくる彼女が愛おしい。

しかし、こちらからもう一度キスをしようとすると身体を撫でていた指1本で止められた

「もう行かなきゃ、あの子たちが待ってる」

「いいだろ、何かあったら連絡するように言ってあるし」

「だーめ、また今度きゃっ!!」

無理やり抱きしめて、その胸の辺りに顔を埋め顔でむにゅむにゅを繰り返す。

「すんげぇ気持ちいい・・・・・」

「あっ、やだ、ダメだってば」

「最後まではしないから」

「もう・・・・少しだけよ?」

「ん・・・・・・・・」

そう言いながら腰や腕を撫で、先ほどの余韻を呼び起こす
拒んで嫌がる絵里子の警戒心を緩やかな愛撫で薄れさせその気にさせていく、それは案外楽しい行為だ。
仕事になんか戻してやるもんか、さっきのお返しだ、覚悟しやがれ。

続編:タフに恋して抱きしめて。片桐番外編(片桐琢磨×木元真実)






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