角松一郎×堤芯子
「おぉー! 絶景だなー! な、洋子」 「えぇ、ほんとうに、綺麗」 (あ、ほ、く、さ……紅葉狩ってどうすんだっつーの。食えないじゃん) 「ほら、洋子は色が白いからこういう色が映えるんだよなぁー」 「やだ、そんな、恥ずかしい……」(本ッ当に恥ずかしい奴) 「な、な、洋子、今度、ここ! ここ、行かないか? 近いし」 「え?」 「えっと、温泉なんだけど……な〜んて、年寄りくさいか! なぁ!」 「……」 「よ、ようこ……? や、嫌ならいいんだ、他んとこにしよ、うん」 (なんも言ってないじゃん、あたし) ムッ 「……おんせん、好きよ?」 「ぅえ!? い、じゃあ、行こ、うか……?」 (ったく、いっつも煮え切らねえ男だなあぁ……。しょーがない) 「はい、ぜひ」 「じゃあ、休み取らなきゃな!」 「ね、角松さんも温泉、好きなの?」 (そーいや久しぶりだな、温泉) 「好き……っていうかなんか、懐かしいんだよ。実家の近くに温泉があってさ、公営の、小さいんだけどな……ああ、こ、今度俺の実家に来た時、行こうな」 「うん」 (ま、そんな日は来ないけど、な) 「とりあえず、温泉な。休み取ってくるから」 「楽しみにしてるね」 温泉宿にて。 「夕食、部屋に持ってきてくれるから」 「それじゃあ、先に温泉に行きましょうか?」 「そだな」 「角松さん、浴衣着る?」 「ん。……あれ、洋子は着ないの?」 「浴衣の方がいい?」 (浴衣着るといつも以上に歩き方に気ィ使うんだよな) 「……できれば」 (まあ、ここも全部コイツ持ちだし、浴衣くらいしょうがない、か) 「うん、わかった」 「楽しみだ」 「あんまり、期待しないでね?」 (浴衣って右が前だっけ……?) 夕食の時間。 「気持ち良かった。お腹空いちゃった」 「なー。よし、んじゃ、食うぞー」 「お酒、注ぎますね」 「ありがとう。洋子は?」 「それじゃあ、一杯だけ」 「弱いもんな」 「うん、直ぐに酔っちゃうから」 (調子乗って飲んで地が出たらやっばいんだっつの) SS一覧に戻る メインページに戻る |