久々の逢瀬
角松一郎×堤芯子


「腰、少し上げろよ」

足の間に角松一郎がいる。そっと腰に手を添えられたが、その手がとても熱を帯びていたのでこっちの胸がドキドキした。言われた通りに腰を浮かすと、ゴムを付けた彼のものがあてがわれた。
芯子は息を静かに吐く。目を閉じてわざと意識をそこに集中させた。受け入れる準備は十分に出来ている。
閉じた瞼から覆い被さる角松の影が動くのがわかった。押し開かれたそこは先端をゆっくりと迎え入れる。
息を詰めないように出来るだけ身体の力を抜かす。少しずつ角松のかたちを確かめるように収まり始める自分の身体に、ものすごい快感を覚えた。久し振りのせいでもあるが挿入の瞬間が堪らなく好きなのだ。

「ん、っ…、」

まだ奥へと進む動作が終わらない。どこまで中に到達するのだろう。甘い声が漏れて、角松の両腕に手を添えた。その腕は芯子の腰に回されている。引き寄せられたかと思えば侵入が終わり、口の端に角松の唇が触れた。

「全部中に入った」
「うん…」

瞼を開けると角松が満面の笑みで芯子を見下ろしていた。すぐにでも律動を開始してほしいのに、角松は芯子の表情を視姦するかのように見つめ一向に動いてはくれない。

「なん…だよ、早く動けっての」

言ってる自分が恥ずかしくなって腕を叩いた。

「動くよ、動くって。久し振りなんだから堪能させろよ」

ヘラッといやらしく笑いゆっくりと律動を始める。ぎりぎりまで引き抜いてはまたゆっくりと時間をかけて押し進め、久々の感覚に内股がひくつく。
律動はいたってゆっくりなくせに、芯子の乳房を撫でる手の動きは機敏だった。
その度に芯子が甘い声を漏らしていると、執拗にそこばかりを責められた。弱い箇所は徹底的に、それが角松の昔からの癖だった。
指先で弄ぶように胸を愛撫され、絶えず喘がされる。覆い被さる角松の肩口に顔を埋めどうしようもない快感を堪えようとした。

「すげえ、久々だけど昨日のことみたいに全部お前のいいところ覚えてる。これ好きだろ?」

わざといやらしい言葉を耳元で囁かれた。その言葉に一気に身体が熱くなる。彼が言った通り久々の逢瀬、身体は正直だ。

「…ん、気持ちいい…」

こちらとてサービス精神は持ち合わせている。素直に、だけどどこか挑発するかのように角松の耳元で苦しそうに囁けば、彼は随分と嬉しそうに笑った。
腰の律動は少しだけ力強くなる。角度が突き上げるかたちに変わり、思わず揺さぶられながら身体が浮いた。押さえつけるように腰を抱えられた。

「あっ、あ…んん」

ジワジワと快感の波が下半身に押し寄せる。ひくつくそこに、いやらしく動く角松の手に、思考回路まで溶かされていきそうだ。

唇を吸う角松がいやらしい顔をして芯子の表情を伺う。

「あれ、あれやって」

いつもやってたやつ、そう言って律動を緩める。昔付き合っていた(?)頃に
毎度おねだりしてくるその内容に、アンタ好きだねと呟いて吹き出した。

「やってやるから膝、支えなさいよ」

やわやわと揺さぶられながらも腰の位置をずらして角松に催促をする。両足を持ち上げて折り曲げた。
正常位からの体勢で自分の方向に思いっ切り折り曲げて膝を出来るだけクロスさせる。なかなかにキツい体勢なので芯子の膝を押さえつけるようにクロスさせて支えるのは角松の役割だ。
おのずと中の締め付けは強くなる。

「はっ…やっばい、芯子、これ…もっていかれる」

何がそんなに可笑しいのかヘラヘラしながら角松は言った。

「あっ…気持ちいい?」
「やっばいです…、」

なぜか敬語になる角松。こっちは腹が潰されてどちらかと言えば苦しいのに、少しだけ力任せに押さえつけられるこの行為は妙な興奮感に襲われる。
昔から普段優しい彼の、この時だけ一瞬見せる男としての本能に触れた気がしてゾクゾクとした。

「いいよ、…もっと強くして」
「痛いの好き?」
「違うっつーの」

じゃあお言葉に甘えて、角松はそう言って芯子の膝に更に力を込めた。腹部に圧がかかり、上がる呼吸も苦しいはずなのに不思議と体は興奮する一方で。たまらない快感に喘ぎ声が上擦る。

「あっ、ああ…!」

角松が芯子の膝を下ろし、突く動作が浅いところに変わった。少しだけ物足りないと感じてしまった芯子は自分で相当イかれてしまっていると頭の片隅で思った。
唇が重なり目を閉じた。

「ふ、…っん、ん…」

うごめく舌に必死に食らいつく。途端にびくんとその角松が身体を震わせて律動を止めたので嫌な予感がした。

「あ、やべ」
「ちょ…」

先に達してしまった角松がすみませんと笑う。

「さいっあく…」
「し、仕方ねえだろ…ご無沙汰だったんだから」

お前だってそうだろと開き直る角松が、そのまま腰の動きを再開する。

「ちょ、なに続けて…あ、んん!」
「大丈夫だ、こんなときは回数で補ってやる。なんせ久々だからな」
「いいっ!いいってもう…あ、もっ…動くなってぇ、ん」

こうして久々の逢瀬は罵り合いながら明け方まで続いたとか。






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