セラヴィー×どろしー
![]() 自分の寝返りとは関係なくベッドが軋んで、目が覚めた。 誰かが私の上に覆い被さってくる気配。 咄嗟に攻撃魔法を使おうと手が動いたけれど、 その手はあっさり掴まれてしまった。 ついでに手で口も思いっきりふさがれてしまう。 …これでは魔法は使えない。 暗闇で姿ははっきりとはみえないが、 ここまで私に気づかれずに侵入する手口、魔法を塞ぐ手早い動きには 心当たりがある。 すさまじく嫌な予感がした。 とりあえずくぐもった声で誰何する。 「誰!?」 「ぼくですよ、どろしーちゃん」 …予感的中。 2軒隣に住む変態悪魔だ。 「まったく、いきなり魔法を使おうとするなんてご挨拶だなぁ」 「ちょっと、何のつもりよこの変態!」 一生懸命手の隙間から叫んでみるものの、どうにも迫力が足りない。 「はんのふもりよこのえんあい?何言ってるんですどろしーちゃん」 しれっとふざけたことをぬかしているが、 変態といったのが気に食わないらしく、 私の手をつかんでいる右手に若干力が入った。 「何なのよ!こんな夜中に!何の用?!」 「どろしーちゃんこそ何寝ぼけてるんですか」 ようやく暗闇に慣れて来た私の頭上で、 悪魔は、気持ちが悪いくらいさわやかに微笑んだ。 「この状況で、夜這い以外の何があるっていうんです?」 余りといえば余りの言葉に返す言葉も無く、ただ体をよじる。 しかし全身の抵抗にも関わらず、 さほど重くも無いはずのこの男の体はびくともしなかった。 「こうみえてもぼく、どろしーちゃんと違って若いですし」 歌うように言いながら、どこから出したかわからないロープで 手際よく私の手を拘束していく。 「たとえこーんなに変わり果てた姿でも、愛を誓った人に違いはありませんし」 手を結び終えると、魔法をかけるしぐさをする。 一瞬あたりがかがやいたのち、ベッドサイドのランプに火が灯った。ほのかに甘い香りも漂いだす。 ムード満点ですね、と満足げに悪魔がひとりごちた。 勘弁してくれ、と私は思った。 本来なら最も憎むべき黒髪をやけに優しく撫でながら、顔が近づいてきた。 男のクセにきれいな肌だというのがむやみにむかつく。 キスしてきたら噛み付いてやる、と思っていると、セラヴィーの顔は予想外にも私の肩に降りてきた。 そっと頬に手が添えられる。熱い。 「毎日好きな人が側にいて手も出せないなんて拷問じゃないですか?」 だからこれは全部どろしーちゃんのせいなんです、と囁いて、軽く耳朶を噛まれる。 噛まれた部分から体温がじわじわ伝わり、そこから全身の力が抜けていった。 魔法を使われたようだった。 不満を表そうとかろうじて出した声はかすれて、酷く甘ったるく聞こえた。 「…犯罪者…こんなことしてどうなるかわかってるの…?」 「大丈夫、これ以上嫌われたくないですから、記憶は消します」 側に男の体温があるにもかかわらず寒気が襲った。 今日2度目の嫌な予感。 記憶を消すって、何を言い出す気だこの男。 私の強張った顔を見てか、安心させるような声音で悪魔は付け足した。 「そんなに心配しなくてもちゃんと処女膜も回復させますよ」 もうこれ以上驚くことはないだろうと思っていたのに、一瞬耳を疑った。 掠れる声で恐る恐る聞く。 「ちょ、何それ…」 「やだなー。新婚の楽しみがなくなるじゃないですか!」 セラヴィーはといえばなにいわせるんですか、と言わんばかりに本気で照れている。 正真正銘の変態だ。 おそらく新婚初夜に初めて処女を奪うという演出をしたいのだろう。 下手をするとその後どのような調教をするかまでプランが決まっているのかもしれない。 妙なところに拘りがあるのが彼の変態たる所以だ。 「誰があんたなんかと…」 「本当はちゃんと結婚するまで待つつもりだったんですけどね、 待ってたらいつになるかわからないし…。 どろしーちゃんったらいつまでたっても素直になってくれないから…」 人の話を聞けー!と叫びたいが喉に力が入らない。 ぶちぶちとぼやくセラヴィーは、情けなくも恨みがましい表情から全くいつも通りで、それが尚気持ちが悪い。 「つまりこれは応急処置なんです」 なれた手つきでネグリジェのリボンを解きながら、 だからちょっとだけ我慢してくださいね、と満面の笑みで付け足した。 狂ってる…。 半裸のまま片足を持ち上げられた。 足の指先から体の芯へと途中でキスを何度も落としながらゆっくり温かい舌が這っていく。 「どろしーちゃんはこうされるのが好きなんですよねー」 上機嫌でつぶやいている。 悔しいけれど、湿った愛撫は的確に弱いところを刺激してきていた。 慣れ切ったその台詞と行為に、イヤな想像が頭を過ぎる。 これは常習性の行為なのではないか?もう何度もこのような事が行われているのではないか? 単に自分が毎回記憶を消されているだけで。 「…もう、何度も…、こんな…こと…」 絶望的な質問に返って来たのは、絶望的な答えだった。 「…ほら、ちゃんと忘れてるでしょ?」 普段ロングスカートで隠されている白い足が、ランプの色に染まって朱色に輝いていた。 舌が内腿に達すると愛撫はさらに重点的になり、薄い肌に、いくつも赤い斑点ができてゆく。 足を支えていないほうの手は、下着の上から執拗に入り口を撫でさすっている。 相手は服を着たままで、無理やりで、この行為を無かったことにするつもりであるという屈辱的な状況にも関わらず、 自分でも認めざるを得ないほどに、体は愛撫に応えているようだった。 とうとう体の芯に達した舌は、ゆっくりと円を描いて全体を愛撫しはじめた。 ちゃんとお風呂に入ってから寝たけど…においとかないよね、と一瞬心配になったあと、 こんな状況で心配することではないと思っておかしくなった。 …たとえ少しでも弱みを握られたくない。 それでも、核が舌で執拗に刺激されると、自然に声が出てしまい、赤面する。 「あっ…や…」 「こんなにしておいて嫌はないでしょう」 下着の横からセラヴィーの指が侵入し、軽く入り口を撫でた。 初めて直接的な刺激をそこにうけて、体がびくっと震える。 セラヴィーはその指を私の鼻先にもってきた。淡い光に照らされた指先は確かに弱い粘度のある液体で濡れていた。 指の液体をいとおしそうに舐めて、悪魔は小憎らしく微笑んだ。 「これで処女なんですからね。どろしーちゃんのエッチ」 動揺しているうちに、するすると器用に下着を脱がされてしまう。 外気が体に直に感じるようで心もとない、と思う隙もなく、また温かい舌と指がダイレクトに 弱い場所をゆっくり刺激する。 一回目の絶頂は、すぐだった。 体が大きく震えるのを押さえるように、のぼりつめる瞬間に抱きすくめられて、深くキスをされた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |