あんたばっか
セラヴィー×どろしー


目を閉じて細かく息を吐き、挿入の痛みに耐えているどろしーの額に、軽くキスをする。
膝の上に抱きあげて、汗ばんだ背中に手をまわして、抱きしめる。
ぴったりと、肌が密接して、お互いの熱で溶けてしまいそうで。
ますます強く抱きしめた。
おずおずとどろしーがその行為に答え、セラヴィーの広い背中に手をまわすのを確認して、セラヴィーは緩やかに腰を動かし始めた。
セラヴィーの耳元にどろしーの息がかかって、ゾクリ、と何か凶暴なものが首をもたげた気がした。


「うぁ…んっ…ん…はっ…」


セラヴィーが動くたびに、どろしーの口からは熱く甘い吐息が上がる。
突き入れるたびにくちゅくちゅと水音が響き、どろしーの身体が不規則に跳ね上がった。
赤く艶やかな唇から洩れる甘い吐息は、その切なさとは裏腹に柔らかくセラヴィーの耳元にかかり、
そこから毒に似た何かが脳を侵食していくのを感じた。
それは、じりじりと焦げ付くような、どうしようもない破壊衝動にも似た感情を引きずり出して、
自分の脳を侵食する。制御できない感情が、ひたすら愛しいと叫んでいる。狂ってる。狂わされてる。狂わせている。

ーーとめられないんだ。

夢中になって自身を無茶苦茶にどろしーに突き入れると、濡れた音と、
どろしーの悲鳴にも似た喘ぎ声と、自身が発する荒い息遣いとが重なり合って、それがやけに耳についた。


「あっ、…う、セ、ラっ…!」

ぺしぺしと、どろしーがセラヴィーの後頭部を叩いた。無視して腰を突き入れると、
ぐい、と思い切り髪を引っ張られた。
ちょっとどころでなく痛かったので涙目で抱きしめる腕をゆるめて目を合わせると、
愛しの人の情欲に濡れた瞳が猫のように輝いている。
妙なまでの深い瞳の色に引き込まれて、どろしーを追い上げる行為をしばし中断すると、
その瞬間、どろしーは笑みを深くして、セラヴィーに勢いよく体重をかけた。
躊躇のない勢いのよいその行為にセラヴィーの身体はあっけなく後方に傾き、床の上に倒れこむ。



「いきなりどうしたんですか」

反射的に受身は取れたようだが、ちょっと痛い。
顔をしかめて、一応抗議しておく。
するとどろしーは、セラヴィーを上から見下ろして、艶かしくわらった。

「…あんた、ばっか、攻めて…ずるいの、よっ」

整わない呼吸でそう言うと、どろしーは腰をゆっくりと前後に動かし、快楽を求め始めた。
セラヴィーはどろしーの腰を支え、自然にその動きにあわせる。
下から見上げるどろしーの顔は、妖絶で、瞳が怪しく輝いている。
いつだって、自分はこの瞳にとらわれている。
ずっとずっと、過去も未来も現在も、ずっとずっとこの人を愛している。

「あンっ…はぁ、んん……っ」
珍しいどろしーの行動と、妖しい色を放つ瞳に、ドクドクと、下肢に血液が集まる。
目の前が赤く染まる。
ズクズクと、うずくように、うねるように抑えられない何かが、セラヴィーを追い上げていった。
耐えられずに、セラヴィーは衝動に任せてどろしーを激しく突き上げる。

「な、やめっ、…あっ…あっ…!」
「ごめんなさい。がまん、できない、です」

まるで獣のように求め合い、二人の荒い息づかいが、薄暗い室内を支配する。
ここにいるのは、二人だけで。
ひとつにつながった、ふたりだけで。
すべて混じってどろどろにとけて。
身体も、心も、何もかも。ぐちゃぐちゃに交じり合って。
頭が白く染まっていく、何も考えられずに、快感だけが脳を支配する。
残っているのは、ひたすらに愛しいという感情と、全てを自分のものにしてしまいたいという支配欲求だけだった。
そして。



「あぁっ…!」

高い悲鳴を上げて、どろしーの背中が反り返る。
同時にセラヴィーも、ぐぐ、とどろしーの中に強く締め付けられて、そのまま欲望を中に放った。




セラヴィーの上に力なく崩れ落ちてくるどろしーをその胸で受け止める。
二人の汗ばんだ肌が密着し、また二人の距離がゼロになる。
抱きしめた相手の体温は熱く、薔薇色に染まって、今にも溶けてしまいそうだった。
汗が冷えていくのとは対照的に、身体の奥には熱い火がともったままで、未だじりじりと胸を焦がし続けている。
抱いても抱いても、足りない。
まだ、足りない。
何もかも一緒に溶けてしまえればいいのに。
皮膚も肉も骨さえも、すべて溶け合って一緒になってしまえばいい。
どろしーのすべてを吸収して、ずっとずっと抱きしめていたい。


求め続けるこの感情を、人はなんと名付けただろう。
どろしーの長くやわらかい髪に顔をうずめ、抱きしめると、どろしーは居心地悪そうに身じろいだ。

「…やっぱアンタ、ムカつくのよ…」
「すみません」
「………ばか」

真っ赤な顔で、にらんでくるどろしーが愛しくて、かわいらしくて堪らずに、セラヴィーは再び強くどろしーを抱きしめた。






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