全ての元凶
セラヴィー×どろしー


前回:どうして(アクセス×どろしー)

母親を助け出し、いつまでたっても上機嫌のしいねちゃんを寝室まで送
ると、どろしーは部屋に戻り、ふぅとため息をついた。

――ヤツにやるのは惜しいな――

気を抜いたその時、思い出さなくてもいい事を思い出し、どろしーはペ
シペシと軽く頬を叩く。

「あーもー終わり終わり。早く寝ないとお肌に悪いわ。」

部屋に入り窓を閉めようとしたところで、窓の外の人影に気がついた。

「セラヴィー、ちょっと・・・」

どろしーが制止する間も無く、セラヴィーはすたすたと部屋に入って来
た。そしてどろしーの両手を片手でまとめて下げ、もう一方のの手でグ
ィと顔を引き寄せると、何か叫びかけた口を無理矢理自分の口で塞ぐ。
開いた口に容易に舌を侵入させ、反射的に逃げようとする舌を捉えてそ
れに絡めた。
甘くそして息の詰まるようなそれにどろしーは一瞬気を取られたが、
すぐに足を蹴り上げた。セラヴィーはさっと顔を離し、そのままどろし
ーの両足を抱え上げてすたすたとベッドに向かう。

「ちょっと何するのよ!」
「そんなに暴れると落ちますよ、ほら」

ぱっとセラヴィーの手が離されて、どろしーは背中に感じるだろう痛み
に思わず目を閉じた。

「・・・っ?」

落ちた背中に思ったような衝撃は無く、ベッドのスプリングで体が軽く
跳ねた。

「ね、危ないでしょう?」

セラヴィーの声は穏やかに聞こえたがその視線は冷たく、いつもの彼ら
しい優越感からくる余裕は消え失せていた。

何を怒っているのよとどろしーが言う間も無く、セラヴィーはどろしー
に覆い被さった。開きかけたその口を塞ぐと舌を絡める。くぐもった自
身の声と唾液の撹拌される音がどろしーの耳に響いた。頭がぼうっとし
て音しか聞こえなくなってくると、抵抗していた体の力がどんどん抜け
ていく。

「・・・いやよ・・・ふぁ・・・ん」

お腹に感じる固い塊に触れているそこから体が快楽を待ちわびてゆるゆ
ると力が抜ける。熱く溶けていく気がして理性は失いたくないとどろし
ーはゆっくり瞼を開けた。

「――っ」

どろしーと目の合ったセラヴィーはいじられるままになっていたどろし
ーの舌を強く吸い上げ、首筋に顔を落とした。

「セラヴィっ、やめてよ!」

吸われて痕をつけられそうな感覚に、どろしーは声を上げる。緩やかな
熱に浮かされた体は急速に冷えていった。

「コレはいいのに・・・ですか?」
「コレ?」
「この人」

そう言うとセラヴィーはどろしーの首の下に手を入れ、どろしーのうな
じをゆっくり撫でた。

セラヴィーがうなじを撫でると、どろしーの背筋はぞくりと震え上がっ
た。

「誰ですか?コレ」

セラヴィー本人も知らない内に語尾が鋭く暗くなる。

「誰って・・・それはセラヴィーが前に・・・」
「とぼけても無駄です・・・」

セラヴィーは耳朶に唇でそっと触れた。どろしーは触れられたそこから
頭の中をゆらゆらと揺らされる気がして時折息を吐く。セラヴィーは耳
介を舐めながら更に囁いた。

「・・・しいねちゃんに知られればどうするつもりだったのですか?」
「しいねちゃんって・・・セラヴィー・・・いつからっ・・・ひぁん」

耳への執拗な愛撫に声があがる。逆にセラヴィーの中ではどうしようも
ない憎しみと苛立ちが渦巻き、心を苛んだ。

「私をあんな風に許してくれない・・・!」
「私をあんな風に心配してもくれない・・・!」

時々怒りで体が強張り、どろしーの手首を握るその手に力が入る。首筋
に舌を這わされ強く吸われて全身がぼうっと熱くなる一方で、痕が残る
と思うくらい手首を強く握られ、どろしーは恐怖と悦楽で訳がわからな
くなりながら、悲鳴のような声をあげた。

「セラヴィー、待ってよ、もう離してっ」

どろしーが言葉ではっきりと拒絶した為、セラヴィーは首筋を吸い上げ
るのをやめ、顔をあげた。明らかに上気し頬が桃色に染まり扇情的にな
ってしまっているどろしーと、心の何処かが底無しに暗く沈んだセラヴ
ィーの視線が交錯した。

「いやです」
「お互いもう好きでも何でもないのだからやめよう、セラヴィー」
「は?」

セラヴィーは一瞬びっくりしたようにどろしーを見たが、次にはどろし
ーの額に自分の額を押しつけた。

「い、や、だ」

だからどうしてっと言うどろしーの声はセラヴィーの口の中に吸い込ま
れてすぐに消え失せた。すぐに舌が絡められては吸い上げられ、気持ち
よさに何もかもが霞んで気を失いそうになりながら、どろしーはいつの
まにか自由になった両手でセラヴィーの顔を引き剥がそうとした。

「ん・・・っ」

胸元を衣服越しに摘ままれて、ビクンとどろしーが震える。

「相変わらず大きな胸ですね」

口では冷淡にそう言いながら、セラヴィーは器用にどろしーの服の下の
ブラを外し、張りのある豊かな2つのそれを色々な角度から両手で何度
もこねくりまわした。胸がじんわり痺れて物足りなさを訴え、どろしー
はセラヴィーに呻くように言った。

「やだ・・・気が変になりそう・・・」
「いやですか?」

「さっきから・・・言ってる・・・ぁ・・・じゃない」

返事をしている間も揉まれて変な気持ちが体に貯まっていく。

「素直になる方が楽ですよ?」
「いや・・・ん・・・あん・・・やんっ・・・」

セラヴィーはいつのまにかどろしーの上半身の衣服を全て下へとずらし、固く
なって上を向いた胸の頂きを、口に何度も含んで舌で軽く押し込んだ。

「ん・・・んはっ・・・あ、ぁん・・・セラヴィっ」

どろしーの両腕は快感に時折シーツを擦るだけになり、全身を快感で無意識に
くねらせていた。セラヴィーのキスは終らず、口腔粘膜を擦り何度もどろしー
の息を詰まらせ、言葉は喘ぐようにしかならなかった。

「どろしーちゃん、下もして欲しい?」

セラヴィーの囁きに、どろしーは更に顔を赤くする。息の荒いどろしーに、セ
ラヴィーは心の何処かに棘が刺さって痛むのをわからず更に聞いた。

「あの人には言えるのでしょう?」
「・・・あの人?」

どろしーは誰かしらと考え、思い出し始めたそれはとめどなく脳裏に浮かびは
じめた。いつもは手綱や剣を握っている手を伸ばして、向けられる筈のない情
欲と目の前の人は決して言わない心地いい嘘と・・・思い出したくない出来事が
溢れてセラヴィーの後ろで像を結ぶ。

「あの人には・・・言っていないわ」

アクセスの、硬くても抱きしめられると柔らかく感じた不思議な腕を一瞬思い
出し、会っている間や別れの時、その後ですら一度も出なかった涙が一滴頬を
伝う。冷たいそれは頬を伝い、シーツにじわりと広がった。

「どろしーちゃん」

セラヴィーはどろしーの両手首を押さえ、改めて両目に涙を貯めたままのどろ
しーを見た。

「本当に好きだったのですか・・・?」

自らの言葉の一つ一つがセラヴィーの心に衝き刺さる。

「もう・・・放っておいて・・・お願い・・・だから」

どろしーから弱々しく吐き出されたそれはセラヴィを拒絶し、セラヴィーの全
身が震えどろしーの手首を押さえる力が緩んだ。
どろしーはそんなセラヴィーの真意を汲むことはできなかったが悲しそうに
見上げると手首を抜いて横から胸を隠して起き上がろうとした。

「・・・・・?!」

一瞬どろしーには何が起こったのかわからなかったが、気がつくとまたベッド
に倒され後ろから抱き締められていた。

「セラヴィー、離して」
「いやです」

セラヴィーの抱き締める力が強く苦しくてどろしーは身動ぎしたが、向かい合
わせに抱き締め直されただけだった。

「お願い・・・せめて・・・首の後ろの物が無くなるまで放っておいて・・・」

「いや・・・」

セラヴィーらしくなく、語尾が掠れていく。

「ねぇ」
「いや」

「セラヴィー」
「いや」

「帰らないの?」
「いや」

「どうするの?」
「いや」

どろしーが何を言っても、それはセラヴィーの心に突き刺さりセラヴィーは抱
き締めている力を強くしながら「いや」とだけ繰り返した。少しずつ仲良くは
してくれても髪の色だけは元に戻さないどろしーちゃんは自分の正義感で勝手
に苦しめばいいと、アクセスとの関係は知っていても放っておいた。どこかで
心が通じているのは自分だけで最後にはどうにでも出来ると信じていた。最後
にからかう日を心待ちにしていたくらいで。けれど、昼間うなじに残る赤い痕
を一瞬見た時、どうにもならない不安に襲われ予感は的中し、どうすればいい
のかわからなくなっていた。どろしーはセラヴィーの変化に不安になったがど
うすればいいかわからず、何度もセラヴィーの名前を呼んだ。

「セラヴィー」
「いや」
「セラヴィー」
「いや」

埒のあかないやりとりにどろしーはふぅと一息ついた。隅々まで何度も踏みに
じってもまだ子供の頃のわたしを探し求めて。代わりの今のわたしにこんなに
しがみついて。何処までも賢くなったのに何処までも強くなったのに、何処ま
でも一途に無駄に昔のわたしを思い続けて、果てはエリザベスという人形一筋
になってしまったアンバランスな姿が悲しくて愛しくて。こんなセラヴィーに
わがままな願いは叶わないと突きつける事はどろしーにはできなかった。

「子供みたいね。こんなに大きいのに」

どろしーは両手を開いてセラヴィーの胸に触れて頭を預けた。その感触にセラ
ヴィーは腕の中でどろしーがまだ震えて泣いていないか気になった。落ち着い
ているような様子に少し安心すると僅かに腕の力が緩む。どろしーはそれには
気づかずくいっと指先を動かした。フワリと羽布団が動き二人に覆い被さった。

「窒息しますよ」

セラヴィーのその一言にどろしーは顔を上げたがすぐにセラヴィーに押さえつ
けられた。セラヴィーはもう一方の手で布団をどろしーの首までずらす。
どろしーの頭を押さえていた手はどろしーの肩に移動させ、どろしーは見上げ
た。
目が合うとセラヴィーはどろしーの顔が近くにくるように抱き上げ、心配そう
にその顔を覗きこんだ。

「あの人は・・・もう、来ないわ」
「・・・泣かないのですか?」
「別に、わかっていた事だもの」
「不倫は、どろしーちゃんには向いていませんよ」
「わかってるわよ。もう終わったわ」
「今度あの人が来たら」
「セラヴィー」

どろしーはセラヴィーに自分から唇を重ねた。舌先でセラヴィの唇をつつくと
すぐに頭に手が添えられ、逆に舌に口腔内に侵入されて絡められた。しばらく
クチュクチュと音だけが部屋に響く。

「どろしーちゃん」

セラヴィーはその名前を呼んで顔を離した。

どろしーは何て事をしたのかしらとまた顔を赤くして、ふぃと横を向いた。
サラリとその髪がゆれる。

「何よ。」
「ないしょ。」
「ん?何なのよっ、言・・・」

どろしーはセラヴィーの方を見て何か聞こうとするが、すぐに唇を捕らえられ、
言うことができなかった。

「あ・・・ふぁ・・・、だから・・・何よっ」
「大した事ではないのですが」
「じゃあさっき言おうとした事言ってみなさいよ」
「あれはどろしーちゃんに無理矢理キスで塞がれて・・・どろしーちゃんてば
ダ イ タ ン。」
「言うなー!」
「もう遅いですよ。ああいう事をされると、燃えます」
「?」

セラヴィはどろしーの両手を捕まえ、どろしーの頭の上に伸ばすと耳から首辺り
にキスをし始めた。それはもう緩急をつけて念入りに。

「やんっ・・・、ちょっと、あ、・・・だめっ、いやぁ・・・っ」
「『弱い』のは鍛えようがないですから、何度も言っていますけどあきらめた
方がいいですよ」
「な・・・んはぁっ、・・・に、よっ」

火照りと冷めを交互に与えられた体は、快楽の先を求めて淫らに反応する。
ビクンと不規則な動きを繰り返しながらどろしーの体の強張りと抵抗は行き場
のない熱に変化して体にたまっていった。

「ん・・・ふぁ・・・」

セラヴィーどろしーの両手を解放していたが、それはもう体を這いまわるセラ
ヴィーの頭に添えられているだけだった。

「(もっと触れられたい。もっと吸われたい。おかしいわ・・・もう何も考えられ
ない)」

熱はどろしーの理性を犯し、欲情する体に恭順させる。
あげる声は淫らに素直に快感を感じている事をセラヴィーに伝えた。素直さに
セラヴィーは愛しさを押し隠すと既に濡れている両脚のつけ根に手を伸ばした。
すぐにどろしーは膝を閉じるが力の入っていないそれを開き、割れ目の膨らみ
を擦りながら声をかけた。

「感じ過ぎですよ」
「だって、体が・・・ぁ」
「体?・・・ココ?」

セラヴィーは膨らみを押しながら割れ目に指先をいれた。クチュと小さな音が
する。

「ぁ、ぁ、ぁ、」

気持ちよさともどかしさが込み上げて、体の中をぐるぐる回る。行き場のない
それは、喘ぎか意味不明なうわ言になり、それでも収まりがつかない。

「ん、ぁ、ぁ、・・・もっと」
「もっと・・・何?」

わざと濡れている指でどろしーの頬をなぞり、開きかけている口に舌を入れて
絡ませた。

どろしーはもどかしくて両手をセラヴィーの肩にかけてキスを求めた。舌を入
れられるだけでは足りなくて、セラヴィーの下半身に触れたどろしーの体は無
意識それを求めてすりつけるように僅かに浮く。

「何を『もっと』ですか?どろしーちゃん」

面白がったセラヴィーは顔を離してどろしーの下着を力の抜けた脚から抜きと
った。どろしーが困ったような真っ赤な顔をするとセラヴィーはそれで満足し
微笑みながら、

「体は素直に応えてくれるのに」

と下着を脱ぎ捨て、濡れたそこに肉棒の先をさし込んだ。

「ひぁん」

悲鳴とも喘ぎともとれない声があがり、きゅうとそれを締め付けようとした。

「どろしーちゃん、答えてくださいよ」

セラヴィーはどろしーに囁きながら、何度も先端だけをゆっくり出し入れして、
とろとろ出てくる愛液と絡ませるのを楽しんだ。

「んはぁ、あ、あ、・・・早く・・・終わらせ・・・ぁ・・・なさいよっ」

どろしーはなんとかそう言ったものの、もどかしさは溜まる一方で卑猥な願い
事を何度も口走りそうになりながら必死に耐えていた。

「・・・・・・いじっぱり」

それだけ言うと、セラヴィーはどろしーの腰を掴み、深く己の肉棒を入れた。

「あぁぁぁぁっ」

それだけでどろしーは軽く達して声をあげるが、セラヴィーはやめることなく
注送を繰り返す。

「あぁ、あっ、あっ、あっ、あっ、」

どろしーは堪らず嬌声をあげた。その度に膣がキュッと肉棒を締めつけ、愛液
が溢れ出て肉棒に絡みついた。

「くぁっ・・・どろしーちゃんっ・・・!」
「セラヴィっ・・・」

二人は名前を呼びあうとほぼ同時に果てた。

「・・・・・・」

セラヴィーが先に体を起こし、隣でぐったりと眠ってしまっているどろしーを
見た。ふと、どろしーの顔に濡れて貼りついているピンクの髪が気になり、手
にとってみる。

「好きです」も「愛しています」も思いとどまらせる髪は、濡れて艶やかに光
っている。セラヴィーはどろしーちゃんとアクセスが会ったのもそう言えばこ
の色に変わってから・・・と思うと無意識にその手を握りしめた。

「忌々しい色ですね」

呟くようにそう言うと、本当に髪の色が全ての元凶の様な気がした。






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