僕と君の間に生まれた子供は嫌いじゃない(非エロ)
湯川学×内海薫


新婚生活が始まって半年、ようやく2人での共同生活にも慣れたきた頃だった。
相変わらず湯川との喧嘩のようなやりとりはしょっちゅうであったが出逢った頃に
沸いてきたドス黒い感情などはもうなく今ではそんなやりとりでさえ幸せに感じていた薫であった。

そんな薫の悩みになっていたのが「出産」であった。
結婚してから半年で子供の話題なんて早いとは重々承知していた薫であったが、
湯川の年齢を考えると、のんびり構えていたら夫は40代に突入してしまうではないかと思っていた。

(さすがに子供が成人した時に先生が還暦なんて嫌だな・・・先生は関係ないか。変人だし)

しかし「子供嫌い」を自称する湯川にこのことを話すのはただでさえ恥ずかしいのに勇気が必要だった。

非番で二人でゆっくり食事ができるこの日に薫は思い切って質問をぶつけてみた。

「どうした?早く食べないとせっかく作った料理が冷めてしまうぞ」いつもと変わりない湯川。
「あのですね・・・私たち結婚してもう半年じゃないですか・・・」
「そうだな。君と僕が結婚した割には順調な夫婦生活だと思う」
「ですよね!・・・ですからその・・・次の話をしませんか?」
「次?はっきり言ってくれ。なんの話だ」
「え〜〜〜っと・・・」


「・・・子供のこと・・・どう思ってるんですか?嫌いですよね・・・」

もう薫は完全に下を向いてしまっている


「確かに子供は非論理的で嫌いだ。・・・でも」
「でも?なんですか?」
「僕と君の間に生まれた子供は嫌いじゃない」

この変人が時折放つ愛しい言葉は薫の心を見事に貫き、薫は安心して少し涙目になっていた。

「・・・それに僕が一から教育すれば非論理的な子供にはならない」
「ちょっ!子供にいきなり物理的だの化学的だの教えないで下さいよ!!」

安心できたのは束の間だった。湯川が教育パパだったとは薫はまったく想像できていなかった。
准教授でありながら「物理学の天才」のDNAを持つ子供が湯川本人からマンツーマンで指導されたら
一流大学に簡単に入れるエリートに成長するであろうことは薫にも容易に想像できた。ただ・・・
湯川と湯川Jr.と自分の3人の食卓を想像した途端、薫は寒気がした。

「子供が中学生になるまでには相対性理論を理解させたいな、やはり。フハハハ」

早くも子供育成計画を話し始めた湯川を見て薫は焦った。

「最初は女の子がいいです!それであたしが可愛いお嫁さんに育てるんですから!!
それに先生が育てて子供まで変人になったらどうするんですか?」
「ちょっと待て!料理も満足に作れない君が可愛いお嫁さんを育てられるのか?
僕にも子供を育てる権利があるだろう!」
「絶対っ!絶対っ!ぜぇ〜〜〜〜〜〜〜〜ったぁい女の子ですからね!!!」

(ふっ、勝った!)

ご満悦な薫とは対照的に
湯川は黙り込んでしまった・・・ただこのままひきさがる湯川ではなかった。

「君がそこまで女の子にこだわるなら異論はない。君は知っているか?」
「何をです?」
「女性が性行為の最中、絶頂を迎えた瞬間に男性からの精子を受精すると女の子が生まれるという説を」
「いきなり何を言ってるんですか!?まさか信じてるんですか!?」
「まさか。普段ならそんな俗説なんの興味もない。ただ君がどうしても女の子が欲しいというのなら
見逃すことのできない事柄だとは思わないか?面白い。非常に面白い。」
「そんな実験みたいなこと絶対イヤです!!」
「早く子供が欲しかったんじゃなかったのか?」
「うう・・・イジワル・・・」

こうしてしばらくの間、薫は絶頂地獄の日々に突入してしまったのである。

一年後、薫は産婦人科の病室にいた。あと数日で出産予定日だったのだ。
薫のお腹はすっかり大きくなっていた。

「女の子を産む実験」のせいで薫はあっという間に妊娠してしまった。
生理はいつか排卵日はいつかまで湯川に調べられて「狙い撃ち」されてしまったのだから当然ではあったが・・・

城之内が見舞いにきた。

「どう?調子は?」
「桜子さん、来てくれたんですか?」
「勿論。薫ちゃんの出産が近いんだから当然よ。結婚してから1年半で出産なんて早かったわね」
「はは。まあ・・・」

笑顔がひきつる薫。

(女の子を産む実験をしたなんて死んでも言えない・・・)

「順調な夫婦生活が送れてそうでとても羨ましいわ」
「おかげさまで。あははははは」

笑うしかなかった。

湯川が栗林さんから大人の玩具を借りてきたと聞かされた時は、「離婚してやる!!」と大喧嘩に発展したことは
誰も知る由もなかった。おかげで薫は研究室に行けなくなってしまった。
この時ばかりは湯川が毎日のように頭を下げていたことも誰も知らない。


数日後、無事に子供は生まれた。男の子だった。
しかし、薫は自分のお腹から生まれた我が子の赤ん坊を見て幸せで満たされていて
男の子だ女の子だなんてことはどうでもよくなってしまった。

「先生。やりましたね」
「よくやったぞ。内海君。本当に嬉しいぞ。でも・・・・」
「でも何ですか?」
「やっぱり女の子が欲しいならまた頑張ろう。今度こそ成功させてみせる」
「・・・人が生まれてきた新しいに感動してるっていうのに・・・この変態!!」

バチーーーーーン!!


これが湯川家第1子誕生の秘密である。






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