湯川学×内海薫
『先生が堪えられないのなら、私も一緒に堪えますから』 内海君が涙目が、眼差しが、僕を狂わせた ―――あの時僕は、受け入れがたい真実を見抜いてしまった直後で、気が動転していたのかもしれない。そうではなければ今の状況は説明がつかない――― 『せん、せ……っぷは…ちょ、待っ……んっ…はぁ』 一気に抱き寄せキスをした僕の腕を解けないと判ったら、頭をのけ反るという、なんとも色気のない方法で唇を離した 内海君が反るから僕は前のめりで唇を求めに行く なんとも不格好なファーストキスだ 次第に大人しくなった内海君は、キスをしながら柔らかくか細い手で僕の頬を優しく撫でる 濡れてる? あぁ、僕は涙を流していたのか… それに気付くと、何故だか内海君を激しく求めなくなった 内海君は僕からそっと離れ、僕の目をじっと見る 困惑しているような、でも優しい目だ… そして、彼女もまた泣いている…… ふわっと抱き着かれた 『私も一緒に堪えますから…』 あぁ、抱き着かれたんじゃない。抱きしめられたんだったな ―――石神、これが恋なんだな。君のことで気が動転していたんじゃない。愛なんてさっぱり解らないが、解らないことが愛なのかな。ただ、彼女が愛おしくて堪らないんだ。彼女が特別なんだ――― 『あ、あの!えっとその…あー、なんて言ったらいいんだろ…。私、実はこういうこと経験なくてよく判んないんですよ。だから…正直怖いです…』 『ん。つまり君は処女だから痛みを最小限に止めるよう、十分に愛撫をしてから挿入してほしい、そう言いたいのか』 『なんでそういうこと言うのよ!バカ!』 『何か違うのか』 『何か違うのか、じゃなくて!あーっ、もういいです!』 怒って起き上がろうとする内海君を抱き寄せ、耳元で囁く 『愛してる』 『え…?もう一回言って…』 『愛してるよ、薫』 一気にご機嫌になった薫に満面の笑みで 『KISSして』 と言われ、ご要望に答える 僕は彼女が傍にいてくれれば、いかなることにも屈しない 石神…愛の形は色々あるのだと思うが、君の愛の形は美しいが歪んでいる 相手にもっと伝えたってよかったんじゃないか もっと話してもっと笑って 親密になったきっかけがこんなことだなんて、悲しすぎるじゃないか こんな道しかなかったのか? 僕が君と同じ立場になったとしたら、どうするのだろうな その時は、君のような天才が他に現れないことを祈るよ SS一覧に戻る メインページに戻る |