ヤッタヤッタ踊りのあと(非エロ)
村井茂×村井布美枝


原稿料は入らなかった。
でも「鬼太郎」の長編を続けて描ける。

布美枝は「謹呈 村井布美枝殿」と書かれてプレゼントされた
「墓場鬼太郎」を抱えて大喜びで思わず踊ってしまった。
茂に「何だ、その踊りは?!」とツッコまれたが、
そんな夫の手を取って「あなた、本当にすごいです!」と言うと感激して涙を零した。
茂は呆れたような、けれどにっこりとした顔で、布美枝の頭を撫でてくれた。

布美枝は本を抱いたまま、茂にぎゅうと抱きついた。
心底、茂を尊敬し、愛おしいと思った。
茂もまた、そんな布美枝をぎゅっと抱きしめた。

少しして、布美枝は身体を離すと、ちらっと茂を見上げて、

ちゅ

まさに、そんな音で、キスをしてみた。
「おっ」という顔の茂。

「プレゼント、のお礼です」

恥ずかしそうに言うと、茂の腕から離れてちゃぶ台で本を眺め始めた。

ぽりぽりといつものように茂は頭を掻きながら、
本に隠れて恥ずかしそうにしている布美枝を見て、少しほくそ笑んで言った。

「本一冊プレゼントした割りには、礼が甲斐ないな」
「え?」

そして茂の方から、ちゅ、というキス。

すぐに離れたが、茂はやはり物足りないという感じ。
布美枝は「次」と「次以降」の流れを予感して、思わず立ち上がった。

「ゆ、郵便受け見とらんだった…!そろそろまたお義母さんから返事が…」
と言いながら、そそくさと玄関の方へ向かう。

しかし玄関を出る前に捕まって、抱きしめられてしまった。

「ちょ…こ、こげなとこで…。中森さんが降りてきたら」
「さっき出かけとったわ」
「…でも…」
「本一冊分の礼はまだまだこれでは回収できんわ」
「ど…どれくらい要るんですか…」
「さあ…」

意味ありげににんまりとした笑みを浮かべた茂の顔を、
次の瞬間には視界から見失っていて、今度はぎゅっと詰まったキスをされた。
もう布美枝には抗うことはできない、このまま崩れるだけだ。
けどそれも良い。この腕に抱かれるたびに、茂への愛おしさは増すばかりだ。

「おい、ゲゲ、おるかー!」

バタン!と勢いよく開いた玄関から、入ってきたのはイタチの浦木。
玄関のまん前の廊下でコトに及んでいたのだから、
茂も布美枝も石のように固まってしまった。

「あらま。まだ明るいというのにお前ら…」
「…う〜〜〜〜るぁ〜〜〜〜き〜〜〜〜!!」

怒髪、天を衝く、とはこの例えである。
茂はニヤニヤとするイタチ顔の男を外に蹴っ飛ばして
しばらく外で言い争いをして近所の顰蹙を買っていた。

布美枝は夫婦の秘め事を他人に見られたショックで、
しばらくその場を動けないでいた…。






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