村井茂×村井布美枝
怒涛の重複締切をやっつけて、ふらふらな足取りで茂は寝間の襖を開く。 (ん…。流石にもう寝とるか……) 窓の外はもう僅かにほの白く明け始めていて、明かりがなくても愛妻の寝顔が見えた。 藍子が抱きついてきて寝苦しかったのか、しっとりと汗ばんだ浴衣の袂が開き、 なだらかな谷間が覗けている。 「……」 元より徹夜は得意ではない。 肩も目も、体全身が泥のように眠りを求めている状態だというのに、頭はどこかまだ、 締切戦争の興奮が冷めきらず、ほんの些細な寝乱れ姿でまた火がついた。 「……元気なもんだのー…」 己の身でありながら、熱を集めてそそり立ったものを見下ろして呆れてしまう。 自分に似て、一度寝ついたらなかなか起きない果報者の藍子の頬をつんつんと突つくと、 そっと壁向きに横たわらせて、茂は布美枝の背中を抱き寄せた。 耳元から滑り落ちる黒髪を唇で掻き分けて首筋にねぶりつく。 腰から胸元に回した右手で胸元を探ると、既に乱れた浴衣を開くのは容易だった。 「ん……」 幽かな寝息に甘い色が交じる。 眠っていても体は感じるものなのだなと、茂は注意深く様子を窺っていた。 どこまでしたら起きるだろうか……? 柔肉を揉みしだき、突端を摘まんでみれば布美枝の身が捩じれる。 吸いつくようにしっとりと指になじむ赤い蕾がやがて硬さを増して張っても、まだ起きない。 肩を引いて仰向けにし、今度は突端に舌を絡ませてみる。 上下する胸は明らかに速度を増してはいたが、まだ起きる様子はなかった。 (…まだ、起きんもんなのか…) 徐々に昂りの脈動が速度をあげる。興奮のままに茂は布美枝の胸に吸いついたまま、 浴衣の裾をまくし上げて腿をなぞり上げた。 「……ぁ……」 流石に気付いたのか、びくりと膝を震わせたが、 まるで茂が進める手を誘うように、そっと割り開かれた。 (……む。流石に…濡れとらんなぁ……) しっとりとした秘唇はまだ茂の指を受け入れるほど湿ってはおらず、 無理に突き立てれば拒むように張り付いてしまう。 茂の頭が布美枝の体の上で、胸から腹、下半身へと移動して、 右肩に左足を担ぎあげて顔を埋めた。 秘めたる部分は堪らなく甘い匂いが立ち込めて、果実にむしゃぶりつくように 夢中になってしゃぶりつく。 居心地悪そうに腰をくねらせても逃さぬよう、左腰の付け根を掴んだまま 肉襞に舌を伸ばして奥まで味わっていると、 まるで茂の吐息に焚きつけられたように布美枝の秘所が熱く火照るのがわかった。 「……ゃん…」 まだ覚束ないうつろな寝言に茂はぴたりと舌を止める。 「…お父ちゃん……? 何…しとるの…」 うっすら開いた瞳を潤ませて、まだ夢見心地な様子で布美枝が尋ねた。 「何…って。決まっとるだろうが」 顔を上げ、濡れた口元を手の甲で拭う。 布美枝はまだぼんやりした表情で「そげですか…」などと呟いている。 「……すまんが、体力が持たん。お前が乗れ」 「はい…はい……」 半ば目を閉じたまま、茂が腕を引くままに胡坐をかいた茂の上に座り込むと、 ぎゅっと茂の肩に抱きついた。 「お父ちゃーん…」 愛おしげに抱きついたまま、安心したようにすうっと目を伏せる。 「おい…。ここで寝てはいかん…っ」 「はい…はい…」 「……仕方がないなぁ」 布美枝の片尻を掴み、引き掴むようにして位置を定めた。 「んっ…!」 抱き寄せた温もりに微笑んでいた布美枝の表情が変わる。 切なげに眉根を寄せ、突き上げた衝撃に肩を震わせた。 「あっ…ぉ……お父ちゃ…ん、何……しとるの…。んんっ」 再び開いた瞳には光が宿り、漸く覚醒したのだと気付く。 前後に揺らせば充分に濡れそぼった秘唇が水音を立て、 布美枝は頬から全身から真っ赤にして身を震わせた。 「やっ…」 「ほれ。ちゃんと動かんと…いつまでも終わらんぞ」 暢気な口調で無茶なことを言う。 まだ寝起きのぼんやりとした頭で混乱したまま、布美枝はきゅっと唇を食んだ。 「んんっ…ん…く……っ」 恨めしさを伝えるように茂の肩を爪立てるほど掴み、前後上下に腰を揺らめかせる。 突き立てられる茂自身に膣内を抉られて、布美枝は耐えるように首を左右に振った。 満足げに笑んでいた茂の表情もやがて苦しげに強張り、 荒い息を落として目の前に揺れる乳房にむしゃぶりつく。 「あ……っ…い、いけん……っ…いけんよ…」 全身に甘い痺れが走り、必死に手を口に当てて呻き声を覆い隠す。 それでも突き上げる律動は止まらず、布美枝の腰がびくりっとしなった。 「……っっ!」 硬直する間も身を突く痺れが止まらない。 火照った頬には熱い涙が伝い、事切れたように力を失った。 「ああ…おい」 仰向けに横たわった布美枝を追うように、繋がったまま覆いかぶさる。 まだ爆ぜているのか、昂りを包み込む肉襞はびくりびくりと締め付けてくる。 堪らない感触がビビビッと背に走るが…… 「……おかしい」 「…え…?」 「いけん」 今にもはち切れんばかりに脈動を走らせているというのに、達する気配がない。 妙に興奮がいき過ぎてしまっているのか、疲労で体がバカになっているのか。 「っ……ああっ!」 再び律動が始まり、布美枝は両手で口を塞ぐ。 一度達した身はいつも以上に敏感で、確かめるように前後されただけでも 蕩けそうなほど熱く身の内に響く。 (どげしたんだ…? こんなに…心地ええのに……) 裂けんばかりに激しく前後すれば、さらに硬度は増す。 ねっとりと締め付けてくる具合も充分にいいというのに、果てが見えない。 焦れば焦るほど腰の蠢きは激しさを増し、苦しいのか快楽なのかも、 よく分からなくなってきた。 「しげぇ…さん……っ」 額に汗した茂の頬に手を伸ばし、ぎゅっとその頭ごと抱き寄せる。 腰を止めた途端、深く息をついたが、やはり達することができない。 呼吸も整わぬほど激しく鼓動が躍っていた。 「もう…堪忍……」 耳元に響く甘い声。 ふと顔を上げれば、潤んだ瞳が茂に嘆願するように歪んでいて… 「う…っ」 突如、背に響く痺れのまま腰を突き立てると、 茂は痺れるように溜まり切ったものを吐き出した。 突き上げる激情が布美枝の膣奥を満たす間、茂は身を硬直させて布美枝を掻き抱いていた。 息も止まる快楽の果てに、目の前が暗くなってこのまま意識が落ちるかと思うほどだった。 「……っっ」 崩れ落ちるように布美枝の上に覆いかぶさったまま、茂の広い肩が上下に揺れる。 「……お父ちゃん…?」 流石に脱力した大の男が圧し掛かったままでは布美枝も息苦しい。 苦しげに呻くと茂はごろんと横になり、仰向けになって息をついた。 「……だらず息子だ……」 「え?」 「全く。主人のいうことをきかん」 湯気でも出そうなほど赤く横たわった息子をちらりみると、 布美枝はくすくすっと笑い出して「もう…っ」と頬を膨らませた。 「お前ぁが甘やかすのがいけんのだ」 「何言うちょりますか。イタズラ小僧なのは、お父ちゃん譲りですよ」 直視しているのも恥ずかしく、そっと上掛けを掛ける。 「寝込みを襲うなんて…末恐ろしい。厳しーく躾せんといけんですね?」 まだくすくすと笑いながらそう言うと、茂はフガフガと口ごもりながら、 「……あまり厳しく躾けても…いけん……」と、ぽつり呟いた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |