バナナとスコッチ
村井茂×村井布美枝


プロダクション設立の祝賀会が終わったあと、かたづけをしていたフミエは、
急にお腹が減っていることに気づいた。天ぷらやギョウザなどを大量に作って
いるうちに油酔いして食欲をなくしてしまい、また会の間は大勢の客の接待で、
食べている暇などなかった。
 手つかずのままたくさん残っているバナナが目に入った。祝いに駆けつけてくれた
ものの、大勢の人々に囲まれている茂に気後れを感じたのか、寂しそうだった
戌井が持ってきた手みやげだ。フミエも、茂とこのところほとんど落ち着いて
話す暇もない日々が続いており、戌井の気持ちがわかるような気がした。

「せっかく戌井さんが持って来てくれたバナナ、誰も食べんと。」

フミエはバナナを一本とり、皮をむいてひと口かじった。
甘くてやさしい味が口いっぱいにひろがり、ほっとひと息ついた。

「なんか、元気が出る味なんだよね・・・。」

 貧乏だった頃、藍子がお腹にやどったことを告げたら、茂に困った顔をされた。
姉の家でこれからのことを考えてみようと思った矢先、茂が連れ戻しに来てくれた。

「あの時公園で食べたバナナ、おいしかったなあ。本当に『なんとかなる。』
 って思えたもん。」

 藍子は無事生まれたが、その後生活はますます苦しくなった。そんなある日、
茂が売れ残って黒くなったバナナを買ってきた。おそるおそる口に入れてみると、
少し発酵している感じはするが、甘くてとろけるようにおいしかった。

「異国の果物なのに、なんだか懐かしい味・・・。それに、元気が出ますね。」
「そりゃあそげだ。俺の命を救った果物だからな。」

茂は、戦争中マラリアの再発で弱っていた茂にバナナを持ってきてくれた現地の
少年トペトロの話をしてくれた。

 フミエがバナナをむいて渡すと、茂は三口くらいであっという間に食べてしまう。
とうとうフミエがまだ持っているバナナにかぶりついて、フミエの指まで
食べてしまった。そのまま甘噛みされ、フミエはくすぐったがって笑った。

「やぁっっ・・・。くすぐったいっ。」

手を引っ込めようとしたが、茂は細い手首をつかんで引き寄せ、フミエの唇を奪う。
フミエも目を閉じて応える。しばらくむさぼっていたが、茂はフミエをそのまま
抱き倒し、ブラウスのボタンをはずした。いじらしい乳房の先端が、早くも
とがりを見せている。茂は片方を指でつまんでこすりあわせながら、もう片方を
赤子のように吸い始めた。

「や、やだっ。お父ちゃん、こげなところで・・・!」

フミエはあらがったが、次第に力が抜けていく。茂はスカートの中をまさぐり、
フミエの一番感じる部分をさがしあてた。あふれ出すぬめりをからめながら、
意地悪くその周辺を責め始める。フミエの腰が揺れた。

「あっ・・・あぁ・・・ん・・・ぃ・・・やっ。やぁぁっ・・・。」

フミエは茂にしがみつき、広い胸に顔をうずめようとしたが、茂はそれを引き剥がし、

「ちゃんと、エエ顔を見せえ。」

と言うと、まともに触れてもらえず、痛いほど感じているその核心を、あるか
なきかのような力でなで始めた。
フミエはつつしみも忘れ、腰をよじり立てて、あられもない声をあげて達した。
茂の背からパタリと両手を落としたフミエの目には涙がたまり、唇は半開きになっている。

「俺の方も・・・たまらん。」

茂は、フミエの乱れるさまに煽られて、はちきれそうになっている昂ぶりを、
イッたばかりのフミエの秘所に突きこんだ。

「!・・・だっ・・・だめっ・・・。」
「熱いな・・・。」

まだわなないている肉襞が、茂自身をおしつつみ、いきなりもっていかれそうになる。
茂は、どこもかしこも過敏になっているフミエの首筋や乳首を愛撫しながら、それを
必死でこらえた。力強いひと突きが、もう一度フミエを絶頂の波に押し上げた・・・。

「あっ。ずるいぞ!一人でバナナ食うとる。」

バナナの次のひと口をかじるのも忘れて、甘い想い出にふけっていたフミエは、
背後からの突然の大きな声に飛び上がるほど驚いて振り返った。
少しだが酒を飲まされ、気分が悪いと二階で寝ていたはずの茂がそこにいた。
今、自分が思い出していたことを茂に知られたら、死にたいほど恥ずかしい。
フミエはどぎまぎしながらバナナを一本とって茂に渡した。

「なんだー、むいてくれんのか。」

フミエは急いで皮をむくと、茂に差し出した。

「持っとってくれ。」

茂はフミエの手首をつかむと、得意の三口食いであっという間にフミエの指に到達し、
指の一本一本をおいしそうに味わった。
フミエの身体に戦慄が走った。手首をつかんで引き寄せられ、顔が近くなる。
だが、茂はフミエのほおにチョコン、と唇で触れただけだった。

「口を吸うたら、次が欲しくなるけんな。ガマンだ、ガマン。」

茂は、フミエを後ろから包みこむように抱くと、大きな手でお腹のふくらみにさわった。

「藍子の時は、苦しかったな。けど、今度は安心して産ませてやれる。」
「・・・はい。」
「会社もできたばっかりで、将来どげなるかわからんが、俺もバリバリ働くけん、
 お前は何も心配するな。」
「はい。」

 まだ酒が残っているから朝まで寝る、と立ち去りかけて、茂が言った。

「深沢さんからもらったスコッチな、戌井さんに届けてやってくれ。ウチにあっても
 無用の長物だけん。奥さんもイケるクチらしいぞ。それからな、俺はまだ
 北西出版の顧問だけん、いつでも相談にのります、と伝えてくれ。」
「・・・はい!」

(戌井さんのこと、ちゃんと考えてくれとったんだ!)

さっきまで茂の大きな手がつつんでいたお腹に両手でふれると、茂のあたたかさが
伝わってくるようだった。

「あんまりガマンというもんをせんお父ちゃんが、あげにガマンをしとるんだけん、
 私も強くならんといけんわ。二人の子のお母ちゃんになるんだけん・・・!」

この先、不安や寂しさを感じることもあるかもしれないけれど、いつでも私の
歩いていく道はひとつだけん、フミエはあらためてそう心に決めたのだった。






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