村井茂×村井布美枝
「ホント、寝方はしげぇさんにそっくり」 愛する旦那との愛の結晶である藍子の頭を撫でながら、フミエはくすっと笑った。 「藍子、眠ったか?」 襖をそーっと開けて、茂が入ってきた。 「はい。よお寝ちょります。」 「そげか…」 茂は後頭部をボリボリ掻きながら、ぐっすり眠る愛娘の隣に座った。 「もうお仕事ええの?」 「ああ。明日締め切りの分はもう描き終わった。 次の締め切りはまだ先だけん、今日はもうおしまいだ。」 そう言いながら茂はフミエを両脚で挟む様に座りなおし、フミエの背中に額をあてた。 「どげしました?眠たいんですか?布団敷こうか?」 「ああ。敷いてくれ。」 そう言いながら茂はスススと尻を前進させ、フミエの体に股間を押し付けた。 「!?……お父ちゃん?」 茂の股間の変化に気づいたフミエは、驚いた顔でそっと後ろを振り返った。 「ん…っ」 その瞬間茂に唇を奪われた。 久しぶりのキス。 久しぶりすぎて、フミエにはとても長く感じた。 唇を離した後、茂はフミエの耳元で囁いた。 「近頃締め切りに追われてばっかりだったけん、こげな時間がなかったな。 時間ができたと思いきやお母ちゃんの月のものと重なったり、来客が来たり…。 そろそろやらんと、気が持たん。」 茂が漫画賞を受賞して以降、以前と比べ物にならないほど漫画の注文が殺到した。 フミエにとっても茂にとってもそれは良いことであるが、何せ夫婦の時間が取れない。 更に頻繁に原稿取りが来る状況であるため、キスすらできない毎日が続いていた。 フミエ自身もそのことをとても気にかけており、愛する旦那との営みを心の奥底から欲していた。 だから久しぶりに締め切りの間が開き、旦那との時間ができたことはとても嬉しかった。 しかし、せっかくゆっくりできる時間ができたのならしっかり休んでほしいという思いもあり、 フミエは複雑な心境だった。 「お、お父ちゃん…せっかく早く寝れるんですけん、 今日はぐっすり休んでごしない…」 「嫌だ。」 「もう…子供みたいな言い方して…」 フミエは困ったふりをしながら、そっと茂の唇にくちづけをした。 「ちょっこし待ってください…すぐに布団敷きますけん…」 「おや?今日はやけにあっさりと受け入れるな…。 ほほぅ。そうか。お前も俺を欲しとったんだな。」 「なっ!そげな!…こと……あります…」 フミエは自分でも不思議なぐらい正直に言ってしまい、 恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまった。 「ふ、布団敷けませんけん、ちょっこしどいて下さい!」 「今日のお母ちゃんは素直だなあ。 ほれ、早く敷いてくれんと、俺の息子が待ちくたびれるわ。」 すやすや眠る藍子のすぐそばに布団を敷き、その上でお互いに脱がせ合った。 「こげに近くで、藍子起きちゃいませんかね?」 「大丈夫だろ。俺の娘だ。ちょっとやそっとじゃ起きんわ。」 「そげですね。あ…電気…消してごしない…」 「何今更恥ずかしがっとるんだ。お前の体は隅々まで知っちょる」 そう言うと茂はフミエをゆっくりと布団に押し倒した。 (久しぶりにじっくり見たが…30過ぎに見えんぐらい綺麗な体しとる…) (久しぶりのしげぇさんの裸…逞しい右腕…やっぱり私にはこの人しかおらん…) 茂はそっとフミエの胸の谷間に唇を落とした。 臍…乳頭…首筋…唇…次々と… まるで自分のものだという印を付けるかのように… 「フミエ……」 (いかん……久しぶりだからか、もう限界に近づいとる…) 「しげぇさん?どげしたの?」 フミエが軽く頭を上げ、茂の方を見た。 茂は無言でフミエの秘所へ手を伸ばした。 もうそこは十分茂を受け入れる準備ができていた。 「あっ…ん……しげぇ…さん…い…れて…」 「…いくぞ……んっ…」 はちきれんばかりの茂の分身を一気にフミエの中へ挿し込んだ。 「あぁっ……!」 「っ…はぁ……動くぞ…」 茂はゆっくりと腰を動かし始め、しだいにスピードを上げていった 「あっ…あぁ…しげぇさん!…あぁっ…す…き…」 「っん…ハァっ…っく…ああ……わかっちょる…」 「あぁっ…」 「ハッ…っっく…」 最後は二人同時に果てた。 「ハァ……ちょっこし早すぎた…久しぶりすぎたか…」 「…え?」 「せっかくだからもっとじっくり味わいたかったんだが…体がいうことをきかん…」 「そげですね……また…してごしない?」 「ああ。しないと鈍るってことがよくわかった…」 「クスッ…もう年ですからね…」 「だらっ」 裸のまま向き合いながらクスクス笑っていると、突然バンッと音が鳴った。 「「!?」」 驚いて音がしたほうを見ると、藍子が寝返りをうった後だった。 「なんだ…寝返りか…」 呟くフミエの下腹部に突然あたたかい重みがきた。 「ど…どげしました!?」 茂がフミエの下腹部に大きな右手をそっとあてたのだ。 「ん…藍子にもそろそろ姉妹が必要かなと思って…」 「そげですね…一人だと寂しいでしょうね…」 「実っとらんかな?」 そう言いながら茂は優しく腹をなでている。 フミエはその右手に両手を重ねた。 「どげでしょうね?こげなことは神様にしかわかりませんけん」 「そげだな。…あ!」 「どげしました?」 「実っとったらそれはそれで困るなぁ…一年以上もお預けを食らうことになる…」 「もう!そげなこと言って…本当に実っとったらどげするんですか!困るだなんて……」 フミエはそう言って茂の手を払いのけた。 「冗談だ。ごめんごめん。」 茂はそっとフミエを抱き寄せた。 「冗談でも…そげな事言わんでくだ…あれ?」 茂は一瞬の間に眠りについてしまっていた。 「もう…すぐ寝るんだから…。あ!」 フミエは重大なことに気がついた。 「裸!お、お父ちゃん!風邪引きますよ!お父ちゃん!」 必死に揺すってみたが、全く起きない。 「もう!!風邪引いても知りませんからね!!」 ――――――数ヵ月後―――――― 「……気持ち悪い…」 「え…」 「あっ…」 フミエが口を押さえながらバタバタと部屋を飛び出していった。 「おい!大丈夫か!」 「気持ち悪い…俺が!?」 鏡で自分の顔を見ながら口をワナワナさせている浦木を放ったまま、 茂はフミエの後を追いかけ洗面所へ言った。 「何か悪いもんでも食ったか?」 「明日、病院に行ってみます」 「病院!?そげに悪いのか?」 「もしかしたら…できとるかもしれません…」 「できとるって…え、赤ん坊か!?」 「はい」 (なるほど、つわりだったわけか…。この夫婦にも二人目、やることやっとるのう) 浦木が二人の様子を覗きながら小さく拍手をしていることに二人は気づいていない。 「そげか…。」 茂はそっとフミエの下腹部を触った。 「ちゃんと…実っとったようだな。」 「え?」 「あの時、ちゃんと実っとったんだ。」 茂は嬉しそうな笑顔を浮かべながらそっと腹を撫で続けている。 「あの時って…」 「だら!もう忘れたのか。藍子に姉妹が欲しいって話をしただろ?」 「あぁ!ほんと、ちゃんと実っとったんですね。これで藍子も寂しい思いせんですみますね。 あ…お父ちゃんにはちょっこし我慢してもらわないけんけど…」 そう言ってフミエは茂の手に自分の手を重ねた。 「ああ。………大事にせえよ。」 「はい。」 フミエの腹の上に手を重ねたまま二人は幸せそうに見つめあった。 (まったく…お熱うございますね… おっと、覗き見してるのがばれたらゲゲの拳骨を食らうことになる… 早いとこ退散せねば…) そして浦木はそーっと村井家から出て行ったのでした。 SS一覧に戻る メインページに戻る |