ニューイヤーズ・イヴ(いちせん夫婦ネタ)
番外編


「ねぇ、どう思う?出張、出張ってさあ・・入社してまだ1年経たない新入社員が、
いきなりそんなにいっぱい仕事まかせられるもんなの?・・・絶対あやしいよね?」

12月なかばのとある金曜日。綾子は学生時代のバイト仲間の女子ふたりと飲み会を
していた。

「綾子さぁん、私の話も聞いて下さいよぉ。うちの彼氏なんすけど、仕事やめて
ミュージシャン目指すとか、もう終わってないすかぁ?」

ひとりは綾子と同い年の女子大生の遥香。社会人の彼が忙しくてなかなか会えない
ことへの不安を訴えている。もうひとりは綾子よりひとつ年下のフリーターの紗絵。
生活力のない彼に対する愚痴を、遥香と争うように綾子に訴えた。

「ちょっとサエちゃん。私が先に綾子に相談してるんだよ。順番守ってよ順番!」
「・・・遥香さんこそ、さっきから自分ばっかしゃべって、ズルイっす。」

3人は、同じ居酒屋でバイトしていた頃から仲がよく、綾子が就職してバイトを
やめた後も、会社員・学生・フリーターという立場の違いにもかかわらず、
こうして年に数回くらいは会っていた。話す内容はもっぱら恋愛のこと。それも、
ふたりの悩みを綾子が一方的に聞かされることが多かった。

「ま・・・まぁまぁ。そんな順番なんて。あんたたちの方が私よりよっぽど経験豊富
なんだし、なんでそんなに私に相談してくるわけ?」
「綾子って、なんかこう頼もしいって言うか、思わず悩みを打ち明けたくなる存在
なわけ。」
「そうそう。人に言えないことでも綾子さんに打ち明けるとスッキリするっつーか?」
「・・・何それ?ひとを木のウロみたいに言わないでよ。」

子供の頃から一貫して女子の中で一番背が高かった綾子は、なぜか精神的にも
大人だと思い込まれ、友人達から何くれと相談を持ちかけられる存在だった。

(私・・・身体がデカイだけで、別に大人じゃないし。それに・・・。)

中学、高校・・・と進んでくるにつれ、綾子などよりよっぽど早くいろいろ経験している
友人たちから恋愛相談を持ちかけられ、綾子は複雑な気持ちで過ごしてきた。

(でも、ほんのちょっとだけ、わかるようになったかも・・・。)

綾子にも、今は恋人と呼べる人がいた。二十歳の時からもうすぐ2年越しのつきあい
になる。見かけはゴージャスなのに中身はおくてで乙女な綾子が、初めて身も心も
奪われるような恋をしている相手は、二人もよく知っている元バイト仲間の祐一だった。

(この子たちには、まだ言ってないんだよね・・・。)

もったいつけているわけではない。たしかに祐一はバイトの仲間うちで男女共に
人気があったし、祐一目当てで来る客もいるほどモテる存在だった。けれど、綾子は
自分が恋の勝者、とドヤ顔で言い放てる気分にはなれなかった。

(いまいち自信持てないんだもん・・・。)

心はもちろん、祐一にすみずみまで奪いつくされてしまっている身体の関係も含めて、
綾子が苦しいほど祐一が好きなことを、祐一にはすっかり覚られてしまっている。
けれど、祐一の方はどうなのかと言えば・・・。

「・・・綾子の方はどうなのよ?彼氏いるんでしょ?うまくいってるの?」

祐一のことを思い浮かべていたところに、遥香のタイミングの良過ぎるツッコミ。

「え・・・いゃ・・・あはは・・・。」

祐一に与えられる甘すぎる責め苦がふとよみがえり、身の内を熱くしていた綾子は、
どぎまぎした。彼のことが好き過ぎてつらいなど、のろけとしか受け取られない
だろう。笑ってごまかす他なかった。

「ねぇ〜もう一軒いこうよ〜。明日休みでしょ?」
「いや・・・今日、実家に帰らなきゃいけないんだ・・・ごめんね。」

まだまだしゃべり足りない感じの二人をなんとかなだめ、祐一との待ち合わせ場所へ
急ごうと思っていた矢先。見覚えのある黒のSUVがすーっと近づいてきて止まった。

(ぅわ・・・どうしよ・・・。)

「いたいた、綾子。今日ここで飲むって言ってたし、早く着いたからこっちまで
来ちゃったよ。なんであんな遠くで待ち合わせにしたの?・・・あれ?・・・ハルカと
サエじゃん、ひさしぶり!」

車から降りてきた祐一は、屈託なく遥香と紗絵に笑いかけた。

遥香たちに見られないように、わざと遠くの場所で待ち合わせにしておいたのに・・・。

「あ〜や〜こ〜。よくも私たちに隠してたね?」
「い・・・いゃ・・・なんかその・・・言い出しそびれちゃって・・・。」
「私が、綾子の身長に負けない男って、佐々木さんくらいだからつきあっちゃえって
言った時、綾子『まさか〜!2万パーセントあり得ない!!』って断言したよね?」
「え・・・う・・・またそんな昔のことを・・・。」

綾子はうろたえてこっそり祐一の顔色をうかがった。祐一は相変わらずの余裕の表情
だけれど、ほんの少し意地悪な光が目にやどっている。

「ち・・・力いっぱい否定しちゃった手前、つきあってるって言えなかったのよ。」
「綾子さんの彼氏の『ゆうちゃん』がまさかあの『佐々木祐一氏』だったなんてぇ。
あたしらずっとだまされてたんすね・・・。」

紗絵も負けずにうらんでみせる。祐一のSがかってきた視線と、遥香と紗絵の
裏切られたと言いたげな表情にはさまれてほとんど泣きそうな綾子に、遥香が一転、
ニカッと笑ってみせた。

「まあいいよ。・・・よかったね。本当は心配してたんだ。人の相談ばっかり聞いて、
綾子自身はどうなの?ってね。」
「スゲーお似合いだからいいっすけど・・・まあ、黙ってた罰に今度おごって下さいね?」

紗絵も、笑って祝福してくれた。3人は新年会の約束をして別れた。

「ふーーーーーん。2万パーセント・・・ありえない・・・と。」

遥香たちと別れ、車に乗り込んでホッとしたのもつかの間、今度は祐一の尋問が
待っていた。

「あ・・・だ、だからぁ、その頃は私、バイト始めたばっかりで、ゆうちゃんに怒られて
ばっかりいたし、将来こんなことになるなんて思ってもみなかったし・・・。」
「こんなことに・・・ねぇ。」
「い・・・いや、まさか私なんかが祐ちゃんの守備範囲内にあるなんて思っても
いなかったっていうか・・・。」
「ま、言い訳はこれからじっくり聞かせてもらうよ。」

(意地悪・・・私が祐ちゃんのことどれだけ好きか、知ってるくせに・・・。)

車を発進させた祐一の、完全にSモードに入った横顔に、綾子は泣きたい気分だった。

大晦日、綾子は振袖を着て祐一の実家の近所の神社に二年参りに行く予定だった。
大晦日に家にいない代わりに、綾子はこの週末実家で過ごすことになっている。
祐一は修行中の身で、綾子も仕事があり、なかなかゆっくり会うことも出来ない。
こうして車で実家まで送ってくれる間だけでも、ふたりにとって大事な時間だった。

「ゃ・・・だ、ゆうちゃん。」

交差点で止まるたび、手が伸びてくる。祐一は信号が変わるのを見逃さないように
ろくにこっちを見もしないのに、服の上から綾子のポイントを確実についてきた。

「んっ・・・ゃ・・・めて・・・。」

車が公園の横の暗い一角に静かに止まった。いつの間にか雨が降り始めていた。

「ゆうちゃん・・・?」

少し不安そうな綾子におおいかぶさるようにして口づけながら、祐一がシートを
倒した。

「ん・・・ふっ・・・だ、め・・・こんな、とこじゃ・・・。」

どこまでも追ってくる唇からのがれながら、途切れ途切れに綾子があらがった。
言葉とは裏腹に、先ほどからの軽いタッチが効いて、身体の内側はもうとろけ
始めていた。

たくみにブラジャーのホックをはずしてずらすと、ハイゲージのニットに
くっきりと二つの尖りが浮かび上がる。それをわざと服の上から、円を描くように
指先でこすると、綾子が耐えきれないように座席の上で腰をうごめかせた。

「・・・とろとろになってるよ?」

スカートをまくりあげて、ガーターベルトの上の下着の中にすべりこませた指を
抜き取ると、糸をひく粘液を綾子にわざわざ見せつけた。

「ぃや・・・あ・・・。」

ニットをたくしあげて晒された紅い実に興奮のしるしを塗りつけられ、ぬるぬると
こすられる。激しくなった雨脚が、綾子の理性のように窓ガラスを流れ落ちていた。

「これじゃ、やりにくいな・・・ちょっとあっち向いて。」
「だめ・・・だめ・・・ゆうちゃ・・・。」

目に涙をいっぱいためて振り返る綾子にかまわず窓の方を向かせ、スカートも
下着も引きおろすと、後ろから秘所に指を挿し入れる。

「んぁん・・・ゆ・・・ちゃ・・・だめっ・・・だっ・・・ぁあ―――――!」

もう片方の手を前にまわして、敏感な核をやさしくこすってやると、綾子の内部が
可愛らしいリズムを刻んで、祐一の指を締めつけた。

「イッてるイッテる・・・ふふ・・・可愛いよ、あや・・・。」

綾子の絶頂をたっぷり楽しんでから、祐一がようやく指を離してくれた。綾子は
座席にすがるようにつかまって荒い息をつきながら、絶頂の余韻に耐えていた。

「ほら・・・。」

綾子の震える手をとって、祐一が自分の下腹部へと導く。そそり立つ硬い肉塊に
触れさせられ、綾子の内部がまた妖しくざわめいた。

(で、でも・・・ここじゃ・・・。)

今の行為だけでも死ぬほど羞ずかしいのに、誰に見られるともわからないこの場所で、
祐一とつながりあうなんて・・・。

祐一の手が、やさしく綾子の頭を押し下げた。口で愛してほしいという意味だ。
綾子はホッとして、素直に顔を寄せた。

「ふ・・・。」

祐一も運転席のシートを倒して綾子に身をまかせる。綾子は祐一の膝に上半身を預け、
絹のような手ざわりの先端に口づけた。はだけられたままのストロベリーレッドの
ニットに映える白い肌とブーツをはいた脚が、この光景をより淫らに見せていた。

本当はいっぱいに充たして欲しい下半身の疼きを秘めながら、綾子は夢中で口の
中の剛直を愛撫した。綾子の髪をいとおしそうに撫でていた祐一の指が、髪をつかんで
しまわないように外され、綾子の指を握りしめた・・・瞬間、祐一の下腹部の筋肉が緊張し、
口の中に絶頂のしるしが放たれた。

「あや・・・のんで、くれたの?」

断続的に口蓋に浴びせられるそれを、綾子は最後まで受け止め、こくりと飲み下した。
ゆうちゃんだって・・・可愛い。祐一の吐く息、熱くなった肌、刻む脈動・・・全ていとおしい。
綾子はゆっくりと雄芯を口から離して顔をあげ、祐一を見て羞ずかしそうにほほ笑んだ。

「んっ・・・。」

強い力で抱き寄せられ、唇と唇がぶつかり合う。たった今かわしあったばかりの官能が、
ふたりの身体の中で渦巻き、合わさった唇から流れこみ混じりあうようだった。

それからはもうあまり言葉もかわさず、祐一はハンドルを握っていない方の手で
綾子の手を握ったまま車を走らせ続けた。

「・・・じゃあ。大晦日に。」
「うん・・・待ってる。」

家の前に着くと、綾子は車を降り、運転席側にまわってのぞきこんだ。交わす視線すら
まだ濡れているようで、離れがたい気持ちでそっと口づけあって別れた。

祐一と愛し合ったばかりの身体で、両親のいる家に帰るのはやはりなんとなく
気恥ずかしい。時刻はもう午前二時をまわっていた。綾子は音を立てないように鍵を
開け、足音をしのばせて二階の自室へ入った。

ベッドに倒れこみ、ほんの数十分前の愛の行為を反芻する。まだ身に残っている
気がする祐一の感触が、綾子の呼吸を早くさせる。・・・だが、綾子をより幸せな気持ちに
させるのは、その後ただ手を握りあったまま、言葉もなく過ごした時間の記憶の方だった。

「・・・おかしいな。ゆうちゃん、どうしたんだろ?」

綾子が高校時代の友人とルームシェアしている都内のマンション。友人は実家に
帰省していて、大晦日の今日は綾子ひとりだ。

綾子は近所の美容院で振袖を着付けてもらい、祐一が迎えに来るのを待っていた。
祐一は大晦日でも仕事が片付かないらしく、今日は遅い夕食を一緒に食べてから
初詣に行くため、七時に迎えに来るはずが、八時になってもまだ連絡がなかった。

携帯の呼び出し音。綾子はハッとして電話に飛びついた。

「・・・遅くなってごめん。親父が急に具合わるくなってさ。病院行ったりなんかで、
連絡できなかったんだ。」
「ええっ?!お父さんが・・・。大丈夫なの?」
「とりあえずはね・・・後でくわしく話すよ。ごめん・・・一緒に食事には行けないけど、
待っててくれないかな?綾子、着物着たんだろ?・・・見たいよ。」
「え・・・私はいいけど・・・病院にいなくていいの?」
「お袋がつきそってるから・・・。それより、大晦日にずれこんじゃった納品があって、
家でそれ仕上げなきゃならなかったんだ。お客さんに迷惑かけられないからね。
配達が済んだら絶対行くから・・・待っててくれる?」
「うん・・・。無理しないで。12時に間に合わなくてもいいからね。」

電話を切ってから、急にドキドキしてきた。祐一のお父さんが大変な時なのに、初詣
デートなんかしていいのだろうか?

不安な気持ちを抱えながら、着物を脱ぐわけにもいかず、綾子はひとり待ち続けた。

祐一が現れたのは、これから神社に向って二年参りに間に合うかどうかという
時刻だった。

「ごめん・・・ほんっとごめん。待ちくたびれただろ?」
「ううん・・・お父さんは?」
「うん・・・手術は成功したから。また明日病院に行くよ。こんな時に初詣なんてって
思ってるだろ?でも、こんな時だからこそ綾子と一緒に行きたかったんだ。」
「ゆうちゃん・・・。」
「きれいだな・・・すごく似合ってるよ。」

祐一は、少し離れて綾子の振袖姿を感心したようにみつめた。少し濃い目の水色の地に、
流れるような花々の文様の振袖は、綾子の長身とキリッとした貌によく似合っていた。

(ゆうちゃん・・・照れてるのかな?)

それ以上言葉もなく、祐一は目をそらした。なんだかいつもより距離を置かれている
気がする。

「行こう。急げば間に合うよ。」

外に出てみると『せんべい ささき』と書かれたワンボックスカーが止まっていた。

「ごめん・・・配達先から直接来たもんだから、こんな車で。あ、バスタオルかなんか
敷く?着物よごれたら大変だ。」
「い、いいよ・・・大丈夫だって。」

気づかう祐一にかまわず、綾子は助手席に乗り込んだ。

(おせんべいの匂いがする・・・。)

仕事用の車とはいえ、食べ物を扱う車は清潔で、香ばしいお醤油の香りがした。
綾子は祐一の働く姿を少し垣間見た気がして、ハンドルを握る横顔をそっと見やった。

祐一の家の近所の神社は、TVで取り上げられるような大きな所とは違うけれど、
下町で昔からみんなに親しまれている神社らしい風情と伝統を感じさせ、いい具合に
にぎわっていた。

お参りを済ませ、二人は屋台の甘酒を買って身体をあたためた。

「ここ、いい神社だね・・・。」
「うん。俺は子供の頃から初詣はここなんだ・・・氏子だしね。それに、酉の市には、
うちでもここに出店を出して、せんべいを手焼きして売るんだよ。俺は、店番が
あるから仕込みと搬入しか手伝ったことないけど。」」

お守りや甘酒などの屋台をみつめながら、祐一が意を決したように言った。

「綾子さ・・・来年の酉の市の時、手伝ってくれないかな?」

綾子はびっくりして祐一の顔を見返した。

「え・・・でも、私なんかでいいの?・・・全然、素人だよ?」
「親父さ・・・闘病、長くなると思うんだ。お袋はつきっきりにならなきゃならない
だろうし。だけど、待っててくれるお客さんがいる限り、店は出さなきゃ。
初めてだし親父もいなくて不安だけど、綾子がいてくれたら・・・。」

祐一はちょっと言葉をつまらせ、照れ隠しのように甘酒をすすった。

「ゆうちゃん・・・もちろん!もちろん手伝わせて・・・私でよければ。」

祐一が自分を頼りにしてくれたと思うと、綾子は嬉しくて胸がドキドキした。
ふたりはしばらく、何も言わずに甘酒をすすっていた。

「あ・・・除夜の鐘・・・。」

あちこちで『あけましておめでとう。』の声があがる。祐一と綾子も、あらたまって
頭を下げ、おめでとうございますを言い合った。

祐一の家は家人がすっかり出払って寒く、祐一は慌ててヒーターをつけた。

「いいよ・・・着物が汚れるから、綾子は座ってて。」

綾子がお茶をいれようとするのを制止して、祐一がココアをいれてくれた。

「おいしい・・・けど、さっきから甘いものばかりだね。」

部屋が暖まり、温かい飲み物を身体に入れると、急に眠くなってきた。隣りを見ると、
祐一がソファにもたれて目を閉じている。

「ゆうちゃん・・・。」

そっと身を寄せると、祐一がもたれかかってきた。綾子はやさしく祐一の頭をひざに
乗せ、髪を撫でた。

(かわいそうに・・・疲れきって。)

昨日からのめまぐるしい展開に加え、何もかもが急に祐一ひとりの肩にのしかかって
来た重圧に、心身ともに疲れきっているのだろう。綾子は胸が締めつけられる様な
想いで、眠る祐一の頬にそっと触れた。

「・・・ん。あ、あれ?・・・寝ちまったのか?ぅわ、着物、大丈夫?」

祐一にひざを貸したまま、綾子もいつの間にか眠ってしまっていた。外はまだ暗い。
そんなに時間は経っていなかった。

「綾子・・・それ、脱がない?」
「え・・・?」
「疲れただろ・・・ってか、俺も気ぃつかっちゃって、綾子に触れないよ・・・。」

なんとなくよそよそしい距離感は、そのせいだったのか・・・綾子は少しおかしくなった。

祐一が自分の部屋のヒーターをつけてくれ、そこで着替えることになった。
帯を解き、着物を脱ぐと、綾子もやはりホッとした。苦しくないように着つけて
もらっても、やはり気の張るものだ。

「綾子・・・これ着る?」

長じゅばん姿で、結い上げた髪を梳きおろしているところへ、祐一が入ってきた。
手にスウェットを持っている。

「ぅわ・・・それ、エロいな。」

あけぼの色の長じゅばんは、白い半襟に愛らしい花の刺繍があり、娘らしくきっちりと
閉じられた襟あわせも清楚な感じで、別にそういう淫靡さはなかった・・・はずなのだが、
祐一の目には明らかな欲望の光がやどっていた。

「な・・・なんかゆうちゃん、着物よりこっちの方が食いつきがいいんですけど・・・。」

綾子は危険を感じ、身体をかばうように胸を抱いて横を向いた。

「これなら、触ってもいいよね?」

祐一が後ろから抱きしめる。うすい絹をとおして綾子の体温が感じられる。冷たいのに
あたたかい、不思議な感触にそっと手をすべらせ、前でしめた紐を解く。身体の線に
沿って動く手が、下着をすべり落とした。

くるりと回転させられ、深く口づけられる。じゅばんはもう、羽織っただけの状態に
なり、その間からのぞく素肌を、祐一の唇がゆっくりと下りていった。

「ゃ・・・ぁあ・・・あ・・・。」

立ったまま、茂みに口づけられ、綾子は思わず指を噛んだ。

「脚、ひらいて・・・。」
「だめ・・・だめ・・・。」

ふらりと後ろへ倒れそうな綾子を、祐一が支えてベッドに座らせる。ホッとしたのも
つかの間、脚を大きく割られ、中心部に吸いつかれた。

「ひぁっ・・・やっ・・・ぁ・・・ああ・・・。」

吸い上げる唇から突き出た舌が、ひだをさぐり、孔に侵入し、花芽をつつき・・・。
綾子は身を起こしていられず、後ろに倒れて祐一のするにまかせた。

「・・・すごくあふれてる・・・汚したら大変だ。」

祐一が唇を離し、綾子の上体を支えながらじゅばんをすべり脱がせた。

「ふっ・・・くっ・・・ぁぅ・・・。」

急に愛撫を止められ、綾子はせつなげに身体を震わせた。待つ間もなく、熱い素肌が
綾子を包み、熟しきった果物にナイフを入れるように剛直が押し入ってきた。

「ぁあっ・・・ゆ・・・ちゃ・・・ぁあ―――――!」

昂ぶらされ、たまらなくなっていた内部は、ただ挿入れられただけで激しく蠕動し、
びくびくとけいれんした。精をしぼり取ろうと祐一をしめあげる強い肉の力に抗い、
祐一は上体を起こした。

「・・・ゆう・・・ちゃ・・・ん・・・。」

まだふるえている綾子の手を引き起こし、しっかりと抱き合ってキスを深める。

「綾子・・・あやこ・・・。」

祐一は膝の上に乗って少し高くなっている綾子の胸に顔をうずめて綾子の名を呼んだ。
いつも愛を交わし合う時だけ祐一が綾子を呼ぶ呼び名とは違う、いたいけない響きを
感じ、綾子は母のような気持ちで祐一の頭を抱きしめた。

「んん・・・ふ・・・ぅ・・・んぁんっ・・・。」

しばらくそうしていた祐一が目の前の乳首吸い、両手で腰を抱いて揺さぶった。
つかの間凪いだ水面はあっという間に波立ち、綾子の中で荒れ狂った。綾子は膝をついて
腰を上下させ、自らを貫く祐一を呑みこんでは吐き出すことを夢中で繰り返した。

「ぁあ・・・ぁ・・・ぁあ―――――!」

頂点に達した綾子ががっくりと身体をもたせかけた。祐一は綾子を乗せたままそっと
後ろに倒れた。

「ぁ・・・ぁん・・・。」

祐一が右脚を綾子の腰にからめ、半ば身を起こした。横に抱き合う形で脚を交互に
かみあわせ、ゆっくりと揺れあう。

「ゅうちゃ・・・ん・・・すき・・・。」
「・・・ん・・・。」

綾子のささやきに答える代わりに、祐一は腕に力を込め、優しい言葉を呑みこむ様に
綾子の唇を唇で包み込んだ。

「んぁぅ・・・んっ・・・ぁ・・・くっ・・・。」

次第に激しくなる揺れ合いの中に、ふたりの情熱がはじけた。うすい膜をへだてて、
祐一は綾子の中に熱くほとばしらせた。強いいとおしさに襲われて、綾子は祐一を
抱きしめつづけた。

「・・・ゆうちゃん、起きて。」

綾子に起こされ、祐一は一瞬、ここがどこなのかわからなくなった。眠い目をこすり
ながら階下におりると、祐一のスウェットを着た綾子が、台所に立っている。

「お雑煮つくってみたんだけど・・・ゆうちゃんちのと違ってたらごめんね。」

ふわりと湯気の立つお椀を前に、二人はいただきますを言った。

「ん・・・うまいよ。」

昨日から何も食べていないに等しいふたりは、お雑煮をおかわりして食べた。

「ちょ、綾子・・・オトコ前過ぎ。」

祐一のシャツとセーターとピーコート。一番タイトなものを選んで貸してもらった
とはいえ、それらはさほど大き過ぎはしなかった。

「普通さ・・・自分の服着た彼女ってのは、男の萌えポイントなわけ。」
「もぉ・・・だから借りるのいやだって言ったのに・・・。」
「さっきのスウェットだってさ・・・全然遜色ないじゃん。」

昨日、少し弱みを見せてくれたのに、今朝はもういつものちょっと意地悪な祐一に
戻っていた。コンプレックスを衝かれた綾子は少し涙ぐんだ。

「ごめんごめん・・・綾子はそんじょそこらにいない女の子だってことだよ。」

祐一が焦って綾子を抱きしめた。

「・・・綾子・・・昨夜はいっしょにいてくれてありがとな・・・。」

急に真剣な声でささやいた。ゆうちゃんはズルい。綾子は泣きそうになる。

「・・・それにしてもオトコ前だな。なんか、イケナイことしてる気になるよ。」
「・・・もぉ・・・っ!」

綾子は祐一の腕の中で思い切りにらんだ。なだめるように祐一が口づける。

窓ガラスの向こうは新春にふさわしい真っ青な空だった。今年最初の朝の光の中で、
ふたりはお互いにいちばん大切な存在をたしかめあっていた。






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