番外編
フルサ国の昼下がり。姫・クリリスは退屈していた。 以前2人の勇者達が自分を救い出しこの国から去ったその後、 家庭教師、食事、村の民に戯れることに国王から許されないなど 普段の王家生活と変わらぬ毎日を過ごしていたからだ。 あ〜ぁ、どうしてママったら嫌いだって言ってるのに無理矢理ニンジン食べさせようとするのかしら? ニンジンやピーマンくらい食べなくったって生きていけるじゃない。 勉強しろ部屋片付けろってうるさいし、こんなのだったら、まだ前のようなことのほうがマシだったわ。 だって、毎日こんな口うるさい毎日に突然ドキドキスリルのあることが起こったんですもの。 またあんな風にスリルがあって楽しいことはないのかしら… クリリスは窓に肘を付きため息をつきながら外の景色を見ていたとき、ふと脳裏に何かよぎった。 そうだ、家出しちゃおう!そうすればいつもママにうるさく言われることもないし とびっきり自由にどこでもいけるわ!うん、きっとあの勇者たちみたいな楽しい自由な旅よ! 物事にそうだと思ったら、すぐさまにはに支度をしないクリリス姫ではなかった。 部屋に何棹とも並べてあるタンスの一つをあけ、がさがさとお気に入りの服を手探りで荒らし始めた。 お気に入りのドレス、人形、漫画、お菓子など、トランクにぎゅうぎゅうに詰め込むと あらかじめ用意しておいたフック付きロープを手頃な物に引っ掛け窓から垂らす。 クリリスは右手でロープを掴み、左手でトランクを持ちするすると落ちないように 足で壁に付け後退するように下りていった。 「よし、脱出成功!これで退屈な毎日とはさよならだわ。さてと、これからどこをどう行こうかしら」 しかしこの勇者などの冒険者のように自由奔放だが危険と隣り合わせな旅が いかに恐ろしいものか、知る由もないクリリスであった。 そしてそれは城を出てから小一時間後に的中した。 「はぁ、なんだか疲れちゃったわ」 いつもは軽食を運びに執事がティータイムにお茶とおやつを持ってくる時間だ。 しかし今は、見知らぬ城の外。こんなフィールドには小鳥しかいない。 クリリスは突然の思いつきで行動したことに少し後悔し始めた。 しかし、クリリスはふとその景色を振り返る。なぜかその道はいつしか見覚えのある道だった。 頭の中で記憶を辿るり、思い出した。二人の勇者が自分を城に連れ戻した帰路だ。 そういえばその前に何か楽しいものがあったような気がする…。そうだ、あの洞窟!! クリリスは記憶を頼りに、来たことのある道を歩き、やがてたどり着いた洞穴へ入っていく。 そこにあったのは黴臭いジメジメした通路とは全く似合わないほどの可愛らしいドアがあった。 そんなおかしなギャップを気にしないクリリスではなかった。 ドアを開けるとそこには白いレンガの壁にファンシーなグッズと飾り、 そして漫画、ぬいぐるみなどが山のようにばら撒かれている部屋があった。 何だか無性に懐かしい部屋だ。その部屋にも一瞬クモのような人形のようなものが 脳裏から残照をよぎり何もかも懐かしくて切ないような気がした。しかし… 「…やっぱりここにしようっと!!」 そんな切ない思いはそう長く続くことはなく、クリリスは部屋にあったソファーに横になり少し休むことにした。 小腹が空いたら、手持ちのお菓子とその隣の部屋にあった食料庫から食材を取り出し 小規模な流し台で簡単な料理を作ってつまみながらそこにあった漫画を読む。 SS一覧に戻る メインページに戻る |