東海林武×大前春子
トゥルル〜・・・ 慌しいフロアに一本の内線電話が鳴り響く。 「はい、マーケティング課です」 仕事にも大分慣れた様子の森が受話器をとり応対する。 「あの〜、受付からで大前さんに来客みたいなんです けど・・・」 困惑気な顔で受話器の話口を押さえながら春子をみた。 「・・・で、誰?」 「外国の・・・男の方らしいんですけど・・・」 ギロリとはっきりしない森をにらみ付けた春子は呆れ た様にため息をつく。 「・・・わかりました、行ってきてもよろしいでしょ うか」 主任の里中に許可をとり、春子は颯爽と課を後にした。 「へぇ〜、とっくりに男の客?」 資料を探しながら、今までのやり取りを見ていた東海林 が、男の客という存在に気が気でない様子で口を挟んできた。 「う〜ん、なんかそのお客さん、ちょっと普通じゃない みたいで・・・先輩、大丈夫ですよね」 「おいっ!それ早く言えよ」 心配気に言う森に東海林が焦った様に怒鳴り、春子の 後を追って課を飛び出した。 ―1階受付― 「大前ですが、私に来客とのことで・・・」 「あの、あちらの方です」 ほのかにほほを赤らめた受付嬢が来客のいるほうに指先を 向ける。 その方向へ春子はゆっくりと目をむけ、客の正体を確認 すると同時に軽く驚いたようにめを見開いた。 金髪に青い眼、すらりとした高い背、俳優の様に整った 顔立ち・・・周囲の人もチラチラとその姿を見てため息 をつくほどの男が立っていた。 「エリック・・・?」 「ハルコっ!!」 客も春子の姿を確認し、春子に駆け寄り、いきなりがっちり と抱きしめた。 「とっくりっ!!」 襲われていると勘違いし、心配で後を追いかけてきた東 海林が割って入って、その抱擁を引き剥がす。 「おいっ、この変態外人っ、痴漢野郎っ!!」 なにしやがんだと、その男を怒鳴りつけ、そして東海林は 春子を守るように前に立った。 「おいっ、とっくり・・・大丈夫か?」 「・・・東海林主任、私の知り合いに何てことを」 呆れたように春子は東海林を一瞥し、前に立っている東海林を 押しのけ客の男に目をむけた。 「久しぶりね、エリック」(英語) 「ハルコ〜、逢いたくて愛しくて死にそうで、日本まで追 いかけてきたよ」(英語) 東海林の存在を無視して、会話は進む。 そして、エリックと呼ばれる男が興奮のままにまた抱擁しよう とするところを春子はさっとかわすと、 「まだ仕事中だから、六時まで待っててくれる?」(英語) 「OK♪」 東海林がまだ見たことのないような極上の笑みでエリックと約 束を取り交わした。 「じゃあ、あとで・・・」(英語) そういい残し、その場を後にしエレベーターへ向かった春子を 無視され除け者にされた東海林が追いかけ同じエレベーターに 乗り込んだ。 「おいっ・・・」 「・・・」 「おいっ・・・!大前春子っ」 無視する春子の肩をつかみ、振り向かせた東海林が叫ぶように呼ぶ。 「・・・なんですか?東海林主任・・・」 鼓膜を激しく刺激する声に顔を顰めながら東海林を睨み付ける。 「大前春子っ!・・・あの男はお前の何なんだっ」 東海林は激情のまま春子をエレベーターの壁に押し付ける。 「俺はお前のあんな笑顔見たことがなかったぞっ、誰なんだよ!!」 「友人ですが、それが何か?」 それに・・・と春子は言葉をつづける。 「・・・ハケンのプライベートに関するにまで首をつっこまないで いただけますか、東海林主任」 春子はまっすぐに射抜く東海林の視線から眼をそらす。 「っ、ナンダソレ・・・」 その言葉にカッとなった東海林の目つきが変わる。 「や・・・やめなさ・・・」 そのまま両腕の中に閉じ込められて、つまりは必要以上に接近した状態 の東海林の身体を 押し退けようとしながら、春子はかすかに震える声で言った。 何か、ひどく危険な感じがする。───今の東海林は。 このままでいたら、取り返しのつかない何かが起きそうな、明確な予感がした。 身を竦ませる春子を許さずに、東海林はその両肩を強く押さえ込む。 細い脚の隙間に膝を割り入れて、腰を落として逃げることも許さない。 「やめな…っ」 否定の言葉しか綴らない唇。 先刻、エリックの名前を呼んだその唇が・・・・自分には向かない笑顔が ひどく憎らしく感じて、東海林は唇へ激しく重ねる。 二度目のくちづけ――― 東海林の心情のまま、まるで嵐のような激しさだった。 舌を深く絡ませて、息をつく暇も与えずに探るようにその粘膜を辿る。 角度を変え、深度を深める度に湧き上がる濡れた音は、東海林の思考を痺れさせる。 もっと深く、もっと奥まで欲しくなる。 「ん…っ、やめ…っ…!」 乱暴に奪われるまま、男の力に抵抗のしようもないの春子の手が、必死に東海林を 押しのけようともがく。 細い指先が震えているのを感じる。だが、これでやめる気には 到底なれなかった。 ここで逃してしまえば、もう春子は一生自分に振り向かない。 春子には近づかない方がいいとは思っていた。油断のならない女だと・・・。 でも腹の立つ口喧嘩はいしつか、楽しいものに東海林の心の中に成長していた。 唇がゆっくりと離されると、強く春子の手首を掴んだまま、東海林は 普段、あまり降りることのない資料室への階のボタンを押す。 人気のないフロア 真っ直ぐに伸びる廊下を進むことを春子は拒み、東海林の手を振りほどこうとする。 そんな春子にかまうことなく一歩一歩、靴音を立てて歩を進める。 「・・・なにをなさるおつもりですか、東海林主任」 怒りに支配された、押し殺した低い声だった。 春子の問いに何も応えないまま、東海林は手近な部屋のドアノブを掴んだ。 どこでも良かった。 誰の目にも触れず、ふたりきりになれる場所ならば。 ギィィ、と重苦しい音を立ててドアが開く。 大量の資料がキッチリと棚に収まり、薄暗く、誇り臭い部屋 その室内へと強引に春子を引き込んで、後ろ手にドアを閉め内鍵を しめる。 静かな空間に無常にガチャリという施錠音が響いた。 「っこの、下衆…っ」 血を吐くような声を無視して、その細い身体を閉めたドアへと押し付ける。 ドアに腕をついて、春子をその中に閉じ込めると、意志を持つ理知的な瞳が 怒りに染まり東海林を 見上げてきた。 だが東海林の胸の奥で燻り続ける燠火は、消えるどころか逆に 勢いを増した。 「・・・どうせ俺は下衆だよ」 東海林はウエストから左手を差し入れま、春子の白い肌に滑らす。。 ビクッと反応した細い身体をもっと強くドアへ押し付けると、 ドアが悲鳴を上げるようにギシリと軋む・・・。 そして東海林は行き着いた胸の膨らみを 乱暴に強く掌で包み込んだ。 「……っ」 春子が上げたかすかな悲鳴さえも、すべて自分の唇で奪い取る。 くちづけで深く混ざり合ったまま、東海林は春子の胸を包む小さな布地 を指先で押し下げて その頂点の蕾をきゅっと摘み上げた。 「……っ!」 きつく睨んだままの春子の蕾は東海林の指に本人の意思に反して素直に 反応して、それは見る間に固く立ち上がった。 指の腹で擦るように刺激され、耐え切れないよう眼を閉じ東海林から 顔をそらした。 執拗に塞ぎ続けていた春子の唇を解放すると、東海林はもう一度だけ軽くその唇に くちづけてから、殆ど全身でドアへと押し付けていた春子の身体から僅かに離れた。 服をたくし上げて胸を露わにさせると、東海林の手によって乱れた下着の隙間に、仄かに 赤い色を帯びた小さな実が見える。 今度はそこへとくちづけて、飴玉をしゃぶるようにして舌先で刺激した。 「・・・・・・っ!」 未だに抵抗し、声を出すまいとする春子の態度が、東海林を益々 増長させる。 春子の胸の頂を甘く食んだまま、東海林は両手を春子のスカートの中へと 忍び込ませると、 指にかけた薄いショーツを一気に引き摺り下ろした。 そのまま足首まで落として、片足だけをそこから抜いてしまう。 「なっ・・・・・・!!」 そこまでされて、春子は慌てたように身を引こうとした。 だが後ろはドアで、すぐ前には東海林が覆い被さるように春子の身体を抑えている。 されるがままのこの状況に、何とか抜け出そうと春子が身を捩るのを、今更とばかりに 東海林が薄く笑う。 口に含んだままの乳首に、少々乱暴かと思えるような強さで歯を立てる。 「うぁ・・・っ」 だが、春子の唇からかすかに零れたのは苦痛ではなく、快感に濡れた声。 その響きに満足すると、 東海林は今度は優しく舌先でそれを慰め始めた。 今の乱暴さを詫びるかのように、ゆっくりと擽るように・・・。 「んっ…、やぁ…っ」 その緩急のついた愛撫に、春子は身体の芯から震えた。 そしてそんな自分が許せない春子は、必死に胸元に留まる東海林の頭を押しのけ ようと抵抗する。 だが、そんな抵抗をものともしない東海林は春子の内腿を柔らかく愛撫しながら 左手で辿っていくと、その付け根の窪みへと、ゆっくりと指先を沈み込ませていった。 「・・・・・・んぅっ」 すぐにでも崩折れそうな春子の脚を、空いている右手で強く腰を抑えることで 支えながら、東海林は更に指先を深めていった。 「やめ・・・っ!」 そこは熱くて、いきなりの東海林の侵入を拒むかのようにひどく狭い。 そのくせもう既に しっとりと水分を含み始めていた。 その感触を愉しみながら、ゆっくりと沈めた人差し指淫靡な水音を立ててを 往復させる。 そして親指は、その前方の襞の中へと潜り込ませると、隠れていた小さな 突起に突き当る。 それを押し潰すように親指で捏ねて刺激すると、面白いように春子の身体が 浮き上がる。 「・・・・・・くっ」 「我慢してないで、声出せよ・・・とっくり」 突き上げる人差し指が徐々に滑らかに動き始め、東海林は指を二本、三本と 増やしていく。 その間も親指での愛撫を休めることはなかった。 その狂おしい快楽の波に春子の白い肌が桜色に色に染まる。 自分勝手な嫉妬だと解っていても、今の東海林にそれを止める気ははなかった。 春子の中から指を抜き、そして、春子の愛液で濡れた指を見せ付けるように 春子の眼前に晒す。 そして手早く東海林はズボンのファスナーを下げると、既に熱く 力を蓄えている分身を取り出す。 春子の左足を腕に抱えて立ち上がると、不安定な体勢に春子の身体が ゆらりと傾いだ。 だが東海林の腕は難なく春子の身体を支えて、再び真正面から、ドアに 押し付けるようにして身体を重ね合わせた。 快感に濡れた、震える視線で春子が東海林を睨みつける。 その視線に、東海林はまた薄く笑ってみせた。 「・・・もう、やめなさ・・・・」 「どうしてだよ?ここはこんなに物欲しそうだぜ」 自身を押し当てているその場所は、淫らに濡れて蠢いている。 「ん…あ、あぁ…っ!」 無理のある体勢に、春子の身体は悲鳴を上げた。 だが一番太い先端が春子の秘所に飲み込まれていく。 東海林は春子の呼吸に合わせるようにして、ゆっくり腰を押し進めてすべてを 春子の中へと収めきる。 「・・・・・・」 「・・・大丈夫か?」 無理やり体を奪った東海林が春子の顔を覗き込むようにして気遣う。 二人の身体が、一部の隙間もないまま重なり合う。 東海林は「この女はキライだ」と思い込んでいたかった。 この女は自分の手には負えないのだと・・・・・・。 だが春子の体を手に入れて、この女の心に自分という存在を刻み付けたかった。 そして、心のそこから自分を見て欲しいと・・・。 そして東海林は 刻み付けるように腰を突き上げる。 「・・・・・・っ」 その刺激に、仰け反るように頭を逸らせて、春子は唇をきつく噛締め眉根を寄せた。 引いて、突き上げる東海林の動きに連動して、淫らな水音が部屋中に響く。 抱え上げた春子の脚をもっと大胆に広げさせて、東海林は更に奥深くまでを極めるように、 春子の内部を穿った。 抉るように角度を変えて腰を突き入れると、きゅっと絞り込むように強く絡みついてくる。 「…っ!」 春子の耳許を掠めるように、東海林の唇から熱い吐息が零れた。 東海林は春子の顎を掴み、自分のほうに向けさせる 絡んだ視線に一瞬、東海林の動きが止まり、だが次には再び強い突き上げが始まった。 快感を極めるための深くて早い律動に、春子は必死に声をあげまいとする。 「・・・は・・・るこ」 いきなり耳許で名前を呼ばれて、春子は身体だけでなく鼓膜からも犯されたような 錯覚に陥った。 次の瞬間身を固くした春子の奥に、東海林はは限界までに膨れ上がった 自分の分身を突き入れ、そして一気に引き抜き春子の白い腹に 欲望の証を激しく撒き散らした。 先刻の嵐のような蹂躙の後・・・・・・ 東海林はは春子の身体に残る自分の残滓の後始末をし。 嫌がって逃げようとする身体を簡単に抑えつけて、東海林はは春子の身体に 残る自分の残滓の後始末をし東海林はは春子の服装を整えてやる。 「「・・・」」 互いが無言のまま、時間が過ぎていく。 「・・・すまなかったな」 先に口火を切ったのは東海林だった。 春子の瞳をまっすぐに見つめ、真摯に謝罪し、春子の唇を指でなぞる。 「唇・・・、傷になっちまった」 「・・・・・・」 春子は何かを耐えるように目を閉じたまま、何も語ろうとはしない。 「おいっ何とか言えよッ!」 業を煮やしたように東海林が春子の肩を激しくゆする。 「・・・あなたがそれを言うんですか?」 ゆっくりと春子の眼が開かれ、まっすぐに東海林を射抜く。 「なにを言って欲しいんですか・・・私は・・・」 いつも強気な春子の瞳にうっすらと涙が滲む。 「好きなんだよっ!どうしようもないくらい・・・お前のことがっ!」 そして春子をきつく抱き寄せる。 「・・・逃げても、捕まえるから」 耳元でつぶやかれた東海林の言葉に見られることのない春子の涙が 一滴落ちた 。 涙が乾く頃、六時の終業を告げるチャイムが響き、我に返って春子は東 海林の体を突き飛ばす。 「今日のことは蜂にさされたと思って忘れます・・・」 春子はすっと立ち上がり、東海林を残し部屋を後にした。 「・・・蝿から蜂に昇格か?」 一人部屋に取り残された東海林が一人つぶやいた。 決着は一ヵ月後の春子の派遣契約の終了・・・ 頑なな春子の心を手に入れたい。 SS一覧に戻る 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