東海林武×大前春子
喫煙所に残業を終えた二人の男の影がが窓辺に佇む。 缶コーヒーをすすりながら、会社へのボヤキを言い合うのが 二人の儀式のようになっていた。 そしてもっぱら最近の話題は、派遣社員の「大前春子」・・・。 特Aランクの優秀な派遣。 何でもできるが性格は最悪で態度はでかい、謎の多い女。 でも気になって仕方がない・・・、女。 いつも怒りながら楽しげに罵りあいをしている東海林。 その罵りあいを止める平和主義の里中。 それがこの二人の大前春子に対する印象だった。 「・・・ったくよ〜、あのとっくりっ!」 今日あった出来事への不満を、東海林が爆発させる。 「まあまあ、大前さんも悪気があった訳じゃないだろうし・・・」 「はぁっ?ケンちゃん・・・なに見てたの、十分悪気だらけだぞあの女っ!!」 憤懣やるかたない様子の東海林にはフォローも役立たない。 そんな様子に里中は静かに微笑した。 少なくとも里中は東海林の中でその大前春子の存在が少しずつ大きくなってい ることに気づいていた。 それは恋という名の暖かい気持ちだということも・・・。 「でも、そんな大前さんが好きなんだろ、東海林さん?」 「・・・ぅっ、まっ、まぁな・・・」 確信をつく里中に東海林は吃驚したように眼を見開き、照れたようにクル クルな頭を掻いた。 「でケンちゃん・・・、そのことでちょっと相談なんだけどさ」 言い出しにくそう東海林が切り出した。 「なに?俺に出来ることならなんでもするよ」 「おれ、明日有給消化で、休みだろ・・・、だからさ」 そうして二人の密談は夜の闇にきえていった。 翌日 午前11時・・・、マーケティング課では朝の喧騒が消え、皆仕事に集中 していた。 「大前さんっ」 相変わらずテキパキと仕事をこなす、春子を里中が呼ぶ。 「何でしょう、里中主任」 春子がすっと立ち上がり、里中の前にたつ。 「あの、お願いがあるんですが・・・」 申し訳なさそうに里中が春子の顔をうかがいながら言い難そうに業務命令を 言い渡した。 その業務命令は・・・、昨晩の密談で計画された罠。 当然のことながら、春子はその命令に思いっきりしかめっ面をした。 「お願いできますか?大前さん・・・」 主任の里中からの業務命令なので派遣としては断ることはできない春子は しかたなしにその命令という名の罠に頷いた。 「では、その書類をもって、東海林主任の自宅へ行ってきてください」 里中はにこやかに笑い東海林へ渡す書類を春子に手渡した。 そうその業務命令とは、有給で休んでいる東海林へ、翌日直行のため朝一で 必要な書類を体調を崩したということになっている東海林の自宅までもって 行くことだった。 「ったく、なんでクルクルパーマのためにこの私が・・・」 とぶつぶつと周りに聞こえないような声で春子はつぶやきながら自分の コートを着込み、書類と里中が手書きした東海林宅の地図を持って颯爽とマ ーケティング課を後にした。 本当は、書類なんて口実で、これは東海林が苦肉の策で考えたものだった。 会社では仕事モードで人目があるし、カンタンテでも苦手なギター引きが 春子と仲がよくて腹が立つ・・・、だから二人っきりで話すには・・・と 考えた末のことだった。 もちろん体調を崩したというのは嘘・・・・・・。 春子が会社を出てから30分後、地図を見ながら東海林の自宅前にたどり 着いていた。 独身者用だが少し贅沢なマンション その前に仁王立ちをする春子。 ひとつため息をついてエレベーターへと乗り込み、10階のボタンを押した。 東海林に関して、春子は近寄ることは自分の中の根幹が揺るぐような気がし ていた。 だから必要以上に近づきたくはない・・・、そう思っていた。 やたらと早く感じるエレベーターはチンという音とともにとびらが開いた。 春子らしからぬ、のろのろとした動作で一歩を踏み出す。 そして、ある部屋の前で歩みをとめ、一瞬戸惑いながらもインターフォン を押した。 ピンポーン 「きたか・・・」 そわそわしながら待っていた東海林はそのインターフォンで玄関へと 駆け寄る。 そして落ち着こうと深呼吸をしてからガチャリとドアをあけた。 ドアの外にいたのはもちろん春子。 予想はしていたが不機嫌そうな顔を隠しもせずに立っていた。 「ご苦労さん、大前春子さん」 とっくりだの、あんただのと言ってさっさと帰られては元もこうもないので なるだけ下手にでて春子を出迎えた。 「まぁ、上がってくれ」 「いえ・・・結構です、里中主任からお預かりした書類です」 なんとか部屋に上げようとする東海林の言葉を遮る様に春子が書類を差し出す。 早く切り上げて会社に戻ろうというのだろう・・・、そんな春子の行動は 見越していたといわんばかりに東海林は作戦を実行に移す。 「いや、ちょっと俺からもケンちゃんに渡して欲しいものがあるんだが いまデータをディスクに焼いてるところなんだ・・・・だから」 と部屋に上がる様促した。 「いえ、外でお待ちしています・・・」 そういう理由があれば部屋に上がるだろうと思っていたが、東海林があてが 外れたように項垂れた。 「あのな〜大前さん、人目があるから部屋に入ってくれ、お願いだっ!」 やけくそとばかりに春子の腕を掴んで部屋の中に引っ張り込む。 勢い余って玄関でひざをつく春子を東海林が心配そうに見下ろす。 「悪い・・・、大丈夫か?」 春子はすばやく立ち上がり東海林をキッと睨む 「・・・・・・ばっちぃ」 春子は東海林に掴まれた腕を見ながらつぶやく。 「またっそれを言うかっ!!おまえはっっ親の顔が・・・っ!!」 とまで言いかけて東海林は口をつぐむ。 「悪かった、お願いだから部屋に入って待っててくれ」 話したかったのはこんな口げんかではない・・・、東海林は自分の 想いを告げるために春子をここまで呼び寄せたのだ。 春子は大人しくなった東海林を怪訝に思いながら仕方なく部屋で待つことを 了承した。 東海林のマンションに11時30分にたどり着いたのに今のやり取りで 時計の針は12時を刺そうとしていた。 「・・・もうすぐ昼休みなので、できれば外で食事してきてからまた取りに 来てもよろしいでしょうか?」 春子は腕時計をちらりと確認し東海林に話しかけた。 「・・・ダメダっ、俺サマがアラビアータをあんたに作るからそれを 食べろ」 台所に立ってなにかを炒めながら春子を引き止める。 「いやです、東海林主任の作ったものだけは時給をいくら貰っても 食べたくありません」 「おいおいっ今なんてった?俺の作ったものを食べたくないって・・・」 「はい」 「いいから食えって!旨いから、お願いですから食べてください大前春子さん」 「・・・分かりました」 懇願するように言う東海林に根負けして春子が頷くと東海林は満面の笑顔で 休めていた調理の手を再び動かし、オーロラサラダとアラビアータを春子の前に 置いた。そして自分のサラダとアラビアータをもって席に着く。 「どうだ?旨そうだろ」 得意満面で東海林は春子に問いかける。 「アラビアータはペンネの方が好きです」 目の前のスパゲッティーでつくられたアラビアータをみて春子はぼそりとつぶやく。 「俺はパスタは好きだけどペンネは嫌いだ」 「東海林主任の好き嫌いは私には関わりございませんがペンネも原料は同じパス タですが・・・何か?」 「うるさい、いいだろ別にっ・・・熱いうちに食えよ」 すすめられ春子は東海林手作りをアラビアータに無言で食べ始めた。 東海林はというと事あるごとに春子に感想を聞き、それを悉く無視されながら 食べる。 「ごちそうさまでした」 30分後空になった皿を前にして春子が言う。 「旨かったろ、なっ!」 春子は感想を聞いてくる東海林を鬱陶しそうに見た。 「サラダは普通でしたが、アラビアータは辛いだけでコクがない・・・」 「はぁっ!なんだそれ」 「感想を聞いてらしたのは東海林主任です、私は正直に言ったまでですが ・・・それが何か」 春子はからになった自分と東海林の皿を持ち流しへと向かった。 「ご馳走になったので、お皿くらいは洗わせていただきます」 そういうと丁寧に手際よく皿を洗う。 そんな春子をみて東海林は春子の横に立ち、洗った皿を受け取り拭いていく。 「・・・なんか新婚みたいだな」 「・・・・・・」 嬉しそうに言う東海林を春子は軽く無視する。 「おいっ!なんか言えよ」 「・・・・・・ディスクはまだでしょうか?」 焦れる東海林に春子はさっさと皿を洗い終え、仕事モードに戻る。 「・・・そんな焦らなくても、お茶でも飲んでゆっくりしろよ」 なんとか春子を引き止めたい東海林は食後のコーヒーを入れて春子の前に 差し出した。 「結構です、そんなことをしている暇はございませ・・・・・んっ」 差し出されようとしたマグカップが持ち主の手を離れ宙を舞う。 春子の眼がスローモーションの様に落ちるマグカップを追う・・・。 気がつけば東海林は春子をきつく抱きしめていた。 ゴトッ!と鈍い音を立ててフローリングの床に転がるマグカップとそこから 流れ出す琥珀の液体・・・・ その光景を春子は抱きしめられながら見ていた・・・。 流れ出した琥珀の液体は何かの暗示? 「・・・俺、あんたに話があってケンちゃんに話をつけてここまで来てもらった」 心ここに在らずの春子をさらにきつく東海林は抱き言葉を続けた。 「1ヶ月たった・・・、あんたに告白してから」 「・・・・・・ハナシテ」 どこかに飛んでいた春子の意識がこの状況を理解し始める。 「あの時より、俺はもっとあんたのことが好きになってる」 「・・・・・・ハナシテっ」 東海林を突き放そうと春子の拳が東海林の胸を叩く・・・。 「だからっ・・・」 「イヤッ!!!聞きたくない」 東海林の言葉を遮るように叫んで、春子は渾身の力で東海林の体を突き飛ばし、 よろけた東海林の隙をついて、部屋から・・・東海林から逃げようとする。 「まてよっ! とっくりっっ」 逃げられまいと東海林は春子の腕を掴んだ。 バランスを崩して玄関で春子は体制を崩して転倒した。 「さわらないでっ!・・・あなたにだけは触られたくないっ」 助け起こそうとする東海林の手を振り払い、感情のまま春子は声を荒げた。 「「・・・・・・」」 二人の間に緊張した何かが張り詰める・・・。 そして行動を起こしたのは東海林だった。 春子の手をとり引きずるようにリビングに連れていく・・・ そのままカーペットの上に転がされ東海林に押さえ込まれた。 東海林は春子のとがった細い形のいい顎を強く掴み自分の方へ向かせる。。 キス…と言うより、むさぼられているような激しさで春子の唇を蹂躙する… 頭を抱え込まれ、のどの奥深くまで差し入れられた舌はとどまることを知らず そのまま啜られて何もかも吸い出されるような激しさ・・・・・・。 春子は気が遠くなりそうな意識を保とうとする。 この間の重ねるだけのくちづけとした東海林とは同じ思えないようなくちづけで 春子の意識を飲み込んでいく。 「ぐっ…ぅっ…うぅっ…ぐぅぅ」 春子は底知れない恐怖で目じりに涙を浮かべる。 恐い。 東海林が恐い………ッ!! 「か・はァッ」 やっと唇を解放された春子は大きく息を吸った。 そして力が入らない体を起こそうとする。 「・・・・・・」 東海林の目が春子をじっと見下ろしている。 怒ってる・・・と言う顔じゃない・・・、 むしろとてもさみしそうなそれでいて冷たい・・・らしくない東海林の顔。 自分の震える体を春子はその震えを押さえ込むように抱きしめる。 「・・・・・・帰ります」 東海林の表情はかわらない。 再び立ち上がろうとする春子の腕をとり東海林は手首に後が残るほどのキスをする。 東海林の表情はまだ変わらない。 次の瞬間、春子の手首に冷たい感触が当たる。 春子はいつの間にか両手を頭の上に持ち上げられて リビングの今まで食事をしていたテーブルの足にからめられてる。 シュルリと東海林のベルトがはずされ春子の手首を締め付ける。 春子は両の手を拘束された姿勢のまま、テーブルの足に結わえ付けられたのだ。 「・・・・・・なっ!!」 「あんたがいけないんだ。」 「やめなさ・・・っ」 拘束され十分に動けない春子に東海林は最後の宣告をする。 「・・・もう、遅い」 「・・・っ!!」 うなじから耳たぶを愛撫するようにくちづけながら東海林は春子の表情を見る。 縛りつけられた腕は春子を追い詰めているようで、恐怖の混ざった瞳がと背中を ぞくぞくとした何が這い上がって来るのを感じた。 体の中の獣が目をさます。 白い肌に赤い跡を散らしながら汚したい・・・、春子を大切にしたいのに歪んだ 快感が東海林を支配した。。 ことさら手荒に東海林は春子のトレードマークのトックリセーター下着ごとを 引き剥がす。 「・・・・ゃめっ」 春子の白い肌が顕になる。 春子の体が跳ねる。 羞恥と怒りで顔はほの赤く上気していた。。 東海林は春子のすでに硬くなった乳首を舌でころがすと春子はくちびる噛みし めて真っ赤になりながら仰け反る。 「んんっ・・・!!!」 いやいやをするように頭を降りながら東海林の手から逃れようと体をくねらせてる。 無駄な抵抗 。 さらに東海林は乳首を唇で含みねっとりと転がし甘噛みする。 「・・・・・・っ!」 触れて愛撫したかった春子の乳房 優しく触れたかったそれを……… 無性に傷つけいたぶってやりたかった。 「・・・・・っ痛!」 東海林は優しく嬲っていた乳首に急に歯を立てる。 春子の体をいたぶる 縛りつけて春子を犯そうとしている 頭では止めようとしていたが、東海林の本能はそれを許さなかった。 「いゃぁぁ・・・っ!!」 東海林はもう片方の乳房にも噛みつき春子は悲鳴をあげる。 歯形がついたところが痛々しく赤くなっていく・・・。。 「もう・・・遅いって言っただろ・・・、やめないよ」 春子は目を見開き私東海林の本気を感じ取った。 荒々しくスカートをはがれ、ショーツは引き裂かれた。 声が出ない。 「ぃや・・・」 全裸にされた春子の体か冷たい空気に晒される。 足を抱え上げる東海林を何とかするために春子は足をばたつかせ抵抗するが、 何の苦労もなく男の力に押さえ込まれる。 そして春子をこじ開けるように貫ぬく異物感が襲った。 「ひっ・・・・・・」 春子のまだ十分潤っていない秘所が、悲鳴を上げる。 東海林が、がくがく揺さぶる度に悲鳴のような声が上がる。 胸のしこった乳首を舌で刺激しながら春子の快感を呼び起こそうとなめまわす。 春子はその痛みと刺激に体を反り返し、自分の意志に反して快楽を拾う体は 東海林を拒絶し抵抗しながらも流されたがっている。 最初は濡れずにきつかった秘所は十分な愛液で潤み東海林を包み込んでいる。 「・・・・んぁぁっ」 「あんたの体はもう悦んでるみたいだな、 俺に食いついて離さないよ」 腰を押さえ込んでかき回すと、声をあげまいとする春子の口からかすかな 吐息が漏れる。 春子を拘束する手首のベルトとテーブルの足がぶつかってガチャガチャ言う。 でもこうして縛めることで東海林の中の獣が猛る。 春子の体を支配しているような・・・めちゃめちゃにしたい気持ちが湧き上がる。 「無理矢理犯されてるのに感じてるんだな」 春子の返答はない。 羞恥と理性と快感で春子を蝕んでいることは確かだ。 思いきり突き上げをくり返し どろどろに溶けて混ざり合いたい・・・ と東海林は 思う。 この情事の後には彼女を失ってしまうのだから・・・感情のままの行為が 許されないことは分かっている。 「いっ・・・ぁぁぁっ」 春子がギリギリまで高まり、東海林を締め付ける。 少しでもこの行為を続けたくて東海林は、ふいに動きをとめた。 「・・・・・・なっ」 もう少しでオーガズムだった春子はは一瞬すがるような目で東海林を見た。 春子も自分を欲していることを一瞬でも錯覚できて東海林の中で何かがこみ上 げてきた。 「・・・・・・」 互いが荒い息のまま視線が絡み合う。 春子は屈辱の気持ちと、快感を求める体の間で理性を呼び戻そうとする。。 春子に埋まっている東海林のモノを感じながら ・・・。 「どうして欲しい?」 イきたい・・・、春子は思わず口走りそうな言葉を必死に飲み込む。。 縛られて犯されてる・・・なのに春子の体はどうしようもなく東海林を 欲しがっている。 「言えよ・・・『動け』って。『イカせて』って」 春子の顔に朱が走る。 薄く笑いながら、東海林は春子をジッと見下ろしてる。 「ふざけ・・・・ないで・・・、帰るからっ」 春子は何とか勝った理性で東海林に行為の終わりを告げようとした。 「はぁぁっ・・ああんっ!」 だが次の瞬間、東海林が軽く春子の中をつき、待ち望んだ刺激に、春子は 今までにないきょ声をあげた。 でもすぐさまとめられて、私は半泣きになってくる。 「ナッ・・・!!!」 「言えよ。『もっとちょうだい』って 『お願い、イかせて』って…」 東海林は春子の耳もとで囁くように誘惑する。 「・・・お願いだっ、共犯者になってくれ」 この行為は自分の独りよがりじゃないと思い込みたい・・・、だから と東海林は振り絞るような声で・・・、泣くのを堪える様に春子に懇願する。 「お願いだよ・・・」 春子の心に葛藤が生まれる。 「・・・悪かった」 東海林はあきらめたように体を起こして 春子から出ていこうとする。 「・・・・・・イカセテ」 東海林を制止するように春子の小さい声が東海林の耳に届く。 「ありがとう・・・」 共犯者を得た東海林の腰が再び激しく春子を突き上げる。 「ふあああああんっ!ああっ…ひ・あんんっ…いいっ!!」 今度は我慢することなく啼きはじめた春子を東海林は、愛しさを込めて強く突き上げる。 もう止まらない ただただ胸の奥に渦巻く想いを伝えるように・・・ 激しさに翻弄され、昇りつめ泣きながら喘ぐ春子。 「いい・・・っやあっ!もっと・・・もっ・・・・・・」 タガがはずれたように俺東海林を求める。 足を抱え上げ、奥の方にまで貫くと弓なりに背中をそらして春子は泣き叫ぶ。 春子が愛しい。 虚勢を張る春子の細い体を離したくない。 春子のすべてを知りたい 「あああっ・・・!!!」 細い体を力一杯抱き締める。 逃がさない。 これっきりにしたくない・・・、東海林は思いのたけを春子にうちつける。 「・・・好きだ」 どろどろに溶けてしまえたら春子は自分の一部になってくれるだろうか・・・。 気が狂いそうだ。 「は・・・るこ」 「ぁぁぁぁああっ・・・・」 昇りつめ、東海林は春子の奥深くで欲望をスパークさせた。。 春子は少し荒い息で涙に縁取られた瞳で東海林を見上げている。 「外して・・・」 いまさらながら東海林は自分のした行為を思い知る。 春子の腕や足首は戒めた部分が赤く擦過傷になっていた。。 全身にちりばめられた赤い痕・・・・・・ そして乳首を囲むようにしてついた歯形。 はずしながら痛々しく跡のつく手首を見て後悔で一杯になる 「悪かった・・・謝って済むことじゃないけど・・・」 それ以上の言葉がでてこない。 東海林は盗み見るように春子の顔を見ると伏し目がちに目をそむけられる。 当然か・・・と東海林にため息がもれる。 身支度を整えた春子が立ち上がり去ろうとする。 「・・・・・・」 一度もこちらを振り向かない。 「・・・・・・行くなっ!!」 手首を掴んで引き止めた瞬間、春子は痛さで顔をしかめた。 赤くなってる手首。ベルトの跡。 「手当て・・・くらいさせてくれないか?」 東海林の言葉に春子は珍しく素直に頷いた。 救急箱の中から東海林は必要なものを取り出し、不器用な手つきで 春子の細い手首に治療を施していく。 東海林にも春子にも無言のままの時間が異常に長く感じる。 「なにか・・・言ってくれないか」 東海林が口火を切る。 「・・・・・・」 この状況で何を言えばいいのか分からない・・・、責めてくれればいい 罵ってくれと、東海林は春子に感情をぶつける。 「お願いだから・・・」 手当てし終えた春子の手を握り懇願するように涙を流す。 「・・・・・・私は、共犯者なんでしょ」 ぽそっと春子がつぶやいた。 「だから・・・・・・それが何か」 いつもの口癖を残して春子は立ち上がり東海林の自宅を後にした。 残された東海林は春子の言葉の意味を素直に受け止めていいのか・・・ 「共犯者・・・」 強い酒を舌の上で転がすようにこの言葉を味わう。 望はあるのか・・・東海林の顔に自然と笑みがこぼれた。 そして、夕方近くなった会社への帰り道・・・、春子は自分の口から思わず 出てしまった言葉を考えていた。 後悔しているのか・・・・・・。 そして自分が言った言葉を・・・・・・。 春子は事あるごとに東海林に投げつける「東海林主任にだけは・・・」 そう・・・春子は気づいている・・・、それは東海林だけが特別な存在であることを。 SS一覧に戻る メインページに戻る |