変わらない女 (非エロ)
東海林武×大前春子


東「お〜!ひさしぶりだな、とっくり!!」
春「おひさしぶりです。スーパーハケンの大前春子です。」
東「・・・知ってるって。つーか何でお前だけ自己紹介風なの?」
春「いえ、なんとなく。みんな忘れてるかなーと思って」
東「おまえは俺じゃなく誰に話しかけてるんだっ!!」
春「くるくるパーマの中にこっそり紛れ込んでるであろう虫たちに」
東「いないからっ!!ウェービィな中にいないから!虫は!!」
春「あ、虫はアナタでしたね、くるくるパーマ主任」
東「所長だっ!!それに俺には東海林武っていう立派な名前があるっ!」
春「あ〜、そうでしたっけ?」
東「とぼけてるけどあきらかに知ってる顔だろ」
春「あ〜、そうだった、そうだった」
東「むかつくな〜その言い方…っていうかお前俺を追っかけて名古屋きたんだろ?」
春「は?誰が?誰を?」
東「とっくりが!オ・レ・サ・マを!!」
春「・・・ばっかじゃないの?」
東「ぇぇ・・・ちがうの〜〜??・・・」
春「さ、仕事の時間です!私はさっさと事務終わらせて午後は運転なんですっ!!」
東「・・・よろしくお願いします」


あの「大前春子」がいる。
不思議な事に俺のトナリの席でカタカタと
パソコンのキーボードを叩いている。

本社ではマーケティング課が別の部屋で、
俺が偶然?通りがかってケンカをふっかけない限りは
全くと言っていいほど存在が近くに感じられなかったのに。

たしか1年前位にS&F本社の契約更新を
蹴ったって聞いたんだけどまた戻ってきたのって
やっぱり、俺・・・のため・・・?

「所長」

あ、だめだ。
そう思って前にこいつに失敗したんだった。
好きだったけど男はあきらめが肝心だし、
ニ回も振られたんだし期待はしないぞ。
絶対に!しないぞっ!!

「東海林、所長」

名古屋ではオンナッケないからってこっぴどく振られた女に
すこぉ〜し未練があるってバレたら馬鹿にされるからな。
大体こいつは誰かに依頼されてココに来たに違いない。
コイツが仕事以外の理由で動くはずが無いからなっ!
あ、それかやっぱり眉毛のことが気になって夜眠れなくて
直接調べに来たとかっ!そうに違いない。

「ストレートパーマを一度失敗したくるくるパーマの東海林所長っ!」
「ストレートパーマの事は言うんじゃねぇっ!!・・・ってあれ?」
「何か深〜く物事を考えてる所悪いんですけどココ、
計算間違ってるので直してもいいでしょうか?」
「・・・よろしく」

うあぁ〜〜〜だめだ。
今はついついストパーの言葉で反応してしまったけど
とっくりに対して本社にいた時と同じような態度が
全くとれてないような気がする・・・普通にしろっ!オレ!!
振られたけど仕事上の関係は変わってないし、
ハケンの大前春子だしコイツも俺も全く変わってない。
単なる同僚、同僚、同僚・・・。

「所長!」
「ん?」
「12時なのでお昼ごはん行ってきます!」
「お、おぉ〜行ってきて!!」

相変わらず時間には正確な春子。
事務所中に通るイイ声を発してしまった東海林だが、
ドアに向かう足をピタリと止めた春子を不審に思い
女の背中に声をまた発する。

「どうした?とっくり」
「500円以内で食べられる定食屋に早く連れてってください」
「・・・俺がか?」
「他に誰がいるんですか。さっさと動くっ!!」
「今、ファイル閉じてるんだから少し待ってろよっ!!」


相変わらずケンカを続けながら事務所を後にする二人。
変わらないようで変わっている二人の関係。

それに東海林が気づくのはもう少しあと・・・。






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