愛の流刑地
東海林武×大前春子


とっくりが福岡へ発って翌日、荷を降ろし積み込んでもう一時間足らず
で帰ってくるだろう。


あいつなら・・・たぶん・・・、いや絶対に社長賞を
俺に取らせるぐらい分けないんだろうな・・・、と俺は物思いにふける。

いいのか・・・俺!
好きな女にそこまで言わせて!!
正直死ぬほど嬉しかったけど・・・。
でも本当なら俺が自分の力で本社に返り咲かなきゃいけないのに。

もうすぐ夕方の六時・・・、オレンジ色の空を見上げ自分の情けなさを身にしみて
感じた。

「はぁ〜、情けないな俺」

長い長いため息をつく。

「・・・なにが情けないんですか?」

突然後ろから声をかけられ、その声の正体に僅かながらの気まずさで恐る恐る俺は
声の主に振り返った。

「と・・・とっくり」
「天パが悩むとますますクルクルまいちゃいますよ」

とっくりの口から、いつもの嫌味が飛び出す。

「あのな〜、お前ってヤツは・・・・・・」

ムカッとしたが、それを堪えて再び、ため息をついた。
これ以上、とっくりに情けない俺の心情を吐露したくなかったから。

「・・・・・・」

いつものように喧嘩に乗ってこない俺を不思議に思ったのか怪訝そうな顔で
ちろりと俺を見て背を向けた。

「・・・何を悩んでるか知りませんが、あなたは情けなくなんかないですよ」

背を向けたまま、とっくりが言った。

「・・・とっくり」

ちょっと涙が出そうになった、嬉しくて・・・でもやっぱり少し情けなくて。
そしてそのまま、とっくりを後ろからぎゅっと抱きしめようとした。

「セクハラですよ、東海林所長」

するどく何かを察知したとっくりが俺の行動を封じる。

「おまっ・・・!!セクハラっていうなよ」
「会社で業務時間中に女のハケンを後ろから襲うことはセクハラ以外になんと言えば
よろしいんでしょか?東海林所長」

「まったく・・・ああ言えばこう言う。へらず口っていうのはこのことだな!!」

抱きしめようとしていた行き場のなくなった両手をグッと握り締める。

ああっ・・・、また泣きたくなってきた。
まったく涙が出そうだよ。


鼻の奥がツンとして来た時、タイミングよく終業のチャイムがなった。



「東海林所長・・・、終業時間ですが」

とっくりが毎度のごとく切り出した。

―――ああっ解かってるよ、残業はしない主義なんだろ

心の中で毒づく。

「・・・・・・帰っていいぞ」

そしてぶっきら棒に俺はとっくりに言い捨てた。
その言葉にとっくりは少し悲しそうに眼を細めたような気がした・・・どうせ
俺の気のせいだろうけど。

―――今、俺は完全にすねている、だからさっさと帰ってくれ

「いえ・・・、ぞうじゃなくてお願いがあるんですが」

予想に反した答えが返ってきた。

とっくりのありえない「お願い」という言葉に俺は目を剥いた。
げんきんな俺は今まですねていた心が急に浮上した。

「なっ・・・なんだ!?」

ここは頼りになる男というのをとっくりに印象付けなければ・・・、と
密かに気合を入れるあまりにとんでもない声が出てしまった。

「・・・声、裏返ってますよ」
「ううっうるせーよっ、でなんだよお願いってッ!!」

とっくりの鋭い指摘が痛い。そして怒鳴るようにとっくりに再度「お願い」を
聞いた。

「・・・泊めて欲しいんです」

・・・は?今なんとおっしゃりました、だいぜんしゅんこさん
泊めて欲しい?
止めて欲しい?
・・・・・・ホッチキスで留めればいいのか?

体も思考も固まった俺にとっくりはため息をつく。

「なんの用意もせずにここに来てしまったので住むところもまだ決まって
おりませんので、今週中には何とかしますのでここの営業所の仮眠室に
泊まらせていただきたいんですが?」
「・・・仮眠室にか」

・・・なんだ、ここの仮眠室にね、ハハハ、ノープロブレム。
好きにしたらいい・・・・・・ってオイ!!
それはイカンだろうっ!!ここは荒くれモノのトラックの運ちゃん達も
使うんだから、いくらとっくりでも飢えた狼の群れに放り込まれるような
もんだろうがッ!!

「アホかオマエっ!!そんなの駄目に決まってるだろう」
「何故ですか?」

不機嫌そうにとっくりは怒鳴り始めた俺を一瞥する。

「おまっ・・・頭いいのに頭悪いヤツだな」
「シツレイな」
「わかんないのかよっ!嫁入り前の若・・・くはないか、女がごっつい男も
寝泊りするところで寝泊りしたらアブネーだろうがっ!!」

俺は察しの悪いとっくりにイラつく。

「確かに・・・若くはない女ですが、そんな方達のあしらいには慣れてますから」
「そんなことじゃなくて・・・」

こともなげにとっくりは言葉を続ける。

「それに・・・襲ってくる蝿はあなたくらいなもんですよ、トウカイリン所長」


さすがの俺も臨界点に達した。
久しぶりに聞く憎まれ口が痺れたのは昨日までだ。

「バカヤロウっ!!好きな女をそんなところに寝かせられるわけねーだろうがっ!!」

今までにないくらい真剣にとっくりに怒鳴った。
そんな俺にとっくりはビクリと肩を震わせる。

「・・・心配なんだよ」

俺はそう言うととっくりの細い腕を掴み、ずんずんと歩き出した。


営業所をでて、お互い無言のままで、そして俺はとっくりの腕を掴んだまま離す
ことなく歩く。

十分ほど歩いて俺はあるマンションの前で足をとめ、そのままそのマンションの
エントランスへ足を踏み入れる。



ブルーのドアに鍵を差込み、部屋へととっくりを招き入れる。

「・・・・・・」

無言のままでとっくりは招き入れられた部屋を見回す。

「・・・今日からここがあんたが住む部屋だ、ちなみにここは俺の部屋でもある」
「・・・・・・」
「おいッ、なんとかいったらどうなんだ」

相変わらず無言のままでなんのリアクションもないとっくりに焦れる。
たぶん拒否されることは解かっていた。
だけど俺はかすかな期待を拭い去れずに息をとめてとっくりの返答を待った。

「・・・・・・お世話になります」

・・・んぁ?空耳か
自分の耳がおかしくなってしまったのか?
おそらく恐ろしくバカ面をとっくりに晒しているんだろう俺。
あきれた顔のとっくりがため息をついてこっちを見ている。

「本気か―――?」
「そのバカ面どうにかしてください」

頭がパニックでイヤミを言われても理解ができない。

「今―――、お世話になりますって言ったか?」

言ったか?言ったよなっ!!とっくりの肩を掴んで確認するように強く
揺さぶる。

「な〜んて冗談でした・・・なんて今更言っても受け付けないらなッ!!」

嬉しさのあまりに俺はとっくりの細い体を折れるほど力いっぱい抱きしめた。


いけね・・・マジで涙出てきた。
嬉しくて泣くなんて大人になって始めてだ。

とっくりに涙を見られたくなくて、抱きしめたまま離さない俺の背中にとっくりの
手が回される。

「バッカじゃなかろうか」

耳元でとっくりが色気もそっけもないことを囁いた。
俺にはそんな言葉すらもひどく甘い言葉に聞こえる。

「ハハハ・・・相変わらず痺れるなぁ」

鼻腔を擽るとっくりの甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。

こっぴどく振られに振られて、もう望みもないって思ってたのに・・・・・・

俺は・・・
俺は・・・

幸せだ。

「俺・・・もう、お前のこと好きすぎて・・・、どうにかなりそうだ」

キスがしたくてどうしようもなくなって、俺は泣いてる顔を隠すことなく
とっくりに向き合った。

「・・・いいよな?」

今度こそ蝿にはなりたくないからとっくりに了承をとる・・・、まぁ拒否されても
止められないけど・・・・・・な。

返答はない・・・・・・、その代わりに俺の好きなとっくりの長い睫に縁取られ
た理知的な瞳がゆっくりと閉じられる。

俺の手でとっくりの首裏を抑えて、 逃がすまいと舌先で深いキスを促がした。
俺は恐る恐る自分の舌を差し込むと、最初は軽く・・・段々と深く

融けてしまいそうなキスをどの位交わしていたのか・・・、名残惜しむように
銀糸をひいて唇を開放した。
俺はとっくりの顔を覗き込む。
駄目もとで、「このまま寝室に行くか?」ととっくりの耳元に吹き込んだ。

とっくりのほんのりとピンク色に上気した頬が、カッと赤く変わった。

「・・・・・春子」

普段は呼ばない名前を更に耳元を擽るように呼んだ。

だけど今までおとなしく俺の腕の中に納まっていたとっくりがもがき出す。


―――やっぱり、まだ駄目か。

諦めてとっくりを開放してやって、自分の性急さに苦笑する。

「悪かったな・・・・・・」

とっくりの頭をくしゃりと撫ぜて、自分を落ち着かせようとキッチンへ
自分ととっくりの分のお茶を入れに背を向けた。

「・・・昨日・・・からお風呂入ってないから・・・」

開放されたとっくりは真っ赤な顔で俯いて聞こえるか聞こえないかの言葉をいった。

―――だから・・・、えっ?俺の都合のいいように解釈していいのか?

俺は「ぐりん」という日常では聞こえない効果音が聞こえるくらいの勢いで
とっくりを振り返った。

「「・・・・・・」」

そしてお互い無言のまま見つめあうことしばし・・・すごく長い時間に感じる
この沈黙。

先に口火を切ったのはとっくりだった。

「・・・だからお風呂貸して下さい」
「お・・・おぅっ、風呂は入れよ」

今、俺どんな顔してんだろ?
多分、顔が熱いから赤い顔してんだろな・・・、でもって嬉しくってニヤけてる
な・・・絶対!!

とっくりにワザとぶっきら棒にタオル類を差し出して再びキッチンへ逃げるように
引き込んだ。


パタンとバスルームの扉が閉まる音がきこえた。


ああっ俺・・・血が沸騰してもう死にそうだ・・・

「ああっ・・・どうしよ俺、髪の毛巻いてきた」

自分の天然パーマの髪の毛をおもいっきりかき回す。

そして俺はとっくりが風呂に入ってる間、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ
自分でも「落ち着きのない男だな」と思うくらい落ち着かなかった。


それから一時間
うろうろしつくして精神的に疲れた・・・、なのにとっくりはまだバスルーム
から出てこない。

ひょっとして俺のことが嫌で逃げる口実で「風呂」なんて言ったんじゃないだろうか
と嫌な考えが頭の中をめぐり始める。

バスルームの扉の前で考え込むこと数分・・・。
俺は突入することにした。

もしかしたら倒れてるかも知れないし・・・、この部屋はユニットバスだ。
だからトイレだといえば許されるかも・・・しれない。

意をけっしてドアノブに手をかけようとしたところ、俺が触れる前に勝手に
ドアノブがガチャリと回った。

でてきたのは石鹸のいい香りのする濡れ髪が色っぽい、俺のパジャマの上着
だけを身に着けたとっくり・・・・・・。




これは・・・来るッ!来る来るっ!!
下半身に来るッ!!


俺のパジャマを着てるってだけでもヤバイ
ぶかぶかな首周り、普段見れない鎖骨が・・・
しかも下は着ていないときた。
すらりとした美脚がダイレクトに俺の目に飛び込んでくる。

極めつけは、風呂上りのけだるい表情と上気した頬

なんだこの色っぽさはヤバすぎるよ、これはもうとっくりが泣いて嫌がった
としても俺は止められない。

「お風呂・・・ありがとうございました」
「・・・とっくり」

俺はそのままとっくりを抱きしめた。
風呂に入る前もいい匂いだったけど、今は俺と同じシャンプーの香りがする。

その香りだけでとっくりが自分のものになったような気がした。

「・・・寝室・・・・・・、行くか?」

そして今度こそ・・・と意を決してとっくりの耳元で囁いた

「・・・・・・」

とっくりは無言のままこくりと頷いた。

「さんざん焦らしたんだから、覚悟しろよ」

はやる気持ちを抑えなければ・・・、と思うのだが抑えられるはずもなく、
俺はとっくりを抱きかかえて寝室に向かった。

「もう俺のモノだからな・・・とっくり」


俺は衝動のままにベットへととっくりを押し倒した。
そしてその白い喉もとにすがりつく。
胸元を強引に広げると、真っ白な乳房が月明かりに浮き上がる。

大きくはだけたハジャマから覗く白い乳房。
まぶしく浮き上がるその膨らみがふるふると上下に揺れる。

「もう、離さない。」

とっくりの口元にかかる髪を指でずらしやり、顔を近づけ、唇を塞ぐ。
ふくよかな気持ちよさに思わずもっと吸い付きたくなる。

「もう俺のモノだからな・・・とっくり」

何度も何度も・・・自分に言い聞かせるように俺はこの言葉を繰り返した。


「ん・・・・ぅ」

俺の舌がとっくりの首筋をたどりそ胸元の愛らしい突起を攻め立てた。

「え…な…ああっ…ン…」

とっくりが吐息を漏らし始めたのを合図に 下着の隙間から手を差し入れ
そっと茂みの下をこするととっくりはひくん、と身を跳ね上げた。

「ぁあっ・・・そこ、だめ」

何度も尖りをこすると、その度にひくん、ひくんと反応する。
自分の行為に快楽を覚えるとっくりが愛しくてたまらない、いつもは見せること
のない表情を今・・・俺だけが見ている。


―――たまんねぇ




俺は限界に近い状態のとっくりの肉芽をはじくように快感を促してやる。

「いーーぁぁ・・・・、あぁっ」

迎えた絶頂感に戸惑いの表情を残したまま、とっくりは震える手で口元を押
さえてヒクヒクと太股を痙攣させている。
とっくりの潤んだ瞳が俺を見ている。
そして欲望はますます膨れ上がってくる。
すぐにでも入れたいのを抑え、足を大きく開いて下着をめく、舌を這わせる。

「あ、あああ、ん、あッ・・・あああっ・・・」
「・・・ん・・・、は・・るこ」

わざとじゅる、じゅるっと卑猥に音を立てて聴覚からも犯す。

「・・・やめ・・・ああっ!」

舌でヒクつく蜜壷の入り口と陰核とを交互に弄ばれて、とっくりはあらげもなく
声をあげる。

「溢れてくるぜ・・・どんどん」
「ひあぁっ、言わな・・・いで・・・!」
「・・・春子」
「んぁ・・・・っ」

再びとっくりが絶頂を迎えたのを確かめると、俺は今度は指を差し入れた。
食いつくようにねっとりと締め付けてくる膣の感覚にますます興奮が高まる。
しかし、いましばらくの我慢、となんとか耐える。

「もっと感じてくれ・・・春子」

手前へクイクイと角度を変えて弄ると、とっくりは体をくねらせる。
そして俺を探すようにとっくりの腕が伸ばされて、俺は指を抜いてその腕に捕ら
えられてやる。
そのしぐさが可愛くて自分も限界を感じ、ゆっくりと自分の杭をとっくりの中へ
埋め込んでいった。

「ぁぁ・・・・・はぁぁ・・・ん」

腰が自然と動いてしまう。

落ち着け・・・俺と思っていても 濡れていたとっくりの中は食らい付いて離さな
いほどに締め付け、俺は我を忘れて繰り返し繰り返し、夢中で腰を打ちつけた。

「・・・ぁぁあああッ!!」

とっくりも絶えず甘い吐息を漏らしている。
お互い・・・あともう少しというところで、俺はとっくりから「すき」という
言葉を聴いていないことに思い当たった。
それをとっくりの口から聞きたい・・・、そして動きを止める。

「やぁ・・・なんで?」

とっくりが恨めしそうに俺を見上げた。

「・・・俺のこと好きか?」
「・・・・・・」

無言・・・ってなんだよ、むっとしたが再度とっくりを見つめた。

「・・・好きだよな?」
「・・・・・・」

無言
でも、次の瞬間とっくりが俺の上に馬乗りになってきた。

「お・・・ぉい、何だよ」

突然のことに焦った俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。

「あなたは・・・そんなこともわからないんですか?」

先ほどの甘い雰囲気は何処へやら・・・とっくりは俺を睨みつけてきた。

―――わかるよ・・・、わかるけどもさ

「俺はお前の口から聞いてみたいんだよ」
「・・・そんなことも分からないクルクルパーには行動で思い知らせてあ
げます」

これを形勢逆転というのだろうか・・・、まさにその言葉がぴったりだ。

俺の上に馬乗りになったとっくりが俺に思い知らせるために淫らに動き出す。

俺はとっくりに上から蹂躙されるのを楽しみながら、ただじっとその振動を味わう。

「ん、んっ…んっんっ…あっ…は、あっ、はぁっ……っん!」

腰を揺らし、 堪えきれずに漏らしてしまう声を塞ごうと手首で口元を押さえていたが、
徐々に気持ちよさに我を忘れて乱れ始めていた。

「んっ!ん…っ…ふはっ、はあっ…あっ……ああっ…」
「・・・とっくり」

天を仰ぎ、胸を弓なりに反らせ喉仏を露わにしてのけぞり、とっくりは、はあっ!と
高く啼いて両手を後ろに付いた。
その腕でしなやかな自らの体重を支え、腰を高く跳ね上げては下ろし、また引き抜く
寸前まで引いては押し付ける。
もはや理性が吹き飛んでしまったかと思うほど、夢中で腰を動かすとっくり・・・。
想い伝わってくる。

もっとその淫らな部分が見たくて、ぐいととっくりの膝を立たせた。
俺も後ろに手をつき上半身を起こして、じっくりと舐めるように眺める。
じゅぶじゅぶと液を絡めながら繋がる卑猥な部分が丸見えになる。
その様子にぶるりと武者震いがして興奮が高まった。

「あ・・・んぁ・・・はぁぁぁん」
「・・・はる・・・こっ」

下から動きを手伝って、ぐい、ぐい、と突き上げる。

「・・・ひぁ・・・・っバ・・・カ」
「くっ・・・バカってなんだよ」

仕返しとばかりに奥まで突いたものを更にぐ、ぐ、と押し上げる。

「ひぃぁぁーーぁっ・・・あぁっ」

とっくりがひくひくと震えて崩れてしまい、絶頂へと達したことを知らされた
俺は今度は上から押さえこんだ。
膝を抱え上げて局部を大きく広げさせ、どくどくと膨れ上がっていく欲望を奥まで
グッと突き進める。

「も・・・ぅだめぇ・・・しょう・・・じ・・・しょ・・・」
「だめじゃねぇだろ・・・、ホラ」

首筋に這わせる舌を乳房へと下ろし、そのコリコリと固くなっている頂きにキリリと
噛み付いた。

「ぁあああっ・・・っ」
「なぁ・・・?好きって言ってくれよ」

とっくりの何度目かの絶頂を確認して俺は半身を起こし、塊を一気に押し込んだ後、
引き抜き、限界を迎えていたモノをとっくりの白い肢体に白濁した精液を解き放った。

激しい情事で荒い息を整えながら、とっくりの隣にごろんと寝転がる。

「大丈夫か?」

そしてとっくりを気遣うようにゆっくりと抱き寄せた。
相変わらずとっくりは何も言わないまま小さな頭を俺の胸に擦り付けてくる。


―――しばらくはこのままでも・・・でも絶対いつか「好き」って言わせてみせる
からな覚悟しとけよ。

そんなことを思いながら、俺はクスリと笑みをもらした。

「なんですか?」

とっくりが怪訝そうに俺の顔を伺う。

「いや・・・相変わらず、お前って言動と行動がちぐはぐだと思ってさ・・・」

俺は笑いながらとっくりの形のいい鼻を摘んだ。

「ふぁにふるんでふか・・・」
「・・・可愛いなぁと思ってさ」

そういうととっくりの顔が朱に染まった。

―――ホント・・・、可愛いな。
こんな強情で態度のデカイ女・・・、可愛すぎて俺だけしか扱えねぇよ

とっくりの指が伸ばされて俺の髪に絡む、暫く弄んで軽く引っ張られた。

「イテッ!」

俺は抗議しようとしてとっくりをにらみつけた。

「・・・好きですよ」

とっくりの口から出た意外な言葉に、その勢いをなくす。

「・・・・・・」
「・・・好き・・・ですよ、あなたのそのクルクルパーマ」

そしてとっくりの顔に花がほころんだ様な笑みが浮かんだ。


俺は言葉も忘れて、その笑顔に見入った・・・。

この流刑地で・・・、俺は暫くはやって行けそうだ。



オマケ

「・・・なぁ、腹へらねぇか?」

情事の後、暫く寝転んでいたが考えてみれば夕食も食べていない。

激しい運動した後だしさすがの俺も腹が減って死にそうだ。
それはとっくりも同じだったようで、こくりと頷いた。

「・・・やきそばパンならあるけど・・・くう・・・」
「そんなもの食べません」

言い終わる前に間髪いれずにつっこみが入った。

「じゃあ、何食うんだよ?外行くか」
「・・・・・・」

とっくりは無言で立ち上がり、自分の荷物から何かを出してきた。

「なんだそりゃ」

何をするんだと不思議に思いながら近づく。

「おわっ!!」

次の瞬間、ギラリと良く研がれた包丁が俺の眼前に突きつけられた。

「あなたが河豚河豚言うから食べたくなって帰りに仕入れてきました」
「は・・・?」
「ですから今から捌きます」

―――はぁぁぁ〜?捌くってオイ・・・そういえば河豚調理の資格持ってるって
言ってたよな・・・

「ハハハ・・・」

もうなんでもありなんだな・・・もう驚かないぞ、俺は・・・。

そうこうしている間に、家にあった粗末な皿に河豚の鶴が舞い、暖かそうな
てっちりが湯気をたてていた。
唐揚げも旨そうだ。

「どうぞ・・・・・・」
「いただきます」

二人で始めて同じ釜の飯を食べる。

「くぅぅぅ〜、旨くて痺れるな」
「ばれましたか・・・、死なない程度に毒入れときました」

ぐふっと息が詰まって涙目でとっくりを見る。

「・・・冗談ですが・・・何か?」
「あんたの冗談は洒落にならねーんだよっ!!」



ああっ、俺は幸せ者だ・・・このまま死んでもいいくらいだ。
ただし、河豚毒では死にたくないな。






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