東海林武×大前春子
「・・・昨日・・・からお風呂入ってないから・・・」 開放されたとっくりは真っ赤な顔で俯いて聞こえるか聞こえないかの言葉をいった。 ―――だから・・・、えっ?俺の都合のいいように解釈していいのか? 俺は「ぐりん」という日常では聞こえない効果音が聞こえるくらいの勢いで とっくりを振り返った。 「「・・・・・・」」 そしてお互い無言のまま見つめあうことしばし・・・すごく長い時間に感じる この沈黙。 先に口火を切ったのはとっくりだった。 「・・・だからお風呂貸して下さい」 「お・・・おぅっ、風呂は入れよ」 今、俺どんな顔してんだろ? 多分、顔が熱いから赤い顔してんだろな・・・、でもって嬉しくってニヤけてる な・・・絶対!! とっくりにワザとぶっきら棒にタオル類を差し出して再びキッチンへ逃げるように 引き込んだ。 パタンとバスルームの扉が閉まる音がきこえた。 ああっ俺・・・血が沸騰してもう死にそうだ・・・ 「ああっ・・・どうしよ俺、髪の毛巻いてきた」 自分の天然パーマの髪の毛をおもいっきりかき回す。 そして俺はとっくりが風呂に入ってる間、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ 自分でも「落ち着きのない男だな」と思うくらい落ち着かなかった。 そして我慢できなくなってバスルームのドアの前に立つこと数回・・・ 四回目にしてそのドアノブを握った。 意を決して俺はドアノブを回した。 バスルームはシャワーの熱気で蒸気が立ち込めていた。 そして俺の目に飛び込んできたのは、服を着たままで風呂の縁に座った とっくりだった。 「おい・・・・・・風呂入るんじゃなかったのかよ」 俺の問いかけにハッとした様にとっくりが顔を上げた。 「・・・・・・覗きとはいい趣味ですね」 動揺を隠したとっくりが言い放った。 「嫌・・・なのか?俺が強引だったから仕方なく・・・なのか?」 ―――俺のことが嫌なんだ・・・ そう考えたら、理性が飛んでいた。 「ちがっ・・・!!」 とっくりの言葉も耳に入らない俺はとっくりをバスルームの壁に押し付け 無理やり唇を貪る。 とっくりは抵抗して俺の腕から抜け出そうとしたが、所詮男の力に適う筈 なんてなく、次第に大人しくなっていった。 「ふざけないで・・・・・・」 「ふざけてなんかないよ」 俺の真剣な口調に、とっくりはそれ以上何も言えないまま俯いた。 密着したままで互いの鼓動が高鳴り、互いに感じる体温が生々しい。 俺は辛くて、怒りだしたくて、泣きたくなるような……いろんな感情を押し 止めてとっくりを見つめる。。 「しょ・・・うじ・・・しょ・・・・・・」 「俺の思いに答えてくれよ・・・とっくり」 俺はゆっくりと、とっくりの服を脱がしていった。 ・・・・・・パサリと服が床に落ちた。 とっくりは抵抗することなく、流されるまま服を脱がされていく。 「・・・・・・」 下着にかけられた俺の手を押さえて、これ以上はと止めようとしたが、 俺は優しくその手をどかして全てを剥ぎ取った。 「・・・・・・とっくり」 「・・・・・・」 俺は不安に揺れるとっくりの瞳を覗き込むように手のひらで頬を包み込んだ 「・・・俺は・・・もうどうにかなりそうだよ」 言いながら、俺はそっととっくりに口づける。 柔らかい唇の感触を縫って、生暖かいものをとっくりの口に侵入させた。 思う様とっくりの口内を味わう。 「う・・・ぁん」 「もう・・・俺を拒否しないでくれ」 唇から離れそのまま首筋を舌でそっとなぞると、とっくりの身体がびくびくと反応した。 「はぁ・・・・・・んんっ」 首筋から胸元へと俺の舌が滑っていく。 「好きなんだ・・・・・・」 出しっぱなしだったシャワーの舌にとっくりを突き出した。 そして俺も服のまま気にすることなく、シャワーの下に身を投げ出す 「ひゃっ」 ちょうどよい温かさのお湯が、二人に降り注ぐ。 着ていた白いシャツが、びしょ濡れになって肌に張り付く。 「・・・・・・」 無言のままで まとわりつく煩わしさにイラつきながら俺は荒々しくネク タイを緩め、床へと投げ捨てた。 水気を吸ったネクタイがビシャリと音をたてる。 俺・・・嫌われたかもしれない・・・・・・。 嫌われたくなかったなぁ。 「ごめんな・・・さい、久しぶりだったから」 ぽつりと、とっくりが言った。 「え……?」 「どうしていいかわからなくて・・・」 その言葉の真意を図りかねて、聞き返した。 「・・・嫌なわけじゃないんだな・・・・・・?」 「・・・・・・」 とっくりがコクリと頷いた。 その瞬間、どん底だった気持ちが急上昇した。 濡れたなまめかしい肢体のとっくりを見つめる。 「もう・・・抑えられないぞ」 「・・・好きにして」 その言葉をきっかけに、俺はとっくりをきつく抱きしめた。 胸を痛いほど吸い上げ、とつくりに鮮やかな俺の所有印を残す。 「んぅ・・・っ」 痛いのか快感なのか分からないようなとっくりの声があがった。 その声を無視して俺は唇はを下腹部へと滑らし、太股を割ってそこに到達する。 「あはぁっ……はぁぁんっ」 かぶりつくように吸い、思う様、舐る。 ざらついた舌を激しく動き回らせる。 とっくりはびくびくと身体を震わせながらその快感に支配されている。 「はぁぁぁっ!だめ、だめぇ!」 あっという間に昇りつめようとするとっくりの身体を俺は離そうとしなかった。 「だめ・・・あぁぁっ!許して・・・っ!」 頭が真っ白になるほど責められて、とっくりは俺に訴えるような眼差しをよこした。 その視線を受け取ると、俺は身体を起こし、とっくりの顔に張りつた髪を耳に かけてやる。 「しょ・・・うじ・・・しょ」 シャワーで濡れた髪、肌を滑り落ちる水滴、切なげな眼差し。 たまらなく妖艶なとっくりの身体。 「いいか?・・・春子・・・」 「・・・きか・・・ないで」 とっくりの言葉に、俺は安堵して、優しくとっくりの額にキスを落とした。 とっくりの足を腕に抱えて立ち上がると、不安定な体勢を浴室の壁に押し付けて 安定を図る。 とっくりが不安げな顔をして俺の首にしがみついた。 「俺が・・・支えてるから安心しろ」 俺ははとっくりの呼吸に合わせるようにして、ゆっくり腰を押し進めてすべてを とっくりの中へと収めきる。 「ん・・・はぁぁ・・・ぁっ」 とっくりから思わず声が漏れた。 愛しさで胸がいっぱいになる。 ゆっくり、優しく、その感触を確かめるように、俺は挿入を繰り返す。 「好きだ・・・好き・・・だ・・・春子っ」 だんだんと激しくなる動きに、とっくりの声も高まっていく。 「あぁぁぁぁ・・・・・っ」 「は・・・るこっ」 熱く絡み合って・・・溶けて・・・弾けた。 ってオイ・・・今俺なんてこと考えていたんだ・・・? バスルームのドアノブを握り締めたまま妄想に耽ってしまった。 ・・・・・・俺・・・、もういい年なのに・・・、ガキみたいだ。 それから一時間 うろうろしつくして妄想で精神的に疲れた・・・、なのにとっくりはまだバスルーム から出てこない。 ひょっとして本当に俺のことが嫌で逃げる口実で「風呂」なんて言ったんじゃな いだろうか と嫌な考えが頭の中をめぐり始める。 バスルームの扉の前で考え込むこと数分・・・。 俺は本当に突入することにした。 もしかしたら倒れてるかも知れないし・・・、この部屋はユニットバスだ。 だからトイレだといえば許されるかも・・・しれない。 意をけっしてドアノブに手をかけようとしたところ、俺が触れる前に勝手に ドアノブがガチャリと回った。 SS一覧に戻る メインページに戻る |