東海林VS土屋(非エロ)
東海林武×大前春子


大前春子がS&F運輸名古屋営業所に着任して一ヶ月余り。
ドライバー連中のボス・土屋は、東海林のことは相変わらず軽視していたが、
春子の言うことは聞くようになっていた。
始めは春子のことを生意気な女とくさしていたものの、春子の確かな仕事ぶりや
肝の据わりぶりに一目置かざるをえなくなったのだ。

大きな転機は二週間前。
春子と土屋との衝突が決定的となり、春子は勝負を申し出た。
敢えて古風な「決闘」を挑み、剣道三段の腕で見事に土屋を負かした。

それ以来、土屋とその仲間たちは次第に春子に心を開くようになり、事務所で春子が
東海林をやりこめる様を小気味よさそうに眺めるようになった。
春子は相変わらず東海林と丁々発止のやり取りをしながら、忌憚のない意見をぶつける
一方で、合理的な命令には素直に従い、積極的に土屋たちを説き伏せた。
そんな春子に触発された東海林は、それまで以上にスタッフの懐に入って行こうとしたし、
土屋たちも又、春子が間を取り持つことで、東海林の言い分にも一分の理があることを
理解するようになった。
もっとも、それを素直に認めるような土屋ではなかったが。

――そんな中。
土屋にとって春子は、大いに気になる存在となり始めていた・・・。

「春ちゃん、あのネクタイと前から知り合いなのか?」
「うん・・・。前に本社に派遣されたことがあって、そのとき隣の課の主任だったんだ」
「ふん。あいつ、どう見ても左遷だよな。何やらかしたんだ?」
「・・・さあ」
「知らねえのか?」
「まあ、詳しいことは。興味もないし」
「はは、ま、そうだよな」
「・・・でも・・・、友達をかばって上司に楯突いた、って聞いたけど・・・」
「友達をかばったぁ?あのネクタイが?」
「うん・・・」
「はっ、嘘だろそりゃ。そんなタマかよ」
「でも・・・ほんとらしいよ」
「ふーん。ほんとかね。ま、どーでもいいけどよ」
「そうだね・・・」
「――しかしさ。春ちゃん、何でわざわざ名古屋に来たんだよ」
「え?」
「・・・もしかして、さ・・・オトコがこっちにいる、とか?」
「・・・え?」
「やっぱり・・・オトコ、か?」
「・・・」
「・・・(ゴクリ)」
「・・・うん、まあ」
「えっ・・・」
「え?」
「いや・・・そ、そっか・・・やっぱりな、ははは」
「・・・」

「おい、ネクタイ」
「はい?」
「ちょっと顔貸せ」
「・・・は、はい?」
「いいからこっち来いっつってんだよ」
「いやあの・・・、わかりました、わかりましたから!引っ張らないで!」
「お前・・・本社でも春ちゃんと一緒だったらしいな」
「え?・・・ええ」
「春ちゃんが何で名古屋まで来たのか、お前何か知らねえか?」
「・・・」
「何か聞いてねえかって言ってんだよ!こっちにいるオトコの話とか」
「・・・お、おとこ?・・・ですかぁ・・・?」
「・・・おい。何だよ。お前何か知ってんのかよ」
「い、いやぁ・・・」
「何か知ってんだろ、お前」
「いや、し、知りませんよ・・・。あ、あの・・・大前さんは、何て・・・」
「・・・オトコか、って聞いたらよ。そうだ、ってよ」
「・・・はー。はー・・・そう、ですか・・・」
「何か噂ぐらい聞いてるだろうがよ」
「んー、いやー、あの、僕・・・基本的に仲、悪いんで・・・」
「・・・」
「っていうか・・・知ってますよね、土屋さんだって。いつも見てるでしょ、
僕らのケンカ」
「ありゃケンカじゃねえだろ」
「(ぎく)・・・えっ」
「ケンカってのは対等な場合だろ。お前と春ちゃんは完全に春ちゃん優位だろうが」
「・・・あ、そ、そうですね(ほっ)」
「・・・ま、そうだな。春ちゃんのプライバシーをお前みたいなヘタレが
知ってるわけないか」
「そ、そうですよぉ・・・知るわけないじゃないですか、とっくりのプライバシーなんて」
「とっくりなんて呼ぶんじゃねえ!」
「は、はい・・・」

「・・・とっくり!大変だ」
「何ですか所長」
「土屋の奴、お前に気があるぞ・・・ってか、わかってはいたけど、あれ相当来てるぞ。
ぞっこんLOVEだぞ」
「・・・何ですか、その下らない言い回しと下らない話題は」
「おい大丈夫か?変なことされてねえだろうな」
「されるわけないでしょう。あの人は誰かさんとは違うんです。
というより、普通の人はあなたとは違いますから」
「・・・。そ、そうかぁ〜?!」
「第一、あの人は私には手出しできません」
「そりゃーな。確かにお前は剣道三段の技であいつを黙らせたけれども。
それ以来あいつ、妙にお前になついちゃってるじゃねえかよ。
ああいうマッチョなタイプはなあ、意外にドMが多いんだよ、ドMが。
お前にはな、男のM心を吸い寄せる魔性があるんだよ」
「・・・(ぷぷぷ)」
「な、何だよ」
「土屋さんのそういうところは、誰かさんに似てますね(ぷぷ)」
「!・・・わ、笑い事じゃねえんだよっ。大体なあ、あいつお前に興味深々で、
あれこれ嗅ぎまわってるぞ。何で名古屋に来たのかとか」
「そのようですが、何か?」
「・・・オトコのためだ、って言ったのか?」
「オトコか、としつこく聞かれたので仕方なく、はいと答えました」
「あいつ、そのオトコにめちゃめちゃ敵愾心燃やしてるぞ」
「それが何か?」
「バレたらどうすんだよ!」
「はあ?」
「はあ?じゃねえよ。俺のためだってバレたら・・・、」
「・・・」
「いや、その・・・」
「・・・怖いんですか?」
「――ああ、怖いよ」
「・・・情けなっ」
「土屋に半殺しにされるのはまだいいよ。いやまあ、いいって言ったら嘘になるよ、
よくないけどさ。でも、もっとまずいのはさ・・・、今まで必死に公私の区別つけて
きた俺たちの努力が、水の泡になるかも知れねえってことだよ」
「・・・」
「お前が言ったんだよな。俺とお前ができちまったら、まとまる職場もまとまらないって」
「・・・」
「もしお前が俺のために来たってわかったら・・・、周りの奴は九分九厘疑うだろ、
俺たちの仲を」
「・・・」
「・・・俺たち・・・こんなに苦しい思いして職場まとめてきたのに・・・」
「・・・。――大丈夫。問題ありません」
「え?」
「そのオトコの正体は絶対に土屋さんには漏れませんので、ご心配は無用です。
では業務に戻らせて頂きます、所長」
「おい!」
「下らない心配してないで、あなたもとっとと、働きなさい!」
「おい、とっくり!・・・ったく」


そんなある日――。

名古屋を震度5弱の地震が襲った。

「うわっ!」

地震嫌いの東海林をはじめ、オフィスの面々は慌てて机の下に入る。

――とっくり・・・どこだ?

東海林は気が気ではないが、揺れが怖くて外に出られない。

地震はほどなくして収まり、うずくまっていた者たちも三々五々、表に出てきた。

「結構でかかったな・・・。皆さん、大丈夫ですか?!」

東海林が声をかけた。どうやらオフィスにケガ人はなさそうだ。

「誰かテレビつけてくれ。それと吉崎さん、有川さん、手分けして倉庫の方に
異常がないか、チェックしましょう」

東海林はスタッフを引き連れて足早に倉庫へ向かった。
ケガ人がないか、積荷が無事かはもちろん気になっていたが、春子の顔が見たかった。

倉庫内はざわついてはいたが、ケガ人はないらしい。
スタッフたちは、早くも崩れた積荷やフォークリフト用の荷台(パレット)を
片付け始めている。その中には、甲斐甲斐しく働く土屋の姿もあった。
それもそのはず――。
倉庫にいた春子が、てきぱきとその場を仕切って指示を出していたのだ。

「とっくり!大丈夫か?」
「ご覧の通り、大勢に影響はありませんが、何か?」
「・・・だったらいいんだ」
「こちらは問題ありません。所長は他を・・・」

と、言いかけた時。

春子のそばに積まれていたパレットの山が、がらがらと音を立てて崩れ始めた。

「あぶねっ!」

東海林は思わず駆け寄り、春子を突き飛ばす。

崩れ落ちたパレットが東海林の頭を直撃した。

衝撃で東海林の長身がはじき飛ばされ、倒れた体の上に後続のパレットが
バラバラと折り重なった。

「何だ何だ!」
「どうした!」
「大丈夫か?!」

スタッフの男たちが続々と集まってくる。
突き飛ばされた春子が起き上って振り向くと、男たちがパレットをどけ、下敷きになって
いた人間の形が現れ始めた。

春子の目に飛び込んだのは、うつぶせで倒れている東海林の姿だった。

――東海林くん!

叫びだしたいくらいなのに、喉がひきつって声が出ない。

春子はふらふらと起き上がると、東海林のそばへ寄る。
駆け寄りたいのに、怖くて思うように進めない。まるで悪い夢でも見ているようだ。
近寄って見ても、東海林はぴくりとも動かない。後頭部をパレットに直撃されたのか・・・。

「救急車!救急車呼べ!」

男たちの怒号が聞こえる。春子はようやく少しだけ、我に返った。

「・・・どいて下さい。ケガ人にさわらないで。頭を打ってるかも知れません」

春子は努めて冷静に声をかけた。

「みんな、春ちゃんに任せろ。看護師の資格持ってんだ」

土屋が周囲を制し、春子に場所を作ると、手を貸すために隣に陣取った。

「・・・土屋さん、なるべく頭を動かさないように、ゆっくり、仰向けにして下さい」
「わかった」

土屋が慎重に東海林の体を裏返す。春子はジャケットを脱ぐと枕にしてあてがってやり、祈るような気持ちで頭を支えた。

「ゆっくり・・・そっと・・・そう・・・」

仰向けにされた東海林の顔は、蒼白だった。頭から額に一筋、血が垂れている。

――まさかそんな・・・いや!

春子の動悸が激しくなる。手を鼻から口元に当て、呼吸があるかを確かめる。
その手は、わずかだが震えていた。
土屋が思わず春子の顔を見たが、春子は気づかない。

・・・幸いにも、東海林の鼻先から呼気を感じる。

春子は頭の血がどこから出ているかを確かめた。側頭部のようだ。傷は浅い。

――神様・・・!

「・・・しょ、しょうじ・・・さん・・・」

声がうまく出せない。春子は無意識に咳払いをする。

「東海林さん!聞こえますか?!東海林さん!」

反応が返ってこない。

――起きて・・・!起きなさい・・・!

「・・・起きなさい!このくるくるパーマ!」

春子は思わず叫んだ。

何もこんな時にその呼び方を・・・、と周囲の空気が一瞬固まるなか、
春子は全く意に介さず、ただ東海林だけを一心に見守っている。
その横顔が青ざめているのを、土屋は見逃さなかった。

「・・・ん・・・」

東海林がわずかにうめく。

――東海林くん・・・!

本当は人目もはばからず取りすがって名前を呼びたい。でも、今の春子にそれはできない。

「・・・東海林さん!聞こえますか!しっかりして下さい、聞こえますか?!」

周囲が固唾を飲んで見守る中、東海林がゆっくりと目を開けた。

「気がついたぞ!」

誰かが叫ぶ。
東海林は焦点の定まらない目でしばらく見回すと、ようやく春子をとらえた。

「・・・東海林さん・・・わかりますか?」

東海林の唇が、わずかに動く。

――はるこ。

「何だ、何て言ったんだ?」

周りの男たちが騒ぐ中、声なき声を聞き届けた春子は、思わず東海林の冷たい手を
握り締めた。

「・・・大丈夫。もうすぐ救急車が来ますよ」

その声はとても柔らかかった。春子は涙目になるのをこらえながら、懸命に気丈を装った。

さすが看護師・・・と周りが感嘆する中、一番近くで一部始終を見ていた土屋は、
複雑な表情で二人を見つめていた。

「う・・・ん・・・」

東海林が再び目を覚ますと、そこはベッドの上だった。

「所長・・・」

ベッドの脇には、すっかり平静を取り戻した春子が付き添っている。

「とっくり・・・、ここ、どこ?」
「病院です。気分はどうですか?」
「・・・頭いてえ・・・」
「頭を二針縫いましたけど、脳しんとうで済みました。MRIでも大きな異常はないそう
ですから、大丈夫。他にもあちこち打撲はありますが、骨に異常はありません」
「俺、どうしたんだっけ・・・」
「地震でパレットの山が崩れたんです。・・・私をかばって・・・、下敷きに」
「・・・あーそっか、思い出した・・・って、おい!お前、大丈夫か?」
「・・・大丈夫です」
「そっか。良かった・・・いて」

人の良い笑顔を見せる東海林に、春子は何だか腹が立った。

「・・・。――バカ」
「へ?」
「何が“良かった”だ、バカ!」
「・・・はい?」

――心配させて・・・。あんなに心配させたくせに、ひとの心配なんかして!

ほっとしたせいなのか、悔しいからなのか、よくわからない。
何だか涙が出そうになって、春子は足早に部屋を出た。

「どこ行くんだ、おい!とっくり!何なんだよ、ったく・・・。――!」

突然、東海林が絶句した。

春子と入れ違いに現れたのは、土屋だった。

土屋はむすっとしたまま入ってくると、さっきまで春子が座っていたイスに腰を下ろした。

「・・・調子はどうだ」
「はい・・・大丈夫です」
「・・・」
「・・・あのー、土屋さん・・・」
「お前な・・・」
「は、はい・・・」
「春ちゃん泣かせてんじゃねえよ」
「――!」
「何でおめーみてーなヘタレが春ちゃん泣かすんだよ。間違ってるだろ、世の中」
「え・・・」
「お前が倒れた時、春ちゃん真っ青な顔して必死で看護したんだぞ。・・・手が震えてたよ」
「・・・」
「近くで見てない奴は気づかなかっただろうけどな。俺も決闘で負けた時、手当て受けて
るし・・・普段の春ちゃんならどんなに冷静に対処できるか、知ってるからな」

東海林にも覚えがあった。去年のバレンタインの夜。
取引先の娘が突然産気づいた時、助産師・大前春子は有無を言わさない冷静さと、
妊婦を包み込むような余裕の表情で、見事にその場を仕切っていた。

――その大前春子が、震えていたなんて。

「・・・でも土屋さんのあれは、かすり傷でしたし・・・」
「てめー、俺をコケにするつもりか?!」
「・・・」
「今だって春ちゃん、泣きそうな顔して出てったじゃねえか!」
「え・・・」

――あいつ。泣いてたのか。

「お前、俺をバカにしてんのか?それともお前がバカなのか?」
「・・・たぶん、俺ですね・・・」

東海林は自分の鈍さにうんざりしながら、力なくつぶやいた。

「――春ちゃんが名古屋来たのは・・・お前のためだったんだな?」
「・・・」
「どうなんだ」

土屋が険しい顔で問い詰める。
いつもならその剣幕にたじろぐ東海林だが、今はなぜか、腹が据わっていた。

「土屋さん――」
「・・・」
「あいつと俺は・・・あなたが思ってるような、そういう仲じゃありません。
少なくとも今は・・・まだ」
「・・・」
「でもあいつは・・・、俺の人生を変えた女です」
「・・・!」
「本社からはドロップアウトしたけど、あいつのお蔭で俺は自分の中の良心と向き合う事ができた。大事なものを忘れずに済んだんです。それで十分だと思ってました・・・。でも、あいつはここまで来てくれた」
「・・・」
「だから俺は、あいつの励ましに応えなきゃならない。
名古屋事務所をまとめて、結果を出す――今はそれだけです」
「・・・」
「それができたら、今度こそあいつを・・・」
「・・・」
「・・・ははは。なんちゃって」
「・・・ヘラヘラすんな、このヘタレが」
「すいません」

不思議な感覚だった。
東海林にとって土屋は、あれほど分かり合えずに手を焼いた相手なのに、今は全然
怖くない。
土屋もまた、目の前で穏やかに微笑んでいる細身の男を初めて見るような気持ちで
見つめていた。

「――友達をかばって上司に楯突いた、って本当か?」
「え?」
「春ちゃんが言ってた。興味ないからよく知らないけど、なんて言いながらな」
「・・・」
「それで飛ばされたのか」
「・・・そんなかっこいいもんじゃないですよ。自業自得です」
「・・・。お前よ・・・」
「はい」
「――やっぱ、むかつくな」
「・・・」
「かっこつけんじゃねーよ、ヘタレのくせに」
「すいません」
「春ちゃん泣かせたら、ただじゃおかねえぞ」
「はい」
「結果出したいなら、いつまでもこんな所で寝てねえで、とっと治せ」
「・・・はい」
「じゃあな」
「土屋さん」
「あ?」
「――有難うございました」
「・・・言っとくけどな。お前のためじゃねえぞ。春ちゃんのためだからな」
「わかってますよ、土屋さん」

土屋が病室のドアを開けると、ちょうど春子が戻ってきたところだった。
土屋は「よお」、と声をかけると、何も言わずに出て行った。

「――何を話してたんです?」
「・・・俺、あの人見てて思い出したよ」
「?」
「ホッチキス対決」
「・・・。土屋さんに比べると、随分ヘタレな対決方法でしたね」
「勝負には辛うじて勝ったけど、凄い女だって思って、それで・・・、
翌朝、エレベーターで乗り合わせてさ。覚えてるか?」
「・・・」
「一応敬意を表して大前さん、って呼んだらさ。お前、笑ってみせたんだよ、俺に」
「・・・」
「今思えば・・・俺あの時もう、惚れてたのかも知れないな・・・」
「・・・」
「お前はいつから俺のこと・・・」
「バカ話はやめて、休みなさい」

――まあいいや。でもいつか白状させてやるからな。

「なあ」
「?」
「心配かけて、悪かった」

――東海林くん・・・。

「・・・きっと、そのくるくるパーマが緩衝材になったんですね」
「なるわけねえだろ、そんなの!いてて・・・」
ムキになる東海林を、春子は笑って見つめた。

――助けてくれて、有難う・・・。いつも素直に言えなくてごめんなさい。

春子の手が、東海林の髪を優しく撫でる。

「でもやっぱり・・・柔らかいですよ」
「・・・」

――お前の手の方が、よっぽど柔らけえし気持ちいいけどな。

そう口にしたら怒られることは目に見えていたので、東海林はただ黙って目を閉じた。


翌々日。東海林は職場に復帰した。

「じゃあお願いします、土屋さん」
「わかったよ・・・所長」

東海林の指示に素直に従う土屋の姿を見て、ドライバー仲間は面食らっていたが、
理由を追及すると怒鳴られるので大人しく追随した。
そして――。
他ならぬ春子も、突然の変化に戸惑っていた。

「東海林所長。あの時、土屋さんと一体何を話したんです?」
「別に。大前春子はすげー女だな、って話だよ」
「は?」
「うそうそ。何でもねえよ」

いぶかる春子の追及をかわしながら、東海林は一人苦笑した。

――何だかんだ言って、一番かっこつけてんのはあんただろ、土屋さん・・・。

大前春子に惚れると、男はみんなええカッコしいになる。
そしてどうやら土屋は、とても口の固い男らしかった。






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