東海林武×大前春子
3月も半ばに近づいたある日、俺は引越しの準備に追われていた。 名古屋行きの・・・。 後悔はないといったら嘘になるけど、後悔を差し引いてもおつりがくるほどのすがすがしい 気持ちに嘘はない。 ただ、ひとつ心残りなのは「大前春子」のことだけだ。 もうきっぱり振られている・・・、諦めなきゃいけないけど見ることのなかったアンケート の裏の携帯番号が俺を未練タラタラの情けない男にする。 あの時、まだ希望はあったのに・・・・・・と。 荷物を詰めたダンボールにガムテープを貼り、ため息をついた。 「にゃー」 元気のない俺を心配したのか猫のとっくりが俺の顔を覗き込んで鳴いた。 「なんでもねーよ」 いつもと違う様相になってきた部屋で落ち着きなく動き回ってたのに、飼い主の異変に敏感 に反応するとっくりがいじらしくて堪らなくなって抱き上げた。 拾ってから一ヶ月もたたない内に一回りは大きくなったとっくり。 最初,動物は苦手なのに勢いだけで拾ってしまった子猫。 今は可愛くてしかたがない。 今回の名古屋行きには、実家に預けていくか連れて行くか、迷ったけど結局連れて行くこと にした。 当然だ・・・、俺はすげぇ「寂しがりや」だから・・・慣れ親しんだ会社を離れ、親友と離れ とっくりと離れ、さらに猫のとっくりも手放したら俺は名古屋でやっていく自信はなかった から・・・・・・。 そんな自分の弱さにまた一つため息をついた。 春の暖かさと冬の冷たさを繰り返す不安定な今の季節のように俺の心は不安定で、でも俺は 名古屋へと出発した。 それからもう九ヶ月近く達とうとている。 今では猫のとっくりは一人前の成猫だ。 去年に比べて今の自分は、すがすがしい気分の欠片もない。 本社では自分が中心に回っているようなそんな気分だったのに、名古屋では中心どころか 一人、耐え難いほどの疎外感を味わっている。 しかもネクタイなんて呼ばれて・・・、これならクルクルパーマとあいつに言われていた頃の ほうがマシだ。 ―――自分だけ取り残されたような・・・、そんなやり切れなさが今の俺の心を支配している。 こんな寂しさを埋めるために彼女でも作ろうかとも考えた。 けれど大前春子以外の女はもう俺の中で眼中にはなかった。 だから猫のとっくりを大前春子に重ねて愛情を注ぐほかなかった。 一月になり、名古屋の東京にいたときとたいして変わらない朝の寒さにブルっと身を縮める。 今日最初に取り掛かった仕事は人材不足の為の求人募集のポスターの作成。 こんな時でも俺は大前春子を思い出してしまう。 求人には大前春子を否定する募集要項を書いておいて、大前春子以外を求めていない。 こんなところに・・・アイツが来るはずなんてないのに。 書き直そうと思ったけどやめてヤケクソで入り口に貼り付けた。 そして午後・・・ 「仕事しましょうよ・・・土屋さん」 「お前の下でなんか働けねーっ」 言い捨てるように土屋さんが出て行ってしまった。 あ〜〜もうなんかどうでも良くなってきた。 いっぱいいっぱいの人手不足の配車表・・・土屋の仕事放棄。 爆発寸前だ。 頭を掻き毟りたい衝動を抑えて投げ捨てられた配車表を拾おうとしたところ白い手が すっと伸びて配車表を拾って俺に差し出してくれた。 「あ・・・」 ありがとうと礼をいう前に、俺は目を疑った。 「とっくりっ」 目の前に立っているのは幻か? アイツに会いた過ぎて、とうとう俺おかしくなっちゃったのかっ!! 目頭を擦ってから、もう一度とっくりを見た。 やっぱり、大前春子だ。 まちがいないっ 「とっくり・・・どうしたんだよこんなところで」 懐かしくて嬉しくて擦った目頭が熱くなって泣きそうになった。 アイツが社長賞を俺に取らせるとエラそうな事をのたまっても・・・ 眉毛を抜かれてもなにをされても・・・ 俺は怒ったフリをして、心中では嬉しくて飛び上がりそうだった。 福岡に出発したとっくりを止めたくて仕方なかったけど、賢ちゃんの手前グッと堪えた。 そしてもうすぐとっくりが帰ってくる。 俺・・・自惚れてもいいんだよな? アンタの事・・・、好きでいていいんだよな? 帰ってきたら真っ先にこの質問をぶつけたい。 早く帰って来い・・・祈るような気持ちで車庫で待っていた。 そこに一台の「ハケン弁当」のロゴが入ったトラックが滑り込んできた。 「とっくりっ!!」 駆けていって、ゆっくりとトラックから降りる人物を抱きしめた。 ・・・誰かも確かめずに。 ―――んんっ?やけにガタイがデカイな? それは「やめた」と出て行った後に無理やり俺から配車表を奪ってトラックに乗り込んで 昨日出発した土屋だった。 「てっんめぇ〜っ何しゃがんだっ!!ホモかあんた?」 「・・・あぁっ!!すっすいません間違えました」 自分のとんでもない失敗に慌てて土屋から体を離す。 「はぁ〜っ?間違えましただぁ〜それで済むと思ってんのかよっ!!!」 避けるまもなく土屋の鉄拳が俺めがけて飛んできた。 バキッ!!!! 格闘家バリのマッチョな土屋から繰り出された鉄拳は結構な威力だった・・・。 そして俺はそれにクリーンヒットし情けないことにバタリと倒れた。 薄れ行く意識の中で一発でまさかのされる思ってなかった土屋の慌てた声ともう一台のトラック が入庫してくる音が聞こえた。 それから倒れた自分を取り囲んで「救急車だ」なんだと騒ぐ喧騒を抑えて誰かが割って入ってきた ようだ。 ―――ああっもう駄目だ・・・意識が飛ぶ。 その寸前に聞こえた言葉 「看護師の大前春子ですっ!!」 そして俺の意識は途切れた。 ズキズキと広がる頬の痛み・・・口の中も切れたようで鉄の味がして、その味に少し吐き気を催して 少しづつ意識が覚醒していく。 「おおっ痛ってぇ・・・」 ぼやけた頭を振りながら半身を起すと、頬を冷やしていたらしいタオルがポトリとずり落ちた。 ここは何処だと辺りを見回すと、見覚えのある室内に心配そうに俺に擦り寄ってくる猫のとっくり・・・。 「お・・・俺の部屋か」 そして何があったか順々に思い出していく。 ―――確か・・・、土屋に殴られて気絶して・・・そんでアイツ・・・大前春子の声が聞こえた。 「・・・そうだっ!!とっくりは?」 「ここにいますが・・・何か?」 台所の方から声がして、慌てて立ち上がり声の主に近づいていく。 「イテテ・・・おいっとっくり、どうしてここにいるんだ」 「看護師の資格を持っていましたので看病のため仕方なく・・・ちなみにここへは土屋さんたちが 運んでくれました」 土屋の意外な行動に驚きながらもとっくりが俺を看病してくれていたことが純粋に嬉しい。 「アンタが看病してくれたのか・・・・・・ありがとうな」 「ええ・・・仕方なくですが」 そう言ってとっくりが素直に礼を言った俺に背を向けた。 ―――・・・仕方なくか と苦い気持ちでとっくりの後姿を見つめた。 ちらりと見えたとっくりの耳は真っ赤だ。 そのことに気づいて俺はとっくりの正面に回りこむ。 顔も赤く染まっていた。 「ひょっとして・・・仕方なくって・・・照れ隠し?」 俺の言葉にとっくりは更に赤くなって再び俺に背を向けた。 ―――そういえば本社にいた時、とっくりがとっくりの毛をとってくれて俺が礼を言ったときもこんな カンジだったな・・・。 思い出して笑みがこぼれた。 「可愛いな・・・とっくり」 そしてそのまま、後ろからとっくりを抱きしめた。 ビクリととっくりの体が反応して固まったのを感じたけど、それを無視して思っていたよりも小柄な とっくりの首筋に顔を埋める。 「やめ・・・て」 「やめない」 俺を拒否する言葉を遮る。 「俺・・・アンタのことまだ忘れてない、アンタが名古屋に来たこと・・・嬉しくて自惚れてる」 「・・・・・・」 無言のままのとっくりを正面に向かせ、ゆれる瞳を覗き込む。 とっくりの気持ちを探るように・・・・・・奥まで。 「好きだ・・・、あの時したプロポーズの返事を聞かせてくれ」 断るなっ 断るなっ 断るなっ とっくりが何度断ったとしても・・・何度でも俺はあきらめない。 アンタもとっくりも・・・一人にしないと心に誓ったから。 一瞬、とっくりの顔が泣きそうに歪んで、ゆっくりと瞳が閉じられた。 そこに一筋の涙が頬を伝う。 「バカ・・・・・・ですね・・・、あなたは」 再び開かれたとっくりの瞳は揺れることなくまっすぐ俺を貫く。 そしてとっくりの手が俺の腫れた頬を包み込み・・・・・・、軽く抓った。 「イッテーっ!!なにすんだっ」 「・・・面白いくらいに腫れてたので・・・つい」 これも照れ隠し・・・なんだよな多分? 仕返しとばかりに強くとっくりを抱きしめる。 「返事は?」 「・・・春になったら」 一言返ってきた。 「春になっても・・・いい返事しか俺は聞かないからな」 「それは・・・ど・・・」 何かを言おうとしたとっくりの唇を指で押さえた。 「黙れ」 くちづけた。 ゆっくり 長く 静かにくちづける。 とっくりは逃げない。 はじめこそ目を見開いていたが次第に瞳が閉じられ俺を受け入れた。。 ゆっくり唇が離れ俺達は大きく息をついた。 その時俺達の足元で猫のとっくりがじゃれるようにまとわり付いてきた。 「どうした?とっくり」 「にゃー」 かまって欲しいのか、エサがほしいのかその場をとっくりは離れようとしない。 「あとで遊んでやるからちょっとあっち行っててくれな」 「うにゃー」 言葉を理解したように猫のとっくりは自分のお気に入りの場所に戻って眠りに付いた。 「・・・とっくりって猫の名前?」 「ああ」 吃驚したようにその様子を見ていた人間のとっくりが俺を睨む。 「去年のバレンタイン前に十分間の間に拾った」 そう言うととっくりは眼を大きく見開いた。 「もしかして・・・あの時の・・・・・・?」 「そう・・・アンタが拾うはずだった子猫」 思い出したように部屋の片隅にまどろむ猫を見詰める。 「・・・・・・大きくなったわね」 「まあな・・・、あの時゛おまえも一人なんだね゛って言っただろう?」 「・・・・・・」 こくりととっくりが頷く。 「その言葉が頭から離れなくなったんだ・・・゛お前は一人なのか?゛って・・・、 で思ったんだ大前春子を一人にさせないって」 「・・・・・・」 互いが無言のまま、もう一度くちづける。 薄く開いたとっくりの口内に舌を入れ、今度は深く、深く・・・・・・。 何がなんだかわからない。 身体が熱い。 とっくりの舌を自分の舌でからめとる。 俺の傷から滲む血の鉄の味が互いの口内に広がり、その血の味に酔っていくようだ。 気がつくととっくりの腕が俺の首にしがみつく様にまわされていた。 綺麗な黒髪が俺の頬をサラッと擽る。 「・・・ん」 どちらのものか判らないような吐息が漏れた。 唇が離れる。 黒くて深く・・・・・・吸い込まれそうな瞳が、俺を見詰めて心を掴む。 唇でとっくりの首筋を辿り 軽く震えたとっくりの背中を撫でる。 俺の手が恐る恐るとっくりの胸を服の上からなぞると、とっくりの微かな抵抗を感じた。 「あ・・・だめっ」 俺の胸を押し返して逃げようとするとっくりを、逃がさないようにきつく抱きしめる。 ―――春までなんか・・・俺は待てない 今、とっくりを離す気はなかった。 俺を見ろ。 他のことは考えさせたくない。 逃がさない・・・絶対に。 「・・・くる・・・しい」 きつく抱きしめ過ぎて、とっくりが苦しそうに息をついた。 「俺は・・・止まらないから」 とっくりのジャケットを剥ぎ取り、タートルネックのセーターに手をかけた。 とっくりの制止はない。 セーターの中に挿し入れた手を直接とっくりの滑らかな肌に滑らす。 「あぁ・・・っ」 押し殺したとっくりのあえぎ声に背中にゾクゾクとした感覚が走った。 セーターも剥ぎ取られて乱れた髪をかきあげ、上目で俺を見つめてくる。 「好きだ・・・」 「・・・・・・」 ブラジャーのホックをはずし、こぼれ出た豊かな胸に感動を覚えた。 胸の先端を舌で転がし、もう片方はやんわりと手のひらで揉み上げる。 「ん・・・はぁぁっ」 とっくりが身体をよじらせ俺の頭をかき抱いた。 そのことが俺は嬉しくて思わず強く胸をもみしだき、乳首を思う様吸い上げた。 「はぁぁぁっ・・・あっいぅぅ・・・っ!」 ビクビクっととっくりが反り返り、俺の腕の中で甘く暴れた。 もっと。 もっと俺を求めてほしい。 とっくりの着ているものを全て剥ぎ取り、自分もシャツをボタンを引きちぎるように脱ぎ捨てた。 もういつもの自分じゃないのを感じる。 飢え・・・のような飢餓感をとっくりで満たしたくて 狂いそうだ・・・・。 一糸まとわぬ姿のとっくりをベットに寝かせ、上から見下ろした。 早く自分のものにしたくて堪らない気持ちを何とか抑えて、とっくりの頬に手を添え何度も何度 もキスを落とし、その度に溶けそうな甘さが俺の体を痺れさせる。 首筋に、背中に、ウエストに唇を這わせ、舌で擽る。 「あっ・・・・やぁぁぁっ」 感じて潤いを持ち始めた秘所を指でなぞると指は抵抗もなく、ぬめりの中を自由自在に動き回る。 「もう濡れてるな・・・とっくり」 「ああぁっ・・・」 耳元で囁かれた声にも敏感に反応した。 もっと乱したくてとっくり肉芽を軽く擦る。 「ひぃ・・・!ああっ・・・・っ」 びくびくととっくりの身体が痙攣する。 軽くいったとっくりの少し脱力した足の間に身体を入れて、充血した肉芽にくちづけ更に快感を促した。 「ひゃ・・・・あぁぁっやめ・・・」 鋭い快感に耐え切れないのかとっくりが俺の頭を押しのけようともがく。 「やめないよ」 俺は敏感に反応する部分に息を吹きかけてペロリと舌先で溢れてる蜜をなめとった。 「はぁぁぁ・・・・ん」 ワザとぴちゃ、ぴちゃ…と子猫がミルクを飲むような音がさせ、 聴覚をも犯す。 絶え間なくもれるとっくりのあえぎ声に俺の我慢の限界が近づく。 そして汗ばんだ互いの体を重ね、ぎゅっと抱きしめた。 たまらなく、愛しい思いが込み上げる。 欲しい。 全部が欲しい。 揺らめくとっくりの腰を押さつけ、とっくりを見つめた。 秘所に自分の熱くそそりだったモノをあてがい ゆっくりと押し入る。 「あぁぁぁ・・・・・・んんんっ」 全部をとっくりの中に入れてすぐに動きたいのを我慢して、長いキスをする。 俺は息をついてとっくりの顔を見つめるとせつない顔で少し笑った。 「・・・春子」 涙を浮かべたとっくりがコクリと頷いたのが合図のように、俺は慣らす様にゆっくりと動きはじめた。 「ああっ・・・」 とっくりが髪を乱して俺の動きに答える。 俺の段々早くなる動きに合わせてとっくりの腰が動き、より深く俺を受け入れようとする。 そんな痴態を見下ろしながら愛しさでいっぱいになる。 こうして自分の動きに合わせて彼女が感じて、狂乱している姿を見ると、 とっくりが自分のものに なったという征服感が俺の中に芽生える。 ―――もっと…もっと喘いでほしくて。 俺を欲しがってほしくて。 もっともっとと欲張りになっていく自分に苦笑する。 腰を動かしながらとっくりの顔から目が離せない。 胸も愛撫しながら乳首を吸うと とっくりの中がキュッと俺を締めつけ、射精感が高まった。 「・・・春子っ」 「ん・・・ふぁぁ・・・」 深く貪り合うようなキスを交わす。 とっくりの舌はもう、俺のそれと一緒に絡み合って、どちらがどちらの舌かわからない。 激しく打ち付けるように腰を振った。 身体が痙攣して、頭の中が真っ白になる。 「い・・・ぁぁぁぁぁああっ・・・も・・・いっ・・・く」 体を震わせ今まで以上にキュと俺を締め付けた。 とっくりがいったのを確認して奥の方で、大きく膨らんで弾けそうになる寸前で引き出しビクビク と脈打つ自身をとっくりの白い肌に弾けさせた。 「なぁ・・・とっくり」 「・・・なんですか?」 情事の後の甘さを引きずることなくとっくりがそっけなく対応してきた。 ―――まぁ・・・睦言がないっていうのもとっくりらしいけど と心の中で苦笑しながら話を続ける。 「・・・一緒に住んでくれないか?」 「・・・・・・」 無言のままで反応がない 「お願いだ・・・、OKしてくれなきゃ俺がお前の家に押しかけてやる」 俺は一か八かで強引な賭けに出た。 「それはお願いではなく脅しというんです東海林所長・・・」 「ああっもうッ!!脅しでも何でもいいから答えてくれ」 これで駄目なら泣き落としで迫ってやる・・・と決意したとき、とっくりがコクリと頷いた。 「・・・へっ?マジで」 ―――信じられないようなモノでも見たような・・・こういうのを狐に摘まれたとでも言うんだろうか 「ホントにホントだなっ!」 何度もしつこいくらいに確認してしまう。 「・・・しつこいですね、やはりやめま・・・」 「わぁぁぁ・・・・っ悪かったって」 とっくりがため息をついて言いかけた言葉を、俺は慌てて抱きしめて遮った。 「嬉しいよ・・・とっくり」 思わず笑みがこぼれる。 これからずっととっくりと一緒にいられる・・・、嬉しくて嬉しくて・・・ 「とっくりーーーっっっ!!」 叫んでしまった。 うるさいとしかめっ面をしたとっくりの横をするりと通って自分の名前が呼ばれたと思って猫のとっくりが 顔をだした。 「ぅにゃー」 小首をかしげて俺達を猫のとっくりが見上げる。 「「―――プッ・・・・あははははっ」」 その仕草が可愛くて可笑しくて人間のとっくりと顔を見合わせて爆笑した。 「クルクル天パが紛らわしい名前つけるから・・・・・・ねぇ、ダメな飼い主ね」 とっくりがとっくりを撫でながら話しかける。 「次からとっくりのこと春子って呼ぶことにしたからいいんだよ」 言った途端、春子の顔が赤く染まった。 「やっぱり春子は照れ屋だな」 俺は一人と一匹を包み込むように抱きしめた。 こうして俺とかわいい猫と照れ屋な女・・・二人と一匹の生活が始まった。 春が過ぎても・・・・・・何度も冬を越えても、絶対に一人にはしない・・・。 俺のそばはいつもアイツらが安らげる場所でありたい。 SS一覧に戻る メインページに戻る |