ハケンの敵
東海林武×大前春子


日々いがみ合っている、憎たらしいハケンの敵。
昨夜、バス停であいつに唇を奪われた。

横柄で、要領と調子がいいだけの男だと思っていたら。
やけに素直で、まっすぐで、熱っぽくて、切なげで。
押しが強いくせに、随分と繊細なキスをして。

派遣先で言い寄ってくる男、セクハラまがいの行為には、
免疫も対策も完璧なはずなのに。

・・・おかしな夢を見てしまった。


エレベーターの中。

「挨拶くらいしたらどうなんだ。・・・大前さん」
「お早うございます。――東海林主任」

そして――どちらからともなく、噛みつくように口付けた。

あの不遜な男のくるくるパーマをかき乱す。
うるさい口を塞ぐようにむしゃぶりつくと、
大きな手が私の頭をがっちりと押さえ込んで、
息もできないほどに舌を絡めて蹂躙してくる。

男の掌が無遠慮に私の乳房を鷲掴み、
思いのほか繊細な指先で敏感な頂を弄(もてあそ)ぶ。

「・・・とっくり」

欲情の余り掠れた声が、耳元で囁く。
熱く湿った吐息。
ハイネックの襟を乱暴に押し下げ、首筋を唇で嬲られて気が遠くなる。

男は膝まずくと、私のセーターの裾とブラジャーを一気にずり上げ、
乳房にしゃぶりついた。

男は私を見上げ、勝ち誇った笑みを浮かべると、痛いほど立ち上がった私の乳首をねぶる。
感じやすいそこを、舌で転がし、甘く噛み、小刻みに口付ける。
甘い痺れが、電流のように下腹部を刺激する。
目を閉じた男のまつげが、やけに長く見えた。

「あぁ・・・」

思わずその頭をかき抱く。柔らかい巻き毛が私の肌をくすぐる。

「ずいぶん素直だな、大前サン・・・」
「んっ・・・」

男の手が腿を伝って、熱く息づく秘所を侵す。

「こんなに、はしたなく濡らして・・・勤務態度が悪いぞ・・・」
「んあっ」

卑猥な言葉で辱められているのに、後から後から蜜がこぼれる。
整った長い指が、溢れる蜜を塗り広げるように擦りながら、そこを嬲る。
切なく疼く最奥を焦らすように、入口を犯す。

「・・・ほんとのこと言うよ・・・ずっとこうしたかった・・・」
「・・・んんっ・・・」
「乱れたあんたが見たいって・・・、ずっとそう思ってた・・・」
「・・・はっ・・・あぁ・・・」
「・・・俺が欲しいか?」
「誰があんたなんかっ・・・ん・・・」

再び唇を塞がれた。

硬くなった下腹部を押し付けられる。
男のベルトを外し、ジッパーを下ろす。
硬く立ち上がったそこを撫で上げると、低いうめき声が私の耳を犯した。

着衣のまま、貪りあう。

――めちゃくちゃにして。

気がつけば、うわごとのように繰り返している自分がいた・・・。


そして、目が覚めた――。

私としたことが、全くどうかしている。

あの憎らしいハケンの敵に、
組み敷かれて、
貫かれて、
乱されたいなんて・・・。

――しっかりしなさい、大前春子。

忘れよう。なかったことにしよう。
あの男は、敵なのだから。

甘い火照りに蝕まれた身体を持て余しながら、私は必死で目を閉じた。
契約終了まで、あと60日あまり・・・。






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