私が欲しいもの(非エロ)
東海林武×大前春子


「もしもし、東海林さん?遅くにごめんね」
「賢ちゃん、どうしたんだこんな時間に」
「いや、あの後大前さん無事に帰ってきたのかなぁって」
「…ああ、帰ってきて採用の手続きとかしたんだけど…」
「そっか、じゃあまた一緒に働けるんだね
よかったね東海林さん」
「ああ…いや、その、賢ちゃん…聞いてくれるか?」
「ん?どうしたの」
「とっくりの事なんだけどさ、実は…今いるんだ」
「え!?東海林さんの家に?」
「うん…っていうか、隣で寝てる」


「ええ!?じゃあ東海林さん…」
「ああ…そういう事になったって言うか…」

「福岡から名古屋に戻ってきてさ、いろいろ事務所で話した訳よ
で、一段落ついたから今日はもう帰っていいよって話してたら
…そうだ、お前家はどうするんだって話になったんだ
そしたら…”もう決めてありますので大丈夫です”って言うから
マンション借りたんだーへーと思ってたんだよ
……そしたらいきなり”あなたの家でお世話になります”とか言いだして…」

「大前さん…」

「もうビックリして飲んでたお茶吹いちゃったよ
いくらなんでも急に同棲なんてさ!」

「でも、うれしいんでしょ?」

「…ま、まぁそりゃ嬉しいけど…いきなり会いに来られた上に
一緒に住むなんていわれたら…俺でも戸惑うわけよ
でもさ、男だったらちゃんと受け止めるべきじゃないか」
「うん…大前さんもいろんな覚悟を決めて名古屋へ行ったんだと思うよ」

「って事で一緒に家に帰ってきたんだけど…一緒に住むって事は
…あれじゃないか?そーゆーのやってもいいと思うじゃん?」
「東海林さん、照れてる」

「だから…勝手に体が動いてとっくりを抱えてさ、ベッドへ
いったんだよ、そしたら…」

「そしたら!?」

「あいつ、ベッドに寝かせたとたん…爆睡しやがった…」

「…………え?」


「じゃあ、結局何もないの?」
「ないよ…今もグースカ寝てやがる…」
「大前さんもきっと疲れてるんだよ。焦らなくても
大丈夫だって、東海林さん」

「ごめんなぁ、賢ちゃん…こんな事相談しちゃって」
「そんな、謝らないでよ」

「あっ…とっくり起きそうだから切るわ、じゃあ…おやすみ賢ちゃん」
「うん、おやすみなさい」






「…何一人でブツブツ言ってるんですか?」
「独り言じゃねぇよ!電話だ、電話!お前こそいびきがうるさかったぞ」
「いびきなんてかいてませんが…」
「それより…疲れてるんだろ?
何か食べたいものとかあるか?それとも先にコーヒーでも飲む?
欲しいものがあったら遠慮なく言えよ」

「…………」

「…ん?ちょっ、人のこと指さしてんじゃねぇよ」

「これ」

「へ?」




「私が欲しいもの」






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