とっくりとくるくるの7日間24〜(非エロ)
番外編


とっくりとくるくるの7日間 24


この間の養鶏場。
仕入れの交渉をしているくるくる。

春「社長、どうかお願いします」
社「ん〜この額じゃ難しいなぁ。あんたにはこの間の恩があるけど
…もう一度出直して来てもらえるかい?」
春「そこを何とか…こちらの鶏を東京で売れば
きっと全国から注文が殺到するはずです。いえ、させてみせます!
…ですからどうかお願いします!!」
深深と頭を下げるくるくる。


社「…わかったよ、この額で行こうじゃないか。
そのかわり今の言葉通りにならないと承知しないよ」

春「…はいっ、ありがとうございます!」


―上機嫌で会社に戻るくるくる。
車が使えないので地下鉄に乗り込む。
春(そういやこの間事故があったばかりなんだよなぁ…
でも大した事故でもなかったようだから大丈夫か)

電車に乗りながら契約を取れた時の感触を思い出す。

春(…ああ、この感じ久し振りだなぁ。営業で走り回ってた
事が昔のことみたいだ…やっぱり俺はこういう仕事がしたいんだよな…)

そしてふと新入社員の頃を思い出す。



とっくりとくるくるの7日間 25


―新入社員の頃。

営業部に配属されたくるくると賢ちゃん。
入社当時、一日で100枚の名刺を貰って来いと
上司に言われて朝から晩まで二人で走り回った。
東「賢ちゃん、また断られたよ。やっぱり一日に100枚なんて無理なんだよなぁ…」
賢「そんなことないよ、頑張ればきっとできるはずだって。頑張ろう、東海林さん。」
東「……そうだな、よしっ!次行くか」

賢ちゃんに励まされながら何箇所も走り回り
何百回も頭を下げ、日付が変わる直前にようやく100枚目の名刺を貰えた。

そして急いで会社に戻ると、上司がずっと待っていてくれたのだ。

他の同期は途中でリタイヤして戻ってきたが
100枚集めて戻ってきたのはお前達二人だけだ、と
肩を叩いて誉めてくれた。


その時、この会社で働きたい。
毎日営業で頭を下げても、残業で帰りが遅くなっても
ずっとこの会社で、S&Fで生きていきたい。


本社にいたころは、そう思っていた…。


電車の中で、思い出しながら涙ぐむくるくる。

春(…俺がしたい仕事はやっぱり本社にあるんだな。
とっくりの言うように社長賞目指して頑張るか…)

目を手でこすり、そう決意を固めたくるくる。

春(そうと決まったら今日は徹夜で仕事を…)


すると、ある異変に気がついた。

春(ん?今何か当たった…)

何かがお尻に当たった。
最初は荷物が当たったのかと思っていたら
その感触はやがて上下に動き出し
くるくるの春子の体を触りだした。


春(……これって…まさか、痴漢…)



とっくりとくるくるの7日間 26


生まれて始めて痴漢に遭遇し、硬直しているくるくる。
そうしている間にもその手はどんどん強く揉みだしてくる。

春(なんだこれ…すげー気持ち悪い…
はっ!?でも今はとっくりの体なんだよな?
俺もまだとっくりの尻揉んだことないのに…)

後ろを振り返りその手を掴むくるくる。

春「気安くとっくりの尻触ってんじゃねーー!!!!!」
車両にくるくるの声が響き車内は騒然とした。


駅の事務所で痴漢を引き渡すくるくる。
犯人は50代のサラリーマンだった。
どうやら最近頻繁に出没していたらしい。

駅員「いやーどうもありがとうございます。女性なのに
犯人を押さえつけるだなんて…勇気のある方ですね」
春「いえいえ、当然のことをしたまでです
それにしても女性はこんな目にあったりして大変ですね」
駅「はい?」
春「あ!?いえ、何でもないです」

駅員や周りの人から拍手されちょっといい気分になったくるくる。


春「いやーびっくりしたけど俺もたまには役に立つじゃん
さて、早く事務所に戻るか」

くるくるは上機嫌で事務所に戻った。



とっくりとくるくるの7日間 27


―仕事中のとっくり。
するとポケットの中の携帯が震えだす。
取り上げ発信先を見ると里中主任からだった。
くるくるの携帯なので、知らない人からの電話にはできるだけ
出ないでおこうと思ったが、里中主任なら事情も知っているし
差し支えないだろうと、電話に出るとっくり。

東「もしもし」
賢「お疲れ様です、里中です。大前さんですか?」
東「そうですが、何か?業務のことなら会社の電話でお願い…」
賢「いえ、私情なんですが…仕事中すいません、ちっょといいですか?」

里中主任の言う私情が入れ替わった件だと思ったとっくりは
事務所で話すのは気がひけるということで
事務所を出て、入り口近くの通路に移動した。

東「お待たせしました、用件はなんでしょう?」
賢「昨日は突然切ってすいません…それであれからもいろいろと
調べてみて、元に戻りそうな方法を考えてみたので
長くなるから、会社のメールで送らせて貰おうと思うんですが…」
東「…そうですか、ありがとうございます。」
賢「…それから…こんな事聞いて失礼かと思うんですが
大前さんて…その…東海林さんと、付き合っているというか…」

東「……あの人がそう言ったんですか?」

賢「いえ、東海林さんは僕に気を使ってるのかそういうことは一切
話さないんですよね…だからちょっと心配で…」

東「…」

賢「大前さんは……一年前にカンタンテで僕が言った言葉を
削除できなかったから、名古屋へ行ったんですよね?」



東「……そういう事は、本人に言います」

賢「そうですね、余計なこと聞いてすいませんでした…
あ、話は変わるんですが名古屋コーチンの企画は進んでますか?」
東「ええ、今東海林主任も養鶏場へ行っている所です」
賢「そうですか、頑張って下さいね。もしこの企画が成功すれば
社長賞に一歩近づけるかもしれませんし…早く二人で
こっちに戻ってきてくださいね」

東「そうですね、二人で……あなたの所に戻ります」

賢「あ、でもその前に元に戻らないとですね。
じゃあまたメールチェックしてください、失礼します」

東「失礼します」

少し微笑みながら携帯を切るとっくり。



とっくりとくるくるの7日間 27


―地下鉄を出て事務所へ戻る途中のくるくる。
春「いやぁ、今日は契約も取れたし痴漢も捕まえるし
いい一日だなぁ」

すると
「あのー、ちょっといいですか?」
春「はい?」
「日本テレビの者なんですが…ちっょとインタビューさせて頂いても
よろしいですか?」

春(ええっ!?テレビのインタビュー!!!)

レポーターの人がマイクを向ける。
レ「名古屋の美人女性にインタビューしているんですけども
失礼ですが、あなたはご結婚されてますか?」
春「いえいえ、してません」
レ「じゃあ結婚を考えている恋人はいらっしゃいますか?」


春(…恋人…?まぁでも放送されるかわかんねーし
ここは勝手に妄想話でもしておくか)

春「ええ、います!同じ会社の上司で
髪の毛が天然パーマなんでくるくるパーマって呼んでるんですけど
これは愛情の裏返しって言うか、本当はウェービーなタフガイなんですよ〜」

レ「くるくるパーマ!?面白いですね〜名古屋巻きの次は
くるくるパーマが流行ってるんでしょうか?」

春「そうですね、そのうち名古屋中の男がコテ持って
トイレで巻いてますから」

レ「そうですか〜いやーいい情報を頂きました
ありがとうございます〜!」


インタビューを終え、その場を去るくるくる。

春(いや〜緊張したなぁ。テレビのインタビューなんて始めて受けたよ
それにしても美人女性って…まぁなんだかんだ言ってとっくり美人だもんな)


自分の発言を全く気にしていないくるくる。
ちなみに、このインタビューは生放送で
全国に放送されていた。


…いつも読んでくださってる方ありがとうございます。
自分ひとりが書き込んでばかりで申し訳ないんですが。
ちょっと強引な展開ですいません…。



とっくりとくるくるの7日間 28



―場所は変わって東京。

あるラーメン屋で食事をする女性二人。

「ここのラーメンおいしいですね〜」
「そうね、何処も混んでたからとりあえず入ってみたけど
結構いけるじゃない」

森美雪と黒岩匡子だった。

そのラーメン屋はほとんどがサラリーマンで
BGMはテレビの音。

そんな所でも気にせず食事をできる仲に二人はなっていた。

黒「ごちそうさまー」
森「ええっ、もう食べちゃったんですか?早すぎますよ」
黒「あんたが遅すぎるのよ、いちいちレンゲに麺乗せて食べてたら
休憩終わっちゃうわよ」
森「すいませ〜ん、すぐ食べます!」

先に食べ終わった匡子はコップの水を飲みながら
暇を持て余そうと、テレビの画面に目を向けた。


…すると、どこかで見た事のある人物が画面に映った。


その人物が誰か気付いたとたん、びっくりして思わず水を噴いた。

黒「ブーーーッ!!!!」
森「ええっ!?黒岩さん、どうしたんですか?」
びっくりする森美雪。

黒「ちょっ、あんた食べてないでテレビ、テレビ見なさい!!!!」
森「テレビがどうかしたんですか?」

美雪は振り返りテレビを見る。


森「あーーーーーっ!!!!春子先輩!!!!!」



とっくりとくるくるの7日間 29


テレビに春子が出ていることに驚く二人。
けれど中身がくるくるだということは知る訳もなく
気安く話している姿にただぼーぜんとする。

森「なんだか春子先輩…感じ変わりましたね」
黒「ちょっと、しゃべり方が東海林君に似てるんですけど!」

くるくるパーマが恋人だと話す春子の中の東海林。
二人はすぐにそれが誰のことなのか気付いた。

森「黒岩さん、くるくるパーマって…東海林主任のことですよね?」
黒「そうみたいね…」
森「でもなんか幸せそうですね、やっぱり恋をしたら女は変わるんですね〜」
黒「ふぅ〜ん、ずいぶんのろけちゃって!!」

森「あれ?黒岩さん、眉間にシワ寄ってますよ?」

黒「うるさいわね、さっさと食べないと先に戻るわよ!!!」
森「何でそんなに怒ってるんですか〜?」


…遠く離れた東京でこんな騒ぎが起こってるとは
全く知りもしないくるくる。

ちょうどその頃、事務所の前まで戻っていた。

春(さっきのインタビューとっくりが見たら怒るだろうなぁ。
でもあんなにバカなことも言ったしOAされないだろう。)

所詮、自分と春子が恋人だなんて
でっちあげの妄想話。
そう考えるとなんだか空しくなってきたくるくる。


一人ため息をつきながら、入口のドアを開けようとすると
誰かの声が聞こえてきた。


「で……あなたの所に戻ります」


春(……とっくり?)

とっくりが携帯で誰かと話していた。

「失礼します」
そう言って携帯を切るとっくり。
その表情は見た事のない、穏やかで優しい笑顔だった。



春(……)

くるくるは何となく誰と話していたのか判った。



とっくりとくるくるの7日間 30


春「おい、戻ってきたぞ」
東「お疲れ様です。で、どうでしたか?」
春「おう、俺の口の上手さで何とか契約してきたよ」
東「自画自賛は気になりますが…それはよかったですね。」
春「ところでさ、今誰と話してたんだよ」
東「里中主任ですのでご安心下さい」
春(ああ、やっぱり…)

東「ところで、あなたが出ている間に桐島部長が訪ねて来ましたよ」
春「ええ!?部長が!……いや、でも俺合わす顔がないしな…
ちょうど出かけている時でよかった…ってお前余計な事言ってないだろうな!?」
東「…いいえ、言ってません。」
春「まぁいいや、今日はいろいろあったしな…これから頑張って仕事するよ」

東「そうですね、あなたには早く社長賞を取って頂かないといけませんし」


春「…お前も、早く東京へ戻りたいんだろう?」
東「…そうですね、でもその前に早く元の体に戻りたいです」


春「ははっ、そうだな…とりあえずそっちが先か」


―社長賞を取って東京に戻りたい。
お互い目指すところは一緒なのに
互いの気持ちがすれ違っていることに、まだ二人とも気付いていない。



とっくりとくるくるの7日間 31


通常の業務を終了した後も会社に残り名古屋コーチンの企画を練る二人。

春「でも…手羽先にパンって骨のままはさむのか?」
東「骨がついたままはさんでたら食べにくくて誰も買いません
だからといって骨を取ってしまったら
手羽先の旨みが消えてしまいますし骨を抜く手間もかかってしまいます
要するに骨をつけたままでなおかつ食べやすい方法を考えればいいんです」
春「ええ〜そんなのわかんねぇよ…」
頭を悩ませながらペンをくるくる回すくるくる。
東「わからないんじゃなくて考えようとしていないのでは?」
とっくりににらまれて思わずペンを回していた手を止めるくるくる。

春「判ったよ、考えるよ…えーとだな………
あ〜考えすぎて頭巻いてきた!!!」

東「私の頭は巻いてません!!!」

そんなやり取りが延々続く…。


春「…今日はここまでにしようぜ、なんかもう疲れた…」
考えすぎてぐったりしたくるくる。
とっくりが作成した企画書をくるくる巻いて
鞄に入れようとする。

その時―

春「あーーーーーーーーーっ!?思いついた!!!」



とっくりとくるくるの7日間 32


何かいいアイデアが思いついたらしいくるくる。

春「あのさ、ピザの生地みたいなうっすいパンがあるじゃん
あれをくるくる巻いてみるってのはどう?」

東「…トルティーヤですか?」
春「なんだそれ?スペインの食べ物か?」

東「元々はメキシコで食べられていた薄い生地のパンで
トラスカリと呼ばれていましたが、スペイン人がこれを見たときスペイン料理の
トルティージャという食べ物に似ていることからトルティーヤと呼ばれるようになりました
材料はトウモロコシの粉で作られていますが、日本ではトウモロコシの粉と小麦粉を
合わせて作られたものがポピュラーになっています
肉や野菜を二つ折りにして食べるものはタコス、具を巻いたものはブリートと呼ぶそうです」

春「長っ、しかも説明調…でもお前なんでも知ってるんだなー」
東「感心してないで構想をもっと膨らましなさい」

再び企画書を開きアイデアを膨らますくるくる。

トルティーヤで手羽先を巻き紙に包み
残った骨は上にくるんで捨てられるようにしたりと
いろいろアイデアを出して再び企画書を作成。

そしてその日のうちに本社にFAXで送った。


春「…はぁ、疲れた企画考えるのも体力使うなー」
東「普段から脳みそを鍛えてないからです」
春「うるさいな、余計なお世話だよ!とりあえず今日はもう帰るぞ!!」
東「…そうですね、じゃあ今日は貴方の家に行きましょうか」
春「え、俺んち!?」
東「里中主任が元に戻る方法を考えてくれたので
それを実践します」
賢ちゃんが送ってくれたメールをプリントアウトした紙をとりだすとっくり。
春「…賢ちゃん、俺のためにこんなに考えてくれたのか…」
東「そうですね、貴方はいい友達をもって幸せですね」


春「………」

その言葉に一瞬切なくなるくるくる。

春「そうだよ、大事な友達なんだから裏切れねーよ」

東「はい?」
春「じゃあ早速帰って早く元に戻るぞ!!ゴーゴーゴー!!」


変にテンションの高いくるくる。
二人は会社を出てくるくるの家へと向かった。



とっくりとくるくるの7日間 33

東海林の部屋にいるとっくりとくるくる。
賢ちゃんから貰ったメールに書かれた元に戻る作戦を実行しようとする。

東「その1・・・頭をぶつける」
春「ベタだなー」
東「ハイっ!!!」
春「いてーーーーーーー!!いきなりぶつけんなよ!!」
東「やっぱりそんなに簡単に戻らないようですね・・・。」

東「その2・・・電気ショック」
春「待て!?それじゃ元に戻る前に死ぬぞ!!」
東「このかぶりものは電気ショックでくるくるになったんじゃ
ないんですか?」
春「違うよ、バーカ!」

東「その3・・・階段から落ちる」
春「・・・それも怪我しそうだけど、まぁ一番元に戻りそうな作戦だな」
東「じゃあ落ちましょう」
春「マジで!?でも、もし打ち所が悪かったら・・・」
東「いいから早く!!!」
とっくりに引っ張られマンションの階段へ向かう。



とっくりとくるくるの7日間 34

マンションの階段。
段数は多くないものの、コンクリートなので
打ち所が悪ければ大怪我をするかもしれない。

春「ちょ、本当に落ちるのか?」
東「落ちます!!いきますよ、せーの・・・」
春「わーーーーーーーっ!?」




・・・。
「いてぇ・・・」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねえよ、体中が痛い・・・」
「起きて早く私の顔をみてください」
「とっくりの顔・・・?今は俺がとっくりで・・・」

春「元に戻ったんですよ」

東「え・・・」

髪の毛を触るとふわふわのくるくる頭。
胸を触るとさっきまでのふくらみはなくゴツゴツしている。

東「やったーーーー!!!元に戻ったぞーーーよかったなとっくり!!!」
春「どさくさにまぎれて抱きつかないでください!!!」


こうして無事に元に戻ったとっくりとくるくるでした。


―完―



とっくりとくるくるの7日間 35

「いやー・・・よかったなぁとっくり・・・」
「・・・なさい」

「さっさと起きなさい!!!!」
「うわっっっっっっ!!!!」



がばっと起き上がるくるくる。

春「あれ?階段は?何で俺ベッドに・・・」
東「私が運びましたが何か?男だと人一人持ちあげるのも楽ですね」
春「そうそう、男だと・・・ん?」

よく見ると自分の姿が目の前にある。

春「・・・もしかして、元に戻ってないとか?」
東「そうですよ」

春「なんだ夢かよーーーー!!!」
がっくりと肩を落とすくるくる。

東「私の方がガッカリです、頭を打つし・・・なのにあなたは無傷ですし」
おでこがぽこっと膨らんでいるとっくり。
春「おいおい、あんまり俺の体を傷つけんなよ。それにしても
無傷だなんてお前の体一体どんな構造になってるんだよ」
東「私の体は不死身ですから、なんせ100歳ですし」
春「嘘をつくな嘘を!!」

春「あ〜あ、しょーもない夢見ちゃったし俺今日はもう寝るわ・・・」
再び布団に潜るくるくる。

東「・・・」



とっくりとくるくるの7日間 36

―夜中に目が覚めたくるくる。
春「ん…今何時だろ…」
手で眠い目をこすり、ふと目をあけて前を見ると…

春(!?)

くるくるが寝ていたベッドにとっくりが
寄り添って寝ていたのだった。

春(ととと、とっくりーーー!!)

びっくりして声も出ないくるくる。
春(ちょちょ、なんでとっくりが一緒に寝てるんだよ!
何だこれは、夢か!?)
その時、ふとさっき見た夢のことを思い出す。
…もしかして、これも夢か?
そう思いだしたくるくる。
春(そうか、これは夢だ!!そのうちとっくりにたたき起こされて
現実に戻るんだ…)
すると、寝返りをうったとっくりが
くるくるに抱きつくように密着してきた。

春(おい!何で俺自分の顔にドキドキしてるんだ!?)

本社でやりあっていた頃はしょっちゅう顔を近づけて
睨みあっていたのに、こういう場で顔を近づけられると
どうしていいのかわからず、目をそらしてしまうくるくる。


春(…でも、どうせ夢だし折角だからキスしちゃおっかなー…
あーでも自分の顔ってのがなぁ…)


なんだか下のあたりがムズムズしてきたくるくる…。



とっくりとくるくるの7日間 37


―夢の中のくるくる。
ベッドの中でとっくりと至近距離で向きあっている。
まるで自分の欲望がそのまま再現されたような夢の中で
くるくるは何も考えずに自分の元の体に唇を重ねた。

春「………」

春子の体でするキスはなんだか不思議な感覚で
いつもの女性の唇と比べると、男の唇は硬くて
ヒゲがゴワゴワしている。
春(女ってこんな気持ちでキスしてるのか…)
東「…ん…」

すると、突然とっくりが寝息を立て体を動かした。
くるくるはびくっ!!と肩を震わせて
とっさに重ねていた唇を離した。

もしかしてキスのせいで目が覚めてしまったのか…?
くるくるに緊張の糸が張り詰める。

しかしとっくりはそのまま寝返りを打ち再び
熟睡し始めた。
くるくるはほっと胸をなでおろし
自分も寝ようと瞼を閉じた、その時。

また、下のあたりがムズムズしてきた。

春(…なんだこれ?)

下半身の違和感に気付きだしたくるくる。
股の間がなんだかムズムズする…くるくるは恐る恐る
下着に手を当てた。

春(…何だこれ?濡れてるぞ……これって、男で言う
立つって現象か!?)

初めてのことにびっくりして戸惑うくるくる…。



とっくりとくるくるの7日間 38


キスをしたせいで下が濡れてしまったくるくる。

男だったら、このまま自分のアレを触って自己発散するけれど
女はどうしたらいいんだ??
初めてのことに戸惑うくるくる。

けれど、触ったままの手を動かすと何とも言えない
感覚がくるくるに巡って来た。
春(あ…この感じ……!)

くるくるはその手を下着の中に移動させ、指先を
秘部の中へと押し込めた。

…目を閉じて、自分と春子がセックスしているかのように
指を自分の物のように中で掻き回していく。
春(とっくり…とっくりはこんな風に感じるのか…)
気付かれないように必死手声を殺しながら
とっくりの横でひとりエッチをするくるくる。

―ここから後はくるくるの妄想。



とっくりとくるくるの7日間 39


「…とっくり、お前すげー濡れてるぞ…」
「濡れてなんかいませんが、何かっ…」
「こんな時まで、その言い方やめろよ…かわいくねぇな」
「かわいくないなら、もうやめなさいっ…」
「…嘘だよ、かわいいよ…」
「………」
「何照れてんだ…」
「うるさいっ、このくるくるパーマが…あっ」

「とっくり……春子、気持ちいいのか?」
「やだ、そこは…だめっ…もっと濡れちゃう…」
「いいよ…もっと感じて、何処が気持ちいいんだ?」
「あんっ…今の…とこ、ろ…もっと…」


「あっ…イキそう…やっ…ああっ!!」



春「…………はぁっ、はぁ―…」
妄想と指でイッてしまったくるくる。
春子の体を使って、はじめての女としてのオナニー…。
指はぬるっとした液体でぐしょぐしょになっていた。
くるくるはベッドの上に置いてあるティッシュに手を伸ばし
指と濡れてしまった下着を吹く。

春(どうしよう、俺…とっくりの体でオナっちまうなんて…)

終わってしまった事とはいえ激しく後悔するくるくる。
しかしこれが夢だということを思い出すと
早く現実に戻ろうと、再びベッドにもぐりこんだ。



とっくりとくるくるの7日間 40


その後太陽の光で目が覚めたくるくる。
春「……」
横を見てみるととっくりはいなかった。
起き上がり、ふとゴミ箱を見てみる。
あの時に拭いたティッシュが残っていたら
あれは夢ではなく、現実ということになる。

しかしゴミ箱は空になっていた。
するとドアが開く音がした。
東「おはようございます、早くしないと遅れますよ」
朝だというのに機敏として、すでに身支度もすませた
とっくりが立っていた。
春「…おはよ、お前起きるの早いな」
東「それと、今日はゴミの日なのでゴミ集めておきましたよ」
春「え!?」
東「はい?」
春「…いや、何でもない…悪いないろいろさせちゃって
…そ、そうだコーヒーでも入れようか?」
東「もう朝食の用意は出来てますが?」
春「じゃあ、肩でも揉んでやろうか?なんかあったら遠慮なく言ってくれよな」

東「気持ち悪い……何なんですか急に、何か後ろめたい
ことでもあるんですか?」

そう言われて思わずドキッとするくるくる。

春「あ!?いやー別に、何もないよ…そうだ、早く用意しないとなー」


夢の中とはいえ、とっくりの体であんなことをしてしまって
後悔しているくるくる。

春(ってか本当に夢だよな…確認できなかったけど…
なんか怖いから夢ってことにしておこう…)

くるくるはそう自分に言い聞かせた。



とっくりとくるくるの7日間 41


会社へと向かったとっくりとくるくる。
いつものように事務所へ向かいデスクに着くと
なんだか妙な視線を感じる。

…よく見ると、運転手たちがこっちを見てニヤニヤしているのだった。
すると運転手のひとりが、とっくりに話しかけた。

運「おい、お前いつからデキてたんだよ」
東「はい?何のことでしょうか」
運「何って、お前あの姉ちゃんと出来てるんだろ」

その言葉に思わず固まるとっくりとくるくる

運「昨日テレビ見てたら名古屋駅で姉ちゃんがインタビュー
受けててさ、お前のこと彼氏だって嬉しそうに言ってたぜ」

すっかり忘れかけていた昨日のインタビューのことを
思い出し、体が凍りつくくるくる。

春(…あれって…生放送だったのか!?)

運「お前らしょっちゅう喧嘩してて仲わりぃーと思ってたら
実は痴話喧嘩だったんだな」
東「そんなんじゃありません!!!」
はっきりと否定するとっくり。
春「そうだそうだ、あれはただの冗談だよ!!
誰がこんな奴と…」
東「それは私のセリフです!!誰が貴方なんかと…」
運「おっ、早速夫婦喧嘩か!?朝からいちゃついてんじゃねーよ」

二人をからかい笑っている運転手達。
とっくりはそれを睨みつけくるくるの首を引っ張り
奥の部屋へと連れ込んでいった。



とっくりとくるくるの7日間 42

くるくるをシメているとっくり。
春「ちょっ、とっくり苦し…」
東「どうりで今日よそよそしいと思ったらこのことですか!?」
春「いや、このことじゃ…あっ、違う別によそよそしいことなんて…」
東「どういうことかちゃんと説明してください!」
春「いや…その、昨日養鶏場から帰ってくる途中に
テレビのインタビュー受けて…彼氏はいるんですか?って聞かれたから
ついノリで恋人はくるくるパーマですって…」
東「はい!?…私の姿でそんな事言ったんですか?」
春「だって、お前もいい年して彼氏はいませんなんて言ったら
恥ずかしいじゃないか、俺はおまえのことを思って言ったんだよ」
東「余計なお世話です!!貴方が恋人だなんて会社で噂になるくらいだったら
一人身で寂しい奴だと言われる方が何千倍もマシです!」
春「な、なんだと!?…じゃあ相手が賢ちゃんだったらどうなんだよ」

東「そうですね、貴方よりも里中主任と噂になる方がよっっっぽど
嬉しいです」



春「…………」

東「…何なんですか、いきなり黙って」

春「…わかったよ、しばらく会社で話すのはやめよう
仕事終わったらとりあえず一人で俺んちに来いよ」

そう言って仕事に戻るくるくる。



とっくりとくるくるの7日間 42

仕事に戻ると、とっくりとくるくるはほとんど口を利かずに黙々と
仕事をしていた。
しかしそれがかえって不自然で、運転手達の注目を余計に浴びていた。


しばらくして、在庫の確認をする為に倉庫へ向かったくるくる。
正直くるくるはさっきの言葉に大きなダメージを受けていた。

賢ちゃんのことを持ち出したのは自分だが
ああもはっきりと言われるとやはりシッョクも大きい。
ため息をつきながら倉庫に入り在庫を確認しようとするが
なんだかやる気が出ず、思わずその場に座り込んでしまう。

春(あーあ、何だかなぁ…自分で自分の首を絞めた気分だよ…)
くるくるは頭を悩ませながら髪をしくしゃくしゃにしていた。

―その時

後ろから突然腕を引っ張られた



とっくりとくるくるの7日間 44

プルルルル…
事務所に電話が掛かって来た。
いつもなら春子になったくるくるが出ているが
よく見たらどこかへ出ているので、仕方なくとっくりが出る
東「もしもし……お疲れ様です。はい、私ですが
……そうですか、ありがとうございます
………判りました、お待ちしています。こちらこそよろしくお願い
いたします、では失礼いたします。」

淡々と電話を切るとっくり。
そして近くにいた運転手にくるくるの行き先を尋ねる。
運「何だ、仕事中にいちゃつく気か?」
東「業務連絡です!!知ってるなら早く教えなさい!!!」
運「しらねーよ、ってかトイレにも行ってんじゃねーのか?」

東「……」
くるくるにどうしても早く伝えたい事があったが
仕事中に話をするなと言われたこともあり
あきらめて仕事に戻るとっくり。






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