東の角部屋
道明寺司×牧野つくし


道明寺邸の東の角部屋―

つくしはひとり、バスルームでシャワーを浴びている。
司はバスルームのドアの向こう側で一足先にシャワーを済ませつくしのことを待っている。

『入ってこないでね。』

バスルームに入るとき、つくしは司にそう言った。

『わかった?入ってきちゃダメだからね。』

バスルームの扉を閉める瞬間、つくしはもう一度司にそう言った。
司は最後まで無言のままだった。

《道明寺が入ってくるかもしれない―》

つくしは、ふとそんなことを思い、シャワーを止める。
バスルームのドアの方に目を向け、耳を澄ます。
人の気配は感じられない。
つくしはタオルを取り、バスルームの鏡の前に立つ。
鏡に白い裸体が映し出される。体がどうしようもなく熱い。

《道明寺に抱かれる―》

つくしはその時の自分の姿を思い浮かべ、ぼんやりとする。
ふと我にかえり、つくしはあわててそれをかき消すように頭をふった。
司が待っている。
つくしは火照る体をバスローブに包み隠し、ドアを開けた。

司はベッドに座ってつくしを待っていた。

『遅えぞ・・。』

司は待ちぼうけをくって少し不機嫌だ。

『急かさないでよっ・・。』
『なんだよっ。おまえがバスルームに入るなって言うから、ちゃんと待ってたじゃねーか。
だいたい、なんでわざわざ別々にシャワー浴びなきゃいけねーんだよ。
一緒でもいいじゃねえか。一応、俺たちゃそういう関係だろーが。
いちいちもったいぶるとこはホント変わんねーな。』
『もったいぶってなんかないけど、とにかくダメなの・・。』
『・・ったくしょーがねーな。』

司は待ちきれないといった様子で、そばに来たつくしの手をとり自分のもとへ引き寄せた。

つくしはふと司の髪に視線を向ける。
普段はくせのある司の髪が、濡れて素直なまっすぐな髪になっている。
まっすぐな髪の司は、いつもの司とは少し違う、大人の男の色気をつくしに感じさせ、
胸の鼓動を高鳴らせる。

『こっちへ来い・・』

司はベッドに座ったまま、バスローブ姿のつくしを背中ごしに抱き寄せた。

東の角部屋は暗闇に溶け込んだかのように深く静まりかえっている。
背中ごしに感じる司の吐息がつくしの耳元をくすぐる。

『この部屋、すごく静か・・。』

つくしは司に身をまかせるようにもたれかかり、独り言をつぶやくようにささやく。

『ああ・・この部屋には誰も近寄ってこねえからな。』

司はつくしの髪をやさしくかきあげ、耳元にキスをする。

『でも、椿お姉さんが入ってきたことがあったね。』    
『ああ、姉貴か・・・ったくおまえはいつから無理矢理女を犯す男になった!≠チていきなりひっぱたきやがって・・。』

司はその時のことを思い出して少し腹が立ったのか、つくしを抱く手に力が入り、耳元に軽く歯をたてた。

『あの時のお姉さん、ホントにいいタイミングで入ってきてくれた・・。』

つくしは司に身をまかせながらその時のことを思い出し、くすくすと笑う。

『なんだよ・・おまえ、また姉貴に来て欲しいのか?』

司は少しすねたような声でつくしに問いかける。

『姉貴なら今日はここにはいねーからなっ。』

司はつくしの首筋を指でなぞり、強く唇を押しつけ、小さな疵をつくる。

『じゃあ、今夜はお姉さんのヘルプは無し?』
『んなもんあるわきゃねーだろ・・今夜は2人きりだ。』

司はつくしの首筋へと唇を這わせながらバスローブの襟元に手をかける。
つくしはバスローブの襟元に司の手がかかったのに気づき、司の手を握ろうとする。
が、一瞬早く、司の手はつくしの胸元へとすべり込んでゆく。

『あっ・・』

つくしは急に胸元に手を入れられ、思わず声をあげる。

『いきなりじゃ・・だめっ・・・』

つくしは司をなだめようとするが、司は性急すぎるほどにつくしを求める。
つくしのバスローブは襟元から少し乱暴に開かれ、肌があらわになる。
司はつくしの体を自分の方へと向かせ、つくしを見つめる。

『あまり見ないで・・。』

つくしはあらわになった肌を隠しながら顔を赤らめて司から視線をそらす。
司は、恥ずかしがるつくしを、背中がきしむほど強く抱きしめ、息もできないほど深いキスを交わす。
キスを交わしながら、そのまま2人は絡み合うようにベッドへと倒れこんでゆく。
司はバスローブを脱ぎ捨て、つくしの肌を求めるように体を重ね合わせた。

深く深く、そして長いキス。
それから司の唇は首筋を通り、やがてつくしの胸元へとたどりつく。
司はつくしの胸を荒々しく愛撫し、胸の蕾にやさしく唇をよせる。

『あっ・・』

つくしは司を胸にかき抱き、司の濡れたまっすぐにな髪にふれ唇を寄せる。
司はつくしの胸の蕾を舌でやさしく愛し、時にかるく歯を立て、激しく愛撫する。

『道明寺・・』

つくしは司のやさしさと激しさに満ちた愛撫に呼応するように肩を反らせ、
司の名を呼びながらあえぐ。
つくしの体は司の腕の中で、今まで知ることのなかった快楽を、ひとつ覚える。

『感じるか?』

司はつくしにささやく。
つくしの唇はなにかをつぶやく。言葉にならない言葉。
司はつくしの答えを確信しながらも、なおも問いかける。

『聞こえねえ・・もう一度・・』

司はしなやかな指先でつくしの唇にふれ、答えをもとめる。

『感じる・・。』

つくしは何かを解放したかのようにつぶやいた。






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