避暑地の夏
道明寺司×牧野つくし


『あっ、この浴衣すっごくかわいい!あんたの分もあるよ、ほらっ。』

―つくしと司はとある避暑地にある高級旅館へ来ている―

『さっき旅館の人に聞いたんだけど、今夜花火大会があるんだって。ここの庭から見えるんだってさ。一緒に見ようよ。』
『ああ。』
『あたし浴衣着て花火見るから、あんたも浴衣着てよ。』
『あー?俺も浴衣着んのかよ。』
『とーぜん!浴衣デートってしてみたいじゃん。』

―事の発端は司の姉の椿だった―

『えー、あなた達、夏休みだっていうのにまだどこにも遊びにいってないの?』

道明寺邸でばったり出くわした椿から『2人でどこかへ遊びにいったの?』と聞かれ、
つくしが『いいえ、まだ・・・』と答えた事からはじまった。
つくしがアルバイトの掛け持ちで忙しかったせいもあり、2人の夏休みはちょっとおあずけになっていたのは事実だった。

『そんなのダメよっ!お姉さんが2人の為に日本の夏≠演出してあげるわっ。』

言い出したらどうにもこうにも止まらない椿の勢いに圧倒されるように2人はこの高級旅館へとやってきた。旅館は豪勢にも貸切になっていた。
2人がやってきた旅館は海外から来日するVIPの接待にも利用される和風の高級旅館でこじんまりとした隠れ家的な雰囲気をもっている。
椿がこの旅館を選んだ理由については、つくしや司は何も聞かされていない。
あえて道明寺家所有の施設を選ばなかったのは、その方が気兼ねなく2人の時間を楽しめるだろうという椿の配慮だったようだ。
実際、旅館の従業員は2人の関係を詮索するわけでもなく、当たり障りなく、そつなく2人に接していた―

『花火までまだ時間あるんだろ?俺、風呂入りてーな。おまえも一緒に来いよ。』
『やだっ!』
『なんでだよ。どうせ貸切で客は俺ら2人だけだぜ。』
『あたしは離れの露天風呂に行くっ。』

つくしは顔を赤らめながら司の誘いを拒否する。

『じゃー俺も露天風呂に一緒に行く。』
『だーめ、だめったらだめっ。絶対だめ。』
『ったく・・相変わらずもったいぶりやがって・・。』

つくしと司は、じゃれあいながら避暑地の夏休みを楽しんでいた。

夜も更けた頃、打ち上げ花火の音が聞こえてきた。

『あっ、花火上がってる。急がなきゃ。』

つくしは髪を上げ、浴衣に身を包み、団扇を持って司の前に現れた。

『どお?』
『馬子にも衣装だな。』
『あ、まごにも衣装ってちゃんと言えるようになったんだ・・って、なによ失礼なっ!』
『うそ。かわいいよ。』

司は笑顔でつくしを見つめる。

『道明寺、その浴衣すっごく似合ってる・・』

司は風呂上りのせいか、髪が濡れてまっすぐになっている。
浴衣姿の司は凛とした雰囲気を漂わせ、つくしの胸の鼓動を大きく弾ませる。

≪魅入られちゃいそう―≫

『わーすごい。花火こんなに近くに見えるよ。』

つくしは心を揺らめきを司に悟られぬように、打ち上げ花火の方へと
さりげなく視線を外した。

菊・柳・椰子・・花火は次から次へと舞いあがり、散ってゆく。
旅館の庭からは花火がとてもよく見える。まさに特等席だった。
2人は庭にあった桧の木の長椅子に並んで座り、花火を見上げた。

浴衣姿のつくしは可憐さの中にも艶やかさを感じさせる。
団扇の風にそよぐ後れ毛。浴衣からのぞく襟足と胸元。
つくしは普段とは違う大人びた女性の色香を漂わせていた。

そして司の視線はいつしか花火ではなく、つくしにそそがれていた。

ふと、視線を感じたつくしは司の方を振りかえった。
花火の赤い光が司を照らし出す。
つくしはその眼差しを何度か見たことがある。
いつもは子どもっぽささえも感じさせる司が、男に変わったときの眼差し―
司の眼差しに気づき、つくしは体が火照るように熱くなるのを感じる。
つくしは司から視線をそらすように花火を見上げる。

≪見られている―≫

胸の鼓動は静めようもない。
つくしはうちわ越しにひそかに司の方を見る。
目に映ったのは司の大きく、そしてしなやかな手。
この手に―
ふとつくしの脳裡をよぎった光景。
それは司の力強い手に抱かれ奪われる自分の姿だった。

≪道明寺に抱かれたい―≫

つくしは、自分の中にはじめて芽生えた激しい衝動を自覚する。

『花火、きれいだね・・』

つくしは衝動をかき消すようにつぶやく。

『ああ・・きれいだ・・』

少し間をおいて司はつくしの横顔を見つめながら答える。
次の瞬間、大きな手がふわりとつくしを抱き寄せた。

『道明寺・・』

つくしの手から団扇が落ちる。
司の広い胸に抱きよせられ、つくしの鼓動はさらに大きく弾む。

ひときわ大きな花火が上がる。

2人は熱い想いをひそやかに息づかせる。

部屋へと戻ると待ちきれないように司がつくしを求めてきた。
部屋には青白い月明かりが差し込み、つくしと司の姿を浮かび上がらせる。
つくしは司に強く抱きしめられその力に崩れ落ちる。

『あっ・・・』

つくしを抱き寄せた司は、つくしの唇を奪い、深く深く舌を絡ませる。
そしてつくしの髪にふれ、まとめあげていた髪を少し乱暴に下ろし唇を寄せた。
つくしの浴衣の帯に司の手がかかる。
帯がゆるめられ、つくしの浴衣の襟元が少しずつすべり落ち、つくしの肩があらわになる。
司はつくしのなだらかな肩を抱き、何度も唇を這わせる。
ふたりの吐息と、浴衣の衣擦れの音が、静寂な部屋の中に甘く響き渡る。
つくしは司の浴衣の襟元からそっと手を入れ、司の肌にふれる。
司はつくしの手の動きに気づき、浴衣の襟元をゆるめつくしの手を胸元へと導いた。

『道明寺・・・』

つくしは司の胸の鼓動を感じながら胸元にそっと唇を寄せる。
司はつくしの浴衣の中へと手をまわし入れ、くるおしいほどに抱きしめる。
つくしの浴衣は胸元まで落ち、つくしの上半身があらわになってくる。
透き通るようなつくしの肌が月明かりで青白く照らし出される。
司は激しい欲望にかられるようにつくしを抱え上げ胸の蕾へと唇を寄せた。
つくしは司の肩に手をかけ、目を閉じ、天を仰ぐ。
司の唇の動きに、つくしの華奢な背中がしなる。

『ん・・・』

つくしはくせが戻った司の髪に唇をうずめ、声を忍ばせる。
その控えめな喘ぎ声に司は挑発される。
左手でつくしの胸を激しく愛撫し、唇で蕾をやさしく愛し、体をしならせるつくしを右手で力強く抱きかかえる。

『ん・・あっ・・・』

つくしは我慢できずにわずかに声を漏らす。
司は抱き上げていたつくしを横たわらせ、浴衣の上半身をはだけ、体を重ね合わせた。
つくしの肌を求めて司は顔をうずめ、唇をよせる。
つくしは唇をふさぐように手をあて、声を押し殺すようにして耐える。
司はつくしの唇をふさいでいる手をとり、やさしくくみ伏せた。
つくしは恥ずかしそうに目で司にうったえる。

『誰も来ねえよ・・』

司はつくしの耳元でそっとささやいた。

司はつくしを求め、唇を下腹部へと這わせてゆく。
つくしは息をひそめ、司の唇の行方を探る。
司の指がつくしの秘部にふれる。
司の唇の行方をさえぎるように、つくしは手を伸ばし、秘部を覆い隠そうとする。
しかし司は力でつくしの手を抑え込み、つくしの秘部へ唇を寄せた。

『あっ・・』

司に抱かれるようになってから初めて受ける行為―
つくしは動揺を隠せなかった。
つくしはなおも抵抗するが、司は強い力でつくしの手を抑え込む。

『道明寺・・恥ずかしい・・』

つくしは消え入りそうな声で司に懇願する。
司はつくしを抑えこんでいた力を緩め、体を起こし、顔をあげた。
月明かりに照らされたのは、今まで見たことの無い司の表情だった。

『道明寺・・』

つくしは息をのみ、司を見つめる。

『おまえのすべてが欲しい・・』

司は切なそうな表情でつくしを見つめる。
額から流れる汗は涙にも似てつくしの胸を熱く切なくしめつける。

『おまえは俺の女だ・・』

司は再びつくしの肌に顔をうずめた。
司の唇はつくしの体をやさしく這う。
唇の行方は、もうわかっている。
司の手はつくしの手をやさしく握りしめる。
つくしは目を閉じ、抗うことなく司の唇を静かに受け入れる。

―「ねえ、道明寺」
「ん・・?」
「・・してね。」
「たりめーだ。男の義務だって言ったろ?」

少し前に司と交わした会話がふと思い浮かぶ―

司の熱く屹立したものがつくしの中へと静かに入ってゆく。

『あっ・・』

未だ男性を受け入れることに慣れていないつくしはびくんと反応する。

『緊張すんな・・・』

司はつくしの頭をやさしく撫でながら、もう一度そっとつくしの中へと入っていった。
静かにつくしの体を突き上げる。

『あっ・・』

司はつくしをさらに何度も何度も突き上げる。

『あっ・・ああっ・・』

つくしは切なく肩をそらせ、汗ばんだ司の肩を強く抱きしめる。
司はさらに深くつくしの体へと自らを沈めてゆき、
つくしはかすかな痛みに耐えながら、司を受け入れてゆく。
昂ぶる興奮を止められない司は、少し呼吸を乱しながら、つくしの手を荒々しくくみ伏せ、
さらにつくしの体を激しく求める。

『痛っ・・・』

司の激しい男の動作につくしは苦悶の表情を浮かべ思わず声を上げる。

『痛いか・・?』

司はつくしを気遣うように問いかける。

『大丈夫・・・』

つくしは司を見つめながら答える。

『好きだから・・求められるの嫌じゃない・・』

つくしの頬を司の大きな手が包み込こむ。

司はつくしをやさしく抱きしめながら最後の瞬間を迎える―






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