ふたりきりの時間
道明寺司×牧野つくし


前日までの嵐が嘘のように去り、青空が一段と高く感じられる朝―

人待ち顔のつくしを、ファンファーレのようなクラクションの音が呼ぶ。
つくしはその車の助手席に乗り込み、運転席に向かって微笑みかけた。
運転席にいるのは―

『道明寺、ホント、運転うまいよね・・。初心者マーク要らないね。』
『たりめーだろ。初心者マークなんて、んなもん誰がつけるか。』

運転の巧みさは中坊のころから乗り回している℃瀦ィだ。
司が運転している車は、司の誕生日にプレゼントとして贈られた限定車で、
2千万円はする代物らしい。

『やっぱり目立つんだな、この車・・・』

周囲の人々が振りかえるのが車窓からもはっきりとわかるほどであった。

『高級車ってさ、クラクションの音も違うよね。ブッブッとかいわないんだ・・。』
『おまえが言うとブタの鳴き声みてーだな。』
『何か言った?!・・・』

つくしが右手を握りしめたのを見て、司はすかさず牽制する。

『おっと、危ねえなっ・・。だいたいなー、今日はわざわざ、この俺が自ら運転してやってんだぜ。ありがたく思え。』
『はいはい・・わかったわよ。・・・もうエラそーにっ・・』

相変わらずな2人を乗せた車は、海岸線を軽やかな疾走感とともに鮮やかに駆け抜けていった。

しばらくすると、椰子の木の並木道が見えてきた。
日本なのに、どこか南の島の国に来たかのように思えるような景色が続く。

『着いたぞ。』司は車を止める。
『腹へったな。メシ食おうぜ。』

司はさりげなくつくしの手をとって歩き始める。

『なんか南の島みたいだよねっ。わっ!海が目の前・・』

つくしがはしゃいだ声を上げた。司は楽しそうにつくしの横顔を見つめる。

『ここに入るぞ。』

目の前にはお洒落な建物のお店。

『あー高そうなレストランじゃん・・もうゼータクなんだから・・。』

司とつくしはふたりきりの時間を思う存分楽しんでいた。

日が暮れてきた頃―
防波堤の向こうに夕焼けが見えてきた。
つくしの背丈より低い高さの防波堤を、司は軽々と乗り越える。

『来いよ・・。』

防波堤の上に座った司に促され、つくしは司の隣へ座り、夕焼けを見つめる。
司の手がつくしの肩にかかりやさしく引き寄せられる。
引き寄せられた時に感じた司のコロンの香りはつくしを甘くやさしく捕らえる。
目の前に広がる夕焼けは、2人にたったひとつの同じ景色を思い出させていた。

『無人島の夕焼け、思い出しちゃうね・・』
『ああ・・』

目にしみるような夕焼けはオレンジ色に海と空を染めてゆく。
オレンジ色の空には飛行機雲がひとすじの白線を描いていた。
つくしは目の前に広がる光景を眺めながら、司が母親からの電話で言われたという言葉を思い出していた。

『1年後アメリカの大学へ行くこと・・・・』

つくしはふと目の前の海が2人を隔ててしまうかのような焦燥感にかられた。

『ねえ・・・1年後・・・』つくしは言いかけて、口をつぐんだ。
司は無言のまま、どこか遠い目で夕焼けを見つめている。

―今は・・考えない―
―今は・・もっと自分の気持ちに素直になるんだ―

『道明寺・・・』
『ん・・?』

つくしは手を伸ばし、司の頬にそっとふれた。

『どうした・・』

2人の瞳は、鮮やかな夕焼けに照らし出され、情熱の色に染まる。
顔をのぞきこむように身をかがめた司に、つくしの方からそっと唇を寄せる。
つくしからのキスに応えるように、司はつくしを抱き、深く、深く唇を重ね合わせ
てゆく。
長いキスのあと、司の胸に抱かれたつくしは、いつもより素直に心の声を言葉にした。

『好き・・・』

司は静かに微笑み、つくしの髪に唇を寄せた。
潮風は凪ぎ、波音さえも聞こえない。

―あたし達は2人だけの景色をいくつ重ねていくんだろう―
つくしは司のコロンの香りに甘い陶酔を覚えながら思った。

その夜、つくしはザ・メープルホテルのスイートのバスルームにいた。

―帰りの車中、つくしの携帯電話が鳴った。弟の進からの電話だった。

『今日は帰らないのね、わかった。じゃあね。』

電話を切ったつくしに司が話しかけてきた。

『弟、帰ってこないんだろ?じゃ、今日はうちのホテルに泊まるぞ。』
『え・・でもそんなことして大丈夫なの?』
『心配すんな。』

きっぱりとした司の口調に、つくしは静かに頷いた―

つくしはシャワーを浴びながら、司と交わしたキスをぼんやりと思い出していた。
その時―
ふいにバスルームの扉が開いた。
先にシャワーを済ませ、部屋で待っていたはずの司が全裸の姿で入ってきた。
つくしはふいをつかれ、瞬きもせず司を見つめた。
思わず後ずさりするつくしを、司はバスルームの壁へと追いこんでゆく。
司の厚い胸板が目の前に迫ってくる。
つくしはその胸板に手をあて司を押し戻そうと、はかなく抵抗するが、司は構わず
つくしの体をバスルームの壁に押し付けた。

『だめっ・・』

つくしは逃げようと体をかわそうとするが、司はつくしの逃げ道をふさぐように両手を壁につける。

『だめだってば・・体洗わなきゃいけないんだから・・』

つくしの苦し紛れの言い訳を司は逆手にとる。

『俺が洗ってやる・・』
『恥ずかしいからだめ・・・』

つくしの言葉は司の唇でふさがれ途切れる。
司を押し戻そうとした手は司に握り返され、力を失っていった。

『道明寺・・』

司の名を呼んだつくしの声はどこか甘い響きを帯びていた。

司は広いバスタブの縁に座り、つくしの手をとり、背中越しに抱き寄せた。
つくしは背後にいる司の体が呼吸のたびに上下するのを感じる。
つくしの肩を抱いた司は、つくしの耳を甘く噛み、首筋にゆっくりと指を這わせてゆく。
ボディシャンプーのひんやりとした冷たさは、司の手のひらで温もりの泡へと変わる。
司の手のひらはつくしの首筋から背中へとやさしく伝い、つくしの裸身は少しずつ泡につつまれてゆく。
つくしは恥ずかしさから体を硬くし、体を這う司の手のひらの動きを敏感に感じ取る。
司の手のひらは背中から足へとゆっくりと伝い、つくしの緊張をやわらげる。
やがて司の手は、背後からそっとつくしを抱きしめるように前へと回った。

『あっ・・・』

つくしの体はびくんと跳ねるが、司の腕がやさしく抑え込む。
司の手は鎖骨のくぼみをやさしくなぞる。
その手は少しずつ下がってゆき、つくしの胸元へとたどりつく。
そして司はつくしの胸のふくらみを背後からやさしく愛撫するように洗いあげてゆく。

『ああっ・・』

司の手のひらの動きに、つくしの唇から喘ぎ声が漏れる。
司は少し意地悪をするようにつくしの胸の蕾を指で弄んだ。

『やめて・・・』

つくしの溜息のような抵抗の言葉はバスルームに響き渡る。

『だめだ・・やめねえ・・』

司はつくしの抵抗の言葉に甘い響きがあるのを聞き逃さない。

目の前のバスルームの鏡にはふたりの姿が映し出される。
鏡の中の司の視線がつくしを追い求める。
つくしは司の視線に気づきながらも、視線を絡ませないよう鏡の外へと目線を向ける。

『鏡・・見てみろよ・・』

司のささやきに、つくしは恥ずかしそうに目を伏せる。
司は鏡から視線をそらすつくしを戒めるように胸の蕾に荒々しい愛撫を与える。

『ああっ・・』

つくしは体をしならせ、薄く見開いた瞳で鏡の中の司を見つめかえした。
司は何かに突き動かされるようにつくしを背後から強く抱きしめ、鏡の中のつくしを見つめながら耳元でささやいた。

『1年後・・何があっても・・離れ離れになるようなことがあっても・・

俺のことを忘れられない体にしてやる・・。』

司は鏡の中のつくしを見つめながら手を秘部へとすべりこませてゆく。

『ん・・ああっ・・』

つくしは背中ごしに腕を回し、司の頭を抱え込む。
司はつくしの頬にキスをしながら、つくしの秘部の奥深くへと指をそっと這わせる。
潤んだ瞳で背中越しに司を見つめたつくしは、抱え込んだ司の頭を引き寄せ、求めるように唇を重ね合わせた。
司の手はつくしの快楽の場所を探り、全身をくまなく這う。
つくしは司の体に寄り添い、司の愛撫に恍惚の視線をさまよわせる。

『体流してやる・・こっち来い・・。』

司はつくしの体を洗い終えると、シャワーの下へとつくしをいざない、泡を洗い流すようにつくしの体に手のひらを伝わせる。
泡を洗い流すと、司はつくしの細く華奢な腰に手をまわし強く抱きしめた。
つくしは下腹部に司の熱く屹立したものを感じ、恥ずかしさから体を離そうとするが司の腕の力の強さにかなわず身をまかせる。
つくしは少しずつ司の背中へと手をまわし、司の厚い胸板に頬を寄せる。
どちらからともなく唇を重ね合ったふたりは激しく求め合うように舌を絡め合い、シャワーの雨にうたれる。

『ベッドへ行くぞ・・』

シャワーを止め、司が低い声でつくしにささやく。

司がバスタオルを取ろうとつくしから体を離した、その時―

つくしはいきなり司の体に抱きつき、バスルームの壁へと押し付けた。

『なんだよ・・?どうした・・?』

思いがけない力で壁に体を押し付けられた司は少し驚いたようにつくしに問いかける。

『道明寺・・・あんたは一度、あたしのことを忘れてるから・・
だから・・あたしのこと忘れられない体に・・』

つくしは司の肩に両手をかけ、胸に顔をうずめた。
つくしの手は司の肩から腕をすべるように、少しずつ、少しずつおりてゆく。
司は驚きを隠せなかった。

つくしは切なそうな瞳で司を見上げながら静かにひざまずいた。
そして司の左手を握りしめながら、司の熱くそそり立ったものに、いとしそうに顔をうずめた。

『おまえ・・』

突然のつくしの行為に、司の視線はあてどなくさまよい、体は上気したように赤く火照りはじめる。
つくしは司のものにそっと頬ずりをし、ぎこちなく唇を寄せる。
司の体はつくしの唇に反応するように全身がびくんと脈を打つ。
つくしは唇をゆっくりと這わせ、やがて舌で慈しむように司自身を愛し始めた。

『びっくりさせられるぜ・・おまえには・・』

司の言葉はどこか途切れ途切れになる。
つくしの細くしなやかな指先は司自身をそっと包みこみ、線をなぞるように舌を這わせてゆく。
司はつくしの髪を少し荒々しくかきあげ、目を閉じ天を仰いだ。
つくしの唇の挑発に、司の動悸は昂り、息づかいが乱れ、快感が体を貫く。
司はつくしの右手をやさしく握り返し、つくしの愛撫に身をまかせた。

つくしは少しのためらいの後、浅く、司自身を口に含んだ。
そして、少しずつ深く深く、甘く温かな蜜に浸すようにやさしく愛撫する。
ひざまずくつくしの姿も、つくしの熱い吐息もすべて司の体を虜にしてゆく。
思いがけないつくしの行為に司の体は限界に近づいてゆく。

『つくし・・・』

司はくぐもった低い声でつくしの名を呼び、欲情をつくしへと溢れさせる。

―すべてが終わり放心状態のつくしを、司は軽々と抱き上げベッドへと運び、横たわらせる。

『今度は俺の番だからな。』

司の欲望の色を湛えた瞳に、つくしは夜の長さを思い知る―






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