道明寺司×牧野つくし


「おい・・・いい加減に決めろよ・・・・・」

うんざりした声で、司が言った。
道明寺邸の司の部屋。広いテーブルの上は、無数に散らかるパンフレット。

「うん・・・もう少し・・・」

つくしはそう答えたものの、パンフレットを見つめる目は真剣そのものだ。
まだ暫くは目を離しそうもない。司は諦めのため息を吐いた。

「どこだっていいじゃねぇかよ・・・行きたいとこがあったら、何回も行きゃいいんだしよ・・・」

文句を言う司を、つくしはきっと睨む。

「旅行は贅沢。何度も出来るわけないでしょっ!」

旅費くらい俺が出してやるのに・・・とぶつぶつ言う司を尻目に、つくしはパンフレットを穴が開くほど見つめる。
半時ほどそうしていただろうか・・・『限界・・・』と、つくしがパンフレットを投げ出した。
ふと司を見ると、ベッドでフテ寝している。つくしにまったく無視され、機嫌を損ねたようだ。

「道明寺?」

ベッドの側により、つくしは司の顔を覗き込む。
本当に眠ってしまったのか、それとも拗ねているだけなのか、目を閉じたままだ。

「・・・怒ってるの?」

頬をそっとなでる。それでも司は目を開かない。

「・・・ごめんね・・・」

頬にそっと唇を寄せる。
瞬間、司はつくしの腕を掴み、ぐっと引き寄せる。
バランスを崩したつくしはベッドへ倒れこみ、あっという間に司に組み伏されてしまった。

「・・・めちゃめちゃ怒ってる。お前なんか許さねぇ・・・・・」

そう言って、司はつくしにくちづける。

小鳥のように、唇をついばむ。
うっとりとつくしが司に身をゆだねた瞬間、唇を割って舌を深く滑り込ませた。
ゆっくりと柔らかく、時に激しく舌を絡ませる。

「・・・んっ・・・・・」

つくしの口から、今までに聞いたことのない甘い吐息が零れた瞬間、司の中で、何かが弾けた。
貪るようなキスをしながら、つくしのブラウスのボタンを、片手で器用に外していく。
胸元にひんやりとした手の感触を覚えたつくしは、驚いて唇を離した。

「ちょ、ちょっ・・・道明寺っ?!」
「怒ってるって言っただろ?だから・・・これは罰だ。俺を怒らせた罰」

意地悪そうに微笑み、つくしの首筋に唇をあてる。
ぞくっと、背筋に寒気が走る。しかし、その中に溶け込んだ、今まで感じたことのない快感。
その快感に身体を振るわせたつくしを、司は見逃さなかった。

「嫌なら抵抗しろよ」

そう言いながらも、司はつくしの腕をしっかりと掴んで離さない。
身体をよじって抵抗するつくしを、司はなおも責め続ける。
舌の先で首筋をそっとなぞり、耳を軽く噛む。鎖骨の辺りに顔をうずめ、軽く吸った。
つくしの背中が軽く反る。司の中で、何かが完全に壊れた。

『理性』という留め金が外れた今、司の熱い欲望は、とどまるところを知らない。
乱暴にブラウスを剥ぎ取り、下着の上から胸を包む。
初めて触れるその柔らかい感触に、司は軽い目眩を覚えた。

「・・・道明寺・・・」

やめて・・・と、つくしが小さく呟く。

「・・・本当に、やめて欲しいのか・・・・?」

つくしの顔を覗き込んだ。
いつもと違う、つくしの瞳、熱くうるんだ・・・女の目。

「やめて・・・・・欲しくない」

幾分か女の艶を含んだ声で、弱々しく首を振った。
つくしは悟ってしまったのだ。このほんのわずかな時間で。
好きな男に抱かれることの幸せを、味わえる快楽を・・・・・

身に纏うものを全て脱ぎ去って、2人は再び重なった。深く舌を絡ませ、お互いを貪る。
司は何も着けないつくしの胸に手を這わせた。手のひらで転がすように、ゆっくりと弄ぶ。
固くなったその頂に指を這わせると、つくしはびくっと身体をしならせる。
恐る恐る、頂きに唇を寄せる。
予想したよりも固いそれを、司は精一杯愛撫する。
優しく舐め、舌の先で突付き、時には軽く歯を立てる。
その度につくしは身体をしならせ、司の頭を強く抱き、甘い吐息を口から零す。
胸を通り、腰を通り、司の手は、つくしの下腹部に届いた。
その瞬間、つくしは軽く司の身体を突き放す。

「・・・どうしたんだ?」
「え・・・・だって・・・・」

困惑した表情で司を見つめる。

「だって・・・・シャワーとか浴びてないし・・・・・」

汚いじゃん・・・と、恥ずかしそうに呟くつくしを、司はありったけの力を込めて抱きしめた。
腕の中の小さな女が、いとおしくてたまらない。

「お前は・・・汚くなんかない。俺にとっては何よりも綺麗だ・・・」

暫くそういていたが、司は不意につくしの下腹部へと再び手を滑らせる。
ふと身を固くしたつくしだったが、意を決して司の手を受け入れた。
初めて触れるつくしの秘部。すっと指でなぞると、甘い蜜が司の指を濡らした。
蜜の出所を探るように、司は優しく指を這わせる。司の指が動く度、つくしの身体が反応する。
時に身を固くし、時に背中を反らし、甘い吐息を零す。司の指が、つくしの泉の上で止まる。
暫く躊躇していたが、ゆっくりと、その泉に指を入れた。

「・・んあっ・・・・・・」

つくしの小さな叫び声が、司の耳に甘く溶ける。

「・・・痛いか・・・?」

目をぎゅっと閉じて、つくしは小さく首を振った。司の胸に、か弱くしがみつく。
泉の中で指を動かすと、つくしの身体が小さな痙攣を起こす。
くい・・・と指を曲げると、大きく身体が動く。
普段は見たことのない、『女』のつくしが、長い間眠っていた司の欲望を駆り立てる。
それを抑えられなくなった時、司はつくしの足を優しく開き、熱くなった自分をつくしにあてがった。

自分自身に司が当てられたとき、その熱さにつくしは身をすくませる。

「・・・・怖いか?」

司の問に、正直にうなずいた。

「・・・俺も・・・・・怖い。お前のこと、壊しちまいそうだ・・・」

切なそうに、少し悲しそうに司は微笑む。

「壊しちゃ・・・・やだ」

司の頬をいとおしそうに何度も触る。

「壊しちゃやだけど・・・・・でも、いいよ。道明寺だったら・・・いいよ」

司の頭をぐっと引き、唇を吸った。
絡まる2人の視線。
司は、つくしの中に自分を入れようと、優しく腰を進めた。
今までに感じたことのない甘い快感が、司の全身を駆け巡る。
初めはゆっくりと、次第に早く、司はこの快感を貪り求めるように腰を動かす。
それとは逆に、今までに感じたことのない痛みが、つくしを襲う。
早く動く度、大きく動く度に、その痛みは容赦なくつくしを斬りつける。

「い・・・・いたっ・・・・・」

つくしの言葉は、司の耳に届かない。
閉じていた目を開けると、司の顔が目に飛び込む。
その真剣な表情に、つくしは恐怖すら感じた。

「・・・・どーみょーじ・・・・・・」

つくしは小さな声で司を呼ぶ。
何故その消え入ってしまいそうな声が、司に届いたのかはわからない。
司ははっとして、自分の下にいるつくしを見た。

「・・・・痛いよぉ・・・・・怖いよぉ・・・・・」

司を真直ぐ見るつくしの目から、ぽろぽろと涙がこぼれる。

「ひとりで・・・・・あたしを追いてったらやだ・・・・・」

つくしの涙とその言葉は、司の胸に深く突き刺さった。

「・・・・・ごめん・・・・・」

つくしの涙に、司はそっと唇を寄せる。

「ホントに・・・・・ごめん・・・・」

つくしの不安を気遣ったつもりでも、結果泣かせてしまった自分を、司は責める。
自分自身をつくしから離そうと、司が動いた時、つくしの手が司の腕を掴む。

「・・・でも、やめなくていいから・・・あんたが、あたしの声に気付いてくれたから。あたしは・・・大丈夫だから・・・」

涙目でそう言ったつくしの表情は、今まで司が見たどんなそれよりも美しかった。
再び司が腰を進めようと動いた時、、司の中に、一番の快楽のうねりが押し寄せる。
ほんの一瞬の快感と、自分を受け入れたつくしの表情が合い混ざり、司は波に呑まれてしまった。






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