道明寺司×牧野つくし
夜半から降り出した雨は徐々に雨脚が強まってきた。 つくしは窓際に立ち、少し躰を傾ける。窓硝子のひんやりとした冷たさが疲れた躰に心地良く感じられる。 アルバイト先のファミリーレストランは週末を楽しむ客で溢れかえり、テーブルからテーブルへと駆けまわるような忙しさだった。 目が回るような忙しさから解放され、お風呂を済ませてアパートに戻ってきた頃には、日付はもう変わっていた。 弟の進は両親のところへ行っている。独りぼっちのちょっと寂しい夜。 つくしは妙に目が冴えてしまい、眠ろうとしても、眠ることが出来ずにいた。 外灯に照らし出された雨の雫を眺めながら、ぼんやりと司のことを思い浮かべていた、その時―まるでつくしの心の動きを察したかのように、携帯電話が鳴り響いた。 着信番号は見慣れた番号。こんな時間にかけてくるのは1人しか・・いない。 『もしもし・・』 『まだ、起きてたのか・・』 司からの真夜中のコール。 『うん・・なんだか目が冴えちゃって、眠れなくなっちゃって。』 つくしの声はどこかうれしさを隠せなかった。 『俺もなかなか寝つけなくってよ・・。そういえば今日は弟、いないのか・・?』 『うん・・親のところに行ってる。』 『じゃあ、今ひとりなのか・・。なんか無用心だな。これからそっち行こうか?』 『あ、いいよ。もう真夜中だし。それに外、すごい雨だからタクシーつかまらないよ。あたしなら大丈夫だから。』 『そうか・・・。』 司の何気ない言葉のひとつひとつが、つくしを満たしてゆく。 『ねえ・・もうちょっと・・しゃべってもいい?』 『俺は構わないぜ。つきあうよ。』 低い声が優しく、つくしの耳元に響く。 『寂しいのか・・・?』 『ん・・?ううん、全然。ぜーんぜん寂しくなんか、ないよ・・・。』 図星をさされ、つくしの声が上擦ったのを司は聞き逃さない。 『ったく素直じゃねえな・・。ひとりぼっちで寂しいんだろ?』 『寂しくなんかないもん・・。』 つくしはついつい、強がりを言ってしまう。可愛くない・・と思いながら。 『しゃあねえな・・今夜はとことんつきあってやっから。』 司の少しぶっきらぼうなやさしい言葉が、つくしの心に温かく沁みてゆく。 『ありがと・・・じゃあお礼に・・』 つくしはちょっと冗談ぽく、携帯電話を唇にあて、キスをした。 『もう一度、してくれ・・・。』 つくしに懇願するように司の低い声が響く。 『えっ・・?』 『もう一度・・キス・・してくれ・・。』 『え?あ・・・じゃあ、もう一度だけ・・。』 少し長めのキス。甘い吐息。つくしはもう一度電話機ごしに司にキスをする。 『なあ・・もっと・・してくれ・・。』 『ん・・?なあに・・?』 つくしは携帯電話を強く耳に押しあてた。 『おまえ・・今、何着てる・・?』 『えっ・・?お風呂から帰ってきたときのままの格好だから、ブラウスとスカート・・・』 『じゃあ・・ブラウスのボタン、外して・・。』 つくしは司の思惑に気づき、頬を赤く染めた。 『ん・・もう・・いやらしいんだから・・。』 『男ってのはやらしいもんなんだよ・・。よくわかってるだろ?・・・』 いつもならこんなことはしない。アパートの薄い壁から声が漏れることも気になる。 そんなことを思いながらも、つくしは司の声に縛られてゆくような感覚を覚える。 少しの間をおいて、つくしは小さな声で司に囁いた。 『今夜だけだからね・・・こんなことするの・・。』 つくしは司の言う通りにボタンをひとつひとつ外してゆく。下着をずらし、 胸元をあらわにする。 『俺がいつもするようにやって・・・』 司の声が電話の向こう側から甘くつくしに要求する。 つくしは司の大きな手のひらを想いながら、司がするように胸を揉みしだく。 そして司のしなやかな指に心を焦がしながらゆっくりと胸の蕾を指でなぞり、摘むように弄ぶ。躰が覚えた司の熱い唇と舌の動き。そしてその感触さえも呼び覚ます。 『はあっっっん・・・』 つくしは携帯電話を切なく握り締め、控えめな喘ぎ声を漏らした。 電話越しのつくしの喘ぎ声に劣情を刺激された司は、つくしにさらに淫らな要求をする。 『スカートの中に手を入れて・・』 つくしはスカートをたくし上げ、下着の中へ手を入れようとすると、まるでそれを察したかのように司がつくしに囁いた。 『・・中に手を入れちゃだめだ・・下着の上から・・』 つくしは戸惑いながらも司の言う通りに秘部を愛撫する。 襞の奥を下着の上から指先でさぐる。その指先は司がいつもするのと同じように焦らすように、ゆっくりと動かす。滲み出る愛液がつくしの指先をしっとりと濡らしてゆく。 襞の奥を擦るように刺激を与えると、つくしの躰は湧き上るような快感に貫かれた。 『んっっ・・はあっっ・・ああっっっ・・・』 外の雨が一層激しさを増してきた。アスファルトを叩きつけるような雨音が、つくしを大胆にしてゆく。つくしは激しい雨音に紛れるように、淫らな声で喘いだ。 やがてつくしの耳元に荒く乱れた息遣いが聞こえてきた。 つくしは携帯電話を軽く握り直し、司の息遣いに耳を澄ます。 『おまえのそんな声聞かされたら・・・』 司が躰の中から搾り出すように言葉を発する。いつしか司の躰は昂ぶりを抑えられなくなっていた。 『指を・・入れて・・俺がおまえの中に入る時みたいに・・。』 つくしは、司の熱く脈打つものがあてがわれる瞬間を思い浮かべながら、秘口へと指をゆっくり、ゆっくりと挿入し、司がするように指先に波動を与える。 『はあっっ・・・ああんっ・・・』 いつもなら自分の躰に重なり合うはずの司の上気した肌や躰の重み、汗さえも恋しくなる。 『おまえが傍にいればな・・やっぱりおまえがいないと・・・。』 司がまるで駄駄っ児のようにつくしを求める。 『あたしも・・道明寺がいてくれなきゃ・・また今度、一緒にしようね・・・』 つくしは司をやさしく、なだめる。 『もっと・・声、出してくれ・・おまえの声を聞きながら・・・』 呼吸を乱しながら司が切なそうな声をあげた。 つくしは携帯電話を強く握りしめ、電話の向こう側の司を想いながら喘いだ。 『道明寺・・・・』 つくしが司の名を呼んだ後、電話の向こうから司の低く、くぐもった声が聞こえ、つくしは司が果てたことを感じた。 司の吐息に耳を傾けながら、つくしは躰の火照りを鎮めようと窓硝子にもたれ掛かった。 外を見ると、雨はすでに小降りになっていた。やがて雨音は足早に夜の闇の中へと消え去っていった― SS一覧に戻る メインページに戻る |