出口の見えないトンネル
道明寺司×牧野つくし


記憶が戻った道明寺と初めてふたりきりで話した。
道明寺は私と類との関係を知っても不思議と責めなかった。おそらく自分が記憶喪失中にした私への仕打ちや自分の母の執拗な反対などのことを考えてのことだったと思う。

「幸せそうだな、よかった」

そう言って寂しそうに笑う道明寺を見ていると胸が疼く。

「ごめんね・・・待ってあげられなくて」

そういう私に道明寺は

「そうだな。俺は5年でも待つつもりだったのに」とふざけて笑う。
「こんなことになるんだったらあの時無理やりにでもやっちまえばよかった」

冗談めかして言うその言葉が胸に突き刺さる。

「あんた格好いいんだし、あんたにふさわしい人すぐに見つかるよ」それしか言えなかった。
「お前以外に抱きたいやつなんてねーよ」突き刺さるような鋭い瞳。
「なぁ・・・俺の童貞もらってくんねーか?」
「な、な、な、なに・・・・いってんのよ!!」

大胆な道明寺の台詞に飛び上がるほど驚く。

「他の女なんかどーでもいい。お前を克服しなきゃ俺は前に進めない、そんな気がするんだ」
「で、でも・・・花沢類、あたしには花沢類がいるんだよ」
「一度きりでいい」

道明寺の熱っぽい声にあの頃が思い出される。真っ直ぐな瞳で私を好きになってくれた。何度も私を助けてくれた。
「花沢類の腕の中」という穏やかな幸せを掴みながらも道明寺と過ごしたあの日々を懐かしく思う自分がいる。
道明寺が私をまだ好きでいてくれるならその思いに答えたい、そんな身勝手で卑怯な自分がいる。
類に対する裏切り行為だということは充分わかっていたがそれでもわたしは道明寺の差し出す手を離せないでいた。

道明寺は無言で自分の部屋へと私を招き入れる。
私は不思議なくらい冷静だった。シャワーを浴びながらもこれから起こることは予想できた。安全日の確認さえも怠らない。したたかな女だと自分でも思った。
バスローブ姿でバスルームから出てきた私を一足先に出て待っていた道明寺が抱き寄せる。

「悪い女だ・・・」

そう囁きながら唇を塞ぐ。私の迷いもためらいも全て奪うかのように何度も深いキスを重ねる。
このキスに私は何度も心を奪われてきた・・・・。
この人さえいれば他に何もいらないと願っていたはずだったのに・・・・。私たちどこですれ違っちゃったんだろうね。
突然脳裏に類の顔が浮かぶ。

許して・・・類。明日からはまたいつもの私に戻るから
  今日だけ・・・私は私じゃなくなりたいの。
道明寺に抱き上げられベッドに横たえられる。そっとうなじに唇が寄せられる。

「んん・・・・」

吐息が短くなるにつれて道明寺の唇は手と共に上半身をさまよい始める。
胸をまさぐりゆっくりと先端に向かって揉む。既に固くなっている先端の桃色の部分は舌の刺激を受けるとさらに固くなる。
目を閉じて寄せてくる快感に身を委ねているとさっきの言葉が思い出された。
道明寺は私を克服したいといった。
その後はほかの女の人を愛すのだろうか?抱くのだろうか?
そのことを考えると胸の奥がズキンと痛む。嫉妬などする資格もない私なのに。

確かに一度きりの行為のつもりだった。けれども、私のことをずっと忘れないでいてほしい。
私はそっと道明寺の耳に唇を寄せた。道明寺の体が大きくビクンと動く。
そうだ、ここはあいつの弱点だった。舌を使って周囲から攻める。
道明寺の手の動きが少し緩慢になったように思う。

「や・・・めろよ」

私から体を離し真っ赤な顔をして私を見下ろしている。怒ったような困ったようなその顔が余裕の無さを感じさせる。

「限界・・・・超えてる?」

この言葉を道明寺は覚えているだろうか?どんな状況のときだったかを。

「とっくに超えてるよ。あん時からずっと」

この言葉を道明寺は覚えているだろうか?どんな状況のときだったかを。

「とっくに超えてるよ。あん時からずっと」

そう言った後私のバスローブを脱がせ、自らも脱ごうと体を起こす。
その隙に私はシーツの中へと入り込み、裸体を隠した。

「こら、逃げるな」

怒ったような声で隣に入ってくる道明寺の首に抱きつき私はそのままあいつを押し倒す。
不意のことで何が何だか分からない顔をしているけれど、私が重ねた唇には熱く答えてくれる。

「どうしたんだよ」
「だってあたしにもらってくれって言ったじゃない」

そういいながらあいつの下半身に手を伸ばす。何て大胆な私。すでに大きくそそり立っているものに手を添えそっと上下に動かす。
大きく目を見張った後、目を閉じている道明寺はきっと快感に耐えているんだと思う。

「おまえ・・・・」
「軽蔑する?」
「いや、さいこーに気持ちいい・・・」

そうだと思う。我慢汁っていうんだっけ?かなりでてるもの。そろそろと下へ移動して先端を舌で舐めあげる。

「う・・・」

私の背中を道明寺の力の入った手が何度も動く。左手を添えたまま上の部分だけを口に含むと右手を一番下の付け根からゆっくりと周囲に触れる。

「牧野・・やめろ・・・マジ限界来るかも」

こもったようなあいつの声は聞こえたけど、もう少しだけこうしてたかったから私はわざとやめないでいた。

「く・・っ、出るっ・・・」

その声と同時に私の口の中で道明寺は果てた。

「驚かすなよ、ったく・・・」

私を抱きかかえたまま道明寺は呟く。

「こういうあたしは嫌い?」

返事より先ににやりと笑って私を押し倒す。

「んなわけ、ねぇだろ
 いつか言ったろ?気がおかしくなるほど惚れてるって」

相変わらずこんな恥ずかしい言葉を平気で口走る。今日が最初で最後なのに。
本当にあいつは私をふっきれるのだろうか?私は・・私は大丈夫。類がいる以上状況は変わらない。類が誰よりも・・・好き。
道明寺は・・・一度は好きになった人だから幸せになって欲しい。私をふっきって幸せになって欲しい、ただそれだけ。
道明寺は私の胸を舌で何度も攻める。同時に右手を下腹部へと移動しゆっくりと敏感な部分へ近づく。
直接触られてもいないのに泉は既に蜜が溢れている。
あいつの指にそこを刺激され、泉の奥からじわっと快感がにじみ出てきてさらに蜜が溢れてくるのを自分でも感じる。あいつの指が私の中に侵入して出し入れを繰り返すたびにあいつへの思いが溢れてくる。

道明寺わかる?あたしこんなに感じてるんだよ。こんなにあんたを欲しいと思ってる。あいつの大きな胸にしがみついたまま私はのぼりつめていくのを感じた。

「イッたんだろ」

ニヤニヤしながら笑いかける。

「ば、ばかっ・・・・」
「これで互角だな」

それは甘いと思う。童貞のあんたに比べたら、私のほうがかなり優勢だと思うけど。
キスしようと抱き寄せるあいつの耳元でそっと囁く。

「ね・・・横になって」

途端に真っ赤になって力が抜けてる。ホントにホントに弱いんだ、ここ。
仰向けになって寝ている道明寺の上に乗り、唇を重ね、舌を求める。あいつの手が私の背中、腰、腿と次々に移動する。
私は少し体を起こしあいつのものをそっと私の中へと誘導する。

「おい・・・」

体を起こそうとする道明寺の唇をも一度奪いながら、腰をゆっくり動かして私の中へとすべてを収めてしまう。

「 すげーよ・・・・」

道明寺のこんな満たされたような顔はじめて見た。
「何度も何度もお前とこうなること考えたよ。でも、全然違う。あったかくてやわらかくてすげー気持ちいい・・・・。」
そういって腰を使い始めるあいつの動きに私はのみこまれそうになる。熱く突き上げられて深く感じさせられて自分が自分でなくなっちゃいそう。
克服するとかふっきるとかそんなことどうでもいい。この先のことなんてどうでもいい。もっとあたしを感じさせて。そしてあたしを忘れないで。

達した瞬間私はずっとずっと探していたものをやっと見つけたような気がした。
実際にはそうでなく長い長い出口の見えないトンネルに入り込んだだけだったのだが。






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