道明寺司×牧野つくし
![]() 軽井沢の別荘地は夏の熱気を封印したように静まりかえっていた。 車窓に移ろう樹林は夏の残り香を漂わせながら違う季節の表情を見せている。 長くゆるい坂道を抜けると、豪華な門柱が見えてきた。 『もうすぐ着くぞ・・』 運転席の司がそう言った後にも、長い長い道が続く。 ようやく見えてきた瀟洒な建物。 『すごい・・』 つくしは思わず溜息が出た。 1年間のうちのほんのわずかな時期を過ごす為だけの場所。 たったそれだけの場所がこんなに豪華であるとは、つくしには信じられない。 軽井沢の道明寺家の別荘に人影はなく、2人を出迎える者はいなかった。 普段は別荘番の者がいるらしいが、司が休暇を取らせたという。 3日前、司から急に誘われた小旅行。つくしはまだ司の意図を知らなかった。 ―その夜、ふたりは別荘のリビングでくつろいでいた。 『酒なら腐るほどあるからな・・ワイン開けてやるよ。』 バスローブ姿の司は慣れた手つきで年代ものらしきワインを開けた。 『飲んでみ。おまえが好きそうな味だぜ。』 つくしは渡されたグラスに注がれたワインを口にする。 『うわ〜、すっごく甘くておいしい!』 そのあまりの口当たりの良さは、それがお酒であることを忘れさせる。 『その格好、いいな・・・。』 『あんたの服、大きすぎるの・・。』 風呂上りに司から借りた大きなシャツ。 つくしは司の服を着て司の匂いに包まれるのを密かに愉しんでいた。 司はテーブルの隅にあったトランプを弄びはじめた。 『ババ抜きしよっか。』 誘ったのはつくしの方からだった。 やってみると、何故かつくしが一方的に勝ち続ける。 勝利の女神が味方しているかのように― 『なあ・・・。』 『なあに・・?』 『賭けようぜ。』 『なにを?』 『賭けに勝ったら、今夜一晩、勝った方の言うことを何でも聞く。』 『え・・?』 『おまえが勝ったら、おまえの言うこと何でも聞いてやるぜ。』 司はテーブルに置いたトランプへと視線を落とす。 『エッチなコト考えてるでしょ・・・。』 つくしは上目遣いに司を見つめ返した。 『ん・・・・?』 司はとぼけた表情でつくしの視線をかわした。 『ま、いっか・・。今夜は調子いいし・・・。』 甘いワインは、つくしの思考も甘く麻痺させていた。 司がカードを切り、配る。 つくしは手元のカードを確認する。ジョーカーは、ない。 司は余裕の表情を見せている。 一枚、一枚、カードをとりあってゆく。 『ま、このゲームも勝てそうだね・・。』 つくしがすこし酔いがまわった口調で軽口を叩いた瞬間。まるで指先が誘われるようにジョーカーを引いてしまった。 『あっ・・・』 司はどこか確信に満ちた表情を浮かべながらつくしを見つめていた。 手元のカードはもう残り少なくなっている。 司がカードを引くたびに、つくしの胸の鼓動は否応なく高鳴っていった。 『ねえ・・』 つくしは司に問いかけた。 『あたしが負けたら・・何をさせるの?』 司はつくしを射るような眼差しで見つめ、少し間を置いて応えた。 『・・たぶん、おまえが今思ったこと・・だな。』 ―淫らな事を考えていた― 心を見透かされたような気がしたつくしは、恥ずかしそうに司から視線を外した。 気がつくとつくしの手持ちのカードはジョーカーとハートのクイーンだけになっていた。 司はジョーカーに指を軽くかけカードを傾けた。 つくしが勝ったと安堵した瞬間、司はその指をハートのクイーンに素早く持ちかえカードを引いていった。 『勝ったな。』 司が余裕の表情でつくしを見つめ返した。 つくしが賭けに負け、ひとり動揺しているのをよそに、司はテーブルのワインを手に取るとリビングの扉を開けた。 『ついて来い。』 司はつくしを連れて2階へと上がり、長い廊下を歩く。 つくしはこれから自分の身に起こることを想像し、躰が熱くなるのを感じていた。 しばらくして司はある部屋の前で立ち止まり、ドアを開けつくしを招き入れた。 大きな窓から月明かりが差し込む部屋。暗がりにキャンバスが見えた。 『・・ここ、アトリエ?』 つくしは周りを見まわした。 『親父の趣味なんだ。ここ数年は全然来てねえけどな。』 『そうなんだ・・』 つくしは誘いこまれるように部屋へと入っていく。 『ここで・・・いいな。』 司は独り言を呟くと、何かを確信したように、ドアに鍵をかけた。 『あっ・・。』 鍵をかける音に振りかえったつくしに、司が意地悪く微笑んだ。 司は野性味をあらわにした眼差しでつくしを見つめる。 『賭けに負けた方が、勝った方の言うことを何でも聞くんだったよな・・。』 『あ・・でも、何でもってわけには・・』 『今夜、おまえに拒否する権利はねえんだよ・・。』 司の言葉につくしの躰が炙られるように熱くなる。 『何をするか、わかってるよな・・・。』 つくしは何もかも了承した眼差しで司を見上げた。 『裸になれ。』 予感していた命令がアトリエに低く響いた。 つくしは観念したように、ゆっくりと下着に手をかけ脱ぎ捨てるとシャツのボタンを外し始めた。 司は閉じられたドアに寄りかかりながら微かな笑みを浮かべながらつくしを見つめている。 司から借りた大きめのシャツはつくしの肩を滑り床に落ちた。 すべてを脱ぎ捨てたつくしは胸元と翳りを手で被い隠す。 『隠すな・・手、離せ。』 司の低く鋭い声がアトリエに響き渡った。 『窓際に立つんだ・・』 つくしは月明かりが差す窓際に立ち、暗闇の中に浮かび上がるように青白い裸身を司の前に晒した。 『外の方を向け。』 司はそう命じるとつくしの背後に立ち、つくしの裸身を窓硝子に押しつけた。 裸身を窓硝子に押しつけられ、つくしは恥ずかしそうに躰をよじった。 『あん・・いやっ・・・・』 『腰をつきだせ・・。』 司はつくしの背後から秘部へと指を這わせる。 秘部の尖端をさぐるように指を這わせると、つくしはこらえきれず声をあげてしまう。 『ああっ・ん・・・』 司はつくしの反応を愉しむように指先を動かす。 『恥ずかしい・・・外から見えちゃう・・』 つくしは裸身を窓硝子に押しつけたまま司に訴えた。 『目の前は邸内の庭だから人はいねえよ・・。それとも何か?誰かに見られたかったか?』 『そんなっ・・・』 司の指は執拗に秘部の尖端をさぐりつづける。 『そこ・・あんっっ・・・』 つくしは鼻にかかるような声で切なく喘ぐ。 司は窓に手をあて、つくしの背中へ舌を這わせる。 『ああっっん・・はあっっ・・』 背中を這う微妙な感触がつくしをさらに昂ぶらせる。 つくしは羞恥心と快楽の狭間に漂いはじめる。 『牧野・・おまえ、いつの間にこんなに淫らになった・・?』 司はつくしの耳元で野卑な口調で囁いた。 『いやっ、そんなんじゃない・・』 つくしは頭をふり司の愛撫に耐える。 『これでもか?』 司はつくしの秘部から溢れ出た蜜を拭いあげた。 『だめ・・・そんな・・・。』 『やめてやってもいいぜ・・ただし俺の質問に答えろ。』 『質問・・・?』 司は躰を傾け、つくしの耳元で囁く。 『類とはあの場所で会ってるのか?』 あまりにふいをつかれ、つくしはうまく言葉がでなかった。 3日前、非常階段で類と会ったときのことが脳裡をよぎる。暖かな陽気に誘われ、話が弾み、長い時間ふたりきりで話しこんだ。ただ、それだけの出来事― 『花沢類とは・・最近、会ってない・・かな・・。』 別にやましいことなど何もないのに、つくしの口はつい嘘をついてしまった。 『3日前、会ってるよな。』 司が低く、刺すように呟いた。 『楽しそうに話してたじゃねえか・・』 『そうだった・・かな・・』 『・・・嘘をついたな・・・』 つくしはうまくごまかすことができなかった。 『嘘をついた罰だ・・。』 司は強引につくしの手をとり、椅子に座らせつくしの手を後ろ手に組ませると、着ていたバスローブのベルトを外し、つくしの手を縛り上げた。 『あっ・・だめっ・・』 つくしは抵抗むなしく後ろ手に椅子にくくりつけられてしまった。 『お願い・・外して・・。』 司はもう一つの椅子を持ってきてつくしと対峙するように座った。 『指で可愛がるのはもうやめだ。今夜はおまえを苛めてやる。』 『えっ・・・?』 司は立ちあがるとアトリエの飾り棚の引き出しから何かを持ち出した。 引き出しの中に忘れられたように入っていた真新しい絵筆。 司はその絵筆に絵の具の代わりにワインを浸す。 『おまえにはこれで充分だ・・・。』 司は意地悪な表情でつくしの裸身のキャンバスに絵を描くように筆をつたわせる。 『あ・・・』 初めて味わう感触に背筋を伝わるような快感を感じながらも、それを振り払うようにつくしは声をこらえ、唇を噛んだ。 首筋から鎖骨。司は焦らせるように絵筆でつくしの肌をなぞる。 ゆっくりと降りてゆく絵筆はやがてつくしの胸の蕾をとらえた。 『はあっっ・・ん・・・・』 つくしは我慢できずについ声を洩らしてしまった。 蕾が硬く尖ってゆくのを見て、司はつくしに囁いた。 『いやらしい女だな、おまえは・・・絵筆でこんなに感じてるじゃないか。』 『違うの・・違うのっ・・・・』 つくしの言葉とはうらはらに胸の蕾はさらに硬く上を向き、肌は赤く火照り艶を増してゆく。 司はなおも絵筆をつくしの躰へと這わせ続けた。 『ああんっっっっ・・・』 執拗なまでの筆遣いにつくしは淫らな声をあげてしまう。 『脚を開いてみろ・・』 司の言葉につくしは顔を赤く染め、頭をふり、脚を硬く閉じた。 司は構わずつくしの膝に手をかけ、ぐいっと脚を押し開いた。 『んっっ・・・』 つくしは司から顔をそむけ、恥ずかしそうに唇をかんだ。 つくしの秘部からは蜜がこぼれんばかりに溢れ、椅子をも淫らに濡らしていた。 『こんなに濡れてるじゃねえか・・。これでも感じてねえってか?』 司は椅子から立ちあがり、つくしの顔を仰がせ、唇を指でなぞる。 『正直に言え・・感じたんだろ?』 しやなかな指がつくしの唇を割り入りこむ。 つくしはうっとりとした眼差しで、唇をなぞる司の指にくちづけ、舐めはじめた。 司はそんなつくしを見下ろすように見つめながらもう一度訊ねた。 『ホントは感じたんだな?・・』 つくしは真っ赤な顔でこくりと頷いた。 『俺が欲しいか?・・ん?・・・』 指先でつくしの唇をなぞりながら司が訊ねる。 『物欲しげな顔したってだめだぜ・・ちゃんと言わなきゃわからねえ・・』 つくしは潤んだ瞳で司を見上げる。 『欲しい・・』 司は満足そうな笑みを浮かべた。 『素直でいい・・ご褒美をやろう・・・』 司はワインをつかむと口に含み、つくしに荒々しくくちづけた。 甘いワインが司の唇の温もりとともに口移しでつくしに注がれる。 つくしは司の唇を貪るように吸い、ワインを味わう。 ワインの甘い余韻が忘れられないかのようにつくしは司の唇を吸い続ける。 司はワインに酔いしれるつくしを突き放すように意地悪く唇を離していった。 『もっと・・欲しい・・。』 つくしは嫌々と頭をふり、仔犬のような目で司を見上げた。 『だめだ。今度は俺がワインを味わう番だからな。』 濡れた唇でワインをねだるつくしを見下ろしながら司は意地悪く言い放った。 司は後ろ手に縛り上げたつくしの手を解き放つと、つくしをソファへと乱暴に押し倒し、傍らに置かれていたワインを掴み薄い笑みを浮かべた。 『何をするの?・・』 つくしはこれからされる事を予感しながら、媚びを含んだ眼差しで司を見上げた。 司はワインをつくしの胸元へと少しずつ、溢してゆく。 ワインの冷たさがつくしの肌へと染み込む。 司はワインを味わうようにつくしの胸のふくらみをつつみ、舐め回す。 『ああっっ・・・』 ワインは司の舌で絡めとられてゆく。 つくしは司の舌の動きを予感しながら目を閉じうっすらを唇を開く。 そんなつくしの予感を裏切るように、司の舌の動きはつくしの敏感な部分を微妙に外してゆく。 『あっ・・・』 司はつくしが困惑する表情を愉快そうに眺めながら舌を這わせつづける。 つくしは堪えきれず、司の舌の動きに合わせ躰を動かした。 『何で躰を動かすんだ・・・?』 つくしは答えに詰まり、すがるように司を見上げた。 『おまえには我慢ってもんを教えないといけねえな。』 司はつくしの華奢な肩をソファに抑えつけ自由を奪い、つくしの好きな場所を意地悪く避けながら愛撫を続ける。 『お願い・・意地悪しないで・・。』 つくしは躰を捩りながら司に懇願する。 『そんなにして欲しいのか?しょうがない女だな。』 司はつくしの胸を鷲掴みにすると荒々しく唇を寄せた。 『ああっっっ・・。』 つくしはうっとりと司の舌遣いに酔いしれた。 秘部は司を求めるように熱く潤み、微動しはじめていた。 司は熱くそそりたったものを掴み、その先端でつくしの秘部をゆっくりとなぞりはじめた。 湧き上る蜜をすくい上げ、襞の尖りを突つく。 『あんっっっ・・』 またしても焦らされたつくしは、自ら司を求めるように淫らに腰を動かす。 『どうした・・?』 司はつくしの腰の動きを微妙に外しながら意地悪く問いかける。 『腰をふって何がしたいんだ?』 司の言葉につくしは濡れた瞳で訴える。 『・・欲しいの・・・』 『何が欲しいんだ?ちゃんと言わねえとわからねえな・・。』 司はわざととぼけたような口調でつくしをなおも焦らす。 つくしは困惑した表情で司を見上げた。 『言ってみろ。命令だ。』 低く響く司の声がつくしの耳元で溶けてゆく。 『だめ・・恥ずかしい・・。』 司は眉を意地悪く上げ、つくしの手を取った。 『じゃあ、自分でやるんだな。』 司はつくしの指先を無理矢理、秘部へと導びいた。 『・・やだ・・。』 つくしは司の導きを拒み、頭をふった。 『じゃあ、ちゃんと言え。』 『・・いやっ・・。』 『言うんだ・・。言わなきゃしてやらねえぞ・・。』 司は自らのものでつくしの秘部を焦らすように撫でる。 『言ってみ・・。おまえの欲しいものはここにあるんだぜ・・。』 欲情を抑えられなくなったつくしは、欲しいものをはしたなく司にねだった。 つくしの言葉に、司の表情はみるみる悦びに満ちていった。 『おまえがそんな恥ずかしいこと口にするなんてな・・ほら、くれてやるぜ。』 司はつくしに囁きながら、熱く脈打つものをあてがい、一気につくしの躰を貫いた。 つくしはその熱さに目を閉じ、背中をやわらかく反らせた。 司は卑猥に腰を動かし抽送を繰り返しながら、喘ぐつくしの姿を愉しげに眺める。 『すっげえいい顔だぜ・・。』 司の言葉につくしはうっすらと目を開け、とろけるような眼差しで司を見上げた。 『そんな目をして・・いやらしい女だな。こうしてやる・・。』 司はつくしの脚をつかむと無理矢理淫らに広げさせた。 『あっ・・やっ・・・』 つくしは頭をふり、手を伸ばして抵抗しようとするが、司はその手を難なくかわす。 『あっ・・・』 つくしの両手は頭の上で組まされ、司の右手にあっさりと組み伏せられた。 『この手はじゃまだな。』 司は意味深な笑みを浮かべると、つくしの両手をバスローブのベルトできつく縛り上げた。 『あん、だめっ・・』 『今のおまえの姿、すごくいいぜ。』 司は自由を失ったつくしの躰を欲望の趣くままに突き上げ、抽送を繰り返す。 司の躰がつくしの躰で上下し汗の雫が滴り落ちる。 『ああん・・あああっっ・・』 つくしは我を忘れたようにひたすら喘いだ。 あられもない姿を晒している羞恥心は被虐的な快楽へと変わってゆく。 『中へ・・してやるからな・・』 司はつくしにそう囁くと、心地良く脈打たせるようにつくしの躰の奥深くへと白濁を注ぎこんだ。 ―・・あの夜、道明寺はあたしを離そうとしなかった。欲望のままにあたしを抱き、あたしの躰を貫いた。夜明けを迎えるまで・・。 あれからあたしは、道明寺に何度も抱かれた。道明寺はまるでこわれものを扱うようなやさしさであたしを包んでくれた。 道明寺の優しさに包まれながら、あたしは時々、あの軽井沢の夜のことを思い出している。 あのトランプには、子どものころ、道明寺がジョーカーを見分けるために自分にしかわからない、小さなキズをつけたのだと聞いたのは少し後のことだった。 ・・もし、あの別荘でもう一度トランプをするのなら、あたしはきっと、その小さなキズのついたジョーカーを捜してしまうだろう― ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |