NY. 休日の朝
道明寺司×牧野つくし


あたしは鏡に映った自分の姿にボーゼンとしていた。ぐしゃぐしゃの髪、赤い目、本の角の跡が残った頬。
深夜までかかった課題のレポートに埋もれ、辞書を抱えながら目覚めた朝。

『わーん、ひどすぎる。なんとかしなくっちゃ…』

眠い目をこすりながらバスルームに入り、蛇口をひねった。躰に降り注ぐシャワーの雨が、心地良くあたしの身体を目覚めさせてくれる。

バスルームを出ると、柔らかな日差しが、窓から差し込んでいた。
その日差しに誘われるように、窓辺に立ってみた。
窓の向こう側に、はるかにそびえたつ高層ビル群。
初めてこの地に立ったとき、そのあまりの高さに、自分が小さく思えて、ただ、見上げることしかできなかったことを思い出す。
背筋を伸ばして、そっと手をかざしてみた。
あの頃、圧倒されるばかりだった高層ビル群が、手のひらの中に小さく収まる。

―この街で、やっていけそう―

小さいけれど、確かな自信が、あたしの中で芽生えつつあった。

『そろそろ、約束の時間かな…。』

ぽつりとつぶやいた独り言と同時に、呼び鈴の音が部屋に鳴り響いた。
あたしは扉の向こう側の人物を確かめドアを開けた。

『よっ。』

司の顔から満面の笑みがこぼれる。

『どうぞ、入って。今、コーヒー入れるから、そこ座ってて。』

司を招き入れる声も、キッチンに向かう足取りも、自然と弾む。
同じ街に住んでいながら、2人でこうして会うのは久しぶりだ。
あたしも司もお互い忙しくて、デートもなかなか、ままならない。
それでも決して寂しいとは思わない。
新しいクラスメイト。毎日のように課されるレポートの山。新しい発見の日々。
もしかしたら、日本にいたころよりも、あたしは生き生きとしているのかもしれない。

『こっちでの生活には慣れたか?』

司はそう言いながら、あたしが入れたコーヒーに口をつけた。

『うん…英語の授業についてくの、すっごく大変だけどね。そういうあんたはどう?』
『大学の方は何とかやってるぜ。仕事の方は覚えることばかりで、まだまだって感じだけどな。』

コーヒーカップをそっとテーブルに置くと、真剣な眼差しで傍に立つあたしを見つめ返した。
大きな手が、あたしの手を掴み、躰をそっと引き寄せる。

『でもやってみせる。おまえだって、こうして、ここまで来てくれたんだからな。』

躰をあずけるように、そっと凭れかかる。
息をひそめ、昂ぶりを抑えようと瞼を閉じる。
髪をやさしく撫ぜられ、耳元から頬をしなやかな指先が伝う。
濃密な吐息が、お互いの欲望を躰の中に溢れさせる。
軽く触れ合った唇は、互いの舌を誘い出すように、深く、深く絡み合う。
少し乱れた息をととのえ、静かに見つめあう。
もう言葉は要らなかった。
あたしは無言で司の手を引き、ベッドへと誘った。
お互いに、もどかしそうに身に纏うものを脱ぎ捨ててゆく。
ふたりで眠るには小さなベッドの上。
愛しいほどに、卑しいほどに、あたし達は男と女になる。

互いの肌から直に感じ合う、温もりと鼓動。
司の熱い吐息が、あたしの耳元から首筋をそっと撫でてゆく。

『おまえがここに来てくれて、すっげえうれしかった。でも…』

司はふと視線を落とした。

『戻っていっちまいそうな気がして、ちょっと不安だった。』

そうつぶやいた司を、あたしはそっと抱きしめた。
戻れたのかもしれない。こんな風に愛されることを知る前なら。

『大丈夫。そんなことない…。』

この想いから戻っていく道なんて、もうわからない。
そんな想いに、あたしは身も心も任せている。
不安をかき消すように、くちづけ、想いを注ぎ込む。
大きな広い肩に手をかけ、欲望を煽るように、そっと司の唇の前に胸元を差し出す。
司は、熱く潤んだ眼差しであたしの躰を見つめ、唇をうっすらと開いた。
そして、手のひらで胸をそっと包み込み、乳首に奮いつくように唇を寄せた。
弄るように揉みしだかれ、乳首を貪るように吸われる。やさしく、そして乱暴に。

『ああっ…』

硬く尖った乳首を、舌で突つかれ、さらに甘く歯を立てられる。
目を閉じ、司の唇に胸元を強く押しつける。
くせのある髪が、乱れた吐息が、肌を心地良くくすぐってゆく。
心地良い愛撫に応えるように、耳元にそっと熱い吐息を吹きかける。

『おまえ…そこ…』

びくんと司の躰が敏感に反応する。
耳元が弱いのは相変わらず。甘噛みすると耳が真っ赤に染まった。
あたしを愛撫する手がおろそかになっていく。

『こら、悪戯すんな…』

あたしの悪戯を封じ込めるように、花芽を探る。

『やあっっ…ああっっ…』

しなやかな指の動きに翻弄されてしまう。指先に花芽を押しつけてしまう。
淫らに解き放たれてゆく躰。
熱く潤んだ秘芯に司の指先が伸びる。淫らな水音を聞かせるように指先が蠢く。
会えない夜は、こんな風に抱かれることを思いながら、独りで濡れていた。
司の手が吐息が触れただけで、すぐに欲しくなってしまう。

『欲しいみたいだな…』

そう囁きながら、司が、何処からともなく取り出したもの。

『それ…ちょうだい。』

司は「ん?」という顔をしながらも、あたしにそれを手渡してくれた。

司のものは、あたしの躰の下で熱くそそり立っていた。
先走って濡れた先端を、指先でそっと、やさしく撫でる。
行き場がわからなくて、収まる場所を求めて、震えているように見える。
あまりにもいたいけで、守ってあげたくなる。
大丈夫、もうすぐだからね。心で囁きながら、そっと帽子を被せてあげる。

『好きでしょうがないって感じだな…。』

司が意地悪な口調で、でもすごくうれしそうに囁く。
好きだから、やさしく、あたしの躰の中に誘う。そっとそっと、ゆっくりと。
あたしの躰に収まると、司は待ちきれないように、あたしを突き上げはじめた。
司の動きに呼応するように、淫らに躰を弾ませる。

『あんっっ…ああっっ…』

髪を乱しながら、天を仰ぐ。
司は深く躰を繋ぎとめようと、あたしを強く抱き抱え、胸元に唇を寄せた。
あたしは、淫らに喘ぎながら、後ろ手をついて、躰をそらせる。司は容赦なくあたしの躰に己を打ち振るう。
支えていた腕の力が崩れ、ベッドへと倒れこんだあたしの躰に、司の躰が覆い被さる。
あたしの躰を抱え込み、激しく打ちつけるように腰を振い続ける。
いたいけで、か弱そうにさえ見えた司のものが、あたしの躰を熱くかき回す。

『愛してる…』

生まれてはじめて耳元で囁かれたその言葉は、少し苦しそうに聞こえた。

『あたしも…』

その答えに、迷いはない。
普段は少し薄暗いベッドルームの窓から、光が差し込んでくる。
高みへと追いつめられてゆく躰。

『あっっ…』

司が全身をびくんと波打たせた。
痺れるような感覚の中で、ひとつになって昇りつめたことを、肌で感じる。
悦びはあたしの心を震わせ、瞳を熱く潤ませる。
目尻から小さな雫が落ちるのを感じながら、あたしは言葉にならない幸福感に満たされていた。

真昼の空の青さは、部屋の中にいても、鮮やかに目に飛び込んでくる。
そんな青さの下で、あたし達は小さなベッドの中で身を寄せ合っていた。
まだ、全てを許されているわけではない、あたし達。

『それでも…俺は決めたんだ。俺の居る場所はおまえの傍しかねえって…な。』

切ないほどに、あたしの心にまっすぐに響く声。
うっすらとこみ上げる涙をこらえながら、そっと司の胸に顔を埋めた。
迷って、はぐれて、また、迷って。
それでも最後に、あたしの心が決めた、あたしの居場所。
それはこの腕の中にある。






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