観覧車
道明寺司×牧野つくし


「あ、ねえ観覧車ある!乗ろっ!」

あたしは、道明寺の手を引っ張る。
水族館のそばにあるその観覧車からは、海が見下ろせる。
半年振りの道明寺の帰国は、たったの三日いるだけ。あたしが独占できるのは今日だけだか
ら、精一杯楽しみたい。

「サカナ見たあとは、観覧車・・?」

道明寺は、並んでいる人たちを見てため息をつく。昔なら嫌だ、とすぐ言われそうだけど。

「ま、いいわ。お前が行きたいんなら。案外楽しいかもな。」

あたしは驚いて道明寺を見上げる。・・なんか、前より優しくなったみたい。
あたしは、嬉しくて腕を組む。道明寺がちょっと赤くなる。
いっしょに朝を何度か迎えても、あたしたちはまだまだこれから、って感じ。

「すいませーん、混んでますので、二組ご相席ということに・・」

係員のお兄さんがあたしたちの方に手を上げながら来た。
道明寺がじろりと睨む。

「・・・は、無理ですよね、ハハ。あ、お二人でどうぞ〜。」

道明寺はあたしの手を取って、すたすたと乗り込む。

「もーあんたはすぐそうやって、怖がらせるっ!お兄さん、びびってたじゃん。」

道明寺は、長い脚をどっかと組むと、

「狭いなあ、ここ。脚がぶつかっちまう。」

と、向かいに座ったあたしを、自分の隣に移させた。・・この方が、狭くない?

六時を過ぎた海には、赤く染まった夕陽が沈み始めている。

「・・・なんか、怖いくらいきれいだね・・。」

道明寺は、あたしの肩に左手を回して、自分の方に引き寄せる。

「会いたかった・・。」

あたしの髪にキスをして、耳元で囁かれる。
あたしは、道明寺の右手を取って、自分の両手で包む。

「久しぶり・・だね、こんなに大きいんだっけ、あんたの手って。」

無人島で、こんなふうに手を自分の頬にあてたっけ。
キスしたくて・・髪や、肩や手や、肌に触れたくて・・。
あのころのあたしたちは、想いあってても、どうにもできなくて・・。
あたしはあの時の切ない気持ちを思い出して、道明寺を見上げる。

自然に唇が求め合っていた。
目をつぶって、道明寺のキスを感じる。
道明寺のコロンの香り・・・少し、タバコの香りも・・。
温かな舌が、あたしの歯を割って、中をさまよう。
どうして、離れていられたんだろう・・どうして、この腕から出られたんだろう・・。
胸の中に、熱いものがこみ上げてくるのが分かる。

もう・・やだ。このままずっと・・。

道明寺の手が、コートの中に忍び込む。
あたしはさすがに手を止める。

「だめだよっ、こんなとこじゃ、他の乗客に見られちゃうっ・・」

あたしの、小声の抵抗を、道明寺はあっさりと唇で塞ぐ。

「んっ、んんっ・・」

セーターの上から胸の頂きを探られて、あたしは思わず声が漏れる。

「やっ、恥かし・・」

コートをかき合わせて身をよじるあたしの腕をさけて、道明寺は、スカートから出ている
膝の間に手の平を割り込ませる。

「ずっと、我慢してたんだぞ。水族館じゃ、混んでっからカラダくっついてんのになんにも
 できねえしよ・・。ホテルまで、我慢できねえよ。ちょっとだけ、触らせろよ・・。」
「ええっ!や、やだ、ねえちょっと、ふざけないでってば!」

あたしは、必死に膝に力を入れて、手の侵入を防ごうとする。観覧車の個室が、ぐらぐらと
揺らぐ。

「暴れると、かえって目立つぞ。もう薄暗いし、窓もあんな上なんだから見えねえよ。」

道明寺は、まるであたしを観念させるためのように深くキスをしながら、手を進める。

「んんん〜〜〜っ!!」

とうとう道明寺の手が、あたしのショーツに届く。あたしはあきらめて身体の力を抜く
まさか最後までは出来ないだろうし、ちょっといたずらするだけ・・だよね?
道明寺はあたしの態度をYESと受け取ったのか、いつもより性急に、あたしの泉を探る。

「・・・んだよ、感じてるんじゃん。」

道明寺は、手を引き抜くと、指についた雫を舐めとる。

「やだっ、汚いよっ。」

あたしは、恥かしさに泣きそうになる。なのに・・ホントは、・・感じ始めてる・・やだ、こんなとこで感じちゃうなんて、あたしっておかしいのかな・・?

「ばーか、お前の身体なら、どこだって食べちまいたいくらい・・すげえかわいい・・」

観覧車は、もうすぐてっぺん・・。少しずつ、夕暮れが、夜に生まれ変わっていくのを、あ
たしは道明寺の指で感じながら眺める。
道明寺の手が、あたしの手を道明寺自身に導く。
そこは、もうこれ以上大きくなれないほど、硬くなっていた。
今までなんどか身体を重ねたけれど、あたしが触ったことはなかった。恥かしい・・けど、道明寺にも感じて欲しい・・。

「どうすれば、いいの・・?」

あたしは、そっと彼自身をなでながら、訊く。道明寺は、ベルトを外すとそれをあたしの手
に握らせた。

「こうやって・・動かしてくれ・・ああ・・うん、そんな感じだ・・。」

道明寺が、目をつぶって吐息を漏らす。
キスをしながら、お互いを指で高めていくのは、もどかしくて、気持ちいい。
一つに、なりたい。邪魔な布たちを全部脱ぎ捨てて、道明寺を全身で、感じたい・・。

観覧車が、終わりに近づく。あたしは慌てて乱れた服を直す。

「ねえ、変じゃない?」

あせって、髪を手で押さえるあたしに、道明寺が囁く。

「おお、すげえ、エロい顔してっぞ。」
「バカッ!」

あたしは一人で、観覧車を降りる。

「おい、待てよ。」

道明寺が後ろからあたしを抱きしめる。

「早く帰って続きしようぜ。・・おさまんねえよ。」

あたしたちは、手をつないで歩く。朝を迎えたら、言おう。
もう離れない・・・あたしもNYに行くから。また観覧車、乗ろうねって。






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