道明寺司×牧野つくし
目をつぶると、潮騒の音が聞こえる。 熱があるせいか、海に浮かんで・・・波にたゆたってるみたい・・・。 額にひんやりとした感触を覚えて、あたしは目が覚めた。 「・・・・大丈夫か。・・・・なんか欲しいもんとかあったら言えよ。」 うっすらと目を開いたあたしの額に置かれた、冷たいタオル。 絞り方が甘かったのか、雫が耳の後ろに流れてくる。 「・・・これ、あんたが持ってきてくれたの・・・?」 道明寺は、俺以外の、誰がいるんだよ、と顔を赤らめる。 道明寺は窓の側に立って、風を入れる。 ふわっと風をはらむ、白いカーテン。 あたしはタオルを脇にあったテーブルに置くと、道明寺の近くへと歩いていった。 気配に気づいて振り向いた道明寺が、驚いたような顔で言う。 「・・・・寝てなくて、大丈夫かよ?・・・窓開けると、寒いか?」 あたしはううん、風が気持ちいい、と隣に並んで道明寺の横顔を眺める。 「あのね・・・・思い出が、欲しいの。」 一生懸命言葉を選ぶあたしに、ああ?と道明寺が答える。 「あのなー、だから写真は俺は嫌いだっつってっだろ?」 NYに旅立つ前の二人きりで過ごせる最後の夜かもしれないのに、道明寺が眉間にしわを寄せる。 んもう、ほんっとにニブいんだからっ。 あたしは、背伸びをして、道明寺の胸の中に顔を埋める。 「・・・・そうじゃなくてっ・・・やっぱり・・・あんたと最後に・・・・。」 見上げた道明寺の顔が、ふっと真顔になる。 道明寺は、片手で窓を閉めると、あたしを抱き上げてそっとベッドへと下ろす。 「・・・・・・つらかったら、言えよ。・・・・ホント、あせってねえから。」 あたしの前髪を上げて、道明寺が額にそっとキスを落とす。 まぶたの上、頬、反対の頬、耳たぶ、首筋・・・・。 ぺろっと舐められて、あたしは思わずひゃっ、と声を出してしまう。 甘く唇で挟むように降りていく、道明寺のキス。 彼の大きな手が、あたしの背中に回りこむ。 すうっと指が立てられて、腰の辺りで止まる。 包むように、あたしを抱きしめる道明寺の香りを、胸いっぱいに吸い込む。 あたしは目をつぶって、彼にしがみつく。 この先、何があっても・・・・たとえどんなことがあっても、今日を後悔しない。 あたしは、道明寺が好き。 こんなに誰かを・・・・自分より大切だって、思ったこと、ない。 神様が・・あたしか道明寺かどちらかだけを幸せにしてくれると言ったら・・・あたし、彼を幸せにして、って言う。 「・・・・・・道明寺・・・好き・・・。」 道明寺の顔が、切なそうにあたしを見つめる。 「・・んで、泣くんだよ・・・。」 そっと指で拭ってくれてるのに、どうしてもあふれてくる、涙。 「ごめん、なんでか分からないけど、涙がでちゃ・・・・。」 道明寺が、深く、あたしの唇を求める。 「・・・思い出とか・・縁起でもねーこと、ゆうな。んな、永遠の別れみてーな泣き方されたら、いけねーだろ・・・。 あのな・・・俺はお前に心底惚れてんだからよ・・・・。 お前が、どうしても会いたくなったら電話しろ。・・・すぐ、自家用ジェットで飛んできてやっからよ。」 ガウンの胸元から、彼の手が忍び込む。 「んっ・・・。」 あたしは思わずぎゅっと目をつぶる。 彼の温かい唇が、鎖骨から、胸の頂へとゆっくりと動いていく。 恥ずかしくて、目が開けられない。 でも、目を閉じてると、触れられているところに、神経が集中しちゃうっ・・・・! 自分さえ、あまり触れたことの無い先端を、彼の唇が捕らえる。 「あっ・・・。」 恐る恐る目を開くと、片方の乳首が彼の口の中に、もう片方は彼の指に挟まれている。 「・・んん・・っ!」 道明寺を、こんな角度から見るのって、初めて・・・。 あたしは彼のなめらかな背中を見ながら、急に恥ずかしくなる。 運動してるトコなんか見たことないのに・・・すっごく整った体型。 あたしは以前、トリガラみたいだと言われた自分の身体を見下ろす。 「ね、ねえ・・・。恥ずかしいから、あんま見ないで・・・。自信、ないし・・・」 脇にくるまっていたベッドカバーをひきよせようとするあたしの手を道明寺が止める。 「・・・この俺様が世界で抱きてえのはお前だけなんだからよ・・・。アホなこと、気にすんな。」 ふっと優しく微笑む道明寺の瞳に、吸い込まれそうになる。 ・・・・・道明寺って、こんな顔だっけ・・・・・。 あたしは、彼の優しい愛撫に身をゆだねながら、出会った頃の彼を思い出す。 いつも何かにいらついているような、不機嫌な、顔。 こんなヤツとだけは関わらないようにしなくっちゃって、思ってたっけ。 その道明寺と・・・・・。 「・・・!!あっ・・・!」 彼の手が、あたしのショーツの上へとたどり着く。 薄い布を通して、ゆっくりと、やさしく撫でられるたびに、感じたことの無い感覚が、腰から背中へと這い上ってきた。 「・・・んん・・・あ・・・・。」 彼の指が、鍵盤をすべるように、順番にあたしの中心に触れる。 彼は身体を起こすと、自分の着ていたガウンを脱ぎ捨てて、あたしのショーツもすばやく剥ぎ取る。 両手であたしの膝を開いて、自分の身体を挟んだ彼の下半身が、目に入る。 初めて見る、大人の男性の、モノ。 あたしは思わず、目を反らす。 こ、こんなに大きいモノなんだ・・・・えっと・・あれが、あたしの中に、入る・・んだよね? 恐る恐る目を戻して、改めてその大きさに驚く。 ・・・・ぜ、絶対無理な気がしてきた。 だ、だって、あたしタンポンすらしたこと、ないし。 あたしが余程怯えた顔をしていたのか、道明寺がくくっと笑う。 「・・・そっか、お前見るの初めてか。・・・怖いんか?」 あたしは無理にフツウの顔を作る。 「こ、怖くなんかないもん。す、進が赤ん坊の頃はよく見てたしっ。」 「・・・触ってみろ、怖くないから。」 あたしは、ええっ、触るのお?・・・と思いながらも、そっと手を伸ばす。 ・・・当たり前だけど、温かい。 ここも、道明寺の一部なんだ。 そう思うと、初めて見るそれが、なんだか愛しく思えてきた。 「・・・・今日、最後までできなくてもいいから。でも、ちょっとだけでもいーから、一つになりてえけど。」 あたしは、こくりと頷いて、起こしていた身体を、横たえる。 彼が覆いかぶさってきた背中に、そっと手を回す。 唇を重ねて、お互いの舌を求め合う。 ディープキスって・・・不思議・・・・。 口なんて、食べるだけの場所だと思ってたのに・・・こんなにつながれるトコだったんだ・・・。 茂みをかきわけるように、彼の手があたしを探る。 彼の指に、あらわになった場所を触られて、あたしは思わず身体を縮める。 「・・・・・リラックス、しろよ。・・・・・・・・って、俺もむっちゃ緊張してっけど。」 彼の言葉に、あたしは驚いて目を上げる。 いつもはどう見ても高校生には見えない道明寺が、いつもよりほんの少し、幼く見える。 ・・・・・そっか、道明寺も初めてなんだ。余裕ないのは、あたしだけじゃ、ないんだ。 そう思った途端、なんだか少しほっとする。 彼の指が、あたしの泉を、ゆっくりと行き来する。 「・・・んん・・・。」 むずがゆいような、気持ちいいような・・・・。 なんとも言えない甘い感覚に、あたしは思わず膝を閉める。 「・・・イヤか。」 顔を上げて聞く道明寺に、イヤじゃないんだけど・・・なんか・・触って欲しいような・・触って欲しくないような、変なカンジなの ・・と答える。 それを聞いた道明寺は、ぐっと無理矢理膝を開くと、さっきより強く刺激を与え始める。 「・・・あっ・・あ・・んっ、や、ちょっと待っ・・・。」 彼の中指と人差し指に芽を揺らされて、あたしは思わず身体をくねらせる。 「・・・そんなとこ触っちゃ・・・だめっ、あっ・・。」 彼の指が動くたびに、にちゃにちゃと湿った音が聞こえる。 これが・・・濡れてる、ってことなの・・・? 自分の中から、なにかぬるりとしたものがあふれ出すのが分かった。 道明寺もあたしの変化に気づいたらしく、執拗に芽を攻め始める。 「ん、ん、あっ・・やっ・・・あ、あ、あん・・っ。」 「・・・指、入れるぞ・・・。」 彼の言葉にあたしが目を開くのと、あたしの中を何かが貫くのが同時だった。 「・・・・ああっ・・・!」 痛み・・・といっていいものが、あたしの中を走る。 歪めた顔を、道明寺が心配そうに覗き込む。 「・・・痛いか?」 あたしはふるふると首を振る。 「・・ううん・・やめないで・・・。」 あたしの言葉に軽く頷くと、道明寺はゆっくりと指を動かし始めた。 「・・・っくっ・・・」 彼の指が動くたびに、思わず息が止まる。 二度、三度・・・何度も抽送を繰り返すうちに、芽を責められていた時とは違う感覚が走り始める。 ・・・・・気持ち・・いい・・・・。 あたしは、目をつぶって、道明寺の指の動きに身体を任せる。 「あ、あ、あ、・・ん・・・。」 恥ずかしくて声を殺していたけど、思わず漏れちゃう・・・・。 「・・・いいか、入れても・・。」 彼の言葉に、こくりと頷く。 以前、椿さんが飛び込んできてくれた時は・・・正直、邪魔が入ったことが、嬉しかった。 大好きだけど・・・・・怖かった。 彼とつながることで、自分が・・・変わるような、気がして。 引き返せないところへと、行ってしまうような、気がして。 今のあたしは、違う。 多分、道明寺は・・・本当はあたしに、NYに来いと言いたかったはず。 でも、分かってくれた。 何も言わなくても・・・あたしが、あたしでいるために、ここに残りたいと思ったことを、理解してくれた。 今のあたしは、なんの迷いもなく、彼と一つになりたい。 彼とつながることで変わるのなら、変わってもいい。 ・・・・・だって・・・・。 あてがわれた彼のモノが、ゆっくりとあたしを押し開く。 「・・あっ・・!ん・・いたっ・・・!」 痛い、という言葉だけは言わないでおこうと思ってたのに、思わず出てしまった。 彼の動きが、急に止まる。 「わり・・やっぱ、痛いか。・・・・俺も・・なんか、ひっかかるみてえで進めねえ。」 何度か身体の角度を変えて、挿れようとしても、まるで閉じられた扉のように、あたしは道明寺を受け入れられない。 「・・・・・こうやって、抱き合ってるだけでいいからよ・・・。またにしようぜ。」 身体を引こうとする彼に、あたしは待ってと声をかける。 「・・・・お願い、やめちゃ、やだっ・・・。あせってるわけじゃないけど・・・・お願い、最後までして・・?」 彼は、んな泣きそうな顔すんな、と言いながらあたしの額にちゅっとキスしてくれる。 「・・・じゃ、も一回してみっけど・・・。あー、こんなコトなら、練習しときゃよかったかな。」 冗談ぽく言う道明寺に、あたしはそんなのやだ、と言う。 「・・・・・道明寺が・・中学ん時他の子とキスしただけでもイヤだったのにっ・・・。 もしそんな事してたら、あたし・・・・。」 道明寺があたしの髪をくしゃっと撫でながら、バーカ、好きでもねえ女と誰がすっかよ、と笑う。 ・・・・あたしは、幸せだ。 彼の分身を少しずつ身体へと受け入れながら、あたしは、思う。 こんなに好きな相手に・・・・こんなに想ってもらえて・・・こんなに大切に、してもらえるなんて。 「ん・・・・んーっ・・・。」 砕かれるような痛みを、息を止めて耐える。 「・・・・なんとか、入った・・みてえ。」 つながったまま、道明寺の唇を求める。 触れ合う舌を絡めながら、お互いの身体をしっかりと抱きしめる。 じんわりと、熱いけれど、痛みはもう、感じない。 「・・・牧野・・・。 四年離れてれば、いろんなことがあるかもしれねえ。・・・・・けど、俺の気持ちだけは疑うな。 俺が今まで惚れた女はお前だけだし、この先もお前を泣かせるようなこと、ぜってーしねえから。」 真剣な彼の瞳に見つめられて、あたしはかすかに頷く。 「・・・・・・大丈夫、疑ったりしないよ・・・?あんたも、信じて。 あたしたち・・・絶対いつか、あたしたちらしく、側にいられるようになるって。・・・・あたし、頑張るから。」 答えの代わりに、彼が抱きしめる腕を、強める。 自然に、彼の身体が動き出す。 動くたびに、しびれるような痛みが走る。 ・・・でも、イヤじゃない。 手のひらの下の彼の背中が、汗ばむ。 何かに耐えるような、彼の表情が、・・・・・・・愛しい。 「あ、あ、あ、あっ!」 痛みの中に、少しだけ、違う光が見える。 「牧野・・・牧野っ・・・」 あたしの名前を呼びながら、彼が動きを早める。 彼の背中に、あたしはしっかりとしがみつく。 道明寺、道明寺・・・・・! ひときわ激しい律動のあと、彼が動きを止める。 あたしの頬を、両手で挟んだ彼が、あたしの唇を求める。 荒い息、立ち上る、コロンに混じった汗の香り・・・。 「・・・・すっげ、嬉しい・・・・。ずっと、こうしててーな・・・。」 彼が、息を整えながら、つぶやく。 うん・・・・。 このまま、ずっと・・・何もかも忘れてこうしてられればいいのに・・・。 あたしたちは、そのまま、ただただ、抱き合ったまま夜明けを迎えた・・・・・。 目が覚めると、道明寺はもう、居なかった。 見下ろすと、胸元に小さな赤い跡が残ってる。 ・・・ずっと・・・四年間、消えなければいいのに。 そう思いかけて、あたしは頭を振る。 ・・・・・・・ううん。こんなの消えても、関係ない。 あたしたちには、約束があるもの。 あいつを、疑わないこと。 あたしたちの絆を、信じること。 あたしは、用意された制服に手を通すと、一人で桟橋に立つ。 悲しくないと言ったら、嘘になる。 ・・・・・でも、大丈夫。 あたしは晴れ渡った空と、眼前に広がる海を見渡す。 あたしの足は、未来に向かってる。 二人で歩くために、今はあたしが出来ることをここで頑張る・・・・それだけ。 ・・・・さあ、行こう。 あたしはくるりときびすを返すと、風の吹く方へと向かって、一人で歩きはじめた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |