きみのそばで会おう
道明寺司×牧野つくし


「嫌・・だ・・・やめ・・どうみょ・・ どう・・し・・て・・ やめ・・・
いやっ・・・いやぁぁぁぁっ・・・」

毎晩のように、牧野は同じ夢でうなされている。

「大丈夫だよ・・・牧野。俺がいる・・大丈夫・・・牧野・・・」

そっと抱きしめ、優しく頭を撫でる。ゆっくりと、泣いている子供を
あやすように・・・
どれくらいの時間がたったのだろう・・・
安心したのか牧野は規則正しい寝息を立て始めた。
無理もないな。あれから幾月もたっていないのだから・・・
あの日の事を思い出す。信じがたいあの光景を・・・

事の起こりは、司が刺されて一部の記憶を無くした事から始まる。
俺たちは、何とか記憶を取り戻してもらおうと色んな手を尽くした。
だけど、すっぽりと司から抜け落ちた牧野の記憶はそう簡単に
取り戻せるものではなかったのだ。そして・・・あの事件が起きた。
俺は毎日のように司の家へ見舞いに行った。どうしても、牧野の事を
思い出して欲しくて。俺は牧野が好きだった。牧野を自分のものに
するには絶好のチャンスだったけれど、卑怯な真似はしたくなかったし
そんな事よりも牧野には自分らしくいて欲しかったから。
牧野の願い。それが俺の何よりの望みだったんだ。

退院したと言う知らせを聞いてあたしは、道明寺家へお見舞いに行った。
道明寺はと言えば、セキュリテイの厳しい筈の道明寺家へ、どうして
あたしが入り込めたのか不思議がっていたけれど、あたしを見つめる
瞳は冷たくて、まるで他人を見るようだった。
それでもあたしは少しでも思い出して欲しかった。
楽しかったあの日々を、あたしとの記憶を。

ムカつきが治まらない。俺の欠けた記憶って一体何なんだ?
あきらや総二郎に聞いても言葉を濁すだけで、何も教えちゃ
くれねぇ。俺のイライラはピークに達していた。そんな時に
あいつが目の前に現れた。あのおかっぱ頭。

「てめー何しにきやがった?」

「何って・・・お見舞い。他に何があんのよ。」

「つーかさ、おまえ、ここにどうやって入った? 類の女だか
なんだか知んねぇけどよ、二度と来るな。てめえみたいな女は
大嫌いだ。 うせろ!」

低くくぐもった道明寺の声。でも、あたしはここで引く訳には
いかない。

「嫌だ。あたしは帰らない。それに、何回言ったらわかるの?
花沢類はあたしの彼氏なんかじゃな・・・」

「出てけ。俺は今、最高に機嫌が悪いんだ。それとも、今ここで滅茶苦茶に
されたいか?」

そう言った道明寺の口元には、冷酷な笑みが湛えられていた。
両腕を掴まれ半ば強引にベッドに押し倒される。

「ちょ、ちょっと待ってよ。道明・・・ んっ、んんっ・・・!」

不意に唇を塞がれたあたしはそれ以上言葉を発する事が出来ない。
今までの道明寺のキスとはまるで違う、何の感情も持たない冷たい唇。
意に反したキスをやめさせようと思い切りその唇を噛む・・・

「・・・っつ・・・」

道明寺が小さく声をあげたけれど、あたしは次の瞬間それが無駄な
抵抗だった事を知った。口の中に広がる甘い、血の味・・・

「・・・おまえ、そんな事して俺が途中で止めるとでも思ったのか?
言っただろ?俺は今最高に機嫌が悪い・・・。逆効果なんだよ!
帰らないつったのはおまえだかんな。覚悟はできてんだろ?」

「あ、あれはそうゆう意味じゃ・・・んんっ・・・ や、やだ
道明寺・・・こんなのは・・・いやっ!」

ありったけの力を込めて道明寺を突き飛ばした。

「てんめぇ・・・やりやがったな。女だと思って手加減してやったのに・・・
この道明寺司様に逆らうとはいい度胸だ。」

いつか見た事があるこの瞳をあたしは知っている。
そう、あれは敵を見る瞳だ。なんの情け容赦もなく獲物を見定める瞳。
射るような視線の先にいるのは、ただの獲物。

――――― 怖い ――――――

「ちょっ・・・止めて! 道明寺っ 話を・・・あたしの話を聞い・・・」
「うるせぇ・・・お前の話なんざ聞く耳もたねぇんだよっ!」

強引に奪われる唇・・・ 

―――――二度とそんな口が利けないようにしてやる。―――――






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