テリトリー
道明寺司×牧野つくし


ふ、とつくしが司のカールした前髪に指を伸ばす。
そのまま髪を人差し指に絡ませ、感触を味わう。
そして司の愛してやまないあの笑顔で笑う。

司の瞳に桜のように微笑むつくしが映る。
うっすらと涙を浮かべるつくしに司は口づけをした。

はじめは少し遠慮がちに、
そして深く目の前のつくしを再確認するかのように、
口内をなめまわし、唾液を吸いつくし、
さらに舌をも我が物にしようと自分のテリトリーに引き込む。

司の熱い情熱に、徐々につくしも翻弄され始める。

愛しい人の舌を愛撫し、体内の液体を共有する。求めて求めて求めて・・・・・
これ以上愛せない・・・
お互いを凌駕すべくきつく抱き合い、長い長いキスを交わす・・・

はっっ・・・!

と、先に唇を離したのは司のほうだった。

そのまま唇を、はぁ、はぁと肩で荒い息をするつくしの耳元に押し付け、
低く、搾り出すような声で欲望を吐き出す。

「・・入れたい・・・・」

つくしの頭はまだぼうっとしていて、
ただただ、はぁっ、はぁっと荒い息を吐くしか出来ない。

「あとで、ゆっくり気持ちよくしてやる、とりあえず入れさせて・・・・」

そうつぶやくと、つくしの膝丈のタイトスカートのボタンを引き契り
ショーツと一緒につくしの体から引き剥がす。
司もジーンズのボタンを一気にはずすと猛る自身を解放させた。

どん!とつくしの身体を壁に押し付けすらっと伸びた白い両足を持ち上げ、
何の予告も無く一気につくしを貫く。

「あぁああ、はっあ・・!!くぅぅ・・んん!!」

司の理性を奪うようなキスに混濁していたつくしは突然下腹部を襲った
激しい快感に、捨てられた仔犬のように鳴き司の首にしがみついた。

「つかさ・・つかさぁ・・・」

それ以外の言葉を知らない仔犬は、
ずん!ずん!と与えられる激しい情欲になすすべもなく、
受け止めるすべもなく、ひたすら名を呼ぶ。

「お、まえ、だけだ・・・なにもいらねぇ、なにも、くぅっ!」
「つくし!!」

つくしの閉じたままの瞳に涙が溢れる。
もう言葉は要らない、お互いの体温が全てを語る。

つくしを侵略してからわずか数分、
司は身勝手な欲望をつくしの中に放った。

はぁっ、はぁっ、と大きく肩で息をし、
つながったままその場でお互いの息が落ち着くのを待った。

すこし冷静さを取り戻した司はつくしの瞳を覗き込んだ。
つくしは焦点の合わない目を必死に司に合わせようとしている。
そんな愛しい女の姿に、半ば強姦のように襲ってしまったことに心が痛んだ。

「ごめんな、乱暴にするつもりじゃなかった・・・・」
そういってつくしの身体をぎゅぅっと抱きしめる。

まだ声の出ないつくしは必死に首を横に振り、
彼女もまた力の入らない細い腕を司の背中に回し最愛の男を抱きしめる。

ずるっと司がつくしから離れる音がして、
司は横抱きにつくしを抱いて、二人の寝室に運ぶ。
そしてそっと壊れ物を扱うかのようにやわらかいベッドにつくしを沈ませた。

自分を見上げるつくしの頬をなで、身に着けていた衣服を全て脱がす。
自身も素肌に着ていた黒いタートルネックを脱ぎ捨てる。

「やさしくする。」

いいながら軽い口付けを繰り返す。
つくしの口角をなぞるように舌を這わせ、
ちらちらともてあそびながらつくしの反応を楽しむ。
先ほどとはうって変わり、
つくしを歓ばすために全ての感覚を総動員する。

寝室の窓から差し込む満月の光につくしの裸体が浮かび上がる。
司はその全てを目に焼き付けようと目を身体に移す。

「や・・・、あんまり、見ないで・・・・」

つくしは言うとシーツで身体を隠そうとする。

「なんでだよ。」

いまさらという感じで聞くと、消え入りそうな声が返ってきた。

「胸とかなくて色気ないし、自信ないから・・・・恥ずかしい」

つくしは、同じように満月に照らされた司の肢体の美しさに
平凡な自分の体が急に恥ずかしくなった。
こんなことならもう少しきれいになる努力をしておくんだった、
と無い胸と無い腰のくびれをのろった。

司は無表情のまま、つくしの体のしたにある真っ白なシーツごとぐいっと
つくしを抱きかかえ、マンハッタンの夜景が映る寝室の出窓に座らせた。

両手を体のわきに置き、ちょこんと座り、自分を見上げるつくし。
その姿をいとおしそうに眺める。

「白いうなじ」

そう言いながら、つぅっと長い指を這わせる。

「折れそうな鎖骨」

座るつくしの正面に立つと、さっきの余韻が冷め切らずに上気し、
桜色に火照ったつくしの身体を見つめ、
長く骨ばった男性らしい指先でその肌に触れた。

つくしは身体を首からなぞっていく司の指使いに全神経が逆立った。

指は鎖骨をなぞり、小ぶりだが、形良く膨らむ乳房へと降りていく。

「きれいな乳房と感じやすい・・ここ・・」

そういって中指と人差し指で薄紅色の突起を挟み、親指でなぶる。

つくしの眉間にしわがより、感じているのを満足げに確認すると、
指を腰に移動させる。

「やわらかい腰」

「すらりと伸びた足」

司の指はつくしの身体を解説しながらつま先へと進んでいく。

「細い足首」

大きな手のひらでつくしの右の足の裏を包み軽く持ち上げた。
まるでお姫様を守る騎士の様にその足元にひざまづき、
小さな足の甲に口付ける。

司はキスをしたままつくしに視線を向けた。
漆黒の切れの良い瞳にわずかに狂気をたたえた光をつくしは感じる。
その瞳の奥に宿る光は獣に似た野生といけにえを蹂躙する、
射るような鋭さを含んでいた。

つくしはその眼孔に魅入られ、捕らえられ、動けない。

ふとその視線が持ち上げられた右足と左足の間に移る。

「や!どうみょ・・・!!」

つくしがその場所を覆い隠そうと手を伸ばすより先に、
獣の爪はまさに蹂躙すべくその全てを捕らえた。

しっとりと濡れる入り口を執拗に愛撫し、花芯に刺激を送る。
司はと中指を出し入れしながら、立ち上がり、
つくしの耳の後ろに唇を押し付けながらささやいた。

「きれいだ・・・・」

「狂おしいほどに・・・・」

やさしいささやきとは裏腹に、司は右手の愛撫をやめようとはせず、
つくしの中をこすり、はじき、出し入れする速度を速める。

司の指に翻弄され、まさに蹂躙された小動物のようにあえぐつくしを
みていると先ほどのせりふを思い出し、いらだってくる。

―色気ないし・・・−

目の前のつくしは司の雄を刺激するには十分すぎるほど熟し、
匂い立っている。
どんな服で隠そうとも、隠しきれない。
たとえ公衆の面前であっても、許されるのならいつでも、
いきり立つ雄の欲望で征服したくなる。
また、そんな雄の本能をつくしに向けているのは自分だけではないことを
司は十分承知していた。

それなのに、いまだに高校生のときのまま、色気がないなどと、
自分の雌の色香に気づかず鈍感にその魅力を振りまくつくしに
腹が立ってきた。

「おまえの自分に対する認識の甘さに、腹がたつぜ。いいかげん気付け」

指を2本に増やし、さらにつくしの中を荒く、激しく攻め立てる。

「瞳、声、しぐさ、白い肌、おまえを狙う男がいないとおもうなよ」

苛立ちを隠せず言葉に力がこもる。

「ただでさえ、男を挑発するような隙があるんだ、
少しでも今してるような顔してみろ、他の野郎に、犯されるぞ!」

嫉妬の権化と化した司をすこしあきれるようにつくしは途切れ途切れに
反論する。

「ばか、じゃ、ない!はっ、ぁああ、ん、はぁ、」
「そん、な、わけ、ない!!」

その言葉にかっとなり、−やさしくする―といったことも忘れ、
指での侵略を加速させ、動きを強くする。

左手はつくしの揺れる乳房を愛撫し、きゅぅっと突起をねじりあげる。

「つかさ、やぁ・・・、まって!」

先ほどの余韻も手伝い、もう、すぐにでも達してしまいそうになり、
つくしは懇願する。

「お、ねがい、ぁあん、ゆ、び、じゃ・・・いや・・・」

―指でもてあそばれてイッてしまうなんて、はずかしい・・・・・・・・・
 でも、もう耐えられない・・・・・はや・・く・・・―

額に真珠のような汗を光らせながら、
漆黒の大きな瞳に透明で小粒の涙を浮かばせ、
ピンク色に濡れた唇からもらすあえぎ声とゆびでなく
司自身を欲しがる態度。

更に自分をイキリ立たせるような発言をするつくしを司は
苛めてやりたくてしかたなくなった。

「気持ちいいっていえよ」

普段なら絶対言わないいやらしい台詞をどうしても言わせたくなる。

つくしがふるふると横に首をふり、それを拒否すると、
すでに高く硬直した自身をつくしの太ももに当てて誘惑する。

「言ったら入れてやってもいいんだぜ」

そんな意地の悪い司の言葉に最後の理性を振り絞り、もう一度抵抗する。

ホントは良くって、良くって、おかしくなりそうで、理性なんかもう手放して
しまいたいのに、言えない・・・・

「じゃあ、だめだ」

そっけなく言い放つと、手首と手のひらを使い、
挿入した指を激しく出し入れする。
まるで司自身を打ち付けているかのように強く、つよく、強く。

司の手のひらとつくしの間から隠媚な水音が響き出し、
出し入れの激しさから打ち付ける音が寝室に鳴り渡る。

今まさに指でイカされそうになり、つくしは最後の恥じらいを捨てるべく
司の左腕にしがみつき・・・・
・・・司のいいなりになった。

「はっ、あぁあ、だめ、だめぇ」

「お願い、まっ、て、ああああぁ、はっ、あ!」

「いう、から、あ!お願い」


「いぃ・・ん、いい、きも、ち、いいぃ、」

「もっと大きな声で言えよ」

つくしはもう、完全に、司のいいなり。

「いいよぉぉ、はっ、はぅん、すごいぃ!いいの!きもちいいぃ!!ぁああああ!!」

瞳をぎゅっと瞑り、号泣してるかのようにー気持ちいいーと繰り返し鳴く。

完全に征服した歓びから司はつい自身をあてがうのも忘れ、
つくしに挿入した2本の指を更に激しく振り、親指でいたいけな蕾をしごき
いじめていた手の平でおもいきり蜜つぼをもみしだいた。

「つかさ、つかさ?や、やぁあああぁあん!!!」

両手のありったけの力で司の腕にしがみつき、一声鳴くとビクビクビクッと
つくしは細い身体をそりあがらせ、司の望む最後を迎えた・・・・。

脱力し、出窓からずり落ちそうになるつくしを支え、
窓わきにあるベッドに2人で倒れこむ。


「うえ〜ん、えっ、えっ、えっ、いったのにぃ、言ったのにぃ!!。」

つくしは大きな瞳から大粒の涙をぽろぽろと落とし、手の甲で涙をふきふき、
自分に覆いかぶさる司をにらみつけた。

「お前が悪いんだろ。」

「お前の声や、顔や、全てが悪い!だいたいタイミングが悪いんだ。
さっさと言うこと聞いてりゃ俺だって入れられたのに」

「な、なによ!変なこと言わそうとするあんたが悪いんでしょ!」

「まあ、いいだろ?まだまだ何度でもイカせてやるよ、
めちゃくちゃ気持ち良いらしいし」

「ば、ばかー!」

うまく反応しない身体を起こし、司をなぐってやろうと右手を振り上げると、
司の体がどさっとつくしに覆いかぶさり、
せっかく起こした身体がもう一度ベッドに沈む。

「俺に嫉妬させんな、
むかつくんだよ、お前をいやらしい目つきでみる野郎が」
「だから、そんな人いないって・・・」

「頭山物産の重岡、トライの飯田、モンティライズのライス、
ERFのミリオン・・
もっと続けるか?」

「だれそれ?」

訳わかんないとつくしが口をへの字に曲げていう。

「メープルのパーティでお前を見てた野郎ども」

「はぁ?」

「そんなのたまたま視界に入っただけでしょ?」

「違うね、お前の姿した俺を誘ってきやがった。
まだいるぜ、全部いってやろうか?」

「ちっ、思い出したくもねぇ、
だいたいお前が俺のもんだって事がわかってない奴らが多すぎるんだよ、
だから・・・・」

―社交辞令でしょー
という一言を飲み込み、それでもつくしが悪いだのなんだのとぶつぶつと
文句を言い続ける、自分に執着するこの男にあきれながらも、
愛しさがこみ上げてきた。
美しい獣のような男に嫉妬され、愛される満足感に酔いしれる。

つくしは両手で膨れている司の顔をなで、
自分のもとに引き寄せキスをせがんだ。

「道明寺、好き」

怒りの矛先を奪われ、それでもまだ言い足りなさそうな司は、

「好き?」
「愛してる、だろ?」

そういいながら、つくしの舌を絡めとり、唇でやさしく愛撫する。

「幽閉されないだけありがたいと思うんだな、お姫様」

と不適な笑みをつくしに向けた。

どちらが捕らえ、どちらが捕らえられたのか、確かめる術もなく、
お互いを貪り、更なる快楽を求め、夜に自分達を委ねる。

そして苦しいほどに喘ぐつくしの嬌声が幾度となく寝室に鳴り響くことになる。






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