道明寺司×牧野つくし
![]() ―渡米2年後― ・・・はっきりいって、自分はお嬢様なんて柄じゃないと つくづく思う。・・・ 現在つくしは英徳学園大学で奨学金をもらっての 勤勉な大学生活を送っていた。 あきらの提案からあきら直伝の社交ダンスレッスン。 総二郎直々の指導により表千家茶道の手習い。 類指揮の下着々と上達しつつあるヴァイオリン。 タマの厳しい社交界常識指導。椿によるマナーレッスン。 これだけのことを司が帰ってくるまでに道明寺家の住み込みのバイトと 両立しながらこなしてきた。 司がいないだけトラブルの少ない穏やかな充実した日々ではあったけど、 それでも人から陰口をたたかれないよう、 つくし自身のため、何よりも 大好きな司に恥を欠かせないため頑張ってきたのに・・・・・ =道明寺財閥の跡取り息子、杞憂コンツェルン令嬢を殴打!= つくしは目の前が暗くなった。 真っ暗だった。 後継者としてのみならず、司自身も成長しているかと思っていたつくしは まさか、こんなことで司が週刊誌ネタにされるとは思っていなかった。 ・・・それともそんなことはもうどうでも良くなって、 自分との約束も反古にするつもりなのだろうか?・・・・ 同じパーティに出席していた滋よると つくしのことをこの令嬢が侮辱したからとの事だが、 いくらなんでも二十歳になろうする財閥を背負って立とうという男の することじゃない。 「NYに行ってくる。」 そう類に言い残して牧野つくしは大学の休みを待たず司に会いに、 会って一発がつんと言ってやるために単身NYへ旅立ったのだった。 お金は相変わらず無かった。 ぎりぎりの予算でNYへの往復格安航空券を購入すると、 類の好意から借りたNYのアパートのカギを握り締め、 苦い思い出のあるNY、ニューアーク空港へ降り立った。 節約のため、地下鉄で移動して、懐かしいNYの道明寺邸へやってきた。 「なつかしいなぁ。あの時は寒かったな・・・・・」 肌寒いNYの風を受けながら、以前この屋敷を訪れたときのことが思い返される。 そのときよりつくしは寒くないと思う。それは今が幸せだということなのだろう・ 正面玄関にはSPがいるので、入ることが出来ないし、 この状況を説明するのももどかしい。 この2年間つくしの高等学校卒業式に スケジュールを無理して帰国したときに会ったきり、 テレビ電話の画像でしか会えない司。 ・・・会ったらどんな顔するかな?・・・ 司に言いたいことはたくさんあったが、これだけは伝えたかった。 ・・・私は何を言われても平気だから、 あんたのするべきことを優先して!・・・と。 ・・・・今も私の気持ちは変わらない。愛している・・・・ということも。 後半部分は直接言えるかわからないけど・・・ タマの情報によると今日は夜自宅へ戻る予定らしい。 変更はあるだろうし、時間もわからなかったが、 怪訝な顔をするSPを尻目に正面玄関で司が帰ってくるのを待った。 「牧野?!」 夕暮れが闇に変わろうとする頃、 黒塗りのリムジンが正面玄関から邸内に入ろうとしていた。 不覚にも玄関先で待ちつかれてうとうとしていたつくしの耳に 懐かしい声が聞こえてきた。 「おい!とめろ!」 「牧野?!牧野か?なにしてんだお前こんなところで!」 声の主は驚きと寒空の下玄関先で半分寝そうになっているつくしの体を 心配して着ていたスーツのジャケットを脱ぎながら近づいてきた。 「道明寺・・・おかえり。」 久しぶりに会えた喜びから自分の顔が微笑んでいるのがわかる。 「おかえりじゃねーよ。おま、凍え死にする気かよ。とにかく車乗れ!」 寒さと眠気でふらふらしながら道明寺に支えられ、車に乗り込む。 そこでつくしの意識はフェードアウトした。 「ここ、どこ?・・・・」 寒さと眠気と長旅の疲れからうっかり玄関先で眠りそうになっていたつくしは、 司に会ったとたん安堵から得意の安眠に入っていた。 「お、起きたか。お前ホントに良く寝るな。」 つくしの寝ているベッドのサイドチェアに腰掛け、 ワイングラスをもてあそんでいた司が、つくしに笑顔を向ける。 「道明寺・・・・・」 つくしは怒っていたし、言ってやりたいこともたくさんあったが、 本人を目の前にして、出てきたのは涙であった。 司はそんなつくしをそっと抱きしめ、 「会いたかった・・・」 とささやいた。 「あたしも・・・会いたかった」 つくしは流れる涙をそのままに、司に抱きついた。 ・・・会いたかった・・・・ お互いの存在を確認し、つくしの涙が止まると、司が口を切った。 「それにしても、お前突然どうしたんだよ。 来るなら来るで連絡のひとつもしてから来いよ。」 「会えなかったら今頃俺んちの玄関で凍死だぞ。」 今は1月下旬。 司はつくしが自分の誕生日に突然現れて驚かそうとしたのではないかと思い、 にやにやしながらきいてきた。 そこで、つくしは本来自分がNYに来た理由を思い出した。 「まあ、俺のバースデ・・・・」 ボコ! 突然、まさかの鉄拳をくらいあごを押さえてその場にしゃがみこむ司。 「てっめぇなにしやがんだよ!!」 司的にはこれからラブラブな展開になると予想していたのに、 つくしの突然の暴挙に眉間に青筋を立てて悪態をつく。 「それはこっちの台詞よ!あんたこれなによ!」 そういってつくしはベッド脇においてあった自分の荷物から 例の週刊誌を引っ張り出し、司の顔面に突き出した。 「うっ・・・・」 さっきの怒号から反転、口ごもってつくしからあとずさる。 「あたしはこれを見て、全部投げ出して飛んできたのよ!」 「あんた何やっての?公衆の面前で女の人殴ろうとするなんて ・・・・こんな取り上げかたされてる場合じゃないんじゃないの?」 「この女がろくでもねえ事言いやがるから頭にきたんだよ!」 さっきとは打って変わったつくしの剣幕に少し圧倒されながらも、 司は反論した。 「滋さんに聞いたよ。あたしのこと庇ってくれたんだよね。 あたしのこと言われたから代わりに怒ってくれたんだよね。 気持ちは嬉しいよ。でもそこで手をだしてたんじゃ、 英徳で王様でいたときと変わんないジャン。」 「あたしは何を言われても平気だから」 ・・・・道明寺がいてくれれば・・・・ 「跡取りとしての立場を優先して」 ・・・・そしてあたしを迎えにきて・・・ 愛しているのといおうとしたが、 やはり恥ずかしさから口ごもってしまった。 真っ赤になりながらごにょごにょ言うつくしに 「わかってる」 司が言った。 「わかってんだよ。そんくらい。俺だって、勉強だってマジにやってんし、 仕事にしたって我侭やってた頃とはぜんぜん違う。 責任や背負うものの大きさも認識してるつもりだ。」 つくしから少し目をそむけ、照れくさそうに続ける。 「でもまだ俺もガキなんだよ。 お前のことになると抑えがきかなくなっちまう。 頭ではわかっていても、つい・・な。」 「悪かったよ、心配させて。」 司の素直な反省の言葉に、つくしも反論できない。 「でもよ、お前は俺の偽婚約話がでたり、 色々週刊誌に書かれてても平静なんかよ?」 今まで幾度と無く報道された司の婚約話。 若き財閥後継者に対しての悪意のある辛らつな記事。 そんな報道がこの2年間様々なジャンルの週刊誌にとりだたされてきた。 そのたびに司は必ず連絡をくれ、話の原因を詳しく伝えてくれた。 それでも・・・ 「平静じゃないよ。あんたの事わかってない記者や雑誌に腹立つし、 悲しくなるときもある。 けど、あたしは出版社に殴りこみに言ったりしないもん。」 司の気持ちはわかるものの、やっぱり反論してみる。 「へーそうかよ。じゃあお前は俺が自分の恋人を侮辱されても 平気な顔で笑ってろっていうんだな?」 「そうじゃないけど。私のことであんたがこんな風に書かれるのは嫌だし、 あんたのお荷物になってる気がしてきちゃうよ。」 「あたしは何を言われても平気だから・・・」 つくしは自分が司の足かせになりたくないと思う気持ちを伝えたかった。 その反面司の自分への心遣いがとても嬉しかった。 「ふぅ・・・・」 先に喧嘩を終わらせたのは司だった。 「解ったよ。お前の言うとおりにするよ。 でも絶対じゃないぜ。俺はお前に関しちゃ大人になるつもりはねえからな。」 そういうとサイドチェアにすわり直し、ワインを一気に飲み干した。 ・・・いいから大人になれ!・・・・・ 心の中で叫びながらも、つくしもベッドに腰掛けた、とそのとき 突然、バーン!という音ともに、部屋のドアが開き、椿が走りこんできた。 「つくしちゃんが来てるんですって!」 つくしの先生として、 時間が空いては帰国してつくしと過ごしていた椿だが、 1月に入り、弟である司の20歳のバースディパーティの準備のため、 NYへ来ていた。 ひとしきりつくしを抱きしめた後 「司のバースディバーティにくるなら、 言ってくれればこっちで色々手配したのに、 つくしちゃんたらびっくりさせようとしたのね。」 〜愛ねぇ〜と頬を染めて言う椿の言葉につくしは青ざめた。 ・・・・バースディパーティ・・・・ ・・忘れてた・・・・・ 司の誕生日を忘れたわけではないが、 怒りでわれを忘れそれどころではなかった。 ・・・まずい、プレゼントもないや・・・・・ 「ちぇ、お前、忘れてたな・・・、まあ忘れたことは貸しにしといてやる」 「あとでたっぷり返してもらうかんな」 といいながら不敵にニヤっと笑う司に、つくしは言葉が無かった。 その晩は3人で久しぶりにゆったりとした楽しい酒盛りをした。 椿は日頃のつくしの様子を手振り身振りで話し、 どれほどつくしが頑張っているか、 つくしが将来妹になることが嬉しいかを力説した。 つくしも日頃の学習スケジュールからひさしぶりに開放され、 美味しいワインと司に会えた嬉しさからはしゃいだ。 司はというとしばらくアチコチに電話をかけていたと思ったら ふと姿を消し、つくしたちがほろ酔いになった頃に帰ってきた。 その顔はなにか企んでいるかのようにも見えたが、 舞い上がっているつくしに気がつくはずも無かった。 翌朝、二日酔いでお昼過ぎに目覚めたつくしは、 メイドから椿がすでに出かけたことを聞いた。 すっかり長居をしてしまったと、反省し、 今日の夕方の便で帰ることを司に告げるために邸内を探していると、 当の本人がつくしの荷物を持って、玄関先で立っていた。 空港まで送ってくれるつもりかと、 手際の良さに寂しさを覚えながらも、荷物を受け取りに司の傍による。 「お、来たな。腹減ってるだろうけど、ちょっとまってな。 これからうまいもん食わせてやるから。」 そういうとつくしを車に乗るように促した。 ・・・時間が無いから空港で食事するのかな?・・・・・ 司に言われるがままに、ダックスフンドに乗り込んだ。 NYの町並みをゆっくりみるのは初めてだ。 せっかく来たのだから、せめてもう少し長い滞在にして一人で 観光でもすればよかったなぁと怒りが先行して 最短往復の予約でチケットを購入したことを後悔した。 「それにしても、道明寺、私の乗る便なんで知ってるの?」 手際いいなぁと感心してるつくしに 「あ?そんなもんしらねぇよ。」 とにべもなく答える。 「え?だって空港まで送ってくれてるんだよねぇ?」 ・・・違うの?・・・・・・ つくしの顔に不安がよぎる。 「え?じゃ、これどこに向かって走ってんの????」 「俺のアパートメント」 「え?え?なんで?あたし今日日本に帰るんだよ? 飛行機乗り遅れちゃうよ!」 乗るはずの飛行機の時間を考えてあせるつくしに、 「おまえは俺のバースティパーティに出席するために、 ここに滞在するんだよ。」 「パーティ出ずに帰るつもりだったのか?」 つれない奴だなとぶつぶつ言い、それでも、 してやったりとニヤニヤしながら言い放つ。 「そんなん出れるわけ無いじゃん! F3のレッスンだって皆忙しいのに予定組んでもらってるんだよ! 明日美作さんちいかなくちゃいけないし!」 「あきらには電話しといた」 「あさっては花沢類のとこ・・」 「類にもした」 「・・・・・西門さんは・・・?」 「おう、真っ先にしといたぜ」 司は自分の計画通りに進んでいることがよほど嬉しいらしく、 いたずらが成功した子供のような笑みで答えた。 「だ、だ、だって、そうよ!あんたんちのバイト! さぼったりしたらタマ先輩に怒られちゃう!」 「タマはゆっくりしてこいって言ってたぞ」 ・・・・これか!・・・・・ 昨日の夜司が忙しそうにあちこち電話をしていたのはこのためだったのだ。 てっきり仕事関係のことかと思い、つくしは、大変だなぁ、 きちんと仕事してるんだと感心し、尊敬すら覚えた。 そんな自分の気持ちを返してほしかった。 「おまえ、俺といたくねぇの?パーティまで2週間一緒にいようぜ。 こんなチャンス二度とないしな。」 「まあ、俺は仕事があるから土日以外はほとんどいないけど、 姉貴があちこちつれまわすって言ってたから寂しくないだろ?」 確かにこれで日本に帰ってしまえば、また司に会えるのは何ヶ月後、 いや、何年後になるかわからない。 司がNYへ発ってからの2年間、頑張った自分へのご褒美と思えば、 帰りのチケットが無駄になったことなどまあいいかとも思えた。 「でも何であんたのアパートに行くの? あたし花沢類に部屋借りてるから、そこで良いのに。」 「それじゃ俺が泊まれねぇだろ?」 「そっか・・・・っっっっっっって!あんたも泊まるの?!!」 「なんで!!!?あんた自分ちあるじゃん!!」 「なにいってんだよ。あの家じゃ2人きりになれぇだろ? 来週には母親も帰ってくるし。 なんにしてもあそこじゃ姉貴がおまえ独占しようとするからな。」 「えーーーーーーー!やだよ!それじゃ同棲みたいジャン! 第一あんたのお母さんが許すわけないし。」 「親は関係ないだろ。今からいくとこは俺の持ちもんだし。 親の家じゃねぇ。」 「あんたん家ったって、ご両親が買ってくれたんじゃないの?」 税金対策かなんかで司名義になってるだけかと思ったつくしは噛み付いた。 「ちげーよ、この2年の給料で買った。たまに一人でゆっくりするためと、 出来ればお前と過ごせるためにな・・・。」 少し顔を赤らめながら話す司に、つくしもつられて赤くなる。 「そ、そうなんだ。あ、ありがとう・・・・」 思いがけない展開に急に恥ずかしくなり、 2人きりという言葉を思い出し、耳まで真っ赤になる。 そんなつくしを嬉しそうに眺めながら、 司はつっとつくしの手をやさしく握った。 その手は暖かく、NYの肌寒さからつくしの身体を包んで 護ってくれるようだった。 ダックスフンドは、羽が生えたように優しく、 滑るように2人を愛の棲家へ運んでいった。 「ここ買ったの!?」 “俺のアパートメント”についてつくしの第一声はそれだった。 「おう、まあまあだろ。」 ・・・まあまあ・・・・・ そこはミッドタウンイーストにあるコンドミニアムタイプの建物で、 高級そうなドアマンがいて司をSERと呼びながらつくしに笑顔で ドアを開けてくれた。 2ベッドルームのその部屋は43階建ての最上階で、夜になれば、 マンハッタンの夜景が余すところ無く見られるのだろう。 ・・本当はアッパーイーストが良かったんだが、 気に入ったところがなくてな・・・・ とこれ以上の部屋などあるのかと想像もつかないつくしに言った。 ・・・ここなら日本人街も近いし、お前も住みやすいだろ?・・・・ つくしと住む事を当然といわんばかりに嬉々として話す司に、 やっぱり一言、「結婚なんてまだ早いし!」とはつっこめず、 その嬉しそうな恋人の顔をつくしは眺めていた。 早めのディナーをアパートメントの近くのイタリアンレストランで済ますと、 2人はマンハッタンの街を肩を寄せ、腕を、指を絡ませながらゆっくりと歩いた。 少し肌寒い空気も2人を寄り合わせるための小道具にしかならなかった。 話すことは山ほどあったけれど、言葉に出るのは、 他愛ない日常会話だけで、 少しぎこちないそれは無言すらもお互いを想う気持ちに変わった。 部屋に着くとどちらとも無く唇を寄せ合い、 会えなかった時間を取り戻そうと求め合った。 「おまえが欲しい・・・」 熱く、そっとつくしの耳元でささやく司の願いに 「シャワー浴びさせて・・・・・・」 つくしは消え入りそうなほど小さい言葉とともに答えた。 肌を合わせるのは3度目だった。 まだぎこちない行為はお互いを思いやり、受け入れ、 慈しむそれであったが、会えない時間を実感させることでもあった。 司はつくしの甘い吐息と上気する頬をその美しい肢体を独占した喜びを 感じながらも、焦燥感をぬぐえない。 つくしは司の引き締まった体から発する汗とコロンの香りと、 濡れてウェーブの取れかかったその髪に触れることの出来る優越感に 浸りながらも、喉の渇きを癒せない。 ・・・こいつを誰にも渡したくない・・・・・ 司は思う。 ・・・もうこのまま離れていたくない・・・・・ つくしは願う。 会えない時間と距離が2人の心にひとつの祈りをささげさせる。 ・・・・・つくしと・・・・・・・・ ・・・・・司と・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ひとつになりたい・・・・・・・ 遮光カーテンの隙間から差し込む光に、先に目覚めたのはつくしだった。 見慣れない天井に、少し戸惑いながらも、昨夜のことを思い出し、 一人赤くなってシーツを頭からかぶりいやいやと頭を振る。 シーツの中で素肌のままでいることが恥ずかしくなり、 着る物を探そうとして、妙な違和感を感じた。 ・・・・あれ?・・・・・・・ ・・・・なんかへんだな?・・・ まいっかと探し物を続けると、司も目覚めたようだった。 「あーよく寝た」 ふっと隣に寝ていた司に目をやり、つくしは目を疑った。 大きなあくびとともに、上半身あらわにベッドの上で伸びをする人物。 それは紛れも無い自分自身の姿であった。 なにか喋ろうと口を動かすが、出るのは空気ばかりで、 陸に上がった魚さながらパクパクと動くばかりで、声が出ない。 つくしの姿をした人物は手のひらで目をこすりながら軽いあくびとともに こちらを向く。 その表情は、人間とはこんな顔をした生き物だったろうか?と思わせる、 驚きとも笑顔ともとれるそれはそれは不思議な自分の顔であった。 『あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!』 「な、なにこれ!道明寺?え?誰?私?道明寺はどこ?」 「俺だよ俺!俺だってマジでなんだこれ。お前牧野か?」 「うん、あんた道明寺?」 『入れ変わった?』 つくしの目の前で裸のまま胡坐をかき、頭を抱えているつくし。 それはつくし自身の姿であったが、あくまでも器の話で、 その器の中身は道明寺司であり、 また、ベッドの上で、胸元までシーツを手繰り寄せ、半泣きになっている司。 こちらも器は司で、中身はつくしというまさに2人の体と心が入れ替わって しまった<同級生>状態であった。 先に行動に出たのは司であった。 「と、とりあえず鏡の前にいこうぜ」 「う、うん」 「っっって道明寺ちょっとなんか着てよ!」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |