婚約者
道明寺司×牧野つくし


俺は今、女を抱いている。
一年前、ヨーロッパ社交界にデビューして以来、世界中の社交界で話題をさらっている女を。

ここはニューヨーク。
メイプルホテルの最上階、大きな窓に囲まれたスイートルームのベッドの上。
部屋に入り込む月光に浮かび上がるのは、腰まで届く長い髪を振り乱し、シーツの海で溺れる女の姿。

俺の腕の中で恍惚の表情を浮かべながら、しなやかに乱れる肢体に、俺の欲情のたけをぶちまける。

ヨーロッパ以外では、パーティーに出席することも無ければ、メディアへの露出も無かったこの女。
だが、一目会っただけで誰をも魅了する容姿と、若い女にしては、あまりにも卓越したビジネス手腕は、噂が噂を呼び、世界中の社交界での話題をかっさらっていた。

道明寺財閥は、ヨーロッパでの事業は社長であるババァが一手に担っており、ヨーロッパ社交界でのパーティーには、俺はほとんど出た事がなかった。
そのため、女の噂だけは、以前から話に聞いてはいたものの、今俺に揺さぶられているこの女と俺は、パーティーなどで顔を合わせたことは無かった。

数時間前にババァに連れてこられたこの女・・・
アメリカでも1,2を争う屈指の企業、カーネギーの一人娘だ。
俺の婚約者だと、一方的に ババァに告げられた---


牧野との約束の4年を目前に、大きなプロジェクトを成功へ導き、俺は経済界での確固たる地位を得た。
道明寺財閥の重要な一翼を担う者として、もう、俺を卑下する声はねぇ。
牧野と離れてから4年、邪魔な声も、悪意に満ちた圧力もねじ伏せるだけの力を、俺は勝ち取った。
全ては、あの約束のために・・・

折りしも、道明寺財閥の創立100周年という記念の年である今年。
プロジェクトの成功と100周年記念の式典を絡め、道明寺主催での、過去最大とも言える盛大なパーティーが開催されることとなった。

俺は、密かに決めていた。
このパーティーで、牧野との婚約を正式に発表すると・・・
そのために、牧野を迎えに行く。
誰にも文句は言わせねぇ。

あとは、日本へ飛ぶだけだと思っていた矢先の、ババァからの宣告だった。

「司さん、今度のパーティーでは、カーネギー財閥の娘さんをパートナーとしてエスコートしていただきます。また、当日はその方との婚約を発表いたします。
この事は、決定事項であり・・・牧野さんも、すでに了承済みです。」

俺は、ババァが何を言っているのか解らなかった。
牧野が、俺とカーネギーの娘との婚約を了承済みだって!?
そんな事は信じねぇと食って掛かった俺に、ババァは顔色一つ変えず、牧野は了承済みだと繰り返す。
そんなこと、あってたまるか!何故なんだ、牧野・・・・・・・・

今、俺が組み敷いているこの女。
一年前、突然ヨーロッパの社交界に現れ、瞬く間に世界中の社交界の話題の中心に躍り出た女。
カーネギーというビックネームを背負っていることだけでも、十分話題性はあるのだが、パーティーに出席する際の独特のスタイルも、常に話題の的だった。

煌びやかな社交界の女達。
そのほとんどが、カールした髪をアップにし、胸元を露にした、色とりどりのドレスを纏っている。
そんな中で、話に聞いていたその女はいつも、胸元が隠れたドレスを纏っているという。
代わりに、腰まで伸ばした髪をおろし、髪で隠れたドレスの背中は、尻の割れ目ギリギリまで、深く、深く、開いている。

一歩間違えると、露出過剰になる後姿だが、その背中は長い髪に隠れているせいで、微塵のいやらしさも感じさせない。
しかし、優雅な動きの中で時折髪の下から覗く、背中からヒップのラインは、それは官能的で、男どもの視線を一手にこの女に釘付けにしているらしい。

その妖艶な見た目とは対極に、近頃カーネギーの手にしたビッグビジネスのほとんどが、話がまとまる際に、この女の手が掛かっているというのだ。
経済界ではかなり若い・・・1年前に社交界デビューしたばかりの女が、幾つもの世界的なビジネスに関わっている・・・
しかも、誰もが魅了されると言う容姿が備わっているとなれば、社交界のみならず、経済界でも噂にならないはずが無かった。

しかし、今まで、ヨーロッパの、しかも限られたごく一部のパーティー以外では姿を現さなかったその女は、その存在の全てが、秘密のベールに包まれていた。
その謎だらけの女が、道明寺のパーティーで、世界的にお披露目されると言うのだ。
しかも、俺の婚約者として・・・

牧野への連絡もつかず、ほとんど放心状態でパーティーの当日を迎えてしまった俺。

女とはじめて顔を合わせたのは、パーティーが始まる1時間ほど前だった。
俺の控え室であるメイプルのスイートルームに、ババァが入ってきた。

「司さん、本日エスコートしていただく、カーネギーさんよ。
あなたの婚約者です。ご挨拶なさい。」

俺は、女を見ようともせず、仕方なく名を名乗り、不機嫌な態度を露にしていた。
次の瞬間、女が俺に歩み寄り、俺の瞳を捕らえた。

!!!!!!!!!!!!!!

「カーネギーの娘のつくしです。
本日は、パーティーでのエスコートを受けて下さると聞き、嬉しく思っております。
よろしくお願いいたします。」

ババァは、驚きのあまり目をひんむいたまま、身動きのとれなくなった俺を一瞥し、「それでは、今日は頼みましたよ。」と言って、部屋から出て行った。
一瞬、その横顔は、微かに口元を綻ばせているように感じた。

今、俺の目の前には、あの頃と変わらぬ強い意思を湛えた漆黒の瞳に、腰まで伸ばした艶のある黒髪の、俺が求めてやまないこの世にただ一人の女が居る。
3年振りに目の前に立ったその女は、少女を脱ぎ捨て、あまりにも妖艶な色香を纏い、噂以上の存在感でそこに佇んでいた。

微動たりとも動けない俺の耳に、心配そうに様子を窺うような、懐かしい声が響く。

「道明寺・・・」

その声が俺を呼び覚ました。
次の瞬間、俺は、牧野を腕の中に閉じ込め、その唇を貪る様に味わいつくしていた。

牧野・・・牧野・・・熱に浮かされたように、何度も愛しい名前を呼びながら、深く、深く、情熱的に口腔内を侵していく。

牧野の瞳から、大粒の涙が次々溢れる。
その表情に溺れながら口腔内を味わい尽くし、やっと唇を離すと、牧野は息も絶え絶えに、俺の胸に倒れこんだ。

ひとしきり抱き合うと、俺と牧野は、お互いの3年間の事を話しはじめた。
俺の知らない牧野の3年は・・・

俺がニューヨークに訪ねて来た牧野を突き帰した時、流れかけた道明寺とカーネギーとの企業提携を、牧野が救ったことがあったらしい。
何でも、ババァとカーネギーの間に入って、両者を和解させたとか・・・相変わらず、牧野はすげぇ奴だ。

3年前、静の結婚式直後、突然ババァが牧野を尋ね、子供のいないカーネギーが牧野の事をいたく気に入り、養女にと熱望していることを聞かされたと言う。
カーネギーの元で上流社会の教育を受け、語学とビジネスを学び、3年後にババァが牧野を認めた暁には、申し分のない家柄と共に、道明寺に迎え入れること。
それが、カーネギーの希望でもあること。
牧野家の家族会議の結果、両親も弟も、大喜びで後押しをしてくれたことを、牧野は懐かしそうに話した。

その後、フランスに留学し、英語やフランス語、経済学や上流階級のマナーを習得し、それが形になった去年、社交界にデビューしたのだ。
ヨーロッパの社交界で、牧野の陶器のようなきめの細かい肌と、東洋人特有の真っ直ぐな美しい黒髪は羨望の的だったようだ。

カーネギーは、牧野にハリウッドでも活躍するメイクアップアーティストやスタイリストを付け、外見からも、社交界で決して恥をかくことのないよう、牧野を仕立て上げた。
世界屈指の美容チームは、牧野の魅力を存分に引き出し、瞬く間に、牧野をヨーロッパ社交界の華へと押し上げた。

牧野の出席するパーティーは、VIPと呼ばれる連中の中でも、ごく限られた者のみしか出席が許されない程の、敷居の高いものに限られていた。
だからこそ、牧野の情報が安易に外に漏れるような事も無かったのだ。
勿論、牧野の情報が決してメディアに晒される事の無いよう、マスコミも、カーネギーの力によって抑えられていたようだが。

そんな社交界の中にあっても、牧野のマナーは、生まれながらの上流階級の令嬢のそれとは違い、荒削りだ。
でも、それが素直で優しい牧野の本来の魅力と相まって、うわべを取り繕うばかりの上流社会の奴らの中で、独特の魅力を持つ令嬢として評判になった。

そんな牧野のあり方は、ビジネス面でも好影響を及ぼし、カーネギーが牧野を連れて交渉の場に赴くと、牧野の雰囲気に呑まれて、その場が和やかになり、交渉が上手く進んだ。
それに尾ひれがついて、類まれなるビジネスの手腕を持つ、と評される事となったらしい。

俺は、他人との婚約を牧野が了承したと聞いた時、ババァの話を信じる事もできなければ、納得なんて出来るはずもなく、3年ぶりに牧野に連絡をとろうと携帯を手にした。

静の結婚式で牧野と再会し、やっと結ばれた俺たち。
あの日、俺は牧野を胸に抱きながら、牧野を迎えに行けるその時まで、連絡は取らないと宣言したんだ。
実際、このバケモノみたいな財閥の仕事を、4年という限られた時間で掌握するためには、1分、1秒も余裕など無かった。
俺は、あの日牧野を抱いた事で、なお牧野への気持ちを強くし、あいつとの未来を手にするために、自分を律する事を誓った。
牧野という甘い存在から己を断ち切り、ただ、未来のみを見据えて、残りの3年を過ごす事を自分に課したんだ。

くじけそうになる度に、何度、あいつの声が聞きたいと思ったかしれねぇ・・・
そんな思いを幾つも乗り越えて、やっともうすぐ、あいつを迎えに行けると思っていたのに・・・

あいつの口から真実を聞こうと、3年ぶりにボタンを押した牧野の携帯番号は、すでに使われてはいなかった。
牧野の自宅に電話を入れても、やはり電話はつながらない。

こうなったら、あとはここしかないと、やはり3年ぶりに親友へと電話を入れる。
こんな時に絶対に頼りたくはないが、あいつなら、何かを知っているはず。
だが、その期待も、すぐに打ち砕かれた。
牧野が一番頼りにしていたであろう、類までもが、あいつの行方を知らなかった。
あいつは、3年前のある日、突然、みんなの前から、姿を消してしまっていた・・・

3年前牧野は、決意を胸に、カーネギーの指示により単身、フランスに渡っていた。
家族以外、誰にも・・・親友の優紀にさえも行く先を告げず、友人達にはただ、心配せずに居て欲しい、との言葉だけを残して・・・。
牧野の家族も、仕事と生活の保障を与えられ、人知れず引っ越していたため、仲間の誰もが、牧野と連絡をとれずにいた。

F3、滋、桜子は、心配はいらないと言われても尚、それぞれ牧野の行方を捜したが、カーネギーによって牧野と家族の消息が隠されていた為、探し出す事ができずに月日は流れた。
牧野が消えた当初、F3は勿論、俺への連絡を試みたが、ババァの手回しで、俺にも連絡がとれず終い。
俺も、牧野との連絡を絶ったと同時に、仲間とも連絡をとっていなかった為、今日の日まで、ただ時間だけが過ぎていた・・・

何も知らねぇ俺は、俺達の気持ちは決して揺るがないと、それだけを信じて、一日も早く約束を叶えるべく、激務を耐え抜いた。

そして、知らねぇ女との婚約発表という、絶望的だと思っていた今日、全てが報われる時が来た。
お互いを信じて、新しい世界への扉を開け、そこへ飛び込んで種を蒔いた俺達の努力が、今、花を咲かせたんだ・・・大輪の花を。

再会を果たした時から、俺はたまらない気持ちを抱えていた。
3年ぶりに目にした牧野は、本当に、魅力的になった。

美しく艶やかで、凛とした魅力があるのに、儚げで可愛い。
俺のために生を受けた、俺だけの女。
こんな女、二人といない。

俺達は、挨拶を終えると、パーティーの終わりを待たずに、部屋に戻ってきた。
部屋の扉が閉まった瞬間、俺は牧野を強く抱きしめ、唇を貪りつくした。
牧野を失神寸前まで追い込み、脱力した身体をベッドへと運ぶ。

ベッドの上に牧野をうつぶせて、パーティー会場中の男達を魅了した背中を、唇で侵していく。
背筋に舌を添わせると、牧野は小さく喘いだ。

「ぁっ・・・」

羞恥を含んだあまりにも色っぽいその声は、俺の欲情を駆り立てた。
大きく開いた背中から一気にドレスをはぎ、体を仰向けにすると、牧野の白い肌が、以前よりも膨らみを増した胸が、先端の美味そうな蕾が、露になった。

俺の理性という理性は全てぶっ飛び、俺は欲望のまま、牧野の体にむしゃぶりついた。
胸を揉みしだき、先端の可愛い蕾を口に含む。
舌先で転がすと、蕾は固く尖った。
その変化に狂喜し、もう片方の蕾も指で弄びながら、身体のすみずみまで舌を這わせていく。

首筋から、鎖骨をなぞり、胸の谷間を通って、へそを攻める。
ウエストで止まっていたドレスを引き下げると、牧野が身に纏っているのは、ストッキングと小さなショーツのみとなる。
俺は、ストッキングを脱がすことすらもどかしく、力いっぱいその薄い膜を引き裂いた。

露になったショーツの上から、割れ目に添って指を動かす。

「ぃやっ・・・」

小さな抵抗を含んだ牧野の声に煽られて、脇から手を差し込み、直に割れ目に触れる。

「ぁっ・・・あぁ・・・」

恥ずかしがって声を抑えようとする牧野から我慢できずに漏れる喘ぎ声は、俺を益々駆り立てる。
目の前の愛しい女を、メチャメチャにしてしまいたい・・・湧き上がる欲望が抑えられない。

控えめに濡れていた割れ目からトロッと垂れてきた愛液を確認すると、俺の欲望が走り出した。

中指を泉に突き立て、牧野の中をかき回す。

「あぁんんっ」

濃度を増した喘ぎ声にたまらなくなった俺は、ショーツを剥ぎ取り、牧野の脚を思い切り開かせて泉に舌を差し込んだ。
舌先を巧みに使い、花びらを舐め上げ、蕾を攻めたてると、牧野の太ももが痙攣してきた。

俺は蕾を舌で攻めたまま、泉に指を深く沈めて、抽送を繰り返しながら、壁をノックした。

「あっ、だめ、いやぁぁぁ・・・」

強すぎる刺激に、下半身を痙攣させた牧野は、意識を手放した。

しばらくして、牧野の目が開いたのを確認すると、俺はもうとっくに限界を超え、これ以上ない程にそそり立った自分自身で、一気に牧野を貫いた。

「いつっ・・・あぁぁぁ・・・・」

悲鳴とも喘ぎともとれる声を聞きながら、すっかり余裕の無くなった俺は、牧野を思いやる事も出来ず、己の欲望のままに、抽送を繰り返す。

牧野の中は、意思を持っているかのようにざわつき、締め上げ、俺を攻め立てる。
あまりの刺激に、数回出し入れしただけでいってしまいそうになるのを必死で堪える。

「くっ、すっげ・・・牧野、俺、どうにかなりそうだ・・・」

「どぉみょ・・じぃ・・・私も・・・あぁっ」

牧野と一緒に、どこまでも堕ちて行く事を望んだ俺は、えもいわれぬ快楽の渦に巻き込まれていく。
俺は牧野の両脚を肩に乗せ、腰を掴んでもっと深く、もっと奥へと、自身を突き立てていく。

「あぁっ・・・も・・・だめぇっ!!!」

牧野が果てる瞬間、強く締め付けられた俺は、ビクビクッっと脈動を撃ち、牧野の中に一滴も残さず欲望の全てを解き放った。

女達の羨望と男達の欲望の眼差しをまとった社交界の華が、月明かりを浴びてシーツの海で乱れ、溺れている。
牧野にまとわりつく男達の視線を思い出し、果てたばかりの俺が嫉妬をまとって硬くなっていく。

もっともっと、俺だけに溺れさせてやる。
会えなかった3年分の思いを、お前の身体に刻みこんでやる・・・尽きない思いを抱えて、二人の長い夜は続いていった・・・






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