5日間
道明寺司×牧野つくし


「お前ら最近どうなんだよ?」

久しぶりに集まった仲間と夕飯を食べていると、ふいに総二郎が話題を振ってきた。
お前ら、とは俺と牧野のことだろう。
俺は素直に

「ああ?毎晩愛し合ってるぜ?」

と自慢するように答える。
思えばアイツが英徳の大学を卒業して、俺専属の秘書を初めてから毎日な気がする。
そんな状況になったのは姉ちゃんの

「ね、つくしちゃん。忙しい司の秘書をしてると時間なんていくらあっても足りないでしょ?
司と違う家に住んで行ったり来たりする時間を、体を休ませる為に使って欲しいの。
ね?私はつくしちゃんの体が心配なの。で!ウチに住んじゃえばいいと思うんだけど。
そしたら私も会いたい時につくしちゃんに会えるし♪」

なんていう、俺にとっては願ってもない程ありがたい怒涛の畳み掛け攻撃があったからだ。
あまりの勢いにアイツも二の句が次げず、流されるようにうちに一緒に住むようになって3ヶ月。
あの日だから!と頑なに拒否される日以外は毎日牧野をこの腕に抱いてきた。

「はあ!?マジかよ!お前、よく飽きられないなあ」
「ていうか、牧野は大丈夫なのか?お前に付いて回るってかなりのハードスケジュールじゃないか?」
「…牧野かわいそう…」

三人から次々と口にされた否定的な言葉に少しムッとする。
俺の愛情表現に文句は言わせねー!

…と思いつつ、あまりにもみんなが顔をしかめているのを見て少し心配になる。

「…そんなひでー事か?」


めずらしく弱気な俺の言葉に、
「結構、な。」と躊躇なくあきらが答える。

「考えてもみろよ。どんだけ好きな相手だって毎日じゃなあ。体辛いし飽きるぞ?」

肩をすくませて、ふぅと息を吐きながら視線を俺から逸らせた。

普通はそんなものなのか?毎日はおかしいのか?
いや、俺様は普通じゃないから大丈夫なハズだ。
でも、牧野が本当は嫌がってるのだとしたら…??


悶々としてきて頭を抱え込む俺に、総二郎が「あ!」と何か閃いたような少し高めの声をあげる。

「そうだ。司。お前、1週間ぐらいヤるの我慢してみろよ。何もない素振りで、さ。」

ニヤリ、と片方の口の端を吊り上げて笑う顔が何だかすげー憎たらしい。

「1週間!?マジかよ。そんなの無理。ぜってー無理!」

首を振る俺に、なおも

「いいからいいから。試してみな。案外違った牧野を見れるかもよ?」

と続けた。


違う牧野??
あんあん言うだけじゃねーってことか??


それはちょっと興味がある…。


暫く黙り込んでたら、3人の中ではもう決定事項と見なされたらしい。

「じゃ、頑張れよ司。俺、次の予定があるからもう行くわ。いい報告期待してるぜ〜!」

総二郎は背を向けて手をひらひらと振り、類も「そろそろお開きにしよっか」とあきらと共に席を立った。


一週間…心も体も保つか全然自信ねーけど、新たな牧野を見るためにやってみっか!
俺もガタリと音を立て気合いを入れながら立ち上がった。

それから毎日、なにかと理由をつけながら牧野の部屋には行かなかった。

「疲れた」
「眠い」

そんな俺の嘘をマジで取りやがって、牧野は心配そうに眉を寄せ

「ちょっとぉ…大丈夫?もう5日めだよ?やっぱり仕事、もう少し減らそうか?
なんとかなるものもあるだろうし。うん、明日調整してみるね。今日はゆっくり眠って!」

と俺を部屋に押し込んだ。

普段と特に変わった様子もねーけど、ホントに違う牧野なんて見れるのか??
バタンと閉じられたドアにもたれ、頭をガシガシと掻き毟った。

「あーー!!こんなの後2日も続くのかよ!!」

実際、一週間でどうこうなるなんて保障もねーんだけどさ。
とりあえず、コイツをどうにかしなきゃな…
俺は牧野の中に入りたくて主張しまくりの自身の昂ぶりに手をかけた。

ベッドに入っても悶々とした気持ちは押さえられない。

’きっと牧野に触ったら耐えられない。’

そう思って、キスすらこの5日間してない。抱きしめてもいない。
牧野の匂いが恋しくて恋しくてどうにかなりそうで。
こんな自分が情けなくて腹立たしくて、体を起こすと手元にあったクッションを床に投げつけた。

「くそ…こんなこと、やめときゃ良かったぜ…」

そのまま後ろに勢いよく倒れこむ。
明日も早いんだから寝なきゃホントにまいっちまう。
両腕を目の上で交差させ、必死に眠りにつこうとしていたら、ドアから遠慮がちなノックの音が聞こえた。

こんな時間に誰だよ…

イラつき絶好調な俺様の機嫌をさらに悪くさせる気か!?
返事もせずにいると、カチャッとドアが開く音。

「返事もしてねーのに勝手に入ってくんな!!」

怒鳴りながら起き上がってドアの方向を見ると、そこにはパジャマを着た牧野が立っていた。


「ご…ごめん。なんかちょっと…ね」

困った顔をしながら牧野は両手でパジャマの裾を握っている。


もう無理。我慢できねー!!

そう思ってこっちへ呼ぼうと口を開いたら、牧野は自ら歩み寄ってきて俺のベッドに腰掛けた。

「あの、ね。道明寺が疲れてるのわかってるの。でも、ね…ごめんね。
今日のあたしはあたしじゃないから」

俺を見て意味不明なことを言い出す。

「は?」

目をきょとんとさせていると、

「あたしじゃないから…明日になったら忘れて、ね?」

そう言いながら俺をゆっくり押し倒し、そのまま俺の分身にそっと手を這わせた。

「お、おい!?」

キョドってる俺を尻目に、牧野の行動はどんどんエスカレートしていく。
やんわりと触っているだけだった手に少しずつ力が入っていき、
もう片方の手は俺の胸の辺りをゆっくりと往復している。

「まき…」

言いかけた言葉は、覆いかぶさってきた牧野の唇に阻まれる。

「道明寺…」

耳元で名前を呼ばれて、くすぐったさに身を捩る。

「んっ」

俺に構わずするりと下着の中に入ってきた手は、既にガチガチに硬くなっているものを握り
ゆっくりと上下にしごいていく。

その最中にも器用に俺の下半身の衣服と自らのそれの全て取り除くと、牧野は手を止め俺に跨る。
俺の分身に手を添え、ためらうことなく牧野はそこに腰をおろした。

  「あぁ…っ」

二人同時に歓喜の声をあげる。

5日ぶりの牧野の中。
それも、牧野が自分からしてきた行為。

幸せすぎて俺がおかしくなりそうだ。
恥ずかしそうにはしているけれど、牧野は体を前後に揺らしながら顔を上気させ
気持ちよさそうにヨガる。

「道明寺…どう…あっ…はぁ…」

自分の両手で胸を揉みしだき泣き出しそうな表情を浮かべる姿が俺を昂ぶらせる。

「あ、ちょっ、牧野っ!!やべーって!!」


’つけてくれなきゃイヤ’

そう最初に言われたから、ヤる時は必ずゴムはつけていた。
それが牧野を守るためだとも思っていた。
だから…生がこんな気持ちいものなんて今日まで知らなかった。

「出…ちまうっ!」

俺の言葉が聞こえてるのか聞こえてないのか。
牧野はハァハァと息を荒げながら構わず腰を振り続ける。
限界が近い。
慌てて牧野の腰に両手をあてがい引き抜こうとしたけれど一歩遅く…

「あっ!あぁっ!!!」

一瞬早くイった牧野の締め付けに耐え切れず、俺は牧野の中に精を吐き出した。






恥ずかしそうに事後処理を終え、牧野は俺に背を向けてシーツを被る。
一つ大きく呼吸をして、意を決したように声にした言葉に俺は喜びを隠しきれなかった。

「してくれなくて…寂しかったの…」


俺も苦しかったんだぞ。
言いたかったけれど、しなかった理由を言ったらきっと殺される。
そう思って何も言わずに俺は後ろからそっと牧野を抱きしめた。






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