許されるはずのない行為
花沢類×牧野つくし


「久しぶり。」

ある会社のレセプションで懐かしい顔に出会った。
高校、大学と同じだった関係で毎日のように顔を合わせていた時期もあったが、ここ数年は・・・特に私が道明寺と結婚してからは・・・それぞれの仕事が忙しいこともあり、顔を合わせる機会はめっきり減った。
道明寺は時折仕事で顔を合わせたり、夜懐かしいメンバーで集まったりもしているようだったが、私も道明寺の妻という立場上沢山の仕事があり、こうして花沢類と会うのは2年ぶりだったように思う。

「司は・・・・?見当たらないようだけど。」
「さっき、急な仕事が入って抜けたの。私もそろそろ・・・・と思っていたところ。」
「そう・・・・。」

さり気なくカクテルを受け取り、私へと手渡す。

「牧野・・・・あんた綺麗になったな。」

  ぶっ!!

突然の類の賛辞に思わずむせる。

「クククッ・・・。そういうドジなところは相変わらずなんだ。」
「花沢類こそ・・・人をからかうくせ直ってないよ。」
「まぁね・・。つい懐かしくなっちゃって。」

以前と変わらない茶色いビー玉のような目が笑っていた。その笑い方も昔のままだ。
ひとしきり笑った後、私たちは一緒に会場を後にした。
私と道明寺を乗せてきた車は 道明寺が抜けたときに乗って行ってしまったので、私は家から迎えを呼ぶつもりだったのだが、花沢類の『どうせ通り道だから』という言葉に甘え、送ってもらうことにしたのだった。
後部座席に並んで腰掛ける。

「相変わらずパーティーは苦手・・・なの?」

先に沈黙を破ったのは私だった。

「ああ・・・そういう牧野も・・・だろ?」
「あたり。昔みたいに料理をパクついてるわけにも行かないし。」
「食い意地はってんのも相変わらずなんだ。このままケーキでも食べてく?遅くまでやってるとこ知ってるけど。」

久しぶりに「牧野」と呼ばれ何ともいえないくすぐったさと懐かしさを感じながら私は類の誘いを受けた。

つくしは類に誘われて行った深夜のカフェで、偶然道明寺とその浮気相手のデート現場を目にすることになる。追い打ちをかけるように道明寺からは「仕事で今夜は帰らない」と連絡が入り呆然とする。

「大丈夫!ほら浮気の一つや二つ男の甲斐性っていうしね」

努めて平静に振舞おうとする私を見つめていた類の手が不意に私を抱きしめた。

「なんで・・・なんで・・・幸せになってくれないんだよ」

しぼりだすような声のその言葉を耳にすると、私の中の何か・・・張りつめていたものがパチンときれるような気がした。

   この人は今でも・・・・・私を・・・・。

そう確信した瞬間私は花沢類の背中を抱きしめて信じられない言葉を口にした。

「花沢類・・・お願い・・・道明寺から私を奪って」

 この気持ちは愛じゃなのかもしれない。
 ただの逃げなのかもしれない。
 でも、あの頃と同じ優しさに今は包まれていたい。
 ほんの一時だけでも・・・・・・・。

類の部屋に入ると同時に彼は私を抱き寄せ、激しく唇を重ねてきた。道明寺のものとは違うコロンの香りが私を包む。

「牧野・・・好きだ・・・」

初めて受ける行為ではないのに初めてのときのように緊張して固くなっている自分がいる。許されるはずのない相手と許されるはずのない行為をしているという思いが私の緊張を更に高めていた。

「牧野・・・あんたが悪いんじゃない」

つくしの心の中を見透かしたように類が囁いた。類を見上げその瞳をのぞいたとたん私は悟った。

   わたしは類のもの。そして類は私のものなのだ・・・・
その思いが私の心の隅にわずかに残っていた迷いを取り去った。
このまま・・・全てを失ってもいい。
類さえいてくれれば・・・

海辺での初めてのキス、空港でのキス、NYでのキスーーー全てのキスが今ここでふたりでいることにつながっていたのだという思いで私は類の唇を激しく求め舌を絡ませあった。

薄暗い部屋の中で私たちは互いの衣服を脱がしあい、ベッドへと倒れ込む。
類のひんやりとした手が私の胸をそっと愛撫すると

「は・・・あ・・・っ」

思わず喘ぎ声が洩れてくる。
目を閉じたまま類を抱き寄せ、華奢にさえ見えるその外見からは想像も出来ないような広くて大きい胸に私は口付ける。
冷たい手とは対照的な熱い類の唇が体中を這い回る。

「ああっ・・・だ・・め・・っ」

私の感じるところをひとつひとつ確実にとらえ攻めてくる。
なんで・・・わかるの・・?
この人にはどうして私の心の中を全部見透かさせてしまうんだろう・・・。

「花沢・・・類・・・」
「類」
「え?」
「類って呼ばないと今すぐ抱くよ。あんたを」

目の前の茶色い瞳は私を見据える。

「呼ばなかったら・・・?」
「も少し  じらす」

瞳の奥に笑いが見えた。

「じゃあ・・・呼ばない」

私もイタズラっぽく微笑んでみる。

「・・・・後悔するぞ」

そう言うなり、類の手は下半身へと降りる。
もうすでに湿っている私の秘部をとらえ、ゆっくりと愛撫する。

「や・・・あ・・・」

やるせなくなった右手がシーツをつかむ。長く冷たい類の指が秘部の中にゆっくりと侵入し始めると今までこらえていた喘ぎ声が押さえきれなくなる。

「ああっ・・・いいっ・・・・」

指の出し入れを何度か繰り返すと、類は今度は同時に少し上部の大きく隆起した肉芽に触れる。

「やだっ。そこは・・・・」

首を振って思わず類の体を抱き寄せる。今にも寄せてきそうな絶頂の波を逃すように胸元へと唇を寄せる。

もう引き返すことなんでできない
わたしは選んでしまったのだ。この人の、この大きな胸を・・・

「類・・・来て・・・」

類の優しい唇が私の顔に下りてきて、知らず知らずのうちに頬に伝っていた涙をぬぐう。

「つくし・・・もう離さない」

そう囁くと類はそっと私の中に入ってきた。
最初は優しくそして次第に激しく彼は私を揺らす。
この熱い息づかいも体に感じる重みもすべてがみんなみんないとおしい。

「類・・・類・・・」

熱っぽい唇で喘ぎながら私は何度も彼の名を呼ぶ。
ようやく結ばれたこのときを離すまいと私は貪欲に彼を求める。
もっともっと感じていたい  もっともっと結ばれていたい

「ねぇっ・・・類・・・もっと・・・もっと・・・」

私の言葉に答えるように類は私を揺らしつづけ次第に高みへと昇らせていく。

「あ・・・ああっ・・・」

私がいった瞬間、私の固くなる体を強く抱きしめながら類が少しかすれた声でこう囁くのを私は聞いた。


「一緒に・・・堕ちよう・・・」






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